北大阪急行電鉄南北線延伸線が、2024年3月23日に開業

「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」の各指標に基づいて算出される「住みよさランキング」で、大阪府の自治体では大阪市に次ぐ2位という箕面市(※)。箕面の滝に代表されるように、鮮やかな山並みに恵まれた豊かな住宅都市だ。そんな箕面市の魅力をさらに高めるであろう都市計画が、現在急ピッチで進行中だ。「北大阪急行線延伸事業」は、北大阪急行電鉄南北線を千里中央駅から北へ約2.5キロメートル延伸し、2つの新駅「箕面船場阪大前駅」と「箕面萱野駅」が新設される。2014年3月に大阪府、阪急電鉄、北大阪急行電鉄、箕面市の4者により基本協定が締結され、同年12月から工事に着手している。

※参照:「都市データパック2023年版」発行:東洋経済新報社

北大阪急行線 延伸事業概要より北大阪急行線 延伸事業概要より

開業は2024年3月23日。総事業費は874億円。北大阪エリア全体の活性化、大阪全体の鉄道ネットワークの形成など、広域的な効果を生む事業として期待が高まっている。ここでは、新駅周辺で進められるまちづくりを中心に紹介したい。

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北大阪急行線 延伸事業概要より箕面市役所 地域創造部 北急まちづくり推進室 室長 黒田達人氏(左)、箕面市役所 地域創造部 鉄道延伸室 室長 山下瞬氏(右)
北大阪急行線 延伸事業概要より北大阪急行電鉄南北線延伸線の路線図 (北大阪急行線延伸事業パンフレット「北摂くらす」より)

バス路線の再編成で、東西の移動がスムーズに

箕面市内を走るバス路線は、主に駅と駅、住宅街と駅を結ぶ。これまで交通空白地域だったエリアに、延伸によって誕生する新駅を中心としたバスルートが再編されることで、住民にとっては、箕面市内の東西移動がしやすくなる。

「箕面市は市街地が東西に細長いにもかかわらず、鉄道が西部地域にしかなく、東西方面の移動が不便でした。そのため、自動車依存度が近隣市に比べて1.5倍。今後は、鉄道とバスの路線網が充実することで、高齢者も子どもも市内移動がより便利になります。自動車依存度も下がるでしょう」と箕面市役所 地域創造部 鉄道延伸室 室長 山下瞬氏は話す。

「箕面市立地適正化計画」の平成28年2月版・概要より「箕面市立地適正化計画」の平成28年2月版・概要より

そもそも2016年から施行されている「箕面市立地適正化計画」により、箕面市は「ネットワーク・インナー・コンパクトシティ」を目指している。立地適正化計画を策定したのは箕面市が全国で初めてで、コンパクトなまちづくりと公共交通によるネットワークの連携を進めるものだ。

「コンパクトシティとは、住まい・交通・公共サービス・商業施設などの生活機能をコンパクトに集約して効率化したものを指します。箕面市に限らず、他の市も抱えている問題に人口減少があります。医療施設や教育施設、福祉施設を1ヶ所に集めながら、電車やバスなどの公共交通機関をネットワークでつなげることで、街をコンパクトにし、住みやすく暮らしやすいまちになることが期待できます」と山下氏。

2つの新駅「箕面船場阪大前駅」と「箕面萱野駅」でのまちづくり

延伸事業によって誕生する、新駅周辺のまちづくりも始まっている。船場東地区に誕生する新駅「箕面船場阪大前駅」と、かやの中央地区(箕面新都心)に誕生する新駅「箕面萱野駅」にはそれぞれ特徴がある。

箕面船場阪大前駅周辺の船場東地区では、大阪大学箕面キャンパスと図書館と劇場、生涯学習センターなどが一体化した複合公共施設が、2021年春に誕生。劇場(箕面市立文化芸術劇場)の客席数は大ホール1401席を誇る。今後このエリアに、箕面市立病院の移転や健康寿命の延伸拠点となる箕面船場阪大・ヘルスケア総合センター(仮称)のほか、民間事業者による高層マンションが建設されるなど、都市機能の進化が続いていく。

