住宅の省エネ化は待ったなしの国家戦略
2020年に当時の菅首相による所信表明演説で「2050年カーボンニュートラルをめざす」ことが宣言されて以降、住宅業界においても規制強化の動きが活発化している。特に、2021年には住宅・建築物の省エネ対策の遅れが指摘され、国土交通省、経済産業省、環境省は「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を設置。その結果、2025年からのすべての建築物における省エネ基準適合義務化、そして2030年までに新築住宅でZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)水準の性能確保をめざすという目標が打ち出され、住宅の省エネ化は待ったなしの国家戦略となった。
こうした流れの中、国は新築・リフォーム双方における住宅性能向上を支援するため、2023年から「住宅省エネキャンペーン」を展開している。直近の2025年は予算総額4,480億円を計上する過去最大級の補助金制度となり、住宅の省エネ化ニーズの高まりを後押しした。そして2025年12月には、住宅の省エネ化への支援を強化するための補助制度が盛り込まれた令和7年度補正予算案が成立。前年より若干規模が縮小するものの、2026年も「住宅省エネ2026キャンペーン」が実施されることが決まった。
具体的には、国土交通省・環境省による「みらいエコ住宅2026事業(Me住宅2026)」(予算規模2,000億円)、環境省による「先進的窓リノベ2026事業」(予算規模1,125億円)、経済産業省による「給湯省エネ2026事業」(予算規模570億円)、経済産業省による「賃貸集合給湯省エネ2026事業」(予算規模35億円)の4つの事業が実施される。本稿では、2026年2月16日にオープンした各事業の公式ホームページで紹介されている補助内容を、2025年の補助内容との相違点とともに紹介する。※情報は2026年2月20日時点
なお、「住宅省エネ2026キャンペーン」とは、各補助事業を実施する国土交通省・環境省・経済産業省の3省が連携し、4つの補助制度をワンストップで利用できる仕組みである。個別に制度を探して申請する手間が省け、リフォーム内容に応じて複数の補助金を組み合わせて活用できるのが大きな特徴だ。
【関連リンク】住宅省エネ2026キャンペーン(外部サイト)
キャンペーン実施の背景には、家庭部門の温室効果ガス排出量の大幅な削減のほか、省エネ性能が低いままの住宅がもたらす暮らしへの深刻なデメリットもある。
省エネ・断熱性能が低い住宅は外気の影響を受けやすいため、過度な冷暖房に頼らざるを得ず、家庭のエネルギー消費量が増加してしまう。これは、環境への負荷を高めるだけでなく、毎月の光熱費負担に直結する。また、古い給湯器を使い続けることも、エネルギー効率の悪さから無駄なエネルギー消費を招く要因となっている。
また、断熱性能が低い住宅では、冬の寒さや夏の暑さがダイレクトに室内に伝わり、一年を通して快適な室温を保つことが難しい。なかでも寒暖差が出やすい浴室やトイレなどでは、暖房の効いた部屋との間で急激な温度変化が生じる。この寒暖差は、血圧の急上昇・急降下を招く「ヒートショック」の原因となり、住む人の健康や命を脅かす深刻なリスクとなる。安心して快適に暮らすためには、住宅全体の省エネ・断熱化が欠かせない。
みらいエコ住宅2026事業(新築):「GX志向型住宅」なら全世帯が対象、最大125万円の補助
「みらいエコ住宅2026事業」の新築向け補助は、国土交通省と環境省の合同事業であり、高い省エネ性能を持つ住宅の取得を支援するものである。床面積が50m2以上240m2以下の住宅が対象となる。 基本的な補助内容として、対象となる住宅の性能によって補助額が異なり、「長期優良住宅」は最大80万円/戸(建替前の住宅を除却する場合はさらに20万円加算)、「ZEH水準住宅」は最大40万円/戸が補助される。これらの住宅に対する補助は、「子育て世帯(18歳未満の子を有する世帯)または若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが39歳以下の世帯)」に限定される。 しかし、2026年の大きな注目点は、特に高い省エネ性能等を有する「GX志向型住宅」への支援だ。GX志向型住宅については、子育て世帯に限らずすべての世帯が対象となり、地域区分に応じて最大125万円/戸という手厚い補助が受けられる。
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みらいエコ住宅2026事業(リフォーム):断熱基準の引き上げが鍵に
リフォーム向けの「みらいエコ住宅2026事業」は、既存住宅に対して省エネ改修や子育て対応改修、バリアフリー改修などを行う場合に補助が受けられる制度である。 既存住宅のリフォームにおける最も大きな変更点は、制度の考え方だ。2025年(子育てグリーン住宅支援事業)は指定の必須工事を実施したかどうかが問われたが、2026年からは「住宅の断熱性能をどこまで引き上げたか」が評価基準となる。 具体的には、「平成4年基準を満たさない住宅(平成3年以前に建築)」または「平成11年基準を満たさない住宅(平成10年以前に建築)」を対象に、リフォームによって「平成11年基準」または「平成28年基準」相当に性能を引き上げる工事が必須となる。必須工事としては、開口部の断熱改修、外壁・屋根・天井または床などの躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置などが設定されている。補助額は性能の引き上げ幅や対象住宅によって異なり、上限額は1戸あたり最大100万円に設定されている。
