ログ小屋が道路を走る? ログハウスブランドBESSが手がける新シリーズ
家で過ごす時間が増えた昨今、小屋人気が高まっている。住まいプラスアルファの場所として「自分らしく過ごせるプライベートな空間が欲しい」、そう考える人が増えているのだろう。
小屋を販売する事業者はさまざまだが、ログハウスブランド「BESS(ベス)」を展開する株式会社アールシーコアも、2016年よりログ小屋「IMAGO(イマーゴ)」を発売している。BESSユーザーを中心に人気を集め、発売5年を迎えた2021年には販売台数500台を達成。小屋ニーズの高まりを受け、2021年10月、同社はまったく新しいコンセプトの「走るログ小屋」シリーズを発表した。小屋であり、ただの小屋にあらず。新シリーズのログ小屋は、公道を走るという。
アールシーコア BESS事業本部の木村さん、入江さんに「LOGWAY BESS多摩」をご案内いただき、今までにない「走るログ小屋」を見学してきた。
趣味も仕事も場所に縛られない、"走るログ小屋"
IMAGO新シリーズのコンセプトは、「じぶん流、未来小屋」。今までにないログ小屋には、トレーラーハウスのけん引に用いられるシャーシ(車台)が付いている。しかし、キャンピングカーのように「住居空間が付いた車」ではなく、あくまで「車輪が付いた小屋」だそう。車ではなくログ小屋のほうが主役、というわけだ。
木村さん:(以下「 」内は、木村さん)
「自分の趣味部屋や仕事小屋をそのまま動かせるのが、『走るログ小屋』です。思い立ったらすぐにでも、愛車でお気に入りの空間を連れて、好きな所へ出かけることができます。使う人の好みやアイデア次第で、まさに自分流に、新しい日常の可能性が広がります」
キャンピングカーと違い、水回りの設備はない。オプションとして今後検討するというが、主役はあくまで小屋そのものだ。固定された場所から離れることで、使う人のアイデア次第でさまざまな可能性が広がる。好きな場所で働く、行きたかった場所へ趣味部屋ごと移動する、キッチンカーや移動販売のように小さく商いを始めるなど、用途は十人十色だ。また、農地など建築物を建てることが難しい地域でも、小屋ライフを楽しめるようになる。
趣味部屋を好きな場所へ、「IMAGO iter(イマーゴ・イーテル)」
走るログ小屋のサイズ展開は2種類。12フィートサイズの「IMAGO iter(イマーゴ・イーテル)」、20フィートサイズの「IMAGO X(イマーゴ・エックス)」である。
まず案内いただいたのが、「IMAGO iter」。メッセージは、「その小屋は、旅になる」。大きさは約3.2m×2m(床面積6.5平米)、木屋根と幌屋根の2タイプがある。本体価格は、木屋根が386万円、幌屋根が457万円(いずれも税込み)。
小屋の中に入ると、想像以上の広さに驚いた。畳4畳ほどの空間だが、天井高が2.4m、幌屋根から自然光が均一に入ることもあって、大人4人で入っても十分な広さを感じた。ログ小屋ならではの木の香りもする。無垢材の壁面には釣り用品やジャンパー、アウトドアグッズなどが自由に引っ掛けられていた。壁面が構造材かつ仕上げ材を兼ねるログ小屋ならではの手の加えやすさといえよう。次は何を引っ掛けよう、棚をどう作ろう、といった具合に、使う人の想像力がどんどん広がる空間だと感じられた。
ビジネスシーンでも活躍、「IMAGO X(イマーゴ・エックス)」
もう一つの走るログ小屋が、20フィートサイズの「IMAGO X」。こちらのメッセージは、「住所不定の自由」。ネーミングのインパクトどおり、一歩足を踏み入れると、確かにここなら暮らせるかもしれないと思わせる空間であった。広さは約5.6m×2m(床面積11.3平米)、7畳ほどの空間が横に広がり、ベッド、ダイニングを置けば十分に生活できそうだ。水道設備はないが、自宅の庭で趣味や仕事に没頭し、快適な一日を過ごせるイメージが沸く。
これだけの広さがあるとビジネスでの活用も見込まれる。店舗の開業資金は一般的に1,000万円ほどかかるとされるが、「IMAGO X」であれば内装に少し手を加える程度、半分ほどの費用で事業を始めることができる。かつ、場所の選定の自由度が高い。
「おかげさまでテレビでも取り上げていただいて、個人のお客さまだけでなく、法人のお客さまからもお声をいただいています。イベントや季節に合わせて場所を変えられるので、ビジネスシーンでも移動のメリットがありますね。木がふんだんに使われた内装もそのまま生かせると魅力に感じていただいています」
IMAGO新シリーズは建築物ではなく「車両」。必要な条件は?
とはいえ、小屋を移動できる、と言われてもピンとこない人も多いかもしれない。いくら日常的に車を運転していても、小屋を引いた経験がある人はまずいないだろう。建築基準法では、土地に定着し、屋根や柱、壁があれば、それは建築物となる。BESSの従来のログ小屋も建築物だが、新しい「走るログ小屋」は、小屋ではあるものの、建築物ではなく車両にあたる。
「走るログ小屋シリーズは車両なので、けん引するには、けん引第一種免許が必要になります。同じ免許でどちらのシリーズもけん引可能です。車種は『IMAGO iter』は中型SUV車以上、『IMAGO X』は大型SUV車以上が目安となります」
一般的な車両と同様、車検証とナンバープレートの交付、車庫証明の取得、自動車税の納付などが求められる。「IMAGO iter」「IMAGO X」ともに、厚さ7cm、高さ13.7cmの国産無垢杉材でできている。無塗装での引き渡しが標準で、好みの色に塗装できる(オプションで塗装済みも可)。保証期間は納車日より2年間。開発にあたり走行試験会場で走行試験を行い、安全性は確認されているという。
SUV車に乗っている人にとって、自分の趣味小屋を移動することのできるログ小屋との出合いは、世界が広がる感覚を覚えるかもしれない。けん引免許取得を目指す人がどれだけいるかは普及のネックになるだろうが(免許は12万円ほどで取得できるそうだ)、ウィズコロナの時代、臨機応変に移動できる空間のニーズは高まるだろう。団地の一角で、走るログ小屋による移動販売が始まったり、近隣住民が共同で利用できるシェア小屋サービスなどが生まれたりする可能性もある。自由な小屋から、わくわくする想像が広がる。
新IMAGO「走るログ小屋」が生み出す、新しい市場と日常
「新IMAGOのキーワードは、3つの『離れ』です。まずは母屋に対する建物としての『離れ』であること、建築基準法から『離れ』られること、そして自宅の敷地から物理的に『離れ』られること。移動・移住など、動く価値観が見直される今、新しい暮らし方の提案につながると思います」
新しい暮らし方の提案。これこそBESSが切り開いてきた市場の考え方だ。10月の新モデル記者発表会で、同社代表取締役社長の二木浩三氏はたびたび「メイクマーケット」を口にしていた。「小屋の面白さを、そのまま走らせる。世の中にないものを提供し、それを面白がってくださるお客さまと一緒に市場をつくっていきたい」。小屋が走るという今までにない光景を生むことで、それを欲しがるユーザーが現れる。「『住む』より『楽しむ』BESSの家」を掲げ、合理性より感性を追求してきたBESSならではのチャレンジといえる。
趣味部屋や仕事部屋、農園の直売所やコーヒースタンドなど、走るログ部屋を眺めていると、さまざまなシーンで活躍する姿が浮かぶ。お気に入りの空間にこだわりたい人、新しい暮らしを楽しみたい人、そんな人にとって、走るログ小屋は日常の可能性を広げてくれる存在となるだろう。
取材協力:
■IMAGO
https://imago.bess.jp/
■BESS
https://www.bess.jp
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