リノベーション企業の社員が語ってくれた「こだわり」

リノベーション業界に特化した転職フェアを取材したレポート記事の2回目。前回に引き続き、「業界で働く人材」に焦点をあてながらリノベーションの今を考えてみたい。今回はリノベーション転職フェアに参加した企業で働く社員のリアルな声や、求められる人材像をレポートする。

前回記事でも記述しているが、転職フェアはアートアンドクラフト、インテリックスグループ、秀建、NENGO、ブルースタジオ、ベツダイ、無垢スタイル建築設計、リノべる、リビタの9社が参加して行なわれた。転職フェアのプログラムの中心は、参加企業の社員によるプレゼンテーションとトークセッション。各企業で活躍する30代から40代前半の社員がこの仕事に就いた経緯、仕事へのこだわり、やりがいなどをざっくばらんに語ってくれた。リノベーション業界の仕事の中身はほとんど知られていないこともあり、熱心にメモをとる来場者も少なくなかった。

仕事へのこだわりでは、「お客様の10年後、20年後の暮らし方を見据えた提案を心がけている」、「お客様が求めている通りにやっても100点にならない。建築デザイン系も営業職も常にプラスアルファの”サプライズ“が必要」など、それぞれの思いが語られた。中古住宅に新しい価値を加えるという、リノベーションの仕事の魅力を伝えるメッセージでもあると感じた。印象的だったのは、「中古マンションの一室をリノベーションするときは、階下や階上に住む人からの工事中のクレームをいかに少なくするかにこだわる。完成後、お客様が住民の方に受け入れてもらえて、住みやすい環境にするためにも必要」とのコメント。他の業界同様、リノベーション業界の仕事にもその業界特有の苦労があるのだなと思ったが、その一方で前向きに頑張っていける人が集まる業界なんだろうなという印象を受けた。

参加企業9社の社員によるプレゼンテーションとトークセッションは、前半4社、後半5社の2部構成で実施された参加企業9社の社員によるプレゼンテーションとトークセッションは、前半4社、後半5社の2部構成で実施された

深く広い専門知識があってこそ、顧客の求めるリノベーションができる

HOME‘S総研所長・島原万丈氏による進行で行なわれたトークセッションHOME‘S総研所長・島原万丈氏による進行で行なわれたトークセッション

トークセッションでは仕事でつらいことも語られ、こんなエピソードも明かされた。それは「この仕事で一番つらいのは、社内で一緒に頑張ってきた仲間が辞めていくとき」というもの。

辞める理由は人それぞれだろうし、ひと言ではくくれないものなのだが、理由のひとつとしてトークセッションの場で語られたのは、身につけたノウハウを糧に独立開業するケースが多いということだった。言い方を変えれば、リノベーション業界の仕事は独立開業志向の強い人にとっては、独立開業できるだけのノウハウを蓄積していける仕事といえる。

そもそもが中古住宅を扱う仕事であるため、新築とはまた違ったノウハウや、多岐にわたる専門知識が必要とされる。どのくらいの専門知識が求められるのかは、自分が中古住宅を買ってリノベーションをする立場になって考えてみるとよくわかる。まず物件探しがある。そして、そこに住めるものなのかどうか、電気配線や給水管などの検査が必要だし、物件購入となればいろいろな複雑な手続きが発生する。また、自分がどんな住まいにしたいのか考えてみたり、住宅ローン借り入れなど資金計画の問題もある。設計・施工はどの会社に依頼するのかも重要な問題だ。やることはいろいろある。

こんな具合に消費者がリノベーション住宅を手に入れるには、クリアすべきハードルがたくさんあるわけだ。だからこそリノベーション業界で働く人には、消費者をサポートし、クォリティーの高い住まいを提供するために、深く広い知識が求められることになる。

会場に居合わせた業界関係者がこんな話をしてくれた。
「この業界の特徴かもしれませんが、どの職種もお客様と接する機会が多いんです。リノベーションという言葉が浸透してきたとはいえ、まだまだ何をするものなのかよく知られていません。ですから、リノベーション企業では、お客様に理解を深めてもらう目的でセミナーや相談会を頻繁に行なっているんです。中古住宅購入にあたっての注意点やリノベーションでどんなことができるのかなど、事例を用いて解説するわけです。設計など建築デザイン系の仕事で働く人もセミナーや相談会でお客様と接するので、相手のニーズをヒアリングするコミュニケーションスキルやコンサルティング力はもちろん、不動産やマーケティングの知識をもつ必要があります。また、営業職であっても建築や不動産などの専門知識がなければつとまりません」

女性が長く働ける業界。育児経験など女性の視点が活かされる

このように日々勉強が必要な業界であるうえ、顧客からのクレーム対応など苦労もあるようなのだが、それだけに仕事のやりがいは大きい。トークセッションの場でも、「自分が考えたものが形になり、すぐに売れたときの充実感は格別」「お客様をサポートする仕組みづくりにかかわれて、生みの苦しみはあったけど達成感があった」「自分の提案をお客様に納得していただくまで試行錯誤を重ねたけれど、完成したときに“あなたに頼んでよかった。ありがとう”と言ってもらえたときはうれしかった」など、印象に残るエピソードも交えて語られた。

筆者にとって新鮮な発見だったのは、女性が活躍できる業界であること。建築・不動産業界というと男性中心の職場のイメージが強いのだが、多くのリノベーション企業では女性の活躍チャンスがあり、25歳で営業マネージャーに登用された事例もあるそうだ。時短勤務などの制度をもつ企業もあり、出産後も多くの女性が育児と両立して働き続けているという。トークセッションでも、子ども2人を出産して復職したという女性社員が登場していた。

女性ならではの感性や、育児などの経験が、リノベーション住宅という、大量生産ではないオンリーワンの住まいを提供するうえで活かされていると知り、頼もしさを感じた。

トークセッション終了後は参加企業社員と転職フェア入場者との交流タイムが設けられた。ソフトドリンクやビールを飲みながらのリラックスした雰囲気ながらも、転職希望者と参加企業の採用担当者が真剣に話し込む光景も見られた。採用担当者のなかには「採用につながりそうな手応えがあった」と筆者に話してくれた人もいたり、「ほしい人材とは出会えなかったけど、ふだん話す機会のない同業他社の人と情報交換ができて楽しかった」とポジティブな感想を語ってくれた人もいた。

「この業界、ポジティブな人が多いんですよ。飲み会でも愚痴や不平不満を言う人はほとんどいません。 “こんなこと、やったら面白い!”とか“こんなリノベをやってみたい!”とか、仕事の話題で盛り上がるんです。未知のことでも楽しみながら挑戦していける人に向く業界だと思います」と、HOME‘S総研所長の島原万丈氏は話してくれた。

今回の転職フェアの取材でわかった「求められるスキルや資質」をもつ人材が増えていくことを期待したい。そうして安全で質の高いリノベーション住宅が増えることは、私たち消費者が自分の理想とする住宅と出会える可能性が広がっていくことにもつながると思う。

交流会の様子。参加企業の社員も来場した転職希望者も、みなカジュアルな服装だったのが印象的交流会の様子。参加企業の社員も来場した転職希望者も、みなカジュアルな服装だったのが印象的

2014年 07月28日 13時29分