「あのとき専門事業者へ修理を依頼しておけば」と後悔しないために

『自分で点検! ハンドブック』では、合計20ページにわたって居住者自身が手間をかけずに故障や異常の有無をチェックする方法を解説している(出所:一般社団法人リビングアメニティ協会『自分で点検! ハンドブック』)『自分で点検! ハンドブック』では、合計20ページにわたって居住者自身が手間をかけずに故障や異常の有無をチェックする方法を解説している(出所:一般社団法人リビングアメニティ協会『自分で点検! ハンドブック』)

皆さんは自分の住む家を定期的に点検しているだろうか。筆者はこのような経験がある。2月のある夕方、お風呂を沸かそうといつものように給湯器のリモコンボタンを押した。そして2時間後、浴槽に手を入れて飛び上がる。キンキンに冷えた水だったのだ。慌てて浴室の追い焚きボタンを押したが反応がない。仕方なくその夜は凍えるような寒さのなか、2km離れた銭湯へ自転車をこいで行った。このとき思い出したのは、2週間ほど前からリモコンの液晶画面が暗くなっていたこと。あのとき専門事業者へ点検・修理を依頼しておけば、と深く後悔したことを覚えている。

給湯器に限らず住宅設備や部品はきちんと点検しておかないと、このような不便を味わうだけでなく、場合によっては危険な事故につながることもある。例えばトイレの温水洗浄便座からの発火、網戸の落下、食器洗い乾燥機からの異臭・発火などだ。

一般社団法人リビングアメニティ協会では、『自分で点検! ハンドブック』を作成し、ホームページ上で無料ダウンロードできるようになっている。
https://tenken1010.org/wp-content/uploads/2021/10/handbook2021.pdf

同ハンドブックは、居住者が自分自身で手間をかけずに、普段からのお手入れや点検を行うことで、故障や異常の有無をチェックするためのものだ。

確認漏れを防ぐチェックシートも付属

各部位のチェックシートも付属。アイコンを使用し、分かりやすい構成になっている(出所:一般社団法人リビングアメニティ協会『自分で点検! ハンドブック』)各部位のチェックシートも付属。アイコンを使用し、分かりやすい構成になっている(出所:一般社団法人リビングアメニティ協会『自分で点検! ハンドブック』)

『自分で点検! ハンドブック』は、チェック部位を「キッチンまわり」「浴室まわり」「洗面・トイレまわり」「給湯機器まわり」「居室まわり」「外装まわり」の6つに分け、素人でも簡単に確認できるようにイラストを使って分かりやすく解説している。

また、確認漏れがないようにチェックしたかどうかを記入できるシートも付属。そこにはチェック部位の危険性が一目で把握できるように、そのまま放置すると発火の恐れがある場合は「炎」、漏水の拡大により家財を傷める恐れがある場合は「水滴」といったようにアイコンの表示もある。

※チェック時には安全にも配慮してください

「キッチンまわり」「浴室まわり」「洗面・トイレまわり」のチェック項目

それではチェック部位ごとにおもなチェック項目を解説しよう。

キッチンまわり(システムキッチン・流し台)

キッチンまわりは、火気、電気、水が集中している場所なので、ちょっとした不具合でも火災や大事故につながる可能性がある。

システムキッチン本体

・吊戸棚、包丁差し、棚板などのガタツキや変形
・シンク、カウンタートップのひび割れや欠け
・水栓金具、水栓レバーのガタツキや漏水、排水トラップや排水ホースの損傷

レンジフード

・ファンの不規則な回転や異音、振動

食器洗い乾燥機(ビルトイン型)

・焦げる臭い、煙が出る、漏電ブレーカーが落ちる

ガス調理加熱器

・調理油過熱防止装置(温度センサー)が鍋に接触しない、動きが悪い
・未燃焼時や着火時のガス臭さ、燃焼時の異臭や異常な燃焼

電気調理加熱機器(ビルトイン型、IH、電気ヒーター)

・漏電ブレーカーが落ちる、異臭、異常な煙、異常な煙

調理油過熱防止装置(温度センサー)が鍋に接触しない状態のまま放置していないだろうか調理油過熱防止装置(温度センサー)が鍋に接触しない状態のまま放置していないだろうか

浴室まわり(浴室・ユニットバス)

浴室まわりは、裸で使用するためさまざまな部分の割れがケガなどの事故につながる。最近は暖房乾燥機付きの浴室も多いので、この部分の異常にも注意したい。

ドア

・パネルや枠が割れている
・ハンドルや鍵の動きが悪い、ガタツキがある

床・壁・窓

・パッキン、シール材が切れている

浴槽

・ひび割れ

水栓金具

・温度調整できない、高温のお湯が出る
・シャワーヘッドのメッキが剥がれている

暖房乾燥機

・異音や振動、焦げ臭いにおい

その他

・鏡や手すりのガタツキ、鏡、照明カバー、小物棚のひび割れ

洗面まわり

洗面・トイレまわりは、水を使用する場所ゆえに水漏れ事故が多発しやすい。また、最近は温水洗浄便座などが普及しているので、電気関係の事故も増えている。

洗面化粧ユニット

・鏡や扉のガタツキ
・ドライヤーなど使用中のコンセントからの焦げ臭いにおい、電源プラグの変色
・洗面ボウル、カウンターのひび割れや欠け
・水栓、洗面機器裏などからの水漏れ

