闇バイト強盗について、詳しい手口を理解していない人は7割以上

最近、闇バイトと呼ばれる強盗や窃盗被害が相次いでいる。ニュースで見聞きすることも増えているが、「豪邸でもないわが家には、強盗が入るとは思えないし、手口もよく分からない」という人も多いのではないだろうか。株式会社LIXILが行った「住まいの防犯意識調査」でもその傾向はみられるようだ。

そもそも闇バイトとは、どのような強盗なのか。防犯対策専門家 京師美佳さんへのヒアリング内容をもとに作成した闇バイト強盗の手口や傾向は以下の通り。

<闇バイト強盗の詳しい手口・傾向>
■生活困窮者や若者が短期間で高収入を得ようとして強盗・窃盗に手を出すことが多く、手口が強引で危害を加えやすい
■組織化が進み、犯人はイヤホンで指示されながら動くことが多く、音などの抑止対策をしても侵入を防ぎにくい
■犯人も犯罪組織に個人情報を握られ、引くに引けない中で犯行にのぞむため、どんな状況でも強引に侵入してくる
■狙う家の傾向が質より量に変わってきており、セキュリティ意識が低い郊外の住宅街の少額狙いが多発している
■都市部だけでなく、地方を狙った犯行も急増している
■防犯対策が脆弱な家庭が1軒あることで、その街が犯罪グループに目をつけられ、街全体の危機につながっている
■狙う家の下見も組織化され、アポ電話による情報収集や業者を装った下見など、手口が巧妙化している

調査によると、上記のような闇バイトの詳しい手口や傾向をすべて知っていた人は29.4%にとどまり、7割以上の方は詳しい手口を理解していなかったという結果だ。年齢・性別をみると、女性のほうが防犯への意識が低い傾向にあり、最も低いのは60代とか。

LIXILでは、「現金管理をする傾向にある高齢者を狙った事件の多発や、在宅時でも強引に侵入されるケースもあることを踏まえると、体格や体力面からも強盗に狙われる可能性の高い高齢女性において防犯知識が低いことは大きな問題といえます」と分析する。

防犯対策専門家の京師美佳さんは、「知らないことで被害に遭う確率は高くなります。手口が凶悪化しており、昔の対策も常識も通じないことも多い。有効な対策を行うためには、まずは『相手を知る』ことが重要です」と話す。

(上)あなたは、昨今被害が相次いでいる強盗・窃盗事件(闇バイト)についてご存じですか? 
(下)あなたは、防犯対策をしていない/どちらでもないとのことですが、その理由をお知らせください
(上)あなたは、昨今被害が相次いでいる強盗・窃盗事件(闇バイト)についてご存じですか? (下)あなたは、防犯対策をしていない/どちらでもないとのことですが、その理由をお知らせください

“家にいるから”を理由に防犯対策を行わない人が多い

さまざまな情報ソースから治安の悪化を感じる人は増えているようだが、具体的な防犯対策を実施している人は少ないのが現状のようだ。

調査によると、防犯対策をしていない理由として、「どのような対策をしたらよいかわからないから(25.4%)」「価格が高いから(23.7%)」に続き、「家を空けることが少ない/ないから(15.1%)」が続いている。

「家を空けることが少ない/ないから」を理由にあげた人の年齢をみると、60代女性が29.0%と最も高く、次いで50代女性が20.8%。年齢が上がるほど、「家にいるから」を理由に防犯対策を行わない傾向がみられるという。

LIXILによると、背景にあるのは「侵入犯罪は空き巣」というイメージが定着していることが考えられるという。空き巣対策として「電気をつけっぱなしにする」などの在宅のアピールが推奨されたことから、「家にいれば大丈夫」と考える人が多いと推測。しかし、「空き巣」は減少しているが、その代わりに闇バイト強盗などの「侵入強盗」が増加する中、「あえて在宅中を狙ってくる」ケースもあるという。「家にいるから大丈夫」と考えるのではなく、「家にいるときもしっかり守る」という意識を持ち、家全体の防犯性能を向上させることが重要だ。

京師美佳さんは「最近の闇バイト強盗の特徴として、①素人による犯罪、②郊外の住宅街での少額 現金狙い、③手口の過激化の3つを挙げる。建具を壊して無理やり家に侵入、力づくで制圧して金品を奪うことが大半。そのため、『家を空けることが少ないから』や『高価なものをもっていないから』といった理由で防犯対策を行わないのではなく、従来とは異なる新たな観点で『住まいの防犯』を見直し、安心・安全な環境をつくることが大切です。今は在宅中こそ狙われる時代です」とアドバイスする。

開口部の侵入を防ぎ、侵入を遅らせる

では、家づくりやリフォームの際には、どのような対策が必要なのだろうか。
LIXILが京師美佳さんと考える「住まいの防犯対策」のポイントは、まず、物理的に室内への侵入を防ぎ、侵入を遅らせることだという。

