見直される平屋。近年、着工数が増えている訳

平屋の需要が広がっている。
国土交通省の2020年度の建設着工統計によると、居住用住宅の着工全棟数に占める平屋(一階建)の割合は11.5%となっている。全体に占める割合としては、未だ2階建以上の住宅が主流ではある。しかし、その着工数は拡大しており、2010年度と比較すると1.76倍と増えているようだ。

平屋の人気の原因はいくつか考えられる。階段のある2階建てに暮らしにくくなったシニア・高齢層がバリアフリー住宅を求めていることや、マンションに住み慣れた若年層が今まで暮らしていたシンプルな間取りを求めていることなどがあげられている。

大手住宅メーカーなども平屋商品を多数販売、また、地域密着型の工務店なども新たに平屋商品を売り出しており、平屋のみのブランドを販売する会社もあらわれ始めている。大手住宅メーカーの平屋商品では、その多くは2,000万円台~というものが多い。平屋で面積の広い住まいを実現するとなると、どうしても設計上コスト高となってしまうようだ。

そんな中、「599万円から建てられる」という平屋商品を売り出した会社がある。関東を中心に総合不動産業を展開するケイアイスター不動産のグループ会社 Casa robotics(カーザ・ロボティクス)株式会社である。

今回は、群馬県前橋市にある規格型平屋注文住宅 IKI(イキ)のモデルハウスで、代表取締役 細谷さんと設計を手掛けた取締役 小林さんにお話を伺ってきた。

前橋にあるIKIのモデルハウス前橋にあるIKIのモデルハウス

6帖ユニット設計を開発。マンション生活に近い暮らし方が可能になった 規格型 平屋注文住宅IKI(イキ)

規格型で本体価格599万円(税込)から建てられるという住宅……ということで正直、“みるからにコスト安に見える住宅”を想像していた。
しかし、案内されたモデルハウスは、オプションでウッドデッキと勾配天井のロフトが追加されているものの、マンション暮らしに慣れている人なら「これで十分」と思う人が多いだろうという印象だ。坪タイプ別のプラン間取りを見ても、まさに「マンションの間取り?」と思う間取りプランが並ぶ。モデルハウスの間取りは規格型住宅の19坪の2LDKのタイプで、本体価格は749万円(税込、オプション費用別)となる。

細谷さんは、
「6帖ユニット設計にした事で、廊下部分がありません。それによる寒暖差がないため、あえて断熱材などにコストをかけずに十分な効率を確保できています。その為、居室ごとの温度差によって生まれるヒートショックなどの影響を受けにくい設計だと思います」と話す。

とはいえ、コストをここまで抑えるためには様々な工夫が必要だろう。設計を手掛けた小林さんによると
「6帖ユニット設計を開発した結果、建材のサイズが規格化され複雑な建材のサイズを用意する必要がなく、大工さんの工程なども熟練の技が必要になるなどの複雑化がされず、短期間での施工が可能となりました」という。

もうひとつの特徴は、価格の明快さだ。
「坪タイプごとにわかりやすい価格にしています。お客様の納得感を得られるということもありますが、自社の営業にも細かすぎる商品価格の説明の必要がなく、価格以外のお客様ニーズのフォローに従事できます。また、オプションとして、平屋ならではの楽しみが味わえるウッドデッキをおすすめしています。2階がないため、ベランダがなく、洗濯物などが干せないというデメリットのカバーもありますが、リビングとのつながりができ、お子さまの遊び場やくつろぎの空間としてご提案しています」。

ウッドデッキのオプション価格も明快で308,000円(税込)~であり、国産檜材を使用しているという。ほかオプションでは、「あと少しの空間を」という人のために、勾配屋根とセットとなるロフトも用意されている。

前橋のモデルハウスはこのプランの対称の間取り前橋のモデルハウスはこのプランの対称の間取り
前橋のモデルハウスはこのプランの対称の間取り宇都宮展示場のリビング

PPAモデルを採用し、太陽光発電システムを標準装備。創エネ可能な住宅に

IKIの画期的な特徴は、もうひとつ住まいのエネルギー対策にも対応したことにある。
「平屋の切妻屋根の形状設計には、2つのエネルギー効果を期待しています。ひとつは、軒。昔の日本の家には軒があり、それが日差し除けとなり、室温の調整をしていました。IKIにはその軒をつけたことで、室内への直射日光を防ぎます」

もうひとつは切妻屋根に太陽光発電を標準装備したことにあるという。
「脱炭素時代に対応する住宅として、切妻のフラットで面積のある屋根に太陽光発電パネルを設置しました。これはIKIの標準装備で、家で創エネができる家となっています」

太陽光発電システムの一般住宅への普及は、FIT(固定買取システム)の導入で一時期盛り上がりを見せたものの、電力買取り価格が変更となり歯止めがかかってしまっている状況。売電の仕組みが購入時の計画通りにいかなくなると、初期費用の回収までに時間がかかってしまうため、一般住宅への普及は一気にハードルが高くなった。

「IKIでは、太陽光発電システム込みの本体価格ですが、その初期コストにかかる費用は、電力会社への月々の電気使用料金の支払いという形であるPPAモデルを導入しています。そのため、住宅の購入時には、太陽光発電システムの初期費用はかからないものの、Looop社との電力契約が必要で、月々6,480円(250kWhまで。超過分は28円/kWhを支払い)が発生します」それでも大手電力会社の電気代よりも安く設定されている。

PPAとは、太陽光発電システムを初期費用なく設置し、発電した電力を需要家が購入するビジネスモデル。アメリカでは、すでに普及が進んでいる。
月々の定額電力料金を支払えば、250kWh/月の規定を超えるまでは電力利用料金も発生しないほか、IKIに装備されているポータブル蓄電池(標準装備)により、いざという時の予備電力として使用できる。
「契約期間10年を過ぎた後にはシステムを無償で譲渡するため、さらに電気代が安価になります。また、南の屋根面に太陽光を設置することで、屋根材への負担が減り、腐食も抑えられる事から10年目の屋根メンテナンスのコストが抑えられます」。

IKIで採用されているPPAモデルIKIで採用されているPPAモデル

Iotを活かし、双方に良い形で行うことができるモデルハウスの接客

モデルハウス内におかれた画面で、遠隔にいる担当者に質問することができるモデルハウス内におかれた画面で、遠隔にいる担当者に質問することができる

今回のIKIは、販売の接客方法もユニークだ。
モデルハウス見学では、営業マンがリアルでの対面接客をせず(※希望がある場合はこの限りではないが)、スマートロック機能を活用して、自由に見学ができるという。独自の無人接客システムを活用して、いつでも担当者と話ができる体制になっている。

「今は、まさにコロナ禍ということで他社でもリモート接客の例がありますが、IKIはコロナとは直接関係なく、最初からリモートでの接客を中心に考えていました。予約をしていただければ好きな時間にモデルハウスを見ていただけます。営業マンがいないことで、実際の生活シーンを話し合いながらご家族でゆっくりと検討できるほか、いろいろな場所も細かく見ていただけます。実際、営業マンが一緒の時よりも、ソファーに座ったり、収納の扉を自由に開けたりと、くつろぎながらご検討いただいているようです」

これにより、お客様と営業マンのモデルハウスへの案内時間を無理に合わせる必要がなく、また、距離の離れたモデルハウスでも、時間や交通費を気にする事なく接客が可能になったという。

「本当に必要なサービス以外の接客業務を、なるべくシンプルにすることでコストも抑えることができ、それが商品の価格にも反映できると考えています」。

「シンプルなデザインの意図をIKI(イキ=粋)の名前に込めた」

Casa robotics(カーザ・ロボティクス)株式会社 代表取締役 細谷 竜一さん(左)、取締役 小林 栄和さん(右)Casa robotics(カーザ・ロボティクス)株式会社 代表取締役 細谷 竜一さん(左)、取締役 小林 栄和さん(右)

シンプルで機能的なIKI。この家のデザイン・設計を手掛けた小林さんは
「平均世帯人数2.39人、DINKS・おひとり様・ひとり親世帯など多様化しています。これまで戸建ての選択肢の少ない人々にも、生活の基盤となる住まいを提供できる戸建て商品がIKIです。デザイン的にはシンプルなものですが、江戸時代は平屋で切妻屋根のシンプルな家が多く建っており、それが江戸のまちの景観をつくっていました。この商品名は、粋な江戸を思って「IKI(イキ=粋)」と名付けました」。

Casa roboticsの代表取締役の細谷さんは、元大手電機メーカーの研究職だったという。
「テクノロジーが進化し続ける中、一般的に遅れているといわれている住宅業界では、もっともっといろいろな挑戦ができると思います。コストを考え抜いた599万円の家もそうですし、接客方法もそうですが、今の社会を生きる顧客のニーズにしっかりと対応していきたい」。さまざまなアイディアの一部は、細谷さんの全くの異業種からの発想が生きているのかもしれない。

新しく発売された「HANARE(ハナレ)書斎版」は宅配便ボックスの機能も備えられている新しく発売された「HANARE(ハナレ)書斎版」は宅配便ボックスの機能も備えられている

敷地に少しゆとりがあり、追加で少しのスペースを欲しい人のために、新しく宅配ボックスを備えた小屋、「HANARE(ハナレ)書斎版」も発売した。
「これからは、豊かに暮らすために様々な場所を住む場所として複数持ちたいというニーズも増えてくると思っています。IKIは、今は販売拠点が限られていますが、今後全国に展開できる可能性を考えていきたいと思っています」と小林さんはいう。別荘への引き合いも増えているようだ。

“夢の戸建て住宅”を持つには多くのローンを抱えて……という選択肢が主だった持ち家に、一つの選択肢が増えたことはありがたいことだと感じた。

■取材協力:Casa robotics(カーザ・ロボティクス)株式会社
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