大便器

・便器と床の間や、便器とタンクの間からの水漏れ

温水洗浄便座

・便座のひび割れ、ガタツキ
・水漏れ
・便座が異常に熱い、または冷たい

換気扇

・ファンの不規則な回転や異音、振動、焦げ臭いにおい

調理油過熱防止装置(温度センサー)が鍋に接触しない状態のまま放置していないだろうかモーターの故障を放置すると、発煙や発火の恐れがある

「給湯機器まわり」「居室まわり」「外装まわり」のチェック項目

給湯機器まわり

給湯機器まわりは、ガス・石油給湯機が屋内にある場合は空気の供給と排気ガスの屋外への排気が必要。それゆえ特に給気口、給排気筒(排気筒)、換気扇などの空気や排気ガスが流れる部分に注意したい。

ガス給湯器・石油給湯機

・給気部、排気部のつまり、すすの付着
・機器本体、排気筒の変色、さび、穴あき、変形
・機器まわりからの水漏れ
・機器まわり、給気部、排気部まわりに障害物
・ガス、灯油のにおい、運転音が異常

電気給湯機(ヒートポンプ式給湯機)

・機器本体のさび、穴あき、変形
・機器まわりからの水漏れ

『自分で点検! ハンドブック』では、イラストで給湯機器の各部を説明している『自分で点検! ハンドブック』では、イラストで給湯機器の各部を説明している

居室まわり

普段いることの多い居室でも大きな火災や事故が発生する可能性がある。それらを防ぐ火災警報器やガス警報器は、いざという時に作動しなければ役に立たないので入念にチェックしたい。

照明器具

・点灯しない、点滅する、焦げ臭いにおいや異音、異常に熱い

配線器具(スイッチ・コンセント)

・表面の変色、異臭、膨れ、ひび割れ、ほこりの付着

インターホン

・異音や発熱、焦げ臭いにおい

住宅用火災警報器

・作動確認(ボタンを押す、ひもを引くなど)しても警報音が鳴らない

ガス警報器

・電源ランプが点灯していない、表示ラベルの交換期限(5年)が過ぎている

補助手すり

・固定金具のひび割れ、変形やねじのゆるみ

外装まわり

外装まわりの住宅部品は、墜落事故や自然環境から建物を守る重要な役割を担っている。

玄関ドア

・油漏れ、ネジのゆるみや外れ
・扉のガタツキ、垂れ下がり、開閉時の異音、ネジのゆるみ
・ハンドルやラッチのガタツキ、ネジのゆるみ、動きが重くなったり滑らかに動かない
※内装ドアも同様

窓・サッシ

・クレセント(カギ)のネジのゆるみ
・気密材の摩耗、切れ、よじれ
・ガラス押えのよじれ、切れ
・戸のはずれ止めがセットされていない
・開閉時に引っかかる、著しく重い

網戸

・網戸のはずれ止めがセットされていない
・開閉時に引っかかる、著しく重い(戸車の摩耗など)

墜落防止手すり(マンション)・窓手すり

・手すり上部、支柱、手すり子(格子)などを手でゆするとガタガタ音がする
・手すり子(格子)が外れている(すり抜けできそうな隙間がある)、ガラスにヒビが入っている、パネルが変形している
・固定金具のひび割れ、変形やネジのゆるみ、抜けがある

屋根

・屋根材にズレや浮き、割れ、サビがある
・天井にシミがある

外壁

・割れ、欠け、亀裂、反り、うねり、サビ、表面塗装の変退色やシーリングのやせ、剥離、亀裂がある


なお、『自分で点検! ハンドブック』では、これらの点検を1年に1回実施し、不具合や異常を発見した際は、設備メーカーやリフォーム店などの専門事業者へ相談することを推奨している。思わぬ事故を防ぐためにも、ハンドブックを参考に点検してみてはいかがだろうか。

『自分で点検! ハンドブック』では、イラストで給湯機器の各部を説明している少しのネジの緩みでも、部材の落下や人の転落など重大事故につながる可能性がある(画像はイメージ)

住宅設備や部品の交換時期の目安は10年目と20年目

住宅設備や部品は、物である以上寿命がある。特に注意したいのが10年目と20年目だ。同ガイドブックでは、6つのチェック部位の中で、交換時期の目安が10年目の部分と20年目の部分も紹介している。例えばキッチンまわりであればレンジフートは10年目、流し台は20年目が交換の目安だ。この時期になったら各専門事業者へ点検を依頼し、必要があれば交換したい。

住宅設備や部品の交換の目安は10年目と20年目。『自分で点検! ハンドブック』では、それぞれの設備・部品の交換時期の目安も紹介している(出所:一般社団法人リビングアメニティ協会『自分で点検! ハンドブック』)住宅設備や部品の交換の目安は10年目と20年目。『自分で点検! ハンドブック』では、それぞれの設備・部品の交換時期の目安も紹介している(出所:一般社団法人リビングアメニティ協会『自分で点検! ハンドブック』)

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