iDeCo(イデコ)とは
●iDeCo(イデコ)は、個人型確定拠出年金の名称
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で申し込み、自分で掛金を拠出し、自分で運用し、将来に掛金と運用益との合計額を老齢給付金として受け取る私的年金の制度だ。後述する税制優遇もあり、私たちの豊かな老後のための資産形成として重要な役割を担う制度だといえよう。
確定拠出年金には、「企業型」もある。
個人型確定拠出年金では、毎月一定額を自分で拠出し運用する。確定拠出年金(DC)には、会社が掛金を拠出する企業型確定拠出年金もあり、こちらの加入者は2020年9月末で748.8万人。一方のiDeCoは10月末で175.6万人となっている(厚生労働省データより)。iDeCoの加入者が少なく見えるが、これにはワケがある。
●2017年1月に加入対象者が拡大。公務員も主婦も企業年金加入者も対象に
個人型確定拠出年金は、確定拠出年金法に基づき、2002年1月から国民年金基金連合会が実施していて20年目を迎える。加入対象者の範囲が、企業年金加入者・公務員共済等加入者・私学共済加入者・国民年金の第3号被保険者(専業主婦等)へと大きく拡大されたのは、2017年1月から。対象者が拡大してからの歴史は、実はまだ浅い。
●愛称「iDeCo」は、2016年9月に決定!
個人型確定拠出年金の愛称が、公募により「iDeCo」に決定したのが2016年9月。その頃、2017年3月末の加入者は45.1万人だった。2020年には4倍近くに増加したことになる。関心の高まりがうかがえるが、昨今の株高も追い風となり、節税しながらの資産形成という面からiDeCoの投資信託へ資金が流入している。
●「確定給付型」は、企業があらかじめ給付額を約束
企業型の年金制度は、確定拠出年金(DC)のほかに、企業があらかじめ給付額を約束する確定給付型(DB)がある。DCもDBも、制度内容は企業によってさまざま。企業主催のライフプラン研修で聞いてみると、「自社の企業年金についてはよく知らない」という答えも意外と多い。
だが、確定拠出型は自分で運用方法を選んで掛金を拠出するのだから、放ったらかしがよいとは決して言えない。年金資産は退職後の暮らしを支える大切なお金だ。関心を持って関わっていきたいもの。お勤めの方はまず、勤め先の年金制度を確認してほしい。退職直前に「知っていれば積極的に運用したのに」となげいても時間を戻すことはできない。
●iDeCoに加入できる人
iDeCoは、20歳以上60歳未満のすべての人が基本的に加入できる。
60歳になるまで掛金を拠出し、60歳以降に資産を老齢給付金として受け取る。
60歳から年金資産を受け取るには、iDeCoに加入していた期間など(通算加入者等期間)が10年以上必要。通算加入者等期間が10年に満たない場合、例えば、6年以上8年未満だと62歳など、受給開始年齢が繰り下げられる。
加入対象者が前述の企業型確定拠出年金に加入している場合は、企業型年金規約でiDeCoに同時加入できる旨を定めている場合のみiDeCoへの加入が可能。なお、この点は要件が緩和され、2022年10月1日より、規約に定めがなくても原則として加入できるようになる。
※年金資産の受け取りについては、iDeCoの記事Vol.3」でお伝えする予定。
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【加入できる人】
① 国民年金の第1号被保険者
日本国内に居住している20歳以上60歳未満の自営業者、フリーランス、学生など(国民年金保険料の免除などを受けている者、農業者年金の被保険者を除く)。
② 60歳未満の厚生年金保険の被保険者(国民年金の第2号被保険者)
企業年金制度のない会社員
iDeCoに加入することを認めている企業型確定拠出年金の加入者
確定給付企業年金・厚生年金基金に加入している者
国家公務員・地方公務員の共済組合員、及び私学共済の加入者(私学共済の加入者のうち、iDeCoに加入することを認めていない企業型確定拠出年金の加入者は加入できない)。
③ 国民年金の第3号被保険者
20歳以上60歳未満の厚生年金に加入している者の被扶養配偶者。専業主婦(夫)など
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iDeCo(イデコ)のメリット・特徴
●3つの税制メリット
iDeCoは、「掛金の拠出」「運用」「給付の受け取り」の3つのシーンで、税制上の優遇措置が講じられている。確認していこう。
①掛金は、全額所得控除!
iDeCoの掛金の全額が所得控除の対象だ。仮に、毎月の掛金が1万円の場合、年間12万円が課税所得額から差し引かれる。所得税(10%)、住民税(10%)だとすると年間2万4000円の税金が軽減される計算となる。銀行や郵便局に毎月1万円ずつ預けても1円も節税にならない現状を考えると、掛金控除の軽減メリットは非常に大きい。
※所得控除の手続きは、掛金の払込方法や加入者区分によって異なるため要注意。
②運用益は、非課税で再投資!
通常、金融商品を運用した際の利益は、課税対象(源泉分離課税20.315%)だ。ところが、iDeCoでの運用益はずっと非課税扱い。投資信託では、運用益が再投資されるため複利の効果も期待できる。iDeCoの対象商品には定期預金もあるが、低利だ。預金のわずかながらの利息も、一般口座だと課税対象、iDeCoは非課税。運用期間が長いほど節税効果の差は大きくなる。
③受け取る時も、税控除!
iDeCoで運用した年金資産は、原則として60歳以降に老齢給付として受け取ることとなる。受け取り方法は、年金型式か一時金かを選択できるが(※)、いずれの場合も所得控除の対象となる。ただし、受け取り時には、公的年金や退職一時金などと合算されて税金が計算されるため、他の所得額によって控除の効果に影響があることも知っておきたい。該当する場合は、事前に試算しておこう。
(※)金融機関(運営管理機関)によっては、年金と一時金の併用も可。
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【受け取る場合も控除の対象】
・年金として受け取る場合⇒ 公的年金など控除
・一時金で受け取る場合⇒ 退職所得控除
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●その他のメリット「ポータビリティ」
iDeCoは、持ち運びができるため、転職しても継続可能。
長い人生においては、転職したり、自営業になったり。結婚して会社員から専業主婦(主夫)になる期間があるかもしれない。そのような働き方やライフスタイルが変化した場合も、iDeCoの加入者として掛金を拠出し、資産を運用することが可能だ。「途切れない」ことは資産運用において大変重要であり、メリットの1つだといえる。
例えば、転職の際、iDeCoの年金資産を企業型確定拠出年金に移管するようなケースでも、他の年金制度への持ち運び(ポータビリティ)が可能なため、拠出や運用が途切れない。ただし、企業型へのポータビリティは、会社の手続きや規約が関わるため、移管の可否などを含め就職先や転職先の担当窓口へ必ず確認してほしい。
●持ち運びには、変更手続きをお忘れなく
働き方の変化などにより、前項【1】の【加入できる人】に記載した国民年金の第1号・第2号・第3号被保険者の区分が変わる際は、iDeCoを継続する場合であっても、原則として変更手続きが必要。例えば、自営だったが会社に就職したというケースや、逆に、会社員だったが自営業に転身したケースなど。事前に、転職先やiDeCoの運営管理機関(※)へ確認しよう。
(※)運営管理機関:厚生労働大臣、及び金融庁長官又は財務(支)局長の登録を受けた、確定拠出年金の運営管理業務を実施する機関のことで、運用関連運営管理機関と記録関連運営管理機関がある。
運用関連運営管理機関:運用関連業務を行う運営管理機関。加入者などに対し、運用の方法を選定・提示する業務、運用の方法に関する情報を提供する業務などを行う。
記録関連運営管理機関:記録関連業務を行う運営管理機関。加入者の個人情報の記録管理、加入者からの運用指図のとりまとめ及び事務委託先金融機関などへの通知、給付を受ける権利の裁定などの業務を行う。
iDeCo(イデコ)の注意点
税金の軽減やポータビリティなど、メリットが大きいiDeCoだが、デメリットはないのだろうか。注意点を確認しておく。
●60歳まで利用不可!
