一年を通して快適に暮らすためには断熱性が重要

住まいの断熱性というと、どうしても冬場の寒さを防ぐため、というイメージが強いかもしれない。寒い季節には、断熱性を高めることで部屋ごとの温度差が減少し、ヒートショックのリスクが軽減する、という話題は、マスコミなどで取り上げられることも多い。しかし、断熱性能は冬場だけでなく、一年中快適に暮らすために重要なポイントだ。

断熱性の高い住まいとすることで、夏場は、室温上昇を抑え熱中症リスクを軽減できる。結露が減り、アレルギーなどの原因となるカビやダニの発生も抑制する。一年を通して、冷暖房の効率が改善すれば、光熱費を抑えることができ、電気やガスの使用量が減ることで、CO2削減につながりSDGsに貢献することもできる。

しかし、新築の場合であればまだしも、既存住宅の断熱化は進んでいないのが現実のようだ。株式会社LIXILの「住まいの断熱に関する意識調査」から住宅の断熱に関してのユーザー意識の現状をみていく。

住まいを断熱化することで一年中快適にすごすことができる住まいを断熱化することで一年中快適にすごすことができる

家の断熱性能への関心がある人は68%

調査によると、地球温暖化対策として効果的(CO2削減量が多いなど)だと思う項目としては、62%の人が「ガソリン車から電気自動車への転換」と答え、「省エネ住宅の購入、もしくは省エネリフォーム」と回答した人は53%だという。

しかし、自身が実践したい地球温暖化対策としては、電気自動車の購入(29%)よりも、断熱性能の高い窓の設置・交換(36%)となっており、住宅への関心が低いわけではないことが読み取れる。

自宅、もしくはこれからの住まいを考えるとき、68%の方が家の断熱性能への関心があると答えているが、現在の自宅の断熱性能については、35%以上は「十分である」「まあまぁ十分だ」と感じ、「あまり十分ではない」「十分ではない」と回答した人は41%。多くの方が住宅の断熱について関心があり、また自宅の断熱性能が十分ではないと感じているようだ。

LIXILコミュニケーションズ&CR部門 ジャパンコミュニケーションズ部の酒井亮介さんは、「少しずつですが、脱炭素に向けた断熱に対するユーザーの関心の高まり、電気料金が上昇する中、断熱によって光熱費を抑えることができるといったことも認知されつつあり、意識の変化に手ごたえを感じています」と話す。

(上)家の断熱性能への関心はありますか  (下)住宅を「断熱」することにより、どのような影響があると考えるか

(上)家の断熱性能への関心はありますか  (下)住宅を「断熱」することにより、どのような影響があると考えるか

80%が断熱リフォームをしたことがない、検討したこともない

断熱性能に関心があるものの、これまでに断熱リフォームを検討、もしくはしたことがあるかどうかの質問には、80%が「これまでに断熱リフォームをしたことがないし検討したこともない」と答えている。さまざまな理由があると考えられるが、要因のひとつとしては、断熱性を高めるためのリフォームとはどういうものか、方法や費用の具体的なイメージがつかみにくい、身近な選択肢ではない、といったことがあるのではないだろうか。

検討はしたが断熱リフォームを実施しなかった理由をみても、「予算が合わなかった」が半数以上の58%、次いで「スケジュールが合わなかった(20%)」、「断熱することによるメリットをあまり感じなかった(17%)」となっている。断熱リフォームの費用の相場、具体的なメリットなどが、まだまだ消費者に伝わっていないこともあるのだろう。

断熱でイメージする家のパーツはどこか、という質問で最も多い回答は「壁(83%)」、次いで「窓(60%)」となっている。しかし、実際、新築またはリフォームする際に重視するのは、「水まわり」や「間取り」、「収納」と答えており、「断熱性能」「窓・玄関ドア」を上回る結果になっていることからも、目に見えない快適さ、メリットに対しての優先順位は低くなってしまうのかもしれない。

部屋ごとの断熱リフォームが可能な「ひとへや断熱」 LIXIL

部屋ごとの断熱リフォームが可能な「ひとへや断熱」 LIXIL

さまざまな断熱リフォーム商品が提案されている

このような状況の中、消費者にとって分かりやすく、また、メリットを感じる断熱リフォームが各メーカーから提案されている。

たとえば、古い窓の上からカバー工法で新しい窓を取り付けるだけの取替窓や既存の窓の内側に取り付ける内窓も増えてきており、断熱性の高い玄関扉も多くみられる。最も熱の出入りが大きい窓や玄関扉といった開口部は外気温の影響を受けやすいため、これらを交換することで快適さが高まる。一日で交換できる商品も提案され、取り入れやすくなっているといえるだろう。

酒井さんも「窓の断熱に対して、ユーザーの関心が高まっているように感じます。今年発売した既存の窓を1日でトリプルガラスの高性能窓へリフォーム可能な取替窓商品『リプラス(高断熱汎用枠)』は、大きく売り上げを伸ばしています」と話す。単板(1枚)ガラスの窓を、高性能なトリプルガラスの窓に取り替えることで、熱流入をおよそ80%も抑えることができ、CO2削減効果も格段にアップするという。

また、ひと部屋ごとに断熱性を高める商品もある。使用する頻度が高い部屋ごとに断熱性をアップするもので、窓・壁・床(天井)を含めて対策を施す。一日で施工ができるなど短工期で可能な商品もみられ、住みながらの工事も可能だろう。

もちろん、住まい全体の断熱性能を高めることも可能だ。新築と同様の断熱性能を確保することもできる。「エネルギーロスが非常に大きい部分である窓を手軽にリフォームすることも重要ですが、一方で、注目していただきたいのが、家一棟まるごと断熱改修可能な『まるごと断熱リフォーム』です。新築同等の断熱性能を実現し、家全体を暖めることにより、部屋ごとの温度差が減り、ヒートショックのリスクも軽減されます」と酒井さん。

現在、地球温暖化対策として国や自治体も断熱リフォームを推進しており、省エネ改修を伴うリフォームなどを対象とした補助金制度(制度によって募集期間や条件が異なる)もある。これらを上手に活用し、地球環境にも配慮しつつ、快適な暮らしを実現するためにも、断熱性能を重視したリフォームを検討してほしい。


【調査概要】LIXIL「住宅に関する調査」
調査方法:インターネット調査 / 調査期間:2021年12月実施
調査地域:全国 / 調査対象:4,841人(各都道府県103人)20~60代男女、既婚

取材協力: LIXIL

公開日: