自然豊かな2つの公園「学びの森」「市民公園」の中間に、"つなぎ役"となる新スポット登場

以前の記事「各務原の公園カフェ【KAKAMIGAHARA STAND】。市民運営で魅力発信拠点に」でも紹介したが、岐阜県各務原市には自然豊かな公園がいくつかある。
中でも「学びの森」と「市民公園」は市を代表する大規模公園。四季を彩る多種多様な樹木が生え、青々とした芝生広場が一面に広がる何とも心地よい憩いの場だ。

2つの公園はJR高山線と名鉄各務原線の線路を挟んだ斜向かいにあって少し離れているのだが、その中間ぐらいの場所に、両公園の"つなぎ役"を担う新施設 KAKAMIGAHARA PARK BRIGE(カカミガハラパークブリッジ)がこのほどオープンした。

緑豊かな2つの公園をつなぐ場所として2021年3月27日に誕生したKAKAMIGAHARA PARK BRIGE(カカミガハラパークブリッジ)緑豊かな2つの公園をつなぐ場所として2021年3月27日に誕生したKAKAMIGAHARA PARK BRIGE(カカミガハラパークブリッジ)

民間のアイデアで都市公園を輝かせる「Park-PFI制度」を活用

飛騨五木株式会社/KAKAMIGAHARA PARK BRIDGEイベントプランナーの鈴木可奈さん飛騨五木株式会社/KAKAMIGAHARA PARK BRIDGEイベントプランナーの鈴木可奈さん

KAKAMIGAHARA PARK BRIDGEは、以前は市営駐車場だった場所に建てられた屋内施設。
「学びの森」「市民公園」の周辺エリアを"緑の中の賑わいある新しいまちの顔"にすべく、各務原市が民間と協働で進める「Park-PFI制度」を活用したプロジェクトがそのはじまりだ。

Park-PFIとは、都市公園における民間の力を活用した整備・管理手法のことで、公園の利用者にとってより快適な空間となるよう、公園内の施設整備から日々の管理まで一体的に行う事業者を公募によって選定する制度。
既に官民連携でさまざまな活動が行われている両公園は多くの人々に親しまれているが、先述の通り線路で分断され、少し離れた場所にあることもあってそれぞれが独立している感じがあった。また、どうしても屋外の公園は天気に左右されやすくもある。
そこで、両公園を単体ではなく一帯で盛り上げて、さらに多くの人が行き交い集えるように・もっと楽しく日常的に使えるように…と、公園エリアを晴雨関係なく利用できる新たな居場所づくりのアイデアを民間から募ることになった。

このプロポーザルで事業者に決まったのは、半世紀以上続く地元工務店を母体とする飛騨五木株式会社。
木と建築のプロフェッショナルが手掛けた施設は、地元産天然木をふんだんに使った木造大空間の2階建てで、入場料が必要なエリアと誰でも自由に利用できるエリアがあり、主に子どもたちのプレイゾーンとなる「遊び創造labo」が大部分を占めている。

取材に訪れたこの日も、"広い木の遊び場"となっている施設内は、元気いっぱいに遊ぶ子どもの姿がたくさん!
ノビノビと走りまわり、楽しそうにはしゃぐ子どもたちの声を聞きながら、KAKAMIGAHARA PARK BRIDGEイベントプランナーの鈴木さんに施設を紹介いただいた。

岐阜県材を多用した木造大空間「遊び創造labo」。遊び方は子ども次第!

足を踏み入れると、床も壁も天井も…木。そして、ふわりと香る清々しい木の匂い。
「木の良い香りがしますね」と口にした筆者に、鈴木さんは「皆さんがそう言ってくださるので嬉しいです!『木が気持ち良いですね』って」と答える。

多用した木材はすべて岐阜県産。外材が使われることも多い木造建築だが、県材にこだわり抜いたそう。
2階の高い天井まで伸びる長い柱は直径30センチほどの太さ。これが一本の丸太で何本も用いられていることにも驚く。
鈴木さんに聞くと、一本そのままを使っているのは柱に限らず梁もで、同施設のために設えたものだとか。通常であれば製材コストも高いであろうこれだけの材木を活用できたり、この大空間を強固なトラス構造で建てる技も、長く木造建築を手掛けてきたグループ力があって実現できたことだろう。

