飾り瓦や鬼瓦を見ながら約5㎞の道のりを歩く【鬼みち】

「名鉄三河線・高浜港駅前→ニコニコ鬼広場→鬼パーク→土管の坂→浜地蔵→かわら美術館→森前公園→観音寺→塩前寺→恩任寺→蓮乗院→道祖神→馬頭観音→大山緑地→春日神社→瓦の庭「海」→三河高浜駅」というコース中には、鬼瓦を台座にしたこのような案内板が設置されている「名鉄三河線・高浜港駅前→ニコニコ鬼広場→鬼パーク→土管の坂→浜地蔵→かわら美術館→森前公園→観音寺→塩前寺→恩任寺→蓮乗院→道祖神→馬頭観音→大山緑地→春日神社→瓦の庭「海」→三河高浜駅」というコース中には、鬼瓦を台座にしたこのような案内板が設置されている

三州瓦の中心的な産地である愛知県高浜市。
同市には日本で唯一の瓦をテーマにした美術館『高浜市やきものの里かわら美術館』があり、前回は美術・芸術品としての観点から瓦についてご紹介をした。
三州瓦の産地・愛知県高浜市で、瓦への想いを訊く②~かわら美術館~

そんな『高浜市やきものの里かわら美術館』をはじめ、市内には、瓦のオブジェや窯業が栄えた跡を物語る瓦窯三態など、“瓦のまちならではの見どころ”がたくさんある。そして、それらを気軽に・自由に巡る散策コース【三州高浜 鬼みち】が整えられている。
名鉄三河線「高浜港」駅をスタート地点に、ゴールの「三河高浜」駅まで15カ所のポイントを巡りながら全長約5kmを2時間半ほどかけて歩くという【鬼みち】は、平成8年から国のウォーキング・トレイル事業(当時の建設省が進めた“歩いて楽しい道づくり”を目指すもの)で整備をされたもので、道中はカラー舗装がされ、電柱も茶色に塗装されているので、そこが【鬼みち】であることがすぐに分かるようになっている。「新日本歩く道紀行100選ふるさとの道」「美しい日本の歩きたくなるみち500選」にも選ばれたというのも納得である。
そのウォーキングコースは、鬼みち案内パンフレットを片手に散策できる(パンフレットは高浜市観光案内所オニハウスなどで入手、または高浜市観光協会HPからダウンロード可能)。
自由気ままに巡るのも良いが、より深く鬼みちについて知りたいのなら、地元の方が高浜や瓦について説明しながら一緒に歩いてくれるのだという。それを担うのが『三州高浜 鬼みち案内人の会』の方達だ。

先人の技が光る伝統的な鬼瓦・飾り瓦や、現代の鬼師による新感覚の鬼瓦…
古くから窯業が盛んな街の歴史と今、窯の変遷などにも触れられる散策道

鬼みちのパンフレットでも表紙を飾るのが、高浜港駅前の「ニコニコ鬼広場」にある巨大鬼面。</br>奈良・東大寺転害門の鬼瓦を模したというシンボリックなオブジェだ。</br>ここには、“未来の鬼師”と期待がかかる小学生たちの手によるいぶし瓦焼きの鬼面モニュメントも出迎えてくれる鬼みちのパンフレットでも表紙を飾るのが、高浜港駅前の「ニコニコ鬼広場」にある巨大鬼面。
奈良・東大寺転害門の鬼瓦を模したというシンボリックなオブジェだ。
ここには、“未来の鬼師”と期待がかかる小学生たちの手によるいぶし瓦焼きの鬼面モニュメントも出迎えてくれる

60代~80代のボランテイアガイドが瓦のまちを案内
『三州高浜 鬼みち案内人の会』

三州高浜鬼みち案内人の会・代表の石川知子さん(右)と、一番のベテランでいらっしゃる川角久子さん。60代半ばの“鬼みちのお母さん”が語る瓦に関する今昔話は興味深く、とてもあたたかな気持ちにさせてくれた</br>(高浜の鬼師が昭和34年に制作した、高さ8mの陶管焼観音像がある観音寺にて)三州高浜鬼みち案内人の会・代表の石川知子さん(右)と、一番のベテランでいらっしゃる川角久子さん。60代半ばの“鬼みちのお母さん”が語る瓦に関する今昔話は興味深く、とてもあたたかな気持ちにさせてくれた
(高浜の鬼師が昭和34年に制作した、高さ8mの陶管焼観音像がある観音寺にて)

