東京エコビルダーズアワード2025が開催
2025年3月4日。半袖でも過ごせるような暖かい日が来たと思えば、翌日には雪が降るというような、日ごとの寒暖差の激しい季節となっている。外の気温は上下すれども、せめて家の中では快適な室温で過ごしたいと考える人も多いかもしれない。そんな季節の変わり目に、東京都主催で「東京エコビルダーズアワード」が開催された。
東京エコビルダーズアワードは、住宅や建築物の環境性能を高めるための取り組みを表彰するものだ。「建築物環境報告書制度」の2025年度の開始にあたって、事業者の取り組みを後押しする。建築物環境報告制度については後述する。
審査員を務めたのは以下の3名。
委員長:伊香賀俊治氏(慶應義塾大学名誉教授、一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター理事長)
委員:池本洋一氏(株式会社リクルートSUUMO編集長・SUUMOリサーチセンター長)
委員:寺尾信子氏(株式会社寺尾三上建築事務所代表取締役)
受賞は、報告書で定める基準を制度開始前に先行して達成している事業者に贈られる「ハイスタンダード賞 断熱・省エネ性能部門」が28社、「ハイスタンダード賞 再エネ設備設置量部門」が20社、より先進的な取り組みをしている事業者に贈られる「リーディングカンパニー賞 断熱・省エネ性能部門」が9社、「リーディングカンパニー賞 再エネ設備設置量部門」が10社となった。
表彰式では、リーディングカンパニー賞を受賞した15社による取り組みの説明と、アンガールズ・田中さんをゲストに審査員による「知って役立つ!おウチの燃費と快適性」というテーマでのパネルディスカッションが行われた。
省エネ住宅の基準や東京都独自の制度とは
本題に入る前に、省エネ・高性能住宅について簡単におさらいをしたい。
まず、省エネ基準として国が定める「省エネ基準適合住宅」がある。これは2025年4月から、すべての新築住宅に義務付けられる基準となる。クリアしなければならない基準は、断熱等性能等級4以上かつ、一次エネルギー消費量等級4以上だ。
断熱性能等級とは、壁や窓などの外皮を通じた住宅の熱の逃げやすさを示す値である「UA値」と日射熱取得率を示す「ηA値」によって、地域ごとに定められる基準値を考慮した性能のレベルを表すもの。一次エネルギー消費量等級は、設計時に予想されるエネルギー消費量を、標準的な性能の住宅のエネルギー消費量で割った「BEI」に基づいて割り出される、エネルギー効率性能のレベルを表すものだ。どちらも低いほうがよい。
省エネ基準適合住宅よりもさらに高い基準として「ZEH住宅」がある。ZEHとは、Net Zero Energy Houseのことで、省エネ化と再生可能エネルギーの活用により、年間の一次エネルギーの消費量をゼロとする住宅基準だ。2030年の4月からすべての新築住宅に義務化される予定だ。
ほかにも、ZEHと同等の基準かつ耐震や劣化対策などの項目を追加した「長期優良住宅」や、断熱等性能等級6以上などZEHよりもさらに基準の高いGX型住宅など、さまざまな種類がある。
東京エコビルダーズアワード主催の東京都では、環境配慮型の住宅を普及させるために独自の基準の助成制度を設けている。東京都は、2050年までに世界のCO₂排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現のため、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)する「カーボンハーフ」を表明し、取組を加速させているが、その施策のうちのひとつにあるのが「東京ゼロエミ住宅」だ。
東京ゼロエミ住宅は、都独自の断熱・省エネ等の基準に適合する新築住宅に助成するというもので、3段階の基準のうち最高位の水準Aでは、ZEHやGX型住宅よりもさらに高い断熱・省エネ性能を求めている。
このように住宅の省エネ化を進める東京都が2025年度から開始するのが、本イベントの開催背景にもある「建築物環境報告制度」だ。建築物環境報告制度とは、延べ面積2,000m2未満の中小規模の新築建築物を、都内において年間に述べ面積の合計で20,000m2以上建設等する建物供給事業者に以下を求めるものだ。
①断熱・省エネ性能の確保
②太陽光発電設備等の設置
③電気自動車充電設備等の設置
④施主や購入者等に対して新築建物の環境性能を説明
⑤基準への適合状況等を記載した建築物環境報告書を都に提出
このように住宅性能の向上に対する取り組みがますます進められるなか、住宅を建てる際の事業者選びが重要になってくる。今回の東京エコビルダーズアワードを参考に、事業者選びをするのもひとつの手だろう。
省エネ住宅の普及に先進的な事業者が選出ーリーディングカンパニー賞
環境性能の高い住宅の普及に向けて先進的な取り組みを実施している事業者に贈られる「リーディングカンパニー賞」を受賞したのは以下の事業者だ。
●断熱・省エネ性能部門
・株式会社一条工務店(江東区)
・岡庭建設株式会社(西東京市)
・株式会社スウェーデンハウス(世田谷区)
・セイズ株式会社(葛飾区)
・株式会社創建(町田市)
・有限会社豊泉工務店(武蔵村山市)
・パナソニック・ホームズ株式会社(大阪府豊中市)
・ミサワホーム株式会社(新宿区)
・明友建設株式会社(練馬区)
●再エネ設備設置量部門
・株式会社アイケーホーム(世田谷区)
・旭化成ホームズ株式会社(千代田区)
・株式会社一条工務店(江東区)
・セイズ株式会社(葛飾区)
・積水ハウス株式会社(大阪市)
・株式会社創建(町田市)
・三井不動産レジデンシャル株式会社(中央区)
・明友建設株式会社(練馬区)
・株式会社八幡(青梅市)
・ヤマト住建株式会社(神戸市)
受賞者発表のなかでも特に印象的だった事業者をいくつか紹介したい。
まずは、断熱・省エネ部門受賞のスウェーデンハウス。断熱だけでなく、日射対策も行うスウェーデンハウスは、窓に設置する日よけ「オーニング」などを用いて室内を快適な温度に保つ。断熱性能等級が6と7の間であるスウェーデンハウスは、現在北海道に断熱性能以外は同じ条件の住宅を建て、等級6と等級7の違いを実証しているという。たしかに、ある程度の性能のそれ以上の違いはどうなのか、消費者としても気になるところではないだろうか。
同じく断熱・省エネ部門で受賞した岡庭建設。使用する材にも環境配慮をし、国産や地域の木材を使った「木ノベーション」や、部分的に断熱性能を高める「ぶぶだん」といった技術を、大工を社員とすることで、育成・継承まで見据えた取り組みを展開している。人手不足といわれる建設業界において、技術を継承していく仕組みを整えることも重要である。
再エネ設備設置量部門からは、旭化成ホームズと積水ハウスの取り組みを紹介しよう。
旭化成ホームズでは、賃貸・一戸建ての太陽光発電の設置された住居のオーナーから余剰分の再生可能エネルギーを自社の電力事業「ヘーベル電気」で買い取り、自社の事業で活用することでRE100を達成。提供住戸だけでなく、つくるプロセスにおいても環境配慮をしている。
※RE100=企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ(環境省より)
一方積水ハウスでは、賃貸物件での太陽光発電を、オーナーではなくそれぞれの入居者住戸へ接続する「入居者売電タイプ」とすることで、入居者のメリットを訴求する仕組みをとっている。入居者へのメリットを訴求することで、安定的な賃貸経営が期待できる。
断熱性能を高めるポイントは「窓」
「知って役立つ?おうちの燃費と快適性」と題したパネルディスカッションでは、アンガールズの田中さんをゲストに、消費者が気になる高性能住宅のポイントを審査員の3名がわかりやすく解説した。
まずは寺尾さんより、どのような家の性能が高いのか、説明があった。
断熱において、外壁や窓などの「外皮」から熱の出入りを防ぐことが肝となる。これを「外皮性能」というが、外皮のなかでも住宅の熱の出入りが多いのは窓だという。住宅から放出される熱のうち、夏は73%が、冬は58%が、窓による放熱となっている。
つまり、窓の性能を高めることが、断熱等性能等級において重要であるといえる。日本で流通しているサッシとガラスを組み合わせると、かなりのバリエーションとなるのが印象的だった。サッシには、断熱性能の低いものから、アルミサッシ、アルミ樹脂複合サッシ、樹脂サッシ、高性能木製気密サッシがあり、ペアガラスには複層ガラスやトリプルガラスをはじめ、耐熱強化複層ガラスにダブルLOW-Eガラスなどかなり多くの種類がある。
ここで田中さんから「ガラスは元から値段が高いといわれているから、よい窓はもっと高いんじゃないか?」という質問があった。寺尾さんの試算によると、断熱性能等級4から5に上げるのに約70万円、等級5から6に上げるのに約60万円、等級6から7まで上げるのに約320万円追加で費用がかかってくる例もあるという。特に等級6から7の上り幅を見ると、先に紹介した、断熱性能等級6と7を比較するというスウェーデンハウスの取り組みの意義をひしひしと感じる。
しかし、設置への初期費用がかかる一方で、断熱効果による日々の光熱費の減少も期待できる。どのくらいの期間で相殺できるのだろうか。池本さんから解説があった。
コスト面はどうなる? 初期費用と光熱費減額分をシミュレーション
例えば、断熱性能等級4・太陽光発電なし・省エネ性能は国基準の住宅と、東京ゼロエミ住宅水準Cである、断熱性能等級5・4kWの太陽光発電設置・省エネ性能は国基準の30%減の住宅を比較すると、30年間で324万円の節約になるという試算が出された。
この試算には、月々の光熱費減額分のみならず、各種補助金制度等も活用した結果である。
印象的だった発言が、「いつまでも、あると思うな補助金」という言葉。
現在は、国や東京都も、まだ普及が足りていないから数々の助成金を出しているが、高性能住宅が当たり前になってしまえば、こうした助成制度は少なくなってくることが見込まれる。早めに対策をしたほうが、助成金の活用という点でも、光熱費減少の恩恵の大きさという点でもよいだろう。
また、賃貸経営においても、住宅性能の高さがより重要になってくるという。ある調査では、昔は実家よりも賃貸物件のほうが断熱性能がよいと答える人が多かったが、近年、一戸建ての住宅性能のスタンダードが高まってきたことにより、今住んでいる賃貸物件よりも、実家のほうが断熱性能がよかったと答える人が増えてきているのだ。一戸建ての住宅性能向上に、賃貸物件も引き上げられていくだろう。住宅性能が入退去を決める大きな材料となっていくと考えられるとのことだ。
居心地や光熱費・電気代だけでなく、健康にも影響を及ぼす住宅環境
高い性能の住宅環境を整えることは、居心地のよさや経済面でのメリットだけでなく、健康にも大きく影響する。伊香賀さんから解説があった。
適切な室温の目安として、WHOは冬場の室温18度以上に保つことを望ましいとしている。
心筋梗塞や脳卒中、肺炎などの病気は、家の中の寒さによっても引き起こされるという。また、家庭内事故死も増え続けており、浴槽の溺死数は、交通事故の2倍にもなっているのだそう。こうしたリスクを低減できるという意味でも、断熱対策は重要である。
ほかにも、18度以上の室温を保つと、
・脂質異常症発症率が3割に
・夜間頻尿症の発症率は4割に
・家の中での転倒率が、足元の温度が18度以上で4割に
・女性のPMS患者が、足元が18度以上だと患者数7割に
というデータが出ているそうだ。
選択肢の広がりで、高性能住宅選びも楽しく
受賞事業者の発表を受けて、池本さんは東京都について、「住宅の高性能化について、東京都はチャレンジの宝庫だと思います。地価が高く、建築コストも安くないという特性はあるものの、購入者のパイの多さや知見の高さは東京都ならではの特長だと思いました。高性能住宅の価値やメリットを理解してもらえれば、多少高くても適正な価格で受け入れてもらえるのではないでしょうか。加えて東京ゼロエミの補助金も受けられます。材の地産地消や光熱コストの合理化、子育て配慮など、今日発表した受賞事業者のなかでもさまざまな選択肢が用意されていたので、東京都での家づくりは楽しいと思います」と語った。
高い性能を持った住宅の選択肢が広がりつつあるからこそ、自分に合った性能等級や補助金、事業者を選ぶことができるようになってきている。消費者として、どういう住宅を、どの事業者から選ぶのか、選択にあたってよく考えていきたい。
公開日:
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