今あるものを交換するだけで見栄えが変わる

代り映えしない部屋を変えるための第一歩としてお勧めしたいのは、今あるものを交換、付け替えること。部屋の中に占める割合が少ない安価な品なら失敗しても落ち込まずに済むし、やり直しも容易。トライ&エラーで感覚が磨けると考えれば前向きになれる。

具体的には家具の取っ手、スイッチプレート、フックやトイレットペーパーホルダーなどが想定される。このうち、オンラインのインテリアショップ「Decor Interior Tokyo」を経営する坂田夏水氏のお勧めはフック。

「家具の取っ手、スイッチプレートも簡単に交換はできますが、そもそもが部屋の中であまり目立つものではないため、インパクトは今ひとつ。交換して部屋が変わった!と思えるのがフック。それ自体が動物、植物などの形で目を惹くものもあり、また、フックに掛けるものでインテリアにインパクトを与える使い方も考えられます」

フックを選ぶ際には下げたいものの重さに耐えられるかどうかをチェック。同時に設置したい壁の強度も事前に確認しておきたい。住宅内には壁の向こう側が空洞になっている箇所があり、そうした場所ではビス式のフックがしっかり設置できないことがある。強度が必要なフックを使いたいなら、壁に下地が入っているかを確認。もし、どうしても空洞部分に設置したいなら石膏ボードアンカーを使うのが賢明だ。

壁の内側の様子を知るためには壁をノックしてみる、下地チェッカーを使うというやり方も。下地チェッカーは1000円台からあり、今後も部屋を変えたい人なら持っていても良い一品だ。また、軽いものを飾るように掛けるためのフックには石膏ボード用のピンが付属しているものもある。こうした細いピン利用なら壁の穴も小さくて済む。

家具の取っ手も簡単に交換できるが、一般的に販売されている取っ手は1本のネジで付けるタイプが多く、手持ちの家具に合うかどうかが問題。スイッチプレートも各種販売されており、プラスチックからスチールやアンティーク風のタイルなどに替えるだけで雰囲気が変わるが、年代によってサイズが違うので事前に交換できるかどうかの確認を忘れないこと。

取っ手やスイッチプレート、フックを変えるだけで部屋の雰囲気は大きく変わる。左上/参考:夏水組Works(シェアハウスcoharu高田馬場)右上/参考:夏水組Works(シェアハウスricca武蔵小金井)取っ手やスイッチプレート、フックを変えるだけで部屋の雰囲気は大きく変わる。左上/参考:夏水組Works(シェアハウスcoharu高田馬場)右上/参考:夏水組Works(シェアハウスricca武蔵小金井)

「貼る」なら家のあちこちで楽しめる

誰にでも簡単にできて見た目が大きく変わる手といえば、インテリア用のマスキングテープ。文房具店で売られている文具としてのモノと違い、50mm、100mmなどと幅があって面の印象を変えやすいことに加え、貼っても跡を残すことなく剥がせるので賃貸でも気軽に使えるのが何よりのメリット。最近はインテリア性の高いさまざまな柄が登場しているので、選ぶのも楽しい。

とはいえ、気になる時にはあらかじめ目立たない場所で試してみてから広い面に貼るようにしても。高温多湿、直射日光が当たる場所では劣化しやすく、ざらざらした面は剥がれることもあるので避けたほうが無難。

貼り方はアイデア次第。検索するとキッチンの面材やタイル、冷蔵庫、ゴミ箱、室内の壁や梁、家具、階段などと使い方はさまざま。壁そのものを変えるやり方から、マスキングテープを額縁に見立てる、そのままでは無味乾燥なカラーボックスに貼ってかっこよくするなどといったやり方も。以前、見せていただいた事例では古いアパート室内の柱など木部に貼り、雰囲気を変えていたのが印象的だった。

また、賃貸で壁紙を変えたい場合には無地のマスキングテープを全面に貼りこんで下地にするというやり方がある。このやり方なら退去時あるいは気分を変えたくなった時には下地ごと剥がせば元の壁に戻る。面が大きくなるとテープを貼るのが大変だが、効果は大きい。
ただし、全面を貼るのはけっこう大変でもあり、一般的には貼って剥がせる糊で輸入壁紙を貼るほうがメジャーとのこと。

キッチン、バスルーム、窓辺とさまざまな場所に「貼る」だけでインテリアが変わる。使用商品:decolfa各種キッチン、バスルーム、窓辺とさまざまな場所に「貼る」だけでインテリアが変わる。使用商品:decolfa各種

水回りには透明のフィルムタイプを

室内だけでなく、バスルームや窓などに貼るという手もある。水回りの濡れる場所に貼る場合には紙製のマスキングテープではなく、水に強い透明のフィルムタイプのテープがお勧めだ。窓だけでなくガラス瓶などに貼っても楽しめる。

一時期、クリスマスの時などに窓ガラスに貼るジェルシールをバスルームに貼るのがはやっていたが、あのタイプは剥がした後でシールの色が残る可能性がある。もし、色が残ってしまったら退去時に原状回復のため、費用を請求される可能性があるのだ。貼りたいなら、剥がせることが分かっている安全なタイプを使おう。シール式では他にもドアに貼る「トイレ」などと書かれたプレートやタオルフックなどにも剥がした跡が残るタイプがあるので注意したい。

