機能の光から、演出の光へ
コロナ禍による外出自粛を経て、身近な自宅の庭を見直す動きが出ている。「ベランピング」や「おうちキャンプ」という言葉もよく耳にするようになった。読者の中にも、庭を「もっとおしゃれにしたい」「もっと魅力的な空間にしたい」という思いを持っている人は少なくないだろう。そのためには、花や木を植えたり、石敷きやタイルを敷いたり、または門扉や塀といった外構に手を加える方法も考えられるが、今回は「照明」に焦点を当てたい。
取材に協力いただいたのは、ガーデニング製品大手の株式会社タカショー。エクステリア向けライティングでは国内シェアトップだ。
「一昔前のエクステリアを想像してみてください。照明は、門灯1灯と玄関ドアの上か横に1灯の、計2灯といったところ。機能上必要な照明しかなかったのです。しかし近年は、演出のための光を取り入れた庭や外構が増えています」(株式会社タカショー プロユース企画部 ライフスタイルデザイン開発課 マネージャー 花田諒さん)
「かつては室内も一室一灯が主流でしたが、そこからダウンライトや間接照明が取り入れられるようになって久しいです。屋外においても同様のトレンドで、そのバリエーションはどんどん増えています」(プロユース営業本部 マネージャー 岡本太郎さん)
本稿では、プロに頼む大掛かりなものから、自分でできる手軽なものまで、庭や外構を美しく見せる照明技法とポイントを紹介する。
庭・外構の「光」、5つの役割
そもそも庭や外構の照明にはどういった役割があるのだろうか。花田さんは「光」の5つの役割を教えてくれた。
光の役割① 防犯
暗い家と明るい家だと、どちらが侵入者にとって都合がいいかは一目瞭然。家の周囲に生まれる暗がりや死角を明るく照らすことで、不審者や犯罪者に侵入を思いとどまらせる効果がある。
光の役割② 安全
足元がどうなっているかわからない中を歩くのは危険。壁際や段差など、暗いと躓いてしまうようなところを照らすことで、夜間の視界を確保し、住んでいる人にとっても、訪れる人にとっても安全な空間をつくる。
光の役割③ 美観
お気に入りの庭も、ライトがないと夜間は真っ暗になり、せっかくの景観を楽しめない。ライトを入れることで夜でも庭を眺められるばかりか、昼間とは違う表情を楽しむことができる。また、外構にライトを取り入れることで、家をかっこよく見せたり、こだわりの外観をより美しく見せたりすることもできる。
光の役割④ 機能
夜に庭で何かをしようと思っても、真っ暗だと何もできない。しかし、庭に照明を取り入れれることで、夜間の庭を部屋の延長のように使うことも可能になる。光は活動範囲を広げる役割をもっている。
光の役割⑤ 価値
防犯対策になる、安全が確保される、家がより美しくなる、使える空間が大きくなる、という4つの役割が組み合わさることで、照明がない状態と比べて、家の付加価値を高められる可能性がある。
場所別照明テクニック。期待感を高める入り口を演出する
一口に照明といっても、ただ設置すればいいというものではない。今回、タカショーがプロ向けに公開している場所別のテクニックを教えてもらった。
1. ファサード
横長のライトを建物の基礎から少し離して上向きに設置することで、浮遊感のあるファサードを演出できる。この手法は暗めの壁により適している。
一方、明るめの色で窓が少ない壁面であれば、縦向きに照らすという手もある。挟角タイプのライトを用いれば、スタイリッシュな印象になるし、超挟角のスポットライトをさらに壁際に設置すれば、よりシャープな仕上がりになる。斜めにしたり光をクロスさせたり、向きの調整次第では他にはない個性を演出できるだろう。
ちなみに、門や敷地の入り口から建物が離れている場合、行き先となる建物が暗闇の中にあるよりも、明るい建物が奥に見えるほうが安心して歩くことができる。これを「サバンナ効果」といい、ファサードを照らすことでこの効果を取り入れられる。照明は個性を表すだけでなく、来訪者へのもてなしにもなるのだ。
2. 表札まわり
家の顔ともいえる表札まわりの照明は、大きく分けて床面設置と壁面設置の2種類の設置方法がある。
床面設置の場合は、表札の高さの約3分の1の距離を壁から離して設置すると、床も門柱もスッキリ演出できる。
壁面に設置する方法では、ウォールライトで表札を照らすと、表札が目立つ。この場合、壁面に照明器具が付くので、昼間の見た目も考慮して製品を選ぶことが大切だ。
他に、へこみを設けた門塀にライン状の照明を仕込んで表札を上品に照らしたり、文字自体が発光するスタイリッシュな表札を設置したり、ライトで照らすことを前提とした門塀や表札も人気。
なお、照明の明るさを表す指標に「ルクス」という指標がある。これは、光に照らされた面の明るさを示す単位で、表札の文字の視認性を確保するには30ルクスの明るさが必要だという。照明器具を選ぶ際は、デザインだけでなく明るさも確認しておきたい。
3. アプローチ
門を入ると、いよいよ家に向かって歩いていくことになる。ここでも、照明によって建物に向かう期待値を高める演出が可能だ。
段差がある場合には、蹴上面に間接照明を仕込むことで、光による注意喚起を行うことができる。ただし、段差が多いと下から光源が見えやすくなるので要注意。段差が多い場合は、一段目と最上段の付近に足元を照らすライトを設置し、段差の存在を知らせるという方法もある。
アプローチの床面を演出するには、アップライトを真横に向けて設置すると、陰影で光の模様を描くことができる。奥行きを感じられて、奥へ向けた期待感が高まるだろう。間接照明にしても直接床面に埋め込む照明にしても、3個以上連続させることがおすすめだという。連続させることで、誘導性のあるアプローチを演出できるためだ。
4. 駐車場
駐車場の照明には、2つの役割がある。一つは、いかに車を美しく見せるか、もう一つは、いかに必要な場所に必要な光を届けるかだ。前者については、車は家と異なり光が映り込むことから、美しい照らし方も異なってくる。ここでは、あえて映り込みを主体に照明のデザインを考えてみてはどうだろうか。例えば、ライン状の照明で車を照らすと、ショールームのような光の映り込みが生まれ、見た目を華やかに、かっこよく車を演出できる。
同時に、駐車場ではドアの開閉や荷物の取り出しなど、作業の機会も多いことを忘れてはならない。必要な場所に必要な光を届けられる照明の設置場所を考えたい。失敗例を挙げると、ダウンライトを車の真上から照らしてしまう、ウォールライトを車の真後ろから照らしてしまうなどだ。これでは、車の影で手元や足元が暗くなったり、光が前方まで届なかったりして、ストレスを感じかねない状況となる。上から照らすにしても横から照らすにしても、人の動線となる車と車の間や、壁と車の間に光が届く場所に照明を設置するといい。
場所別照明テクニック。ライトアップでカーテン要らずの庭を
いよいよ、建物の周辺までやってきた。
「夜はカーテンを閉め切ってしまうという人も多いと思います。しかし、庭をしっかりライトアップすれば、窓ガラスに室内が映り込むことなく、綺麗に外の庭が見えるんです」(株式会社タカショーデジテック Creative Lab. 企画グループ セールスプランニングチーム 岩橋瑞保さん)というように、照明をうまく活用すれば、夜でも庭の景色を楽しむことができ、夜間も開放感のある室内空間を実現できる。
ここからは、室内から見る夜景を演出するテクニックを紹介したい。
5. 壁、フェンス
壁やフェンスは、照明の当て方次第でその個性を際立たせることができる。
例えば、凹凸がある素材の壁であれば、光と影のコントラストで壁の質感がより引き立つ。縦方向に照らす場合、凹凸が10mm未満なら壁と照明器具を100mm離し、凹凸が10mm以上なら150mm離した位置に照明を設置すると、美しい陰影がつくれるという。
一方、上から照らせば、壁面を明るくすると同時に足元も明るくでき、安全の確保にもなる。
6. 水、池
大きな庭に池やプールがある家もあるだろう。せっかくの自慢の池やプールも、夜になると見えないというのではもったいない。また、漆黒の水辺は危険も伴う。もちろんこれらも、照明によって解決できる。
例えば、日本庭園のライトアップなどに使われる手法だが、池の対岸の景色を水面に鏡のように映し出そうと思えば、対岸を明るく照らすといい。ただし、池の底が明るいと鏡の効果が得られないため、深い池や暗い色の水盤の場合に使いたい。
反対に、水自体を照らすという方法もある。水面全体を照らそうとした場合、床に光源を埋め込み上を照らすと光が外へ逃げるため、側面に設置し、水面の反射を利用して全体に光を回す方法がおすすめだ。
7. 植栽
木を照らす行為ひとつでも、木のタイプによって適切な照らし方は異なる。
高木を地面から見上げるように照らし上げるのは定番の演出だ。このとき、密度の高い樹木は樹幹よりも外の位置からライティングし、密度の低い樹木は樹木の根元から照らし上げると美しい。ライトアップした木の影を壁に映し出すというテクニックもある。庭にシンボルツリーとなる木があるのなら、ぜひライトアップして夜もその姿を楽しみたい。
低木は植栽より背の高いライトを使うことが多いが、あえて植栽より背の低いポールライトを設置するという手法も試してみてほしい。光源が埋もれ、植栽の中に光がたまり、あたたかく優しい印象になる。ただし、葉の密度が高いと適さないので注意が必要だ。
8. デッキ・テラス
コロナ禍で、庭でのさまざまな過ごし方が提案されている。ガーデンリビングと呼ばれるウッドデッキやタイルデッキなどによって、屋外空間を屋内空間のように使えるスペースが注目され、住宅の新築時やリフォーム時に設置されるケースが増えている。
夜間もそこで屋内のように過ごそうと思えば、もちろん照明が必要となる。簡易な方法だと、コードに複数の電球が吊り下がったガーデンライトを柱や梁に取り付けるだけでも、広範囲の明るさを確保できる。
他には、ベンチの下を線状のライトで照らすと、美しく居心地の良い空間を演出できるし、ウッドデッキがある場合には、床面の端に点状のデッキライトを埋め込むことで、視線を遠くに惹きつけ空間を広く見せる効果を得られる。また、段差などに設置すれば注意喚起の役割も果たす。
照明もDIYが人気。気になる虫の問題や電気代は?
大掛かりな工事が必要なイメージもある庭や外構の照明だが、DIYのニーズも増えている。同社ではDIYで設置できる「ひかりノベーション」という製品を販売し、その需要に対応。2021年の販売数は前年比2倍を記録しているという。
どこまでなら、プロにお願いせずに自分でできるのだろうか。また自身で行う際に気を付けるべき点はあるのだろうか。
「ご自身で照明を設置できるかどうかの判断基準は、一つは屋外用コンセントがあるかどうか。コンセントがあれば、照明を設置することができます。もう一つはDIYの経験などで個人差がありますが、専用の工具を使う必要があるかどうか。DIY製品は値段も手ごろなので、まずは自分でやってみて、満足がいかなければプロに頼むというのも手です。そしてDIYで行う際に気を付けたいのが、使用する光の明るさです。『設置してみたはいいけれど、イメージしていたよりも暗かった』という失敗談はよく聞きます」(花田さん)
あくまで目安だが、3ルクスの光は4m離れた人の挙動が分かるくらい、10ルクスの光は10m先の人が誰であるか分かるくらい、50ルクス以上になると10m先の人の表情や行動を理解できる照度となる。
虫の問題や電気代も気になる。
「安心してください。最近の製品の光源はLEDで、蛍光灯とは異なり虫が認識しにくい波長のため、ほとんど虫は寄ってきません。また電気代も、1日8時間点灯したとして、1台につき1ヶ月20円程度です」
照明が創り出す、庭と家の中間領域
ここまで、さまざまな照明技法やポイントを紹介したが、いかがだっただろうか。
タカショーなど、ガーデニング製品各社によってさまざまな商品が発売されており、いざ選ぶとなると迷うかもしれない。花田さんが最近のトレンドを教えてくれた。
「今はライン状の照明が人気です。設置するだけで手軽にスタイリッシュなイメージを与えることができるため、表札まわりやアプローチなど、設置場所を問わずよく使われています。実は住宅の照明のトレンドは、店舗照明のトレンドの後追いです。トレンドを先取りするには、店舗の照明に注目してみるといいかもしれません」
なるほど、外出先で「おしゃれだな」「美しいな」と思ったとき、空間を創り出している照明に着目してみると、自宅に応用できるヒントが見つかるかもしれない。
最後に、記事を読んで照明に関心を持ったという人に、皆さんから一言いただいた。
「今は家と庭を分けて考えることが多いですが、照明は室内と外をつないで一体化する演出ができ、家と庭の心地よい中間領域を創り出すことができます。コロナ禍で庭の重要性が見直される今、その価値は大きくなっていると思います」(花田さん)
「コロナ禍で“おうち時間”が増えていますが、照明を通して、夜のおうちを楽しむ人が増えてほしいです」(岩橋さん)
「家を建てるとき、外構の予算は優先度を下げがちです。家にお金をかけて、外構工事は後回しにすることもあります。しかし、照明を提案する会社はどんどん増えています。今後、家と照明を一体的に提案できる会社が増え、皆さんに外構や庭、そして照明が、家で過ごす時間を豊かにするということを知ってほしいです」(岡本さん)
これから家を建てようとしている人や、家での豊かな過ごし方を探している人は、照明の世界に目を向けてみてはいかがだろうか。照明は、家を一変させる力を持っている。
■取材協力
株式会社タカショー
https://takasho.co.jp/
公開日:
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