世界一の長寿国日本。超高齢社会に求められるのは・・・
WHO(世界保健機関)が発表した2014年版「世界保健統計」によると、日本人の平均寿命は女性が世界最長の87歳、男性は80歳で世界8位。
今や男女共に平均寿命80歳を超え、世界一の長寿国となっている要因には、高水準の医療・介護制度の確立も大きく影響しているだろう。
厚生労働省の調査では、65歳以上の高齢者数は2025年に3,657万人、2042年には3,878万人とピークを迎えると予測しており、我が国は今後さらに超高齢社会を進んでいくことになる。
そこで懸念されるのは、医療機関や介護保険施設などの受け入れにも限界が生じること。
ましてや、住み慣れた家や街で必要な医療・介護サービスを受けながら“安心して自分らしく生活できる老後”を過ごしたいと望む声が多い中、在宅医療や在宅介護へのニーズは高まる一方だ。
介護事業や医薬品販売を展開する会社が在宅介護をソフト面でサポートする技術を開発
先回【介護される人もする人も快適なこれからの「終の棲家」】と題して在宅介護対応住宅をご紹介したが、やはり在宅で心身穏やかに過ごすために欠かせないのは、そのための住環境づくり。
それにはハードだけでなくソフト面での技術も必要!と開発されたシステムがある。
愛知県岡崎市に本社を置く株式会社ナンブが開発した、自宅に設置した端末やスマートフォンで介護拠点とつないでインターネットで在宅介護を24時間見守る『スマートホームケア』だ。
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどの介護施設も運営する同社では、『スマートホームケア』を6年前から自社展開している。
利用者の安心を守るためには居室と管理室を結ぶ“通信機器の設置”が不可欠と考え、介護施設の各居室には24時間入居者を見守るカメラを導入するだけでなく、固定電話とタッチパネルが一体化した電話機型の“見守り端末機”を設置。入居者は画面をタッチするだけの簡単操作で、緊急コールをはじめ、入居者の健康チェックや体調データの記録、食事・デイサービスなどの予約、施設からのメッセージや地域のイベント情報受信などのサービスを受けられる。
介護施設では6年前から導入済み。在宅対応のため「スマホ」に注目!
利用者の安心や利便性を高め、利用データの記録も行える画期的なシステムだが、大前提となるのは「インターネットが繋がること」。
自社施設やネット環境が整った家庭ではスムーズにシステムを導入できるものの、ネットを使えない家庭も特に年配者では少なくない。
加えて、高齢者が入居できる施設に限りがある中、ユーザーや検討者から「訪問看護・訪問介護を、“住み慣れた自宅”で安心して施設並みのサービスを受けたい!」というニーズの高まりも。
そこで改善策として、見守り端末機を設置しなくてもシステムが利用できるようにアンドロイド端末をカスタマイズした携帯型端末を開発。
持ち歩きも可能なスマホ型と、従来の据え置き型の2タイプの端末で施設・在宅を見守れることになったのだとか。
同社商品開発室の丸山さんの話では、「今後はアプリの開発も考えている」とのこと。
GPSによる位置情報の確認もしかり、スマートフォンだから可能となる機能も増えそうだ。
利用者へ毎日メール送信し、返信の有無で安否確認返信がない・調子が悪そう…そんな時はスタッフが急行
端末機を通じて介護拠点(コールセンター)と常に繋がっている同システムだが、端末を利用できるユーザーは「定期巡回随時対応型訪問看護介護」のサービスを受けている方達。
拠点施設からは今日の体調や健康状態を尋ねるメールが毎日届き、それは安否確認も兼ねているため、返信がない場合や体調が心配な時はスタッフが駆けつけてくれるので安心感がある。
なお、ケアプラン上では定期に巡回訪問することになっているため、その時間をオペレータが確認し、各々の身体状況に応じて個別判断をしているそうだ。
また、それらの端末利用状況や生活リズムの管理などを利用者本人だけでなく家族もインターネットサーバーを通じて確認できることもメリットの一つ。離れていても情報共有ができることは、特に独居の利用者やその家族にとって心強いことだろう。
『地域で見守る介護』のためにひいては、商店街や行政と連携した“町おこし”にも活用を
さらに興味深いのが、「地域との絆づくり」にも一役買う展開を試みていること。
岡崎市商工会議所と連携をし、各商店・企業のサービスを宅配などで利用者に提供することで地域の活性化にも繋げたい考えだ。
例えば、クリーニング店の宅配、電気店の照明取替えや家電品の修理、マッサージ店や理髪店の出張・・・など、利用者が端末のタッチパネルから頼んだサービスを地域密着の商店や職人さんに提供してもらうもの。双方の喜びが重なる上に、それは利用者との交流や様子確認にもなって一石二鳥で地域・人との絆が深まるのではないだろうか。
「今はそのモデル作りをしているところですが、今後はさらに協力店も増やし、商店街の活性化にも繋げたいと考えています。
行政や医療機関との連携も深めながら、地域のさまざまサービスを通して“地域の皆でお年寄りや介護が必要な方を見守る体制”が作れたら良いですね」(丸山さん)
余談になるが、同社介護施設の場合、入居者の男女比は男性25%・女性75%。
特に男性の在宅介護希望者が多いことがうかがえるが、男女に限らず超高齢社会において在宅介護は大テーマ。
住み慣れた我が家に施設のような安心感---それは在宅介護のハードルを少し下げてくれそうな気がする。
最後に、今回注目した“介護コミュニケーションシステム”は、「定期巡回随時対応型訪問看護介護」を受けている方達に、同社が用意した機種限定のスマホを、サービス利用料金に含まれた形で貸し出している。このように介護保険内で利用できることも付け加えておきたい。
■スマートホームケア http://www.nambu-y.jp/smarthomecare/
取材協力/株式会社ナンブ
http://www.nambu-y.jp/
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