デザインも個性的だが、中でも1階のほとんどを占める「遊び創造labo」の遊具は独特。

スケートボードのハーフパイプを思わす勾配のある坂だったり、波打つようにうねった台だったり、複数の木箱を積み上げたような山やねじれた木の橋みたいな場所…など、"〇〇のような""〇〇みたいな"としか表現できない遊具の数々が大胆に置いてある。

トラス構造の屋根組みも印象的な同施設は、岐阜県産木材をふんだんに使用。子どもたちが抱きついたりもする太い一本柱には裂け目などがあったり、あえて節のある部分もフローリングに使うなど、飾り立てない木の表情にも親しみを感じるトラス構造の屋根組みも印象的な同施設は、岐阜県産木材をふんだんに使用。子どもたちが抱きついたりもする太い一本柱には裂け目などがあったり、あえて節のある部分もフローリングに使うなど、飾り立てない木の表情にも親しみを感じる
トラス構造の屋根組みも印象的な同施設は、岐阜県産木材をふんだんに使用。子どもたちが抱きついたりもする太い一本柱には裂け目などがあったり、あえて節のある部分もフローリングに使うなど、飾り立てない木の表情にも親しみを感じる天然木×ガラスの壁が大空間にさらなる開放感を運んでいる「遊び創造labo」。"遊びを見つける天才"の子どもたちが、名のない遊具を楽しんでいる姿がたくさん見られた

これらの遊具は言い表すことができなくて正解だという。そして、名前も遊び方だって決まっていないのが特徴だ。

「例えば、すべり台は滑る遊具で『下から上らないでね』などの注意書きがあったりしますよね?でも、遊び創造laboの遊具はどれも遊び方は自由。あくまで子どもたちの想像力に任せています。子どもたちが自ら遊び方を見つけて、自然にルールも作っていけるような遊具にこだわりました。『遊びを見つける楽しさ』や『自分の責任で自由に遊ぶ世界』を知ってほしい想いがあります」(鈴木さん)

子どもが柔軟な発想で自由に遊ぶことは、その一方で、ある種の危険性も伴うことになるが、それについて聞くと、「語弊があるといけないですが…」と前置きして鈴木さんはこう話す。

「例えば、木のささくれでトゲが刺さったとしても『木だから仕方ないよね』と、ちょっとしたケガやすり傷などは経験と捉えることもできます。どこまでが安全なのかを子ども自身が判断して遊ぶことも必要だと考えているので、挑戦してできてしまった少しのケガも一つの体験なのかな…と。ただ、大人の想像を超える遊び方もしますし、大きなケガがあってはいけませんので、大前提として、保護者の方には必ず見守りをお願いしています。利用される方には、子どもたちが『危険かどうか』を判断し、考えて回避する経験を積むために大人のサポートは必要不可欠なことをご理解いただいています」(鈴木さん)

トラス構造の屋根組みも印象的な同施設は、岐阜県産木材をふんだんに使用。子どもたちが抱きついたりもする太い一本柱には裂け目などがあったり、あえて節のある部分もフローリングに使うなど、飾り立てない木の表情にも親しみを感じるねじれた木の橋のような遊具の上にはネットを張ったアスレチックのような場所も。このネットも単に張っただけでなく一部を上から吊っていることでハンモックとして使えるようにもなっていた
トラス構造の屋根組みも印象的な同施設は、岐阜県産木材をふんだんに使用。子どもたちが抱きついたりもする太い一本柱には裂け目などがあったり、あえて節のある部分もフローリングに使うなど、飾り立てない木の表情にも親しみを感じる遊具はコルクや人工芝などで安全面に配慮。ハーフパイプのような遊具はなかなかの急勾配!この日は、ダダダッと駆け上げる子が続出していたが、滑ったり転がったりするのがブームになる日もあるという。「日によって"子どもたちのはやり"が異なるのも見ていて面白いですよ!」(鈴木さん)

公園が楽しいのは子どもだけにあらず!大人にとっても心地よい居場所に

キャリーワゴンには、ポップアップテントやテーブル&チェアの他、アウトドアバドミントンや幼児から乗れるスクーターなどをセット。これら一式を借りて「学びの森」「市民公園」で使えるため、手ぶらで出かけられるのが嬉しいキャリーワゴンには、ポップアップテントやテーブル&チェアの他、アウトドアバドミントンや幼児から乗れるスクーターなどをセット。これら一式を借りて「学びの森」「市民公園」で使えるため、手ぶらで出かけられるのが嬉しい