年金資産の確保が目的のため当然なのだが、拠出した掛金もその運用益も60歳以降でないと、原則として引き出せない。例えば、30歳でiDeCoを開始すると、老齢給付として受け取れるのは30年後。長期に及ぶ運用だからこそ、毎月の拠出額は継続可能な額で設定することが重要となる。
あわせて、目標時期が3年後、5年後など、老後資金以外の短期目標のための資金準備には適さないことも肝に銘じておきたい。
●節税効果は納税者のメリット。課税所得ありが前提
iDeCoのメリットは、大きな節税効果だ。節税は所得に対する税金の節約であり、「掛金の所得控除」を受けるには、控除対象となる課税所得がなければならない。加入対象である専業主婦(夫)に課税所得がなければ節税メリットは受けられない。
節税メリットを受けようと、例えば、年収を130万円以上(※)にすると、第3号被保険者から外れ、自身で社会保険料を支払う必要が出てくる。国民年金の第3号被保険者が受けられる所得控除は、所得税が課税される年収下限の103万円以上から130万円以下の年収に対してのみのため、注意しておこう。
所得税、住民税、健康保険、公的年金などは、制度ごとに非課税や被扶養者の基準が設けられている。節税メリットについては、課税所得額や制度を十分に把握し、自身の状況や条件をもとに確認していただきたい。
※従業員(厚生年金被保険者)が501人以上の企業(従業員が500人以下で、労使で合意している企業を含む)に勤める国民年金の第3号被保険者等、短時間労働者の場合、年収106万円以上などの要件に該当すると社会保険の適用対象となる。
●将来の給付額は、運用成績により変動
iDeCoは、自分で運用方法を選択し自分で運用する仕組みだ。受け取り額は運用成績によって変動し、その結果は自分で引き受けなけれならない。いわゆる自己責任。この点が、確定拠出と確定給付の大きな違いだ。注意しておこう。
運用商品の中には、元本確保型もあれば、そうでないものもある。商品の特徴をよく理解して運用方法や運用商品を選ぶことが大切だ。
そして、年金資産額に影響するのが、コスト(手数料)。コストは、iDeCoを始める時、継続している時、給付を受け取る時、これらのシーンで発生する。手数料は、金融機関や商品によって異なるため、コストを意識した選択も大切だ。
一般的に、運用利益を追求するとコストは高めになり、結果の不確実さも拡大する。一方、高いコストを払ったからといって、必ず高利益につながるとは限らない。この点は、iDeCoでの運用も同じだ。注意しておきたい。
また、「安全第一」と元本確保型の例えば定期預金などで運用すると、運用益は確かに非課税だが、利息はごくわずか。しかも、手数料等は確実に発生する。
iDeCoを活用し、数十年をかけて資産を育てるならば、時間を味方に付けない手はない。リスク・リターン・コストについての基礎知識を身に付け、無理のない範囲で少額から長期投資にチャレンジしてみよう。
※なお、運用商品の選択については、iDeCoの記事Vol.2でお伝えする予定。
年金制度と拠出限度額
iDeCoは毎月一定額を拠出する仕組みだが、拠出額には上限が設けられている。加入対象者は制度改正によって拡大され、現在では20歳以上60歳未満の国民年金加入者のほぼ全員が対象となった。だが、拠出額はいくらでもOKとはなっていない。
これはひとえに、上限を設けないと国が困るほど、税制優遇メリットが大きい、ということではないだろうか。人口減少などにより、公的年金は昔のようなパフォーマンスを期待できない。自分の老後資金は自前で準備してほしい、というのが国の本音のようだ。大いにiDeCoを利用して資産形成に取り組んでほしいものの、高額拠出が可能な人や手厚い企業年金加入者にメリットが偏ることは避けねばならない。財政事情と公平性に配慮し設けられた拠出額の上限なのだ。
では、拠出額の上限をみていこう。必要なのは、自分が国民年金保険制度において何号被保険者に該当するのかという確認と、会社員の方は加入中の企業年金制度の確認だ。
●自分が何号被保険者かを確認
※前述「【1】iDeCoとは」の【加入できる人】を参照。
・第1号被保険者
自営業者は、拠出額の上限は月額6.8万円。
・第2号被保険者
会社員や公務員が第2号被保険者に該当するのだが、拠出額の上限の確認は少々複雑となっている。
勤め先に企業年金の制度がなければ、月額2.3万円。
