挑戦を続ける大正区・千島団地
大阪市大正区にある独立行政法人都市再生機構(※以降、UR都市機構)の千島団地は、5棟からなる総戸数2,236戸、大阪市内では最大規模の大型団地である。
高度経済成長期の大量供給期の終焉時期の1972年(昭和47年)に管理を開始した物件で、築46年を迎えている。団地内は昭和期の和室2DKの間取りが中心であり、住人の高齢化も進んでいた。UR都市機構では、新しい団地がどうあるべきかに向き合い、“今の時代に沿った住まいづくり”を進めている。
そして、まちに目を移すと、かつては大阪のものづくりを担い経済を支えた大正区でも千島団地同様に人口減少と高齢化が進んでいる。同様のまちづくり・すまいづくりの悩みをもつUR都市機構と大正区が、協力して地域活性化を含めた取り組みに挑んだ。『TAISHO★UPプロジェクト』である。
そのTAISHO★UPプロジェクトの第1弾は、大正区と民間業者を巻き込んだ、ものづくりの街らしい“DIYでまちと団地を活性化させる”という新たな試みだった。千島団地内の空き店舗を改装して、DIYの基地となる「壁紙屋本舗ラボ」を開設し、 千島団地の新たな契約者については、全部屋をDIY可能物件とした。定期的にマーケットを開催し、地域の住民も巻き込んだ動きを行っている。
今回、その千島団地内に住民の利便性と健康、さらに地域のコミュニティの場として、コインランドリーとフィットネスという新たな機能を誕生させたという。お話を伺ったのは、UR都市機構 西日本支社 大阪エリア経営部 企画課の藤原暁さんと今回のフィットネスとランドリー部分の運営で連携した株式会社アイルの営業課長 川口亮介さんである。
築46年という物件と現在の暮らし方をコインランドリーという機能で補填する
今回、新しくオープンした「QuickDryFit(クイックドライフィット)」は、千島団地の「壁紙屋本舗ラボ」の裏にある。かつては、団地内の住民が利用した空き店舗の活用である。フィットネスジムとコインランドリーの複合施設となっており、コインランドリー部分は、UR賃貸住宅初となる宅配洗濯代行サービスがついた有人管理施設となっている。いったいなぜ、“コインランドリー”だったのだろうか。
「千島団地は築46年を迎える団地です。当時の世帯の暮らし方で間取り設計されているため、数多く供給された2DKタイプの間取りとなっています。部屋自体は、DIYを可能にすることによって、仕切っていた襖を取り払ったりするなど、暮らしに応じたカスタマイズができるようにサービスを進めてきました。が、どうしても水周りのサイズは当時の家電に合ったつくりとなっており、洗濯機も小さなものしかおけません。
忙しい共働きや単身者の増加で、仕事の都合上、なかなか週末しか洗濯ができない世帯に向けたサービスとして、また、高齢の単身者世帯のための見守りサービス機能の付加価値も検討しました」と、UR都市機構の藤原さん。
コインランドリーは、普通のコインランドリーのように自分で利用できるほか、店頭にて洗濯物を預かり洗濯・畳折までを行って専用ロッカーに入れる洗濯代行サービスが利用できる。また、千島団地内だけであるが、洗濯の宅配サービス、週1回の洗濯回収と配達の際に住人の様子を確認しレポートする洗濯配達見守りサービスが利用できる。営業時間は6:00~24:00まで、うち7:30~20:00はスタッフが常駐している。
カフェではなく、フィットネスにした理由
新たなコミュニティの場としてのコインランドリーは進化しているが、近年良く耳にするカフェを併設したコインランドリーではなく、フィットネスにした理由はどこにあるのだろうか。
「ランドリーの終了を待っている時間、一石二鳥というわけではないのですけど、健康にも向き合う機会がつくれれば…ということでフィットネスジムを併設することにしました。フィットネスジムといっても、がっつりと時間がかかるというものではなく、“サーキットトレーニング”という15分ほどで筋肉を大きく使う運動と、短いインターバルを交互に取り入れて、心拍数を適度に保ったまま行う有酸素運動です。音楽に合わせて短い時間で楽しく行えることと、体に大きな負荷をかけないことから高齢の方でも楽しくできるトレーニングを取り入れました」と、UR都市機構の藤原さん。
「めずらしいのは、専属トレーナーが常駐していることです。トレーニングの効果的なアドバイスが受けられるほか、健康相談や月1回の体力測定の実施なども行っています。15分500円から使用でき、使い放題でも3980円/月と団地の住人以外の方にも使っていただきやすい料金設定にしています。
この場所はちょうど窓越しに団地の緑も見え、天井も高いことからお天気の良い日は気持ちよくトレーニングしていただけると思います」と株式会社アイルの川口さんはいう。
TAISHO★UPプロジェクトの第2弾となる「クイックドライフィット」。DIYでの部屋のカスタマイズだけでなく、住人の暮らしや健康などを含めた豊かさに着眼したのが、今回の取り組みであるようだ。
UR都市機構と大正区の今後も含めた住まいのあり方、暮らしのあり方、まちのあり方に向き合う取り組みに注目していきたい。
取材協力:
クイックドライフィット|Quick Dry Fit
https://quickdryfit.com/
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