自分が住む町の空き家の数は?

人が住まなくなった家は老朽化が加速。近年は、所有者がわからない空き家も増えており、深刻な問題となっている(写真はイメージ)人が住まなくなった家は老朽化が加速。近年は、所有者がわからない空き家も増えており、深刻な問題となっている(写真はイメージ)

2020年秋、福岡県が空き家活用サポートセンター、愛称「イエカツ」をオープンさせた。同センターは、所有する空き家の活用や処分をサポートするだけでなく、現在、住宅を所有している人やその家族、親族などからの相談を受け付けている。将来、空き家を生まないため、対策についてもアドバイスしているのだ。同じようなサポート体制は全国各地の市町村にもあるだろうが、都道府県レベルでの開設は珍しい。なぜ、県での開設に至ったのか。また開設から1年でどのような現状が見えてきたのか、担当者に話を伺った。

全国的に高齢化や人口減少が加速し、問題になっているのは周知の事実だが、自分が住む町や生まれ故郷の人口推移や空き家の数を知っている人はどれほどいるだろう。私が暮らす福岡県の人口は、令和2(2020)年で513万人。平成27(2015)年からの5年間で3万人増加した。しかし、市町村単位で見ると、人口が増えているのは一部の地域だけ。意外なほど地域差があることもわかった。

福岡県内で人口や空き家数に、大きな”地域差”

炭鉱、製鉄、海運の要所として日本の近代化を支えてきた北九州市。独自の風土が魅力的な市だが、人口減少が止まらない。画像提供:福岡県観光連盟炭鉱、製鉄、海運の要所として日本の近代化を支えてきた北九州市。独自の風土が魅力的な市だが、人口減少が止まらない。画像提供:福岡県観光連盟

国勢調査が行われた2015年と2020年で比較すると、福岡市の人口は約153万人から約160万人に増加。これは、実数で全国トップの増加数だ。対して、北九州市は約96万人が約93万人に減少。全市町村で最も多く人口が減少していた。ちなみに、福岡市と北九州市を結ぶライン上にある福津市、久山町、新宮町も、人口が8〜14%増加している。福岡市に近いエリアに人が集まってきている実情が垣間見える。

そして人口や世帯数に大きな影響を受ける住宅の数も、地域差が出てきている。「実は北九州市生活圏や筑豊生活圏は、住宅の総数に対して空き家の割合が15%を超えています。平成30(2018)年のデータによると、空き家数の割合が最も高かった町では、23%を超えていました。都市のイメージがある福岡県にも、およそ4戸に1戸が空き家という地域があるんです」。そう話すのは、福岡県建築都市部住宅計画課の髙宮俊甫さんだ。

利活用されていない空き家が増加。社会問題化する前に県として対応

「イエカツ」の相談窓口は、アクセスのいい福岡市中心部の天神にある。場所は「アクロス福岡」東オフィス棟の3階。遠方の相談者にはリモートで対応している「イエカツ」の相談窓口は、アクセスのいい福岡市中心部の天神にある。場所は「アクロス福岡」東オフィス棟の3階。遠方の相談者にはリモートで対応している

さらに深刻なのは、利活用されていない空き家が多い点だろう。空き家とひと言で言っても、賃貸用として管理されているもので入居者が入っていない状態の家もあれば、所有者さえわからない廃墟化した家もある。前者は、今後利用される予定がある空き家なので問題ないが、後者は先行きが決まっておらず、ただ放置されているだけの状態。そのままにしておけば、放火等の犯罪上の懸念や倒壊の恐れが生ずる場合もある。

福岡県は、この利用予定のない空き家が平成25(2013)年の11万7,000戸から5年で12万6,000戸(増加率7.6%)に拡大している点に注目した。加えて、空き家予備軍と呼ばれる住宅の中でも、65歳以上の高齢者だけが居住する持ち家、つまり近いうちに空き家となる可能性が高い住宅に、より一層空き家が増えてきていることもサポートセンターの開設を後押しした。

髙宮さんは「空き家になってからの対応だと後手後手になり、時間も労力もかかります。まだ住めるうちに流通に乗せること、その準備を進めることが大切なので、ワンストップで相談、依頼ができる窓口『イエカツ』を開設しました。市町村が中心となって相談対応をされている地域もありますが、県全体としては地域差が出てしまう状況があるため、県が運営することでその差を埋めることができると考えています」と背景を説明する。

40年放置されたままだった民家を古民家カフェに再生

実際に「イエカツ」では、どのように相談に応じてくれるのか。
基本的な流れは、下記の7つのステップになっている。

① 住宅や相談者の状況、希望確認
② 空き家活用までの流れや必要な手続きの説明、専門事業者の紹介など
③ 売却価格や税金など、価格や費用のシミュレーション
④ 現地調査(必要な場合のみ)
⑤ 権利関係の整理の支援(専門家と連携)
⑥ 活用方法等の検討・提案
⑦ 相談者の意向に合った専門事業者とのマッチングをサポート

「イエカツ」が誕生する前に、実際に業界団体がサポートして利活用に至ったケースを事例として紹介する。

中庭を挟んで両側に木造の平家が建ち、1棟を店舗、1棟を住宅として使用していた物件があった。所有者が移り住んだのを機に、店舗部分は賃貸へ。しかし、住宅部分はそのまま40年近く放置され、店舗借用者が退去した後は2棟とも空き家となっていた。今回は依頼を受けて現地調査を行い、雨漏りがひどく、床が抜けていた1棟は修復が難しいことから解体を提案。一方、中庭ともう一棟の家屋はリノベーションを施し、再生させることを提案した。日本家屋の趣を生かし、生まれ変わった建物は、現在、古民家カフェとして利活用されている。

このような利活用に向けた動きはこれまで、各業界団体が自主的に行ってきたが、今後は県が「イエカツ」を通じて実現をサポートする。専門業者へ依頼した際の実費や現地調査を行う際の交通費などは、相談者の負担になるが、それまでの相談料は一切かからないので、現在、空き家を抱えている人は、まず相談してみよう。コロナ禍で開催できない相談会もあるが、通常は月に2回程度は県内の各市町村で出張相談会も実施している。センターがあるアクロス福岡(福岡市中央区天神)まで足を運べない人のために、電話やZoomでも相談に応じている。

「イエカツ」では相談から専門事業者とのマッチングまでワンストップで相談できる。利活用に関して豊富な知識を持つ専門相談員が対応しているので安心だ「イエカツ」では相談から専門事業者とのマッチングまでワンストップで相談できる。利活用に関して豊富な知識を持つ専門相談員が対応しているので安心だ

まずは家族や親族で「家の話」をすることから始めよう

開設から間もなく1年。現在は「お困りごとが生じてから相談にくる人が多い」というのが現状のようだが、空き家相談員の手島順也さんはこう話す。「空き家は顕在化しにくい問題のため、表面化して慌てる場面が少なくありません。しかし、空き家になってから考えるのではなく、将来空き家になりそうな住宅を空き家にさせないことが大切です。自分では古びた家だと思っていても、築年数が古い家が好きという人もいますし、リノベーションを施すことで、新たな価値が創造されることもあります。まずは家族や親族で、所有している家について話をすること、そしてどんな選択肢があるのかを知ることを始めてほしいと思います」

手島さんは「『親が家を持っているが何から手をつけたらいいのか?』『家の家財整理をした場合の費用感を知りたい』など、曖昧な質問、相談でも気軽にご連絡ください。相続や登記、売買、賃貸などは、ご自身で行うには複雑な問題が多いので、遠慮せずに専門家を利用してほしいと思います」と話している。ただし、トラブル防止の観点から、相談は住宅の所有者本人または相続人に限定している。物件が福岡県にあれば相談に乗ってもらえるので、県外に住んでいる人も、気軽に電話で問合せてみよう。

取材協力
福岡県空き家活用サポートセンター
https://www.fkjc.or.jp/jigyo/iekatsu-2

公開日: