トレンドのイエローとグレーで、活力と落ち着きを作りだす
暮らしが一変し、人や外の世界と距離を置いて部屋で過ごす時間が長くなっている。巣籠り時間が長くなると、変化も得にくく気持ちも内向きになりがちである。
これまでとは違う状況に長く置かれると、自分でも気づかないうちにこころや体のバランスが上手く取れなくなってしまったりする。そんなときには、旬なトレンドを空間づくりに取り入れ、巣籠りタイムをエンジョイしてみてはいかがだろう。
トレンドと聞くと、手の届かない流行のように感じるかもしれない。でも実際インテリアでは、今の暮らしが何を必要としているか。どんなことをポイントとして捉えこれからの暮らしやものづくりに活かしていけばよいのかを表す、暮らしの天気予報のようなものとして発信されている。
私たちには今、ストレスに対処して家での暮らしを楽しむ工夫が必要である。直面する続く不安を克服して希望を持って明るく暮らすのにおススメの、おうち時間を楽しむ2021年のトレンドの取り入れ方について、事例をまじえてご紹介しよう。
2021年のパントン・カラー・オブ・ザ・イヤーとして、アルティメット・グレイとイルミネイティングの2色が発表された。アルティメットとは究極のという意味で、その名の通り何にでも合う、使いやすく万能な明るめのグレーである。もう一色のイルミネイティングは光をともすという意味もあり、明るく暖かい太陽の光が差し込むような陽気な赤みのあるイエローだ。この2色は相性も良く、今の私たちの気持ちに寄り添ってくれる頼もしい色である。
グレーはインテリアにとても多く使われている色の一つで、木の家具や建具とのなじみも良く、コンクリートや石といったベーシックな素材の色でもある。そこに生き生きとした輝きを放つイエローで今年らしい旬な色の組合せを取り入れれば、グレーによる安心とこころの落ち着きに、明るく温かい色の勇気づけが加わり、前向きな気持ちをもたらしてくれることであろう。
例えば、シンプルなグレーのテーブルの隣の壁を、イルミネイティングのイエローの壁紙にすれば、室内にたちまち光を感じる明るさがもたらされる。グレーは無彩色で色味がそのまま映り込むが、木製やその他のテーブルとの組合せでも、光の広がりを感じることができるであろう。
目覚めを後押ししてくれる、イエロー
大きな面積でなく、クッションを一つ組合せに加えるだけでも、全体の印象を変化させることができる。
イエローはポジティブな気持ちをもたらし活動を促してくれる色である。いつものグレーやオフホワイトのベッドにイエローのクッションを一つ混ぜれば、楽しげで元気が感じられるベッドづくりができるであろう。
睡眠の導入時を考えると、明るすぎは避けた方がよい。黄色は刺激が強く動的な色なので、寝室にはポイントとして使用するのがよいだろう。一日の終わりにポジティブな気持ちを持ちながら、ペアのグレーで落ち着きをもたらして心を休めるようにして、眠りをサポートしてくれるように使うとよいだろう。
青は黄色の反対色で、イエローとのバランスをとるのに適している。暖かみの感じられるイルミネイティングのイエローには、青みを抑えたターコイズ・ブルーがクールになりすぎず好相性である。ターコイズ・ブルーのラグやランプなどとイルミネイティングを合わせ、ペアのアルティメット・グレイをクッションやベッドヘッドに取り入れれば、きっと楽しい夢が見れて目覚めも良い、日々の活力を補充するのに適した寝室づくりができるであろう。
カーテンの一部に取り入れ、明るさを呼び込む
カーテン全体に色を取り入れるにはちょっと勇気がいる。そんなとき、裾の部分にだけ色を取り入れると、おしゃれで効果的に色を効かせることができる。
部屋を広く見せたい。柄物はうるさくなるのではないか心配だ、などの理由から、ベージュのカーテンが選ばれることがよくある。
ベージュのカーテンは、確かに無難ではあるが、単調になりがちである。カーテンのボトムにイエローでボーダーを入れれば、ステイホームの暮らしに、変化と明るさを呼び込むことができるであろう。
裾にボーダー状に色を入れると横への広がりが出て、また、上部より濃い色を下にもってくることによる安定を出すこともできる。ラグに明るいグレーや淡いブルーを合わせれば、爽やかで明るい、過ごしやすいリビングをつくることができるだろう。
温かみのあるイエローで、ホームオフィスに効率とくつろぎをもたらす
黄色は、集中や判断を高め、記憶力を向上させる効果があると言われている。快活で積極性を促すイエローを面で取り入れ、ホームオフィスを明るく効率の良いスペースにしてはいかがだろう。
会社の事務机を家庭に持ち込むには、無機質で冷たいイメージとなり不向きであろう。イエローの壁紙を貼り、木質系などの机を合わせれば、温かみがあり積極的で快活なホームオフィスを作ることができる。機械的なエアコンの色もイエローにして壁に揃えればより一体感が得られる。植物の緑を加えて、立面に緑、茶色、黄色と連なる色相のコーディネートにすればナチュラルなまとまりも出て、やる気も上がりそうだ。
黄色は有彩色の中でも最も明るさの高い色である。目の疲れを補う意味でも、グレーをラグなどに取り入れ、刺激が強くなりすぎないように工夫をするとよいだろう。また、壁に用いる材質は反射を抑えたマットな質感を選ぶとよい。彩度も強くなりすぎないよう留意し、オレンジに寄りすぎない色味にして、黄色の特徴が活きるようにするとよいだろう。
リメイクで素材の新しい使い方を楽しむ
ステイホームとなり、片づけをした方も多くいたようだ。思い切って不要なものを整理した方も、しまい込んでいた美しい素材に再会した方もいたであろう。街のリフォーム店は、そのようなこともあってか、混んでいるそうだ。
ドイツのフランクフルトで発信されるハイムテキスタイル展の2021/2022のトレンドでは、「新しくないのに、新しい」がテーマとして取り上げられた。サステイナブルな視点は、これから外すことができない。そこで、これまで作られてきた物を利用して、全く新しいものとして生まれ変わらせることが、トレンドとして発信された。
トレンドは、これから起きるであろう人口の動態や気候、新たに出てきた技術や私たちのニーズを反映して、少し先にあるとよいと思われるものやこと、色などを想定して発表されている。今あるものを再利用することで持続可能性を維持し、地球環境に配慮して新しいものを作り出していこうという発想に基づくトレンドである。
コロナ禍により、私たち自身も新たな価値観を持って物事を見直す機会ともなった。私たちは、地球の1.75倍の資源を毎年使っているといわれている。手造りの刺繍や編み物には、ファストメイキングにはない温もりがある。手の込んだ素材やきれいな織物、凝った染色などの素材を見つめ直し、新たな素材として活かしていくこと。世界中で生活の変容を求められる中で、今あるものをいつくしみ、その中から新しい物を見いだす工夫が必要となってきている。
日本の古い布がアジアのものづくりを楽しむ人たちの間で人気だそうだ。家での時間を得たこの機会に、資源を有効利用すべく手持ちの素材を組み合わせ、クリエイティブにカーテンやクッション、壁などをリメイクして、籠り時間の暮らしを楽しんでみてはいかがだろうか。
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