帯広、岩見沢、浦幌町でまちの活性化に関わる人たちが登壇
2017年9月17日、「これからのおもろい北海道のまちとは」と題したトークイベントが行われた。主催は、UR都市機構西日本支社が提供するウェブマガジン「OURS.」編集部。
OURS.は”借り暮らし”をテーマにコンテンツを配信しており、今年、WEBマガジンをまとめた書籍「#カリグラシ」を出版。 今回のトークイベントは、出版を記念し、様々な地域、出演者で「借りて暮らす」をテーマに行われており、帯広が北海道第一弾となった。
登壇したのは北海道の各地でまちづくりに携わる3名だ。北海道岩見沢市 地域おこし協力隊の吉崎祐季さん、十勝郡浦幌町の地域おこし協力隊 三村直輝さん、帯広市で賃貸経営や空き家活用事業を展開する空間Works代表の山川知恵さんと、北海道のなかでも、様々な場所から集合した登壇者達。それぞれまちの課題も異なるなか、どういった取組みをしているのだろうか。
日本全国に74万戸の賃貸物件を所有するUR都市機構の前UR-DIY部部長であり、OURS.編集部である小正茂樹さんを聞き手に、幅広い話を聞くことができた。
日本と海外の住まいの違いは「照明とDIY」
北海道岩見沢の東部丘陵地域に在住する吉崎祐季さんは、札幌出身。大学進学を機に上京し、在学中に1年かけて約20ヶ国を旅行した。そこで、海外と日本の住まいの違いを感じたと言う。
「海外は日常的に自分たちで家に手をかける、DIYが根付いています。部屋の照明も、明るさと暗さの陰影を考えられて配置されていました。DIYと照明で、日本の住まいはもっとよくなるのではないかと思いました。それで、"まずはDIYを自分ではじめてみよう!"と、実家で所有していた、10年ほど手をかけていなかった賃貸物件をDIYしました。家を改修していくなかでいろんな人との出会いがあり、地方都市の魅力を感じて、そのままUターンすることにしました。」
吉崎さんは東京で設計事務所や不動産会社勤務を経て、北海道へのUターンをきっかけにインテリアデザイナーとして独立。今は、岩見沢市地域おこし協力隊として活躍中だ。
「私が住む地域は炭鉱町として栄え、最盛期の人口は2万人ほどあったと言われていますが、今は800人くらい。人口減少、空き家問題と、地域課題は数えきれないほどたくさんありますが、自分ができる方法で地域課題を何とかしていけたらと思っています。
岩見沢市に大学があるのですが、学生たちは札幌から通っている人も多く、まちなかにしか関わらない。もっと若い人に中心地以外も知ってもらいたいと、大学生向けのシェアハウスをはじめました。水回りの綺麗な空き家があって、大家さんに打診したら、『やってみろ!』と(笑) いまは自分を含めて2人で住んでいて、住みながらDIYをしています。拠点ができたことで、大学生が遊びに来てくれたり泊まりに来てくれたりと、交流の場になりつつあります。
移住希望の方へ物件案内もしていますが、断熱も入っていない、廃屋に近しい物件しかないんです。まずは自分で直してみよう!と、去年1軒、古民家を取得しました。自分でDIYしながら、これからの使いみちを考えて、北海道の空き家活用を模索していきたいです。」
閉校になった小学校をサテライトオフィス・コワーキングスペースに
三村直輝さんは、株式会社リレイションから十勝郡浦幌町の地域おこし協力隊に出向中だ。株式会社リレイションは徳島県徳島市に本社を置き、神山塾の運営など、日本全国の地域マネジメント事業を展開している。
「株式会社リレイションが浦幌町とご縁があり、廃校になった常室小学校の活用事業を受託したことをきっかけに、地域おこし協力隊として浦幌町に移り住みました。
旧常室小学校は生徒数の減少により平成17年3月に閉校。以降10年ほど具体的な活用方法が決まらないままになっていましたが、2年前からサテライトオフィス・コワーキングスペース『TOKOMURO Lab』として活用する事業を進めています。
旧常室小学校の再生方法を考える"地域滞在型研修"や、サテライトオフィスの展開を検討されている企業にお試しでオフィスを使ってもらったり、まずは交流人口を増やしていく取組みをしています。町内の人の交流の場としても使ってほしいので、月2回ほどイベントも実施しています。
浦幌町には小学校と中学校が2校ありますが、高校がありません。進学や就職で若い人たちが多く転出していて、人口減が著しく深刻な課題です。進学した後に地元に帰ってきても、第1次産業の仕事が多く、多種多様な、若い人が就きたいと思う仕事が少ないと感じています。『TOKOMURO Lab』を活用した多様な働き方が、新しい仕事や雇用の創出のきっかけになってくれたらと思っています。就職のために上京するだけではなく、地元にも選択肢があることを知ってほしいですね。
今後は、『TOKOMURO Lab』で宿泊が出来たり、飲食が出来るカフェをはじめられたらと思っています。」
大家の考え方次第で、まちをよくすることに貢献できるかもしれない
最後は、帯広で賃貸経営や空き家活用事業を行う空間Works代表の山川知恵さんをご紹介しよう。
札幌生まれ帯広育ちで、高校卒業後に進学のため上京。結婚を機に東京からUターンした後、ケアマネージャーの仕事に就く。なにか副業で家計の収入を増やせないか…と勉強し、不動産投資にたどり着き賃貸経営をはじめたという。
「自分が賃貸経営をするなかで、空き家問題の全景や都市計画の重要性を知るようになりました。空き家の解消やリノベーション、まちづくりなど先進的な取組みをされている大家さんたちの存在を知り、その考えに触れ、大家の考え方や動き次第で、空き家の解消や、まちをよくすることに多少なりとも貢献できるのではと考えるようになりました。
大家をしながらアパートを建築したり、改装をしたりといった経験を元に、他の大家さんの物件のコーディネートや、空き家のリノベーションの相談に乗ったりするようになりました。空き家活用事業をはじめてからは、人材・事業育成やまちおこしイベントの運営、観光振興など、まちづくりに関わる様々なプロジェクトにも関わらせてもらっています。
今、帯広初の大型シェアハウスの計画が進んでいます。知り合いの大家さんが下宿として使われていた築30年ほどの物件を取得し、私はプランニングのサポートをしています。43室ほどと規模が大きいので、旅館業法に適用した建物にして、宿泊施設とシェアオフィスを兼ねた複合施設になる予定です。」
さまざまな過程を経てUターンや出向などで北海道に移り住み、まちづくりに関わる3名のお話を聞くことができた。みな一様に、いま自分が住むまちが好きで、自分たちが出来る方法で少しでもまちをよくしていきたいと話していた。
岩見沢美流渡の空き家再生、浦幌町の「TOKOMURO Lab」、帯広初の大型シェアハウスと、それぞれの今後のチャレンジを見守り、今後の展開を報告したいと思う。
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