窓や玄関ドアなどの開口部については、十分に検討することが必要だ。たとえば、玄関ドアであれば、キーシステムがポイント。ツーロックは基本だが、電動で施解錠するシステムなど多様化している。カードやリモコン、スマートフォンなどで施解錠可能な使い勝手を高めたタイプが揃っているので、ショールームで確かめて選ぶようにしたい。

また、窓の防犯性も意識したい。防犯性を高めた合わせガラス(防犯ガラス/2枚以上のフロート板ガラスの間に、厚く強靭な中間膜とすることで、突き破るのに時間がかかる)を取り入れることも考えられる。断熱リフォームで注目されている内窓は、設置することで外窓と内窓の2ロックとなり防犯性能も高まるだろう。

防災面でも要望が多い窓シャッターは、ガラス破り対策として効果が期待できる。電動タイプであれば、日々の使い勝手もアップする。シャッターのない窓であれば、面格子を設置することも考えられる。プランや周辺環境に合わせて検討するといいだろう。

(上)2ロックや鎌錠が標準装備の玄関ドア。こじ破り対策にも。[リシェント玄関ドア3+FamiLock]
(下)防犯面だけでなく、台風の飛来物からも窓を守る。[電動リフォームシャッター]

(上)2ロックや鎌錠が標準装備の玄関ドア。こじ破り対策にも。[リシェント玄関ドア3+FamiLock] (下)防犯面だけでなく、台風の飛来物からも窓を守る。[電動リフォームシャッター]

狙われにくい・侵入しづらい、外まわりのプランニング

不審者や犯罪者の標的にならないように、侵入しづらい、と感じさせる外まわりのプランニングも重要だ。

オープンなエクステリアプランも多くみられるが、敷地と道路との境界線には、門柱や門扉、フェンスなどを設置し、敷地内への侵入を抑制するようにしたい。最近では、表札やポスト、ドアホンや照明などを一体化した機能門柱が多くみられる。宅配ボックスを組み込むことができるタイプもある。郵便物や宅配物なども防犯的に適した管理ができるよう注意が必要だ。

門扉はキーシステムなども十分に検討を。玄関ドアと同じシステムで開閉できるタイプもあるので、家族構成やライフスタイルに合わせて取り入れたい。

また、照明計画も重要だ。基本的には暗がりをなくすこと。道路や周囲から不審者の動きがわかるようなプランとしておくこと。センサーによって点灯する照明なども検討を。建物の裏手なども十分に配慮することが大切だろう。

(上)住宅建物との調和をかなえるデザインが揃う。[機能門柱FF]
(中)防犯性能を確保しつつ、すっきりとしたデザインで美しい屋外空間を演出できる。[エクステリアライト美彩]
(下)多彩な周辺機器とホームデバイスを組み合わせることで防犯性能が大幅にアップ。[ライスアシスト2]
(上)住宅建物との調和をかなえるデザインが揃う。[機能門柱FF] (中)防犯性能を確保しつつ、すっきりとしたデザインで美しい屋外空間を演出できる。[エクステリアライト美彩] (下)多彩な周辺機器とホームデバイスを組み合わせることで防犯性能が大幅にアップ。[ライスアシスト2]

電動化、遠隔での防犯対策を

最近では、外出時の見守りや戸締りの確認、威嚇などが遠隔で操作できるシステムもある。玄関ドアや勝手口、窓の施解錠状態の確認、屋外カメラなどで不審者を確認するとフラッシュやブザー音による威嚇など、侵入前から侵入後を想定した総合的な防犯対策も可能だ。

調査によると、防犯対策の方法を選ぶ際に最も重視することは、トップが「不安に感じている犯罪を確実に防げる(17.7%)」。次いで「月々の維持費がかからない/安い(13.0%)」「コストパフォーマンスがよい(12.3%)」とコスト面を気にしつつ、直近の犯罪に適した本質的な防犯対策を意識していることが読み取れるという。

住まいの防犯性能は、日常生活の中で意識を持ち続けることはもちろん、建物のつくりや取り入れる機器の選び方によっても大きく異なる。どのような機器をプランニングするかは、敷地や周辺環境、家屋構成やライフスタイルによっても優先順位は変わるだろう。近年の犯罪トレンドを理解しつつ、新しい機器やシステムを確認し、わが家の場合はどんな防犯対策が必要か、新築やリフォームの際には、プランニングと同時にじっくりと検討することが重要だ。


【調査概要】 LIXIL「住まいの防犯意識調査 2025」
調査方法:インターネット調査
調査期間:2025年2月実施
調査地域:全国
調査対象:4,156人(全国)、20~60代男女  
業務委託先:マクロミル

調査データ・商品写真協力  LIXIL

公開日: