すべての人が自分らしく理想の住まいを描ける社会へ
2026年5月、LIFULL HOME'S主催の同性カップル向け住まい探しイベント「LGBTQのためのマイホーム相談会 -FRIENDLY DOOR FES-」が開催された。当日は多くの当事者カップルや単身者が来場。カミングアウトの負担なく“ありのまま”で住まいに関する悩みや将来の夢を専門家に相談できる場となり、盛況のうちに幕を閉じた。
このイベントへの出展企業の一つ「大和ハウス工業株式会社」は、新築や中古の一戸建て住宅・分譲マンションの住宅販売に関する総合的なソリューションを展開する企業だ。
今回は、イベントに参加した大和ハウス工業の社員のうち3名、人事部と住宅部門メンバーが集まり、イベントの振り返りや、同社が大切にするダイバーシティの理念、住まいづくりの本質について語り合った座談会の内容をお届けする。
【関連リンク】LIFULL HOME'S「LGBTQのためのマイホーム相談会-FRIENDLY DOOR FES-」で見つけた、同性カップルのこれからの住まい探しのヒント
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_02002/
【座談会参加者プロフィール】
黒木 均氏(写真右): 大和ハウス工業人事部 Well-being推進グループ所属。全社的なダイバーシティ推進を担当。
伊井 一氏(写真中央): 大和ハウス工業 ハウジングソリューション本部 事業統括部 事業戦略部 マーケティング室所属。一戸建て住宅領域の営業支援・営業DX、セミナー講師、市場調査、商品ブランディングなどを行う。
安田直矢氏(写真左): 大和ハウス工業 人事部 Well-being推進グループ所属。ダイバーシティ推進に関する施策の企画・運営を担当。
マイホーム相談会に出展して——現場で実感した「熱量」と「心理的ハードル」
――まずは、今回のイベントに参加されての率直なご感想や、現場での気づきからお聞かせいただけますか?
黒木氏:普段、接客をしない部署のため、お客さまの熱量を強く感じました。一方で、ブースでお客さまと直接お話しする中で印象的だったのは、ご本人が何度もカミングアウトをしなければいけないという心理的ハードルです。「どう思われるだろう」「当事者と関わった経験がある担当者だろうか」といった不安を感じながらお越しになっている姿を見て、私たちに求められる本当の「配慮」とは何なのかを深く考えさせられました。
伊井氏:私がご相談をお受けした方は、「どこに相談すればいいかわからない」と本当に困っていて意を決して相談に来られたのだとひしひしと感じました。だからこそ、お客さまが「私たちの想いをちゃんと理解してくれるのか」を丁寧に確認されている感覚がありました。社会的に非常に求められているイベントだと実感しましたし、こうした機会をもっと広げて不安を解消していく必要があると思いました。
安田氏:パートナーと一緒に今後の人生や暮らしの理想を楽しそうに話されている姿もすごく印象的でした。「これからどんな暮らしを実現したいか」という想いは、住まいづくりを考えるうえで大切なものだと改めて感じました。
––2日間開催されましたが、黒木さん、安田さん以外のメンバーは両日異なる顔ぶれだったとか。
黒木氏:面白かったのが、違うメンバーにもかかわらず、両日ともに控室で「突き詰めると一人ひとりをどれだけ尊重して向き合えるかだよね」と同じ結論に至っていたのです。その話題で休憩中もおおいに盛り上がりました。
伊井氏:私は2日目の参加でしたが、ご来場いただいた方々に詳しくお話を伺うと、資金計画や一戸建て住宅・マンションといった住まい方の選択など、多岐にわたるご相談をいただきました。お話を伺う中でそれぞれの想いや将来の暮らしに向き合いながら住まいづくりを考えていらっしゃることが印象的で、お客さまのお話に丁寧に耳を傾けることの大切さを改めて実感しました。
安田氏:そうなんですよね。ブースでは「家を買いたい」という目的はもちろん、「安心して相談できるコミュニティや場所を求めて来た」というお声も多く耳にしました。抱える不安に本質的な違いがないからこそ、「安心して相談できる場があるんだ」と知っていただけたこと自体に、大きな意味があったと感じています。
黒木氏:そういえば個別対応の際、私自身も「カップルで来られたからペアローンだろう」と無意識に決めつけて話を聞いてしまいそうになった瞬間がありました。思い込みを手放し、一人ひとりの選択に耳を傾ける重要性を改めて学びましたね。
ダイバーシティ推進の真価は「目の前の顧客のニーズを超える」こと
――属性にとらわれず、相手への尊重と丁寧さを持って接することに想いが一致するのは素晴らしいですね。こうした考えに至るのには、普段の接客姿勢や社内教育も影響しているのでしょう。
伊井氏:住宅営業の本質は「お客さまの課題解決」です。当社では、月1回のロールプレイング研修を実施しています。これは単純に商品説明だけにとどまらず、お客さまの意見を否定せず受け止めたうえで、最適なゴールへ導くトレーニングを重ねています。「LGBTQ+だから特別扱いする」のではなく、誰に対しても人として丁寧に向き合う姿勢が徹底されていれば、どんなお客さまにも安心して相談していただけるはずです。
――特別扱いではなく徹底した傾聴だと。具体的にはどういったことをされているのでしょうか。
伊井氏:お客さまがどんなことに興味があり、どんな不安を抱えておられるのかを丁寧にお伺いしながら、ご要望や考えを整理し、お客さまそれぞれに最適なご提案につなげていきます。今回お話を伺う中でも、「実はパートナー間で希望が食い違っている」「実家がマンションだったため一戸建て住宅に抵抗がある」といったお悩みが見えてきました。そうした考えやご要望を整理するお手伝いをしました。
――そうした姿勢に加え、大和ハウス工業は一戸建て住宅・マンション・中古住宅と、住宅販売において事業が幅広い点も、強みになっているのではないでしょうか。
伊井氏:確かに、当社はグループ全体で幅広くご提案の選択肢を持っています。お客さまのライフスタイルに合わせた最適な住まい方をご提案できるのは特色かもしれません。ただ、それ以上に大事なのは、繰り返しになりますが、お客さまのご要望をいかに棚卸しするか。そして、そうして出てきた情報を整理する力です。目の前のお客さまにとって最適なものを一緒になって探す、そのセンスを磨く必要があると思っています。
「世の中の役に立つからやる」徹底的なヒアリングと伴走を支える企業風土
――売り込みではなく、徹底したヒアリングは、一見営業販売には遠回りのように思えます。
伊井氏:少子高齢化によって、住宅の着工戸数は年々減少傾向にあります。私たちは一戸建て住宅やマンション等、幅広いご提案ができるからこそ、お客さまの真のニーズをしっかり聞くことができると考えています。「今売らなきゃ」という焦りを手放してより良い提案をできるところが、いいところかなと思います。そこには、創業者の「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」という理念が大きいのかもしれません。
黒木氏:社内の目の付くところに、創業者精神が貼ってあります。人事部としては、マニュアルやeラーニングを義務付けるだけでなく、役職・年齢関係なくフラットに意見を交わす「対面・オンラインのディスカッションイベント」を実施していて、そこでも「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」は、社員の日常の判断基準になっています。プロジェクト立ち上げ時も「世の中のためになるか」が自然と議論される。部署の垣根を越えて「良いことはすぐやる」ざっくばらんな風土も強みだと考えます。
安田氏:加えて、人事部の発信では「誰かを傷つけないか」という共感性と想像力を大切にしています。新卒もキャリアも関係なく互いを尊重する風土が、誠実な顧客対応の基盤になっているなと感じていますね。部署やセクションの垣根がなく、誰かが「世の中のためにやろう」と手を挙げれば、全社で応援し実現できるように感じます。
――そういえば、黒木さんと伊井さんは今回のイベントが初顔合わせだったそうですね。
黒木氏:東京と大阪と拠点が異なるうえ、業務も違うのでなかなか接点がなくて。今度うちの社内セミナーに登壇してくださいよ。
伊井氏:いいですね、ぜひ!
理想の住まいを描くお客さまの真の理解者になるために
――今回のイベントを経て改めて、人事・営業のそれぞれのジャンルでの今後のダイバーシティの在り方について聞かせてください。
黒木氏:もちろん課題があるにはあります。たとえば、女性社員は圧倒的に数が少ないうえ、ライフイベントによって仕事かそれ以外かの選択をよりシビアに迫られやすい、といったこともあります。とはいえ、社員の真面目さや創業者精神を脈々と受け継いで実現させてきた意志は変わってほしくない点です。また、当社の社員は「知る」きっかけさえあれば柔軟に吸収できる。女性のキャリア形成の困難さやLGBTQ当事者の直面する苦労など、多様な事情を前提として受け止められる寛容さを全社に広げていきたいですね。私たちのダイバーシティの取り組みも、絶えることなく、太くやっていこうかなと思っているところです。
安田氏:社内研修だと「人事主導の専門用語の解説」に見られがちで、ケーススタディも現場にしっくりこないと言われる課題がありました。単なる勉強ではなく「日々の接客やビジネスにどう直結し、役に立つのか」を実感してもらえるよう、現場のリアリティに寄り添った浸透活動をこれからも人事として続けていきたいですね。
伊井氏:そうですね、営業担当者が「情報を正しく知る」機会を増やしたいです。LGBTQに関する理解は、お客さま一人ひとりに寄り添った対応を行ううえで欠かせないものだと思います。ビジネスという観点から見ても、適切な言葉遣いや配慮を学ぶことは、より安心して相談いただける環境づくりにつながります。創業者の想いである「儲かるからではなく、世の中の役に立つからやる」。これは私たちのスピリットです。お客さまの真の理解者になれるよう、気軽に相談できる環境をつくっていきたいですね。
■大和ハウス工業株式会社
https://www.daiwahouse.co.jp/
※ LGBTQ=セクシュアルマイノリティの総称の一つ。L(レズビアン:女性同性愛者)・G(ゲイ:男性同性愛者)・B(バイセクシュアル:両性愛者)・T(トランスジェンダー:体の性と心の性が一致しない人)・Q(クエスチョニング:性自認や性的指向が定まっていない人、その他のセクシュアルマイノリティ)を表す。本記事では、あらゆるセクシュアルマイノリティの方が含まれる総称を「LGBTQ」とし、便宜上表記を統一している。
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