DIY、リノベーションへの関心の高まりを実感

会場入り口で行われていたトークライブ。リノベーションの世界では有名な人揃いのイベントだった会場入り口で行われていたトークライブ。リノベーションの世界では有名な人揃いのイベントだった

このところ、DIYやリノベーションに興味を持つ人が増えているが、賃貸業界の関係者の多くも同様に関心を持っているらしい。会場入り口では全国で展開されているリノベーションスクールの関係者がトークライブを行っていたのだが、2日間全4回のライブはどの回も満員。立って聞いている人も多く、関心の高さを見せつけた。また、会場内の9か所でセミナーが開催されたのだが、そのうち、ひとつはリノベーション、ひとつはDIY。家主によるセミナーでもリノベーション、DIYについて語る人が多かった。

中でも印象的だったのはDIYと銘打ったブースで行われた久留米市、大牟田市、八女市など福岡県内各地プラス鹿児島の事例報告である。福岡には老朽化したビルをリノベーション、ビルだけでなく、地域を変えたことでも知られる冷泉荘という物件がある。今回のセミナーは冷泉荘を手掛けた吉原勝己氏が福岡県各地でリノベーションを行っている人たちに呼びかけて作った福岡ビルストック研究会の参加者たちが順に講師となったもの。各地で活躍している人たちを繋ぐことで、点が線となり、やがては面として広がっていくことを意図したものだと思うが、こうした活動が続いていけば福岡は面白いことになりそうである。同研究会は昨年、各地のリノベーション事例を見学するツアーを行っており、リノベーションが建物、地域を再生するだけでなく、観光資源にもなりうる可能性を見せてくれてもいる。

リノベーションで街を変える

久留米の2代目大家さんご兄弟のセミナー。紹介される物件、リノベーションなどはいずれもセンスが良く、話題になるのも納得久留米の2代目大家さんご兄弟のセミナー。紹介される物件、リノベーションなどはいずれもセンスが良く、話題になるのも納得

そのうち、久留米市、八女市の事例を聞いてきたので、ざっとご紹介しよう。まず、久留米市の事例は西鉄久留米駅の隣、櫛原駅前にある2棟の古くて空室だらけのアパートが舞台である。滞納も多く、クレーマーもいたという物件だが、これを半田佳祐氏、半田満氏の2代目大家兄弟がDIYで外壁を塗り替えることから始め、今では地域の名所となるまでに再生したという。建物そのものに手を入れたことはもちろんだが、面白かったのは空いていた土地を利用、家庭菜園、広場を作り、それを住んでいる人はもちろん、地域にも開放したという点。この広場を利用して様々なイベントを開催していたところ、今では市のイベントなどでDIYワークショップをやったり、DIY婚活パーティー(!)などをやるようにもなったとか。また、こうした場で繋がった人達と一緒に勉強会を開いたり、市の移住促進プログラムに参画するなど、活動は自分の物件に留まらず、大きく広がっている。物件のリノベーションを通じて、地域もリノベーションされたということだろう。

もうひとつの八女市の場合は、福島という2002年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたエリアが舞台。江戸から昭和初期にかけての土蔵造りの建物が多く残る地域で、保存に関しての意識は高く、市内には街づくりに関与する民間を中心にした団体が6つもあるのだとか。20年余に渡って活動が行われてきているが、なるほどと思ったのは「これまでは残すことに注力してきたが、これからは活用しないと残していけない。価値観を転換しなければ」という八女町家ねっと事務局の中島宏典氏の言葉。建物は使われて生きるものなのである。

旬な話題、バケーションレンタルに農地活用

バケーションレンタルに関するセミナー会場。満員だったバケーションレンタルに関するセミナー会場。満員だった

旬な出展として目についたのはAirbnbに代表されるバケーションレンタル代行事業者。これは部屋を利用しない期間中、旅行者などに貸す民泊サービスのことで、安価で滞在できると利用者に支持されている。日本では今のところ、旅館業法との兼ね合いから、なんとなく黙認はされているものの、適法とされているわけではなく、今後の普及は国の対応次第といったところ。だが、賃貸不動産オーナー向け経営情報誌「家主と地主」2015年6月号によれば、2015年1月の時点で日本でのAirbnbは約4,000件。前年比3倍となっているという。個人でも代行事業者を利用することで部屋を貸し出せるのであれば、大家さんでなくても気になるところだ。