『三州高浜鬼みち案内人の会』は60代~80代のメンバー10名ほどの地元ボランティアガイドの会で、平成11年にスタート。案内希望日の10日前までに予約をすれば2~15名につき1人の案内人がガイドに付いてくれるそうだが、道中では案内人の方からどんな話を聞けるのだろうか?また、どんな想いで案内人を請けていらっしゃるのだろうか?それを伺うべく、代表の石川さんと一番ベテランの川角さんお二人にお会いした。

「昔はね、窯の煙突がたくさん立っていてモクモク煙が出ていて・・・外に洗濯物を干すとみんな黒くなっちゃったの。『瓦を焼くすすで雀まで黒くなる』って言われるぐらいだったからねぇ」
「大正時代のだるま窯が市内に残ってるけど、達磨さんが座禅を組んでいる姿に似ているからだるま窯って言われるんだよ」
「高浜は瓦だけじゃなくて土管や陶管の像もたくさん作ってきたの。だからホントは『瓦のまち』じゃなくて『やきもののまち』。かわら美術館だって“やきものの里”って名前に付いているでしょう?」

そんな、永くこの街と生きてきた地元の人だからこそ知っている話を聞かせてもらいながら筆者も【鬼みち】を歩いてみた。
瓦のある風景を眺めながら、案内人のお二人が教えてくれた三州瓦や街の話が興味深かったのはもちろんのこと、「あの鬼瓦はね・・・」「高浜はね・・・」「私が子どもの頃はね・・・」と、まるで自分の子や孫に話して聞かせるように様々なことを伝えてくれるのがとても心地よかった。
その人の経験であり心を口伝えに聞くからこその歴史の重みであったり、温もりも感じられるのだろうか。案内人というよりも、伝え継ぐ『語りべ』、そんな感を強く抱いた。

今昔を知る地元の人だからこそ!のガイドが好評。
しかし、平成27年度をもって幕を閉じることに・・・

かわら美術館北にある 「サロン赤窯」 には、高浜市指定有形民族文化財「塩焼瓦窯」(通称:赤窯)があり、煉瓦造の佇まいが『瓦のまち・高浜』の趣きを漂わせているかわら美術館北にある 「サロン赤窯」 には、高浜市指定有形民族文化財「塩焼瓦窯」(通称:赤窯)があり、煉瓦造の佇まいが『瓦のまち・高浜』の趣きを漂わせている

案内人として同行した後に、参加者から

「瓦って地震に弱いと思っていたけど違ったんですね!」「瓦の新しい魅力を発見できました!」
そんな感想をもらい、“瓦の見方”を変えてもらえるのが嬉しい、と話すお二人。

【鬼みち】ルート内には住宅地も含まれている。住人の方に迷惑がかからないよう案内をする中、一般家庭の瓦屋根や鬼瓦に注目して立ち止まることも多い。飾り瓦のある庭を花木で美しく魅せてくれるなど、見られることを意識した景観づくりに努める市民の方もいるのが有難い、とも。

「瓦を正しく評価して欲しい」
「地元・高浜の力になりたい」

この2つの強い想いで今日まで案内人を続けてきたそうだが、設立から17年、案内人全員が高齢者となった。約5kmの道のりを、マイクも使わず説明をしながら同行するのは体力的にも大変である。また、活動支援寄付金(直近ではガイド1回につき1,000円)の協力を呼びかけるも、手弁当で務めるのは経済的な負担もある。それらの事情から、残念ながら平成28年3月31日をもって案内を終了する運びとなった。歴史を伝える語りべを、どう繋いでいくか? これは他でも少なくない問題だろう。
日本の街並みを作ってきた瓦屋根は日本の風景の原点。
「瓦のある建物ってイイな~って心に響くでしょう?」
「このまま瓦が減ってしまうなんて寂しいでしょう?」

と、話してくれた語りべのお二人からは、“瓦のよさを継承していきたい”という想いが伝わってきた。伝統・文化・歴史・技の継承を応援する人を、今後どのようにサポートしていくのか、また、『語りべの継承』を考えることも、魅力ある街づくりの大事な一要素なのだろうと改めて感じた。

■高浜市観光協会
http://kankou-takahama.gr.jp/

2016年 04月16日 11時00分