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先進的窓リノベ2026事業:ドア交換は窓との同時申請が必須
「先進的窓リノベ2026事業」は、既存住宅(および一定の非住宅建築物)の開口部の断熱性能を向上させるリフォームを支援する制度である。ガラス交換や内窓設置、外窓交換(カバー工法・はつり工法)といった高断熱化工事が対象となり、製品の性能やサイズに応じた定額が補助される。補助上限額は、住宅1戸あたり100万円である。ドア交換(カバー工法・はつり工法)で補助を受けるには、「他の窓の工事と同一の契約であり、同時に申請する場合のみ」という条件が必須となるため注意が必要である。
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給湯省エネ2026事業:高効率給湯器の補助額見直し
「給湯省エネ2026事業」は、家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野において、高効率給湯器の導入を支援する制度である。新築注文住宅、新築分譲住宅の購入、既存住宅のリフォームなど、幅広いケースで対象となる。 基本的な考え方は変わらないものの、2026年は補助額が見直された。基本額として、エコキュートが7万円/台、ハイブリッド給湯機が10万円/台、エネファームが17万円/台となっている。また、指定の性能加算要件を満たせば、エコキュートで3万円/台、ハイブリッド給湯機で2万円/台が加算される。 さらに、給湯器の設置に合わせて古い設備を撤去する場合の「撤去加算額」として、電気蓄熱暖房機の撤去で4万円/台、電気温水器の撤去で2万円/台が補助される。ただし、既存のエコキュートの撤去は加算対象外となる点に注意したい。
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賃貸集合給湯省エネ2026事業:賃貸住宅のオーナー向けの導入支援
「賃貸集合給湯省エネ2026事業」は、賃貸集合住宅(1棟に2戸以上の賃貸住戸を有するなどの条件を満たす建物)のオーナーや管理委託を受けている者を対象に、従来型給湯器から小型の省エネ型給湯器(エコジョーズやエコフィール)への交換を支援する制度である。 補助額は、導入する給湯器の機能によって異なり、追い焚き機能のない給湯器は5万円/台、追い焚き機能ありは7万円/台が補助される。また、共用廊下を横断するドレン排水ガイド敷設工事や、浴室へのドレン水排水工事といった一定の条件を満たす工事を実施した場合は、さらに3万円/台の加算措置が用意されている。
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申請できるのは「登録事業者」のみ
リフォーム補助金の申請は、一般の消費者が直接行うことはできない。国に登録された「住宅省エネ支援事業者」を通してのみ申請が可能である。そのため、補助金を活用したい場合は、まず依頼先の施工事業者が登録事業者であるかどうかを確認することが重要となる。手続きにおいて施主が行うのは、本人確認書類の提出や内容の確認、署名などに限られる。
一方、住宅・リフォーム会社にとっては、補助金を取り扱うためには、「住宅省エネ支援事業者」としての登録が必須ということだ。2025年キャンペーンに登録していた事業者は、原則として統括アカウント情報が2026年キャンペーンへ移行される(2026年1月31日までに辞退を申告しなかった場合)。ただし、継続参加を希望した場合でも、後継キャンペーンの要件を満たした上で登録申請書の提出が必要となるため注意が必要だ。新規で登録する場合は、3月上旬に予定されている「住宅省エネポータル」からの統括アカウント発行依頼を行うことになる。
また、補助金を利用する上で最も注意したいのがスケジュールである。2026年の各事業で補助の対象となるのは、「2025年11月28日以降」に着工した工事である。 さらに、国の補助金には予算の上限が定められている。申請期間は「遅くとも2026年12月31日まで」とされているが、予算上限に達した時点で期限前であっても受付が終了してしまう。過去のキャンペーンでも、期限前に予算が消化されて受付終了となるケースが見られたため、「リフォームをしよう」と思い立ったら、まずは早めに登録事業者に相談し、工事スケジュールを確定させることが確実な補助金獲得の鍵となる。
2026年のリフォーム補助金「住宅省エネ2026キャンペーン」は、2025年の流れを引き継ぎつつ、より「省エネ・断熱性能の確実な向上」に的を絞った制度設計へと進化している。みらいエコ住宅での断熱基準の引き上げや、先進的窓リノベ事業の要件厳格化などは、その最たる例だ。住宅・リフォーム会社にとっては、これらの変更点を正しく理解し、各制度をワンストップで組み合わせた付加価値の高い提案を行うことが、顧客からの信頼獲得と成約率向上につながるだろう。国の手厚い支援が受けられるこの制度を活用し、エンドユーザーの快適で省エネな暮らしの実現に向けて、最適な住宅建築やリフォームを提案してほしい。