農地の活用を手掛けるブースも2件あり、こちらもこれからのトレンドになりそう。これは農地、遊休地を市民農園、体験農園として活用しようというもので、うち1社はすでに首都圏の38カ所にサポート付市民農園「シェア畑」を展開している。特に神奈川県内にはかなりの数が作られている。行政の行う区民農園、体験農園では抽選となることが多く、また、期間が1年ないし2年などと限定されるが、民間の畑なら好きなだけ借りていられる。耕作が困難になった農地などの活用方法として、今後、増えていくのではなかろうか。

高齢者見守りサービス、無人型不動産店舗も

手前の椅子に座るとカプセルにこもったような感じになり、周囲を気にせず、部屋探しができる。画面もポップで楽しそう手前の椅子に座るとカプセルにこもったような感じになり、周囲を気にせず、部屋探しができる。画面もポップで楽しそう

高齢化社会に対応した、高齢入居者の見守りサービスもいくつか見かけた。同種のサービスはすでにいろいろ出ていたが、これまでは高齢の親を心配して子どもたちが設置するような例が中心だった。それが賃貸住宅にまで普及するのである。しみじみ高齢化を実感せざるを得ない。

ただ、従来のサービスと今回出展されていたものでみると、収益を気にする賃貸住宅への設置であることを意識、センサーは壁に貼り付けるだけで使えるなど、簡単に安価に設置できるようになっていたのが特徴だ。

ITを駆使した無人店舗も気になったもののひとつ。これは愛媛県松山市に本社のある日本エイジェントが展開しているもので、楽しみながら部屋探しができる上にその場で資料を印刷したり、テレビ電話を使って担当者と話をしたりもできる。不動産会社内に設置されるだけでなく、全国各地の商業施設内などへの設置が進んでおり、首都圏でもオリナス錦糸町店、トレッサ横浜店、千葉パルコ店などに置かれているとか。IT利用の重要事項説明の社会実験も始まり、部屋探し、契約などのやり方は大きく変わっていきそうである。

壁に跡が残らないフックに室内洗濯物干し、中庭のある物件も

貼って剥がせるフック。興味を持って立ち止まる人も多かった貼って剥がせるフック。興味を持って立ち止まる人も多かった

個人的には壁に跡が残らないフック、室内洗濯物干し、中庭のある賃貸住宅にも興味を惹かれた。大阪市の清和産業が出展していた「くりぴたフック」なる商品は接着剤を塗った上にフックを押し付け、乾燥させるというもので、接着剤は擦れば落ちるという。接着剤を新たに塗布すれば何度でも使えるというのも無駄がなくて良い。ただし、デザインはもう少し工夫していただきたい。さらに900円(消費税含まず)という価格もひっかかるが、こうした製品が増えてくると賃貸の自由度も上がるはずだ。

室内洗濯物干しはこのところ、新築を中心に少しずつ増えている設備のひとつ。室内に干すことができれば雨の心配はないし、防犯面の懸念も減る。花粉症の人にとってはリスク軽減にもなるだろう。使う時だけ設置、使わない時には外しておけるタイプ、昇降式などであれば、インテリアの邪魔をすることもない。後付も含めてもっと普及してくれるとありがたいと思う。

中庭のある賃貸住宅は丸山保博建築事務所が提案しているもので、事例として挙げられていた写真が美しく、印象的だった。デザイナーズに代表されるように、これまでの賃貸住宅では室内への関心が中心になりがちだったが、今後は建物や敷地全体にも気を配った物件が増えてくるのかもしれない。住む側としては質の向上に期待したい。

福岡ビルストック
http://www.npo-fbs.com/

八女町家ねっと
http://yame-machiya.net/

日本エイジェント スタッフレスショップ
http://staffless.jp/

清和産業 くりぴたフック
https://sv105.wadax.ne.jp/~seiwasangyo-com/seiwashop/132.html

丸山保博建築事務所
http://m-hohaku.com/

2015年 09月02日 11時09分