瑕疵の4分類、物理的瑕疵とは

瑕疵の4分類「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「法律的瑕疵」について解説瑕疵の4分類「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「法律的瑕疵」について解説

瑕疵(かし)とはキズを意味する言葉である。2020年3月末までの民法には、瑕疵担保責任という制度があったため、不動産の売買においては瑕疵という言葉がよく使われている。

瑕疵は「物理的瑕疵」と「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「法律的瑕疵」の4つに分類される。

物理的瑕疵とは、不動産が負っている物理的な欠陥のことを指す。たとえば、建物の瑕疵としては床の傾きや雨漏り、シロアリによる床下の腐食等が挙げられる。土地の瑕疵なら土壌汚染や地中障害物、擁壁の破損等がある。

心理的瑕疵とは? 心理的瑕疵と環境的瑕疵の違い

心理的瑕疵とは、自殺や殺人など過去の嫌悪すべき歴史的背景によって住み心地に影響が及び、取引対象が本来あるべき住み心地を欠く状態のことを指す。たとえば、物件内で生じた自殺や殺人事件、火災、忌まわしい事故等が心理的瑕疵に該当する。いわゆる事故物件と称されるものは、この心理的瑕疵がある物件のことである。

環境的瑕疵とは、物件を取り巻く状況にキズのある状態のことを指す。たとえば、近くに反社会的組織事務所がある、近隣から騒音・異臭・振動がある等が環境的瑕疵に該当する。

心理的瑕疵と環境的瑕疵との違いは、心理的瑕疵は「物件そのものの過去に起きた事象」を対象としているのに対し、環境的瑕疵は「物件周辺の現在に起きている事象」を対象としている点である。

法律的瑕疵とは

法律的瑕疵とは、法律や条例等の制限によって自由な使用収益が阻害されていることを指す。法律的瑕疵は、キズというよりは買主や不動産会社の調査不足によって生じる誤認であるといえる。法律的瑕疵そのものはあまり問題となることはなく、むしろ不動産会社の重要事項説明義務違反として取りざたされることが多い。

不動産会社の仲介を通じて物件を購入する際は、買主は不動産会社からこれらの瑕疵について説明を受ける立場にある。

売主は告知しないと契約不適合責任を問われる可能性がある

雨漏りなどの瑕疵が合った場合、売主は告知しないと契約不適合責任を問われる可能性がある雨漏りなどの瑕疵が合った場合、売主は告知しないと契約不適合責任を問われる可能性がある

売主には瑕疵に関して特に告知義務があるわけではない。ただし、売主自身が知っている瑕疵は告知しておかないと、売却後に契約不適合責任を問われる可能性があるため、売主は必然的に瑕疵を告知するようになっている。

契約不適合責任とは、売却物の「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない(契約不適合)」場合に売主が負う責任のことである。従来、売主には瑕疵担保責任という売主責任があったが、2020年4月からの民法改正により瑕疵担保責任が廃止され新たに契約不適合責任が創設された。買主は契約内容と異なるものが売られた場合、契約不適合責任によって売主に対し追完請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償のいずれかを請求できる。追完請求とは不動産の場合は主に修繕を請求する修補請求のことを指す。

契約不適合責任は、売主と買主で合意すれば売主の責任を免責することができる。たとえば、雨漏りの瑕疵がある物件が存在するとする。当該物件を買主が取り壊すことを前提に購入する場合、雨漏りは問題視する瑕疵とはならない。このようなケースでは、雨漏りを契約不適合責任の対象とする必要性は低いことから、売主と買主との間で合意して、雨漏りについては契約不適合責任から除外するという特約を結ぶ。

売主の立場からすると、契約不適合責任を負わないとする特約を買主と結んでおけば契約不適合責任を負わなくて済むことになる。ただし、売主が知っていたにも関わらず買主に告げなかった瑕疵については、買主との間で何らかの特約を結んでいたとしても契約不適合責任を免責できないこととなっている。つまり、売主は買主に黙って売った瑕疵については免責することはできない。売主としては契約不適合責任を免責したいと考えるのが通常であることから、瑕疵は自然と告知されるものとなっているのである。

売主は、物件売却を不動産会社に依頼すると、通常、不動産会社から物件状況確認書(通称、「告知書」)と呼ばれる書面の記載を求められる。告知書には、物理的瑕疵や心理的瑕疵、環境的瑕疵について売主が知っている事実を記入する欄があり、その記載内容は売買契約書や重要事項説明書に反映されることになっている。よって、買主は特に何も要求しなくても自然と物件の瑕疵を知ることができるのだ。

仮にもし知らされていなかった瑕疵が購入後に発覚した場合は、売主に対して契約不適合責任を追及できることになる。契約不適合責任は買主を保護する制度であるため、十分に理解したうえで売買に臨むことが望ましい。

不動産会社の説明義務と調査義務

不動産会社は重要事項の説明義務を負っているため、買主は瑕疵について不動産会社から説明を受けることが通常である。不動産会社の説明義務とは、宅地建物取引業法に定められている所定の項目だけの義務を負っているのではなく、購入の意思決定に関わるような事項を知りえた場合には、買主に説明をしなければならないという民事上の義務も負っている。

よって、たとえば不動産会社が売主から物件で自殺があったことを知らされた場合、不動産会社は買主に対してその事実を説明することになる。一般的に、不動産会社は買主から重要事項説明義務違反を問われることを回避したがるので、売主から知らされた瑕疵に関しては隠さずに買主に伝えることがほとんどである。

ただし、心理的瑕疵のような過去に起こった事実は、不動産会社も売主から告知されない限り知ることは現実的に難しい。そこで心理的瑕疵については、事実の存在が疑われたり、または買主から質問を受けたりしない限り、不動産会社に調査義務まではないとされている。

たとえば売却後に売主が黙っていた自殺が発覚した場合、不動産会社に対して「なぜ自殺の調査をしなかったのか」と責任追及することは難しいということである。よって、心理的瑕疵に関しては、不動産会社に説明義務はあるものの、調査義務まではないため、知り得るには売主による正直な告知が鍵を握るのである。

心理的瑕疵の告知期間の目安

4つの瑕疵の中で、心理的瑕疵だけが過去に生じた事象であることから、他の瑕疵とは性質が異なる。心理的瑕疵は永久に存在するわけではなく、時間とともに嫌悪感が小さくなる「時間希釈」という性質がある。結論からすると、心理的瑕疵は事故から何年経ったら告知しなくてもよいという明確な基準はない。事故が風化されるまでの期間は、被害の態様や規模などによっても異なるからだ。

ただし、自殺に関しては過去の判例から7年を過ぎると瑕疵とは認められないとするものが多く、7年が一つの目安とされている。一方で、他殺となると8年目でも瑕疵が認められるという判例が多い。また、同じ自殺でも売買では7年が目安とされているが、賃貸では3年が目安とされている。よって、告知期間は事故の内容や地域性、売買か賃貸か等によっても異なることになる。

事故物件はガイドライン化される見込み

心理的瑕疵の告知期間は非常にあいまいであり、トラブルとなることが多い。そこで、国土交通省は最近になって事故物件のガイドライン化を検討し始めた。

【国土交通省】
「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討を開始します」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001327349.pdf

2021年3月時点では、心理的瑕疵の告知期間はあいまいであるが、数年後には明確な指針が示されることが予想される。

ガイドラインができあがれば、売主と買主にとって有効な判断材料となり、双方にとって安心となる取引ができることが期待されている。

2021年2月5日に、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」の第1回が開催された。今後のガイドライン策定が待たれる2021年2月5日に、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」の第1回が開催された。今後のガイドライン策定が待たれる

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