窓にも専用のシートが売られている。どうせ貼るなら紫外線をカットするタイプを選べば、インテリアにもお肌にも効果大。目隠し効果も含め、窓は室内でも面が大きいだけに印象が変わるはずだ。

また、最近はインテリアでありながら、収納にもなるステッカーも出ている。ベッドサイドや洗面所脇に貼って使えば、化粧品や小物、眼鏡などを見せながら収納できる。ひとつだけでなく、いくつか並べて使えばそれ自体がアクセントになる。貼ると鏡になる超実用的な商品もお勧めだ。

小物を掛けたり、飾ったり、小物そのものをデコるという手もある。参考商品:decolfa各種小物を掛けたり、飾ったり、小物そのものをデコるという手もある。参考商品:decolfa各種

水性塗料で小物、家具再生なら短時間で可能

もう少し、手をかけた感を味わいたいなら、ペイントを試してみよう。小物、家具類を塗るくらいなら初心者でも楽しめる。ローラーやハケ、養生用のテープ、バケツなど必要な道具類はオンラインショップでセットにして売られているので、まずはそれを手にいれよう。価格はショップにもよるが、2000円前後くらいから。

次はもちろん塗料。安価で、臭いがせず、火気に注意する心配がない水性塗料がお勧めだ。最近では100均でもさまざまな色が揃うようになっている。ここでひとつ、注意したいのはプライマー、つまり下地材が必要かどうか。金属やガラスのように表面がつるつるした素材にはペンキがのりにくいため、下地材が必要だが、木や硬質塩化ビニール、紙、段ボールなどは不要。初めて塗料を使うなら、下地材が不要な品のほうが楽そうである。

塗る前の注意としてはなによりもまず養生。周囲に塗料が飛ばないよう、作業する場所を確保したい。臭いがしないとはいえ、換気を良くした方がよいのでできればバルコニーや庭先、駐車場に場所があればそうした場所でやりたいところ。

最初にお試しでやってみるならちょっと飽きてしまった家具などがよいだろう。トライしやすいのは塗る面積が少なくて済む椅子。脚、座面がともに木製なら全体を塗ってもよいが、座面は摩耗しやすいので敢えて塗らず、脚などの骨組みだけを塗って個性的な椅子にするのも面白い。

座面がファブリックの場合には塗る前に骨組みと座面を分解。座面も張り替えればイメージ一新、新しい品になる。骨組み表面にコーティング塗料が塗ってある場合はプライマーなどの下地塗料を塗る必要があるので、目立たない部分で塗料がのるかどうかを試してからスタートするとよい。

水性塗料は季節によって乾燥時間が異なり、冬は長め。春~秋なら1日で完了させることも可能。塗るときには細かい部分から塗り始め、面積の広い部分は後から一気に塗るとうまくいく。色を鮮やかに出すためには2度塗りがお勧めなので、1日で仕上げたいときには午前中からスタートしよう。

左は家具の塗り替え、右は小物類の塗り替え例。左:夏水組のパリ風手作りインテリア/アイデアBOOK(株式会社KADOKAWA)より左は家具の塗り替え、右は小物類の塗り替え例。左:夏水組のパリ風手作りインテリア/アイデアBOOK(株式会社KADOKAWA)より

塗ることに慣れたら壁面にトライ。塗る前の準備が大切

小さなモノ、部分がうまくいったら、次は壁を塗ってみたいと思う人がいるのではなかろうか。最近では壁紙はもちろん、化粧合板、コンクリートやモルタル、珪藻土、砂壁などさまざまな素材の壁の上から塗れる塗料が出ているので、まずは適切な塗料を探すこと。ただし、同じ砂壁といっても剥がれがある状態そのままではきれいに塗れないなど、現状によって下準備などが変わってくるので、疑問に思ったら販売者に質問してみるのが安心だ。

最初に手を入れるならトイレ、玄関などの小さなスペースがいい。トイレなら手の届きにくい便器の奥の壁ではなく、側面を一面だけにすれば塗りやすく、塗った壁に棚やフックを付ければ空間全体が一変する。もう少し広い空間というなら廊下の突き当たりの壁や対面キッチンとダイニングを隔てるカウンター下の壁面も作業しやすく、印象が変わる。

色選びは床や建具の色、家具の色と調和する色を意識。初心者なら空間になじみやすいグレイッシュな色を選ぶと失敗が少ない。

塗る前の注意は2つ。まずは事前に壁面の掃除をしておくこと。ビニールクロスの上に水性塗料を塗る場合でも壁面がきれいになっているかどうかで出来は変わってくる。もうひとつは養生。特に室内を塗る場合には塗る部分と塗らない部分の境目にマスキングテープなどを貼っておくことが成功への早道。事前準備が成否を分けるのである。

壁面を黒板塗料で変身!『セルフリノベーションの教科書「塗る・貼る・つける・飾る」でちょっと内装に手を入れるだけ」(誠文堂新光社。現場提供:大林新星和不動産プラネスーペリア松戸秋山)壁面を黒板塗料で変身!『セルフリノベーションの教科書「塗る・貼る・つける・飾る」でちょっと内装に手を入れるだけ」(誠文堂新光社。現場提供:大林新星和不動産プラネスーペリア松戸秋山)

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