新築住宅のメリット1:税制優遇

比較すると、確かに新築には大きな税制メリットがあるように見える比較すると、確かに新築には大きな税制メリットがあるように見える

前回の投稿では、新築住宅という言葉の定義に立ち戻って、住宅系メディアの定番記事「新築vs中古」に対する問題提議を行った。

軽くおさらいをすると、「新築vs中古」の対比で語りうる新築住宅のメリットとは、建築物としての性能や機能ではないこと、同様に住み心地や暮らしやすさでもないことを述べた。その上で、中古では得られない新築住宅のメリットや価値とは、1つ目は購入時の諸制度上のメリットであること、2つ目は「他の誰も使ったことがない」という未入居の価値の話であることまで確認した。

今回は、その2つのメリットの正味のところを考えてみたい。
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住宅を購入する際、新築住宅を選ぶ制度上のメリットには、大きく2つのものがある。
1つは購入時の税制優遇が大きいことである。

住宅を購入する際の諸経費の中には、様々な税金が含まれていることはご存知だろう。住宅は国民の生活基盤であるので、住宅購入の際にかかる税金については様々な優遇税制が設けられていて、ここで新築住宅は中古よりも手厚い優遇措置を設けられている。
詳しくはインターネット等で調べていただくとして、新築と中古で違いがある項目だけ列挙すると、新築には以下の様な優遇がある。

● 固定資産税(固定資産評価額×1.4%)の軽減
新築:戸建ては3年、マンションは5年、建物分の固定資産税が半額
中古:軽減措置はなし

● 登録免許税の軽減 
新築:建物分の固定資産評価額×0.15%
中古:建物分の固定資産評価額×0.3%

● 不動産取得税の軽減
新築:建物分の課税標準額(固定資産評価額)から1200万円が控除
中古:築年数によって控除額が減額される

※ただし、以上の中古に対する優遇はすべて築20年以内(マンションなど耐火建築物は築25年以内)、もしくは新耐震基準に適合することを証明できる建物に限られる。耐震性能が確保されていることが証明できない場合は各種の優遇が受けられない。
*参考:住宅を購入・所有した場合の税制優遇制度

このように比べると、確かに新築には大きな税制メリットがあるように見える。
「新築vs中古」でメディアが書くのはここまでである。しかし、実際の購入場面においては、新耐震基準に適合する中古物件に限っての話だが、必ずしも新築よりも多くの税金がかかるとは限らない。

税制優遇の対象となっている新築の固定資産税評価額は、建物分の評価額である。土地の固定資産税については新築も中古も変わりがない。中古建物の固定資産税評価額は、再建築価格(同一の建物をその場所に新築する場合に必要とされる建築費*)を、建築後の年数の経過によって補正して決められる。築年数による補正率は、例えば築20年で、木造なら0.26、非木造なら0.504と築年数の経過によって大きくなり、評価額が減額するので、実際に必要な税額は税率の開きほどは大きくならないのである。
※東京では、木造一戸建て8.6万円/㎡、SRCマンション15.4万円/㎡が基準
参考「東京法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」

ここで注意しておきたいのは、耐用年数という言葉だ。「新築vs中古」の記事の中には、あたかも建築物として何年使えるかを示した数値のような書き方も散見されるが、それは大きな間違いである。
(法定)耐用年数とは、本来、所得税や法人税における減価償却費の算定に恣意性を排除するために定められた年数のことである。もちろん耐用年数が来たらその住宅の建築物としての寿命が尽きるわけではない。最近の研究によれば、住宅の寿命は木造住宅でも60年超という結果も出ているが、これはあくまで新築年次別の現存棟数と除却棟数をもとにした平均値の推計なので、建築工学的な寿命を表すものではない。実際の建物の使用可能年数は、メンテナンスとリフォーム次第でそれ以上に延ばせるのである。

新築住宅のメリット2:瑕疵担保責任の権利

住宅を購入する際に新築住宅を選ぶもう1つの制度上のメリットは、販売した事業者が10年間の瑕疵担保責任を義務付けられていることである。
2000年に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき、新築住宅の売主は住宅の主要構造部分の瑕疵について10年間の瑕疵担保責任を負うこととされ、耐震偽装問題を契機に出来た住宅瑕疵担保履行法(2008年施行)によって、瑕疵担保責任を履行するための資力確保として、供託金拠出か保険加入のどちらかが義務付けがされている。

一方、個人間売買で取引される中古住宅では、現況有姿と言って売主の瑕疵担保責任が免責になる契約が取引の半数近くを占める。免責でない場合でも、売主の責任は引き渡しから3ヶ月程度に限定されることが多い。最近普及してきた中古住宅の瑕疵保険も保証期間が2〜5年と新築に比べると短い。

このように、購入後の瑕疵に対するリスクヘッジという点では、新築住宅には中古住宅では及ばない長期間の安心というメリットがある。

ただし、新築住宅ならトラブルの何でもかんでもが10年間保証されるわけではない。瑕疵担保責任の対象となるのは、基礎や柱・壁・屋根などの基本的な骨格部分や雨水の侵入・給排水管などに限定されるので、実際のトラブルに多い内装の仕上げ不良などは販売会社の対応になる。
また、10年間の瑕疵担保責任を履行するために、戸あたり2000万円の供託金を用意するか、戸あたり5〜8万円程度で瑕疵保険に加入するかが新築住宅の販売会社に義務付けられているので、そのコストは当然販売価格に転嫁されていることは知っておかなければいけない。

瑕疵担保責任の対象となる範囲瑕疵担保責任の対象となる範囲

新築住宅のメリット3:未入居であることの価値

売却中の築100年を超えるアメリカの中古住宅。何度もリフォームされて美しく住まれているので、築年数の古さがむしろ魅力になっている売却中の築100年を超えるアメリカの中古住宅。何度もリフォームされて美しく住まれているので、築年数の古さがむしろ魅力になっている

多くの人が「新築」であることにこだわる理由は、実は建築物としての新しさというよりも、他人が使ったことがない真っさらな空間にある。

以前私が実施した調査によれば、中古と新築を両方検討した上で新築を選んだ住宅購入者が中古を選ばなかった大きな要因は、長年他人が暮らしていた中古住宅の美観に対するネガティブな評価だった。特にバスルームやトイレなど水回りの劣化に対する生理的な拒否感は強い。

確かに、日本の中古住宅は汚い。これは、住宅市場の7〜9割を中古が占める欧米先進国の中古住宅と日本の中古住宅を見比べた経験を踏まえた、私の確信である。

家を買うというと通常は中古を買うことを意味する欧米では、住宅は持ち主によって何度もリフォームされ、また平時からペンキの塗り直しやタイルの補修などのメンテナンスもされ、美観も機能も良好な状態に保たれていることが多い。

それに対して日本では、建設時はピカピカの新築住宅も、10年、20年の間に一度もリフォームされることなく、建設当時の間取りや仕様のまま汚れてくたびれた状態になっている。汚れがつきにくい・傷がつきにくいという消費者ニーズに応えたフェイクのフロア材やビニールクロスは使い込まれて味わいが出ることもなく、ただみすぼらしく老朽化し、キッチンやバスルームなどの水回りの設備機器は、故障して不具合が出るまでリフォームされることはない。
我慢強くモノを大事にすると言えば美徳ではあるが、見ず知らずの他人が長い年月使って、汚れやカビがこびりついたお風呂では、残念ながら住宅市場での魅力はない。

なので、消費者が、すべてが新品の新築住宅に惹かれる気持ちは、十分理解出来る。私だってそんな家に住むのは遠慮したい。しかし、それを理由に中古住宅を選択肢から外してしまうことは、拙速というものである。
第1回目の投稿でも書いたように、中古住宅の内装・設備はすべてまっさらに交換・更新が出来るのである。

参考:
住宅を購入・所有した場合の税制優遇制度 http://www.homes.co.jp/article/money/money_005/
東京法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表 http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/static/ninnteikijyunnhyou.pdf

2013年 11月28日 10時00分