リノベーション初心者であるユーザーとオーナー
リノベーションやDIYは、住まい選びをするユーザーに、そして所有する賃貸物件の資産価値を高めたいと考えるオーナーに、浸透してきている。
しかし初心者がリノベーションを検討したとき、メディアなどの情報以外に実際に見たり・触れたりして、その良さを実感したり、どんなものかを具体的にイメージできる機会はまだまだ少ないだろう。ユーザーはもちろん、入居者のニーズに受け入れられるよう物件をリノベーションする必要がある賃貸オーナーにも同じ事が言えるはずだ。
初心者向けのリノベーションスクールなどの取り組みをこれまでHOME’S PRESSでもご紹介してきたが、今回は少し違った切り口で、「オフィス」を利用してユーザー、オーナーにリノベーションに触れる機会を与える取り組みを紹介したい。
東京、大阪、名古屋に拠点を置き、賃貸物件に特化したリノベーションを提供するハプティック株式会社。通常、オーナーへのリノベーションの設計提案や施工を主とし、その後の入居者募集は仲介会社が行うというのが一般的な賃貸リノベーションの流れであるが、自社で仲介部門を持ち、入居者募集までをワンストップで行うのが同社の特長の一つだ。
今回の取り組みとは、「社員によるオフィスリノベ」。移転を機に自社の新オフィスに社員の手でリノベーションを施したものだが、この取組はユーザーやオーナーにとってどのような意義があるのだろうか?2014年1月に行われた、新オフィス発表会に参加してきた。
社員だけでなく、ユーザーも巻き込んでオフィスをつくる
渋谷駅からほど近くのビルのワンフロア約330m2が、ハプティック株式会社の新オフィスだ。このスペースに、同社の大工部を中心とした社員が関わってリノベーションを実施した。
まず特筆すべきは、同社のリノベーションに共通して使用される無垢の床材が全面に使われていること。これを一つひとつ張る作業は大工部以外の社員が多く加わったという。
オフィスは執務スペースの他、広い打合せスペース、ショールーム、大工部の工房、提携インテリアショップの家具を体験できるスペースで構成されている。
ショールームは、所有物件のリノベーションをハプティックに依頼しようとしているオーナーと、ハプティックのリノベーション物件を検討しているユーザーに、完成した部屋をイメージしてもらうために設けたという。打合せに来た顧客が、ここでイメージを膨らませながら話ができるのは便利だろう。
工房では、実際に木材を扱った作業の様子を来社した顧客が見学するといったこともできそうだ。
実はこのオフィスリノベーション、社員だけでなくユーザーも巻き込んで行われている。DIYに興味のあるユーザーを招き、壁を塗ったり簡単な棚を取り付けるイベントを行ったのだ。
こうした、社員とユーザーで一緒になって行う自社のリノベーション。珍しい事のように感じて聞いてみたところ意外な答えが返ってきた。ハプティックでは、これまでのオフィスでも同様にリノベーションを行ってきたという。
リノベーションをすることで素材を触り、提供価値を改めて実感する
オフィスを社員の手でリノベーションする目的について、ハプティック株式会社代表取締役の小倉弘之氏はこう説明してくれた。
「来社したお客様に、無垢材を始めとしたハプティックのリノベーションの特長を体感していただけるメリットがあります。また、社員がリノベーションに携わることで、素材を触り、さらにその中で過ごすことで自分たちが提供するものの良さを実感して、お客様にわかりやすく納得感のある提案をできると考えています」
普段、工事に直接携わらない社員も含めて作業を体験するということは、物件を提供するだけでは感じることのできない、手を加える楽しさやそこで過ごす心地良さを実感することができる。オフィスリノベーションを通して、社員が共通の意識と愛着を持ってサービスを提供することを目的としているということだろう。
また、リノベーション例をショールームで見せたり、ユーザーを巻き込んだDIY体験イベントの実施を通して、初心者のユーザーやオーナーが抱える「どういうものかわからない」「見たい/体験したいけど機会がない」といったニーズも解決する。
この取組みは、言わば「社員による、顧客のためのオフィスリノベーション」と言って良いかもしれない。
「オフィス」というと無機質な空間を連想してしまうが、実際に訪問したハプティックの新オフィスでは、無垢材のあたたかみのある雰囲気がとても印象的だった。ここを訪れる顧客は、これから選ぼうとする住まい、あるいは生まれ変わった所有物件の雰囲気をイメージしながらワクワクして打合せに臨めそうだと感じた。
リノベーションとの「出会いの場」
自社のオフィスを利用して、リノベーションに触れる“機会を提供する”ハプティック。その志は実際のサービスにも表れており、リノベーション済物件だけでなく施工前に入居候補者がリノベーションのコンセプトを選べるプランも用意しており、工事の状況などによって、入居者とオーナーが塗装などの工程に参加することもできるそうだ。
それを体験した入居者は、発表会でのトークセッションで「工事前の古い状態から物件を見てきて、さらに実際に工事に携わることができて、物件に愛着が湧きました。築年数は古いので、コンセントやエアコンの位置など少し不便を感じる箇所はありますが、それも含めて自分の部屋が愛おしいと感じます」と話す。
ユーザーやオーナーという顧客にリノベーションを体感してもらうことは、その魅力を知ってもらうきっかけになる。そして、自分で住まいに手を加えるということは、住まいへの強い愛着につながるようだ。
リノベーションという流れの中、ハプティックの場合は社員とユーザーのリノベーションによって、オフィスがその「機会」を提供する場所となっている。今後、多くのユーザーやオーナーとリノベーションとの出会いの場となりそうだ。
公開日:





