年々増加傾向のハクビシン被害
都市部に住む人にとって、ハクビシンやアライグマなどの中型獣類を目にする機会はあまりないはずだ。ところがこれらの獣による被害に悩まされるケースは、たとえ東京23区に住んでいても珍しくなくなってきている。
特にハクビシンは増加傾向で、23区の全域に生息しているといわれている。東京都環境局のデータを確認すると、ハクビシンに関する都民からの相談件数は、2013年度(平成25年度)は1,184件だったのに対し、2021年度(令和3年度)は3,079件と3倍弱に増えている。ハクビシンが家に住み着いてしまうと、悪臭や騒音だけでなく、健康にまで被害を及ぼすこともある。そこで公益社団法人 東京都ペストコントロール協会への取材内容などを参考に、ハクビシンの獣害と防除方法を解説する。
ハクビシンの特徴
ハクビシンの体長は61~66cm、体重は3kg前後。東南アジアから中国南東部まで広く分布しており、日本では大阪府、鳥取県、大分県、沖縄県を除く43都道府県で見つかっている。里山のような環境に住み着くことが多く、民家の天井裏や倉庫などにも営巣する。餌は果物を好み、野菜類は食べない。また、カタツムリなど陸生の貝類、ミミズ、昆虫類、魚類、爬虫類、小動物なども捕食する。民家の営巣については、床下のほか高所に登ることが得意なので、屋根の隙間から侵入して天井裏などに住み着くこともある。
同じように建物に営巣する中型獣類としては、ほかにアライグマやタヌキがいる。アライグマは特定外来生物で、今のところ被害件数はハクビシンよりも少ない(東京都)。だが、ハクビシン同様に高所に登るのが得意で天井裏などに営巣し、より気性が荒いので危険だ。タヌキについては、高所に登ることはなく営巣は床下が中心となる。
建物に住み着いた動物が三者のうちどれか見分けるには、足跡を確認する方法が有効だ。ハクビシンは長さ5cm、幅4cm程度で爪痕がつくことが多い。アライグマは、長さ5.5cm、幅6.0cm程度で5本の指がはっきり分かれている。タヌキは長さ3.5cm、幅3.0cm程度で指は4本だ。
ハクビシンの被害事例
ハクビシンが住宅に住み着くと、以下のような被害が生じる可能性がある。
糞尿被害
ハクビシンには1ヶ所で糞尿をする「ため糞」の習性がある。これが放つ悪臭に悩まされることが多く、特に尿のアンモニア臭は強烈で家中に充満することもある。また、ため糞が天井裏に蓄積されていくと天井に染みができ、やがて糞尿の重みで天井が抜けてしまう。
騒音被害
ハクビシンは夜行性のため、夜中に出入りする音や天井裏で走り回る大きな音が発生する。イエネズミ(200g前後)よりもはるかに重いので、その音を聞いてギョッとするケースが多い。
害虫被害
ハクビシンの糞にはウジやハエが発生し、死骸にはそれらに加えてゴキブリも寄ってくる。また、ハクビシンの身体には常にダニやノミが寄生しており、それらが住民に移ってしまう可能性もある。このようなパターンでマダニが住民を噛んでSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を発症したケースも報告されている。
ハクビシンの侵入を防ぐ方法
ハクビシンは、夜行性で高所の移動が得意。したがって、一戸建ての場合、庭への侵入を防止するのは非常に困難だ。それゆえ、建物に入れないことをメインに防除策を考えたい。侵入口としては床下、軒下、外壁の隙間などがある。新築住宅の購入を検討するのであれば、現地や設計図書を見てそのような隙間がないか確認しよう。中古住宅を検討するのであれば、そのような隙間と同時に、床下や天井裏を直接見てため糞などの被害がないかチェックしたい。
現状で被害がないのであれば、次の2つの方法でハクビシンが住みづらい環境を整備することが有効だ。
①環境整備
犬や猫などペットの残り餌を放置しない、残飯を屋外に放置しない、ゴミを集積場に出す時間帯を厳守して出したゴミはネット等で覆う等でハクビシンが近づかない環境にする。
②隙間を塞ぐ
ハクビシンは10cm程度の隙間があれば侵入してくる。また、樹上や電線といった高所での移動も得意だ。そのため床下、軒下、外壁などにこのような隙間があれば塞いでおく。
すでに定着してしまっていたら専門事業者へ依頼を
ハクビシンがすでに住み着いてしまっていたら、糞尿の除去や消毒、殺虫が必要となり、一般人が対処するのは困難だ。また、ハクビシンは鳥獣保護管理法によって保護されており、自治体の許可なく捕獲や駆除はできない(追い出すことは可能)。無許可で捕獲、駆除した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる。このようなことから自宅に住み着くハクビシンが見つかったら、その駆除は専門事業者へ依頼するのが無難だろう。専門事業者へお願いすれば、追い出しや捕獲だけでなく、侵入口の封鎖、糞尿の除去、消毒、殺虫も任せることができる。これは噛まれる、触ることで感染症を発症するといったリスクを回避することにもつながる。
専門事業者への依頼を検討する場合は、複数の会社から見積書を取り、侵入口の封鎖、糞尿の除去など追い出しや駆除以外の作業をどこまで、どのように行うのか見比べたい。
取材協力
公益社団法人 東京都ペストコントロール協会
公開日:







