国土交通省、経済産業省、環境省が実施する補助金制度が併用可能に

猛暑、豪雨、暖冬――。ここ数年、当たり前になってきた天候だ。これらは地球温暖化によるものといわれている。このまま地球温暖化が進行すると、日本では最悪の場合2100年末には1981年―2000年との比較で「海面が60~63cm上昇」「砂浜が83~85%消失」「ブナの生育可能地域が現在の10~53%減少」「熱中症による死者が2倍以上増加」といった影響が予測されている(出典:「全国地球温暖化防止活動推進センター」資料)。

2100年末に予測される日本の地球温暖化の影響(出典:「全国地球温暖化防止活動推進センター」資料)2100年末に予測される日本の地球温暖化の影響(出典:「全国地球温暖化防止活動推進センター」資料)

地球温暖化のおもな原因は温室効果ガスだ。わが国において温室効果ガス排出量の内訳は、二酸化炭素が約90%を占めている。二酸化炭素排出量の削減には、住宅の省エネ化が有効といわれている。

そこで国土交通省、経済産業省、環境省は、3省連携で「住宅省エネ2025キャンペーン」を行う。国の補助金制度は、管轄する省庁が違っていても原則的に併用できない。しかしながら「住宅省エネ2025キャンペーン」は、3省が実施する補助金制度を併用でき、一部は申請をワンストップ(1回の手続き)で行えるというものだ。

「住宅省エネ2025キャンペーン」は、次の5つの補助事業の総称である。
1.子育てグリーン住宅支援事業(国土交通省)
2.給湯省エネ2025事業(経済産業省)
3.賃貸集合給湯省エネ2025事業(経済産業省)
4.DRに対応したリソース導入拡大支援事業(経済産業省)
5.先進的窓リノベ2025事業(環境省)
それぞれの概要を含めて「住宅省エネ2025キャンペーン」を解説しよう。

子育てグリーン住宅支援事業(国土交通省)とは

子育て世帯などに対してZEH基準を大きく上回る新築省エネ住宅の導入支援などを行う。既存住宅についても省エネ改修等への支援を行う。
補助対象
2024年11月22日以降に行う新築の基礎工事より後の工事と既存住宅のリフォーム工事。

補助対象となる新築住宅(注文住宅・分譲住宅・賃貸住宅)
・GX志向型住宅
対象世帯:すべての世帯
補助額:160万円/戸
GX志向型住宅とは、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)政策に基づいて長期優良住宅やZEH水準住宅を上回る省エネ性能と再生可能エネルギー活用を実現する住宅のことだ。

・長期優良住宅
対象世帯:子育て世帯(18歳未満の子を有する世帯または夫婦のいずれかが39歳以下の世帯)
補助額:100万円/戸(建替前住宅等の除却を行う場合。行わない場合は80万円/戸)

・ZEH水準住宅
対象世帯:子育て世帯(18歳未満の子を有する世帯または夫婦のいずれかが39歳以下の世帯)
補助額:60万円/戸(建替前住宅等の除却を行う場合。行わない場合は40万円/戸)

補助対象となる既存住宅のリフォーム
・補助対象工事
必須工事:①開口部の断熱改修、②躯体の断熱改修、③エコ住宅設備の設置
付帯工事:子育て対応改修、バリアフリー改修等

補助上限額
・Sタイプ
補助要件:上記の必須工事3種のすべてを実施
補助上限額:60万円/戸

・Aタイプ
補助要件:上記の必須工事3種のうち、いずれか2種を実施
補助上限額:40万円/戸

付帯工事で対象となるのは、同時に必須工事を行う場合に限る。

●国土交通省「子育てグリーン住宅支援事業」
https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_001249.html

給湯省エネ2025事業(経済産業省)とは

高効率給湯器の導入費用の一部を補助する事業だ。

対象製品
・ヒートポンプ給湯器(エコキュート)
・ハイブリッド給湯器
・家庭用燃料電池(エネファーム)

補助額の上限
・ヒートポンプ給湯機(エコキュート):13万円/台
・ハイブリッド給湯機:15万円/台
・家庭用燃料電池(エネファーム):20万円/台
・高効率給湯器の導入と同時に蓄熱暖房機または電気温水器を撤去する場合
蓄熱暖房機の撤去:8万円/台(上限2台まで)
電気温水器の撤去:4万円/台(高効率給湯器導入により補助を受ける台数まで)

●経済産業省「給湯省エネ2025事業」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/kyutokidonyu/kyutodonyuhojo2024.html

エネファーム(写真)の補助金額がもっとも多いエネファーム(写真)の補助金額がもっとも多い

「賃貸集合給湯省エネ2025事業(経済産業省)」とは

設置場所の都合からヒートポンプ給湯器などの導入が難しいアパートやマンションなどの集合住宅に対して、賃貸オーナー等による小型の省エネ給湯器の導入を促進する事業。従来型の給湯器からエコジョーズ等の取り替えを対象としている。補助額の上限は1台につき10万円だ。

●経済産業省「賃貸集合給湯省エネ2025事業」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/kyutokidonyu/chintaisyugo2024.html

「DRに対応したリソース導入拡大支援事業(経済産業省)」とは

DR(ディマンド・リスポンス)とは、消費者が賢く電力使用量を制御することで、電力の需要と供給のバランスをとることだ。同事業は家庭用蓄電池等の導入を支援する。補助額等の詳細は2025年1月現在で未定だ。

「先進的窓リノベ2025事業(環境省)」とは

住宅分野のGXを加速させることなどを目的に、先進的な断熱窓の導入を支援する事業。GXとは、「グリーントランスフォーメーション」のことで、化石エネルギーからクリーンエネルギーへの転換を推進する取り組みをいう。

補助対象の工事
住宅の所有者や集合住宅の管理組合等が、事前に登録を受けたリフォーム事業者に発注する一定性能以上の断熱窓への改修(リフォーム)工事。

補助額
5~200万円/戸
補助額は対象となるリフォーム工事の「補助単価×施工箇所数」の合計になる。補助単価は、窓の熱貫流率(U値)、大きさ、工事の方法によって設定されている。

●環境省「先進的窓リノベ2025事業」
https://www.env.go.jp/press/press_04098.html

申請から補助金交付までの流れ

申請手続きの具体的な方法は、今後事務局のホームページで公表される予定だ(2025年1月現在)。しかしながら、内容が昨年度の「住宅省エネ2024キャンペーン」とほぼ同じなので、申請方法も同様と考えられる。申請手続きは事前に事務局へ登録を済ませた住宅省エネ支援事業者(建築事業者やリフォーム事業者など)が行い、事業者から住宅の取得者・工事の発注者へ補助金を還元するという流れだ。したがって、取得者・発注者はなにもする必要はない。対象となる工事は、2024年11月22日以降に着手し、2025年12月31日までに完了するもの。申請期間は、遅くても2025年12月31日までとなるだろう。ただし、先進的窓リノベ事業は新築住宅を対象としていないといった理由で、ワンストップで申請できるのはリフォーム工事だけとなるはずだ。申請の際には、依頼する事業者が住宅省エネ支援事業者であるのか、工事内容は補助対象となっているかを確認してほしい。

また、地方自治体の補助制度については、国費が入っていない限り「住宅省エネ2025キャンペーン」と併用可能だ。たとえば、住宅の建築費などを助成する「東京ゼロエミ住宅」(東京都)の制度とは併用できる。自分がどの制度を併用できるのかは、住宅省エネ支援事業者に確認するといいだろう。

●国土交通省「住宅省エネ2025キャンペーンにおける3省連携(新築・リフォーム)」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001855018.pdf

リフォームの申請から交付までの流れ(2024年度)。新築の流れもほぼ同じだが、ワンストップで申請できるのはリフォームのみ(出典:住宅省エネ2024キャンペーンHP)リフォームの申請から交付までの流れ(2024年度)。新築の流れもほぼ同じだが、ワンストップで申請できるのはリフォームのみ(出典:住宅省エネ2024キャンペーンHP)

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