「このエリアには、繊維卸業が集まっている地区があります。大阪市内の船場地区から、約50年前に移転してきた方々が、50ヘクタールほどの場所で繊維卸業を営んでいます。社会情勢の変化もあり、新駅の開業を踏まえた、中長期的な目線での新たなまちづくりを検討されています」と黒田氏。

箕面船場阪大前駅イメージ(画像提供:箕面市)箕面船場阪大前駅イメージ(画像提供:箕面市)
箕面船場阪大前駅イメージ(画像提供:箕面市)奥に見えるのが、道路をまたいで東西をつなぐ歩行者デッキ(撮影日:2023年9月19日)

また箕面萱野駅周辺は、商業集積地区のひとつであり、バスターミナルやタクシー乗り場を備えた駅前広場、駐輪場などが整備され、バスターミナル上空を立体利用した物販や飲食施設が入る駅ビルが建設される予定だ。子育てを核とした新しいまちは、既存の周辺商業施設と合わせて、さらなるにぎわいが生まれていくだろう。

「箕面の山並みとの調和や交通広場への自然光の取り込みに配慮しながら、隣接するかやの広場や千里川といった豊かな自然環境を最大限に生かすプランニングを行っています。にぎわいの起点となるオープンカフェや駅ビルと広場をつなぐ大階段など、“憩い”をもたらす空間づくりを目指しています」と黒田氏。

箕面船場阪大前駅イメージ(画像提供:箕面市)箕面萱野駅イメージ(画像提供:箕面市)
箕面船場阪大前駅イメージ(画像提供:箕面市)箕面萱野駅、外観(東側)イメージ(画像提供:箕面市)

箕面市だけでなく、北大阪エリア全体に広がる波及効果

箕面市に想定される経済波及効果は大きい。初期効果は3,227億円、年間614億円と試算されている。商業地の資産価値の向上、延伸工事に伴う新しい雇用の創出や資材などの生産増加が想定されており、また延伸に伴う駅前整備や周辺利便性の向上によって、人口が約4,500人、事業者が480所余り増加すると見込まれている。

箕面市役所 地域創造部 北急まちづくり推進室 室長 黒田達人氏は、「箕面市のみどり豊かな環境を備えた住宅都市の価値をさらに高めて、定住人口を増加させます。また、箕面市外からも多くの観光客などを呼び込んで、観光・商業の活性化をもたらし、活気と持続性のある魅力あふれるまち箕面に発展させたいです」と展望を語ってくれた。

箕面船場阪大前駅から歩行者デッキが直結する。左の建物が、大阪大学箕面キャンパス。右の建物が複合公共施設(船場図書館、文化芸術劇場、生涯学習センター)。船場図書館は大学図書館の機能を持ち、蔵書数71万冊を擁する箕面船場阪大前駅から歩行者デッキが直結する。左の建物が、大阪大学箕面キャンパス。右の建物が複合公共施設(船場図書館、文化芸術劇場、生涯学習センター)。船場図書館は大学図書館の機能を持ち、蔵書数71万冊を擁する
箕面船場阪大前駅から歩行者デッキが直結する。左の建物が、大阪大学箕面キャンパス。右の建物が複合公共施設(船場図書館、文化芸術劇場、生涯学習センター)。船場図書館は大学図書館の機能を持ち、蔵書数71万冊を擁する箕面船場阪大前駅で、まさにタワーマンション建設工事が進められていた(撮影日:2023年9月19日)

その他にも北大阪急行線延伸によって、南北に長い大阪の南北軸も強化される。「公共交通機関の利便性向上は、北大阪エリア全体の発展にもつながるでしょう。健康と文化をテーマにアクセス性を生かしたビジネス拠点である『箕面船場阪大前駅』、子育てを核とした『箕面萱野駅』そして北大阪エリアの中心としてエリア全体の集客を取り込む『千里中央駅』など、地域性や歴史を踏まえた個性あるまちづくりは、エリア全体の機能分担になると思います」と黒田氏は続けた。

“都市部で働き、週末は豊かな自然環境の中でのんびりと休む”、そんな暮らしが実現可能となるのか、箕面市の今後のまちづくりに目が離せない。