「遊び創造labo」が大部分を占めるため、同施設は子どもや子育てファミリーを対象にしたものと思われがちだが、決してそうではない。利用者の年齢制限はなく、カフェ、ベーカリー、ハンバーガーとクラフトビール専門店の3店も併設していてグルメを楽しめる他、キャンプギアなどのアウトドア用品を扱うコーナーも。2階のテラスなども入場料不要で利用できる。

中でも筆者が惹かれたのは「レンタル遊具」。
「遊び創造labo」利用者は、公園で使える遊具やポップアップテントなどのアウトドア用品が"入場料のみ"でレンタル可能に。時間制限もなく、このレンタル遊具をおともにして、2つの公園で気持ちよく過ごせるというのだから興味深い。

アウトドア用品の総合ブランド・キャプテンスタッグのキャンプ用品などが並ぶショップコーナー。同施設とコラボしたオリジナルのシェラカップなどもあったアウトドア用品の総合ブランド・キャプテンスタッグのキャンプ用品などが並ぶショップコーナー。同施設とコラボしたオリジナルのシェラカップなどもあった

「市民公園内には図書館もありますし、大人だけでも来ていただきたいですね!」と鈴木さん。

「遊び創造labo」の平日の入場料は、2歳までは無料で、3歳~12歳までの子どもが600円。大人も同額だ(55歳~は500円)。つまり、「遊び創造labo」を利用しない大人でも、一日600円でレンタルアイテムを利用でき、自然豊かな公園でキャンプ気分を味わったり、アウトドアのリモートワークをしたり、施設内のお店でランチをテイクアウトしてのんびり過ごすなどができるワケだ。

ちなみに、入店しているカフェなどはすべてが地元のお店で、木材と同じく地域性を大切にしていることも記しておきたい。

「何度来ても楽しめるように、どんどんアップデートしていきます!」

トンネルのような遊具には外から施設内を突き抜ける通路が。靴を脱いで利用する屋内と土足で過ごす屋外、有料部分と無料部分の境目が曖昧になっていることも面白いトンネルのような遊具には外から施設内を突き抜ける通路が。靴を脱いで利用する屋内と土足で過ごす屋外、有料部分と無料部分の境目が曖昧になっていることも面白い

「また来たい!」「いつ来ても新しい発見がある!」「ここでお友達ができちゃった!」「公園って楽しい!!」そんなふうに思える場所になれるようアップデートしたい、リピーターをもっと増やしたい、と鈴木さんは言う。

北側にある「学びの森」は旧岐阜大学農学部跡地を整備して作られた公園のため、拾ってきた葉や木の実などで工作を行うなど、土地の記憶を生かすようなワークショップも、一画に設けた「創造laboスペース」で今後行いたいという。併せて、イベントやレンタル遊具の入れ替えなども状況や利用者の声に応じて進めたいそうだ。

それにしても、木に包まれる感覚の施設内はとても心地いい。滑らかな木肌は素足にやさしい上に、木の香りにも癒される。

「やっぱり木は良いですね。なんか…良いですよね」と言った筆者に、
「そうおっしゃる方が多いんです。その『なんか良い』のが木の魅力なんだと思います」と鈴木さん。

ここで過ごすのが楽しいのは子どもだけでなく、見守り役の保護者が、ずっとここに居たくなる・木を触っていたくなると言っていたり、「木って、なんか良い!」との感想を持つ大人の利用者が実に多いのだとか。

場所と場所・人と人を"つなぐ"想いを、ブリッジという名前に込めたKAKAMIGAHARA PARK BRIDGE。
同施設の誕生は、公園を日常的に楽しむことを提案している各務原市の魅力をより一層高める気がする。

トンネルのような遊具には外から施設内を突き抜ける通路が。靴を脱いで利用する屋内と土足で過ごす屋外、有料部分と無料部分の境目が曖昧になっていることも面白いこの日も「学びの森」には緑の中で過ごす人がたくさん。レンタルアイテムのテントを広げているファミリーの姿もあった。
なお「遊び創造labo」への入場はLINE登録が便利。免責事項や入場許可証の画面表示、遊具レンタルもLINE上で手続きできるのでスムーズだ

■KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE(カカミガハラ パーク ブリッジ)
https://www.kparkbridge.com/

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