不動産情報の紹介が全てではない

不動産仲介会社は本当に必要と言えるのだろうか?不動産仲介会社は本当に必要と言えるのだろうか?

「売主さんが直接ネットに不動産の情報をあげられるようになったら、買主である私はそれに直接アクセスすればいいですよね。そう考えると不動産仲介会社さんって本当に必要なのでしょうか?」
コンサルティング中にある消費者の方からこのような質問を頂いた。

お話をよく聞いてみると、どうも「不動産仲介会社」=「不動産情報の紹介」という認識らしく、不動産情報さえあればあとはいらないと考えている様子。
「不動産の仲介会社は、単に不動産の情報を紹介するだけではなく、安全な取引を行うためには不可欠な存在ですよ」とこの図式を否定するコメントしつつも、全くの的外れではないために、核心に触れられたようで少し動揺をしてしまった。

事実、不動産仲介会社は物件情報の紹介にかける時間が多く、契約から後は添え物として簡略に扱ってしまう会社も多いから、このように思われても致し方がない面がある。かくいう私も営業マン時代には「買主が興味をもつ手頃な価格の良い物件」を紹介するために探し、業務の大半の時間を費やしてきた。物件紹介が仕事というような感じだった。この消費者の方と同じような感想を持たれる人は多いと思う。

SNSをはじめ誰もが発信者となる機会が豊富にある時代では、物件情報の入手経路は不動産仲介会社だけに限らなくなっている。「不動産情報の紹介」という役割だけでは、不動産仲介会社の行く末にあまり光明が見えなくなりつつあるのではないだろうか。

不動産仲介会社の役割とは

不動産仲介会社の役割とは、不動産という商品の本質や商品価値を分かり易く、勘違いさせずに売主と買主に伝えることだと思う。言い換えれば、取引後に「えっーこんなはずではなかったのに…」とならないように、不動産における「目に見えないもの」「見ても分からないもの」「気付かないもの」を把握して伝えることだ。何故なら、この3つが当事者たちに不測の不利益を被らせる可能性があるからだ。

この役割を誰も担わなかった場合の1例としてあげられるのが、先日ニュースとなった京都府福知山の浸水履歴のケースだ。知らない方もいると思うので概要を書いておく。
―――京都府福知山市の戸田地区は過去に何度も由良川の氾濫による被害にあっている。そのような浸水履歴があったのに、市は自ら造成と販売をした住宅地の購入者に対して、契約時に浸水履歴を明示していなかったようだ。それが、今年(平成25年)9月の台風18号でこの住宅地の大半が床上浸水被害を受けたことで問題となった。市には宅地建物取引業法(宅建業法)の適用されないため、明示義務そのものはないものの、購入した住民からは「説明不足」という声が上がっているとのことだ。―――

「義務がないから説明しない」では、不動産取引を囲む現在の厳しい消費者保護の観点ではなかなか理解を得るのは難しい。
私たち民間では、不動産取引の際における浸水履歴の明示は「必要なさそう」でも、明示しておくことが一般的だ。ましてや、過去に浸水があったならば説明は不可欠だ。決して私たち不動産に係る者が明示の有無を取捨選択できない。

不動産仲介会社は進化している

不動産仲介会社の存在は、不動産の売買にとってなくてはならないサービスになる可能性がある不動産仲介会社の存在は、不動産の売買にとってなくてはならないサービスになる可能性がある

例をあげてみる。つい先日、川沿いに立地するマンションの10階居室の売買契約を締結した。このマンションが建つエリア一帯は約60年前に浸水した履歴があるが、これを「今回の売買対象は10階の居室なので浸水することはないから浸水履歴の説明は飛ばそうかな」と勝手にこちらで判断したら大変なことなる。この契約でも実際に説明をして見ると「エントランスの出入りや駐車場に置く車に関係すること」なので真剣に聞いて頂けた。「豪雨になるときは、車が水で駄目にならないように実家にでも置くかな」と仰っていた。こちらが浸水履歴の説明をしなかったらこのような対策を考えなかったかもしれない。関係がある情報かそうでないかは売買当事者が判断することだ。

先ほどのニュースでも、説明の有無について購入者の反応がこう書かれている。「購入時に浸水履歴を聞いていれば建て方を工夫できたのに」浸水対策をせず家を建てた夫婦の声だ。

不動産情報の紹介だけが仕事ではない。「目に見えないもの」「見ても分からないもの」「気付かないもの」これをどう伝えるのかが不動産仲介会社の役割だ。

また、このような動きも出てきている。不動産仲介会社の幾つかが、物件情報だけでは優位性を確保できなくなりつつある現状を認識し、物件取引の部分で差別化を図ろうと、取引そのものに付加価値をつけ出してきた。建物の瑕疵に対する補修責任の保証、リフォームまで含めたプランニングなどである。こういったサービスは今後、ますます多種多彩になるかもしれない。消費者にとってはどれも有益なサービスであり、自分自身でやろうとしてもなかなかできないものが多い。

それだけに今後、不動産の売買にとってなくてはならないサービスになる可能性があり、不動産仲介会社は売買には不可欠な存在になるかもしれない。

不動産仲介会社は不動産情報の紹介だけではない。不動産の売買にとって必要な存在である。今後ますますその重要性が高まるはずである。

2013年 11月15日 13時09分