企業年金がある場合は、確定拠出型の拠出限度額や確定給付型の有無により、月額2.0万円、または、1.2万円。
公務員等は1.2万円。
・第3号被保険者
専業主婦(夫)など、厚生年金の事業所で働いている夫や妻に扶養されている人は、月額2.3万円。
上記のとおり、会社員の月額拠出額の上限は、1.2万円・2.0万円・2.3万円だ。ちなみに、iDeCoの拠出額の下限は5,000円。この範囲内ならば、日頃の積立額と同じだったり、ヘソクリと同額だったり。毎月の使途不明金の額の方が多いぞ、というケースもあるかもしれない。いずれにせよ、肩を張らずに始められそうな金額ではないだろうか。
iDeCoでは、拠出中の金額変更や、拠出の一時停止も可能。検討して先ずはスタートし、税制優遇の対象期間をできるだけ早期に確保したい。
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【制度改正】拠出限度額の見直し
2022年10月より、iDeCoの拠出限度額が一部引き上げられる。対象者は、確定給付型(DB)の加入者と公務員など。1.2万円が2.0万円となる予定。
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●「5秒」でわかる「カンタン加入診断」
iDeCoの公式ホームページ内の“「5秒」でわかる「カンタン加入診断」”は、自分の状況や加入中の年金制度についての質問に回答していくと、拠出額の上限が提示される仕組み。質問に「わからない」と回答すると、「企業の給与担当に、加入資格について、確認してください」などと表示され、調べるべき事柄もわかる。
※「5秒」でわかる「カンタン加入診断」/iDeCo公式サイトより
https://www.ideco-koushiki.jp/start/
iDeCoの加入資格と月額拠出額は、(図1)を参照。
改正点のまとめ
では、最後に、直近の制度改正について確認しておこう。本文内で紹介した内容を含む。
2020年は、高齢期の就労が拡大する中で長期化する高齢期の経済基盤を充実できるよう、また、中小企業を含むより多くの企業や個人が制度を活用できるよう、企業年金や個人型確定拠出年金についての制度の見直しが行われた。以下、iDeCoに関わる主なものを取り上げる。その他の改正については、下記の厚生労働省のホームページを参照のこと。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html
①受給開始時期の選択肢の拡大(2022年4月1日施行)
・確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の受給開始時期の上限年齢引き上げ。
70歳⇒75歳
②加入可能年齢の拡大(2022年5月1日施行)
(企業型DC)65歳未満⇒70歳未満 ※ただし、企業によって異なる。
(iDeCo)60歳未満⇒65歳未満
※海外居住者も、国民年金に任意加入していれば加入可能に。
③iDeCoの脱退一時金の受給要件の見直し(2022年5月1日施行)
・外国籍人材が帰国する際など国民年金被保険者の非該当者で、通算の掛金拠出期間が短いことや資産額が少額であることなど、一定の要件を満たす場合は、iDeCoの脱退一時金の受給が可能。
④企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和(2022年10月1日施行)
・企業型DC加入者は、規約の定めや事業主掛金の上限引下げがなくても、iDeCoに原則加入可能。
ただし、企業型DCの事業主掛金、iDeCoの掛金、及び合計額に限度額あり。なお、企業型DCにおいて加入者掛金を拠出(マッチング拠出)している場合は、iDeCoの加入不可。
⑤企業年金加入者のiDeCoの拠出限度額の見直し(2022年10月1日施行)
・企業年金の確定給付型(DB)加入者のiDeCoの拠出限度額の引き上げ。
月額1.2万円⇒月額2.0万円
対象者は、(図1)「iDeCoの加入資格等」の右から3つめまでの枠に該当する方。
なお、掛金全体に5.5万円の上限があるため(表参照)、企業型DCとDBの事業主掛金が3.5万円を超える場合は、iDeCoの拠出限度額が、2万円を下回る場合がある。
計算式は、下記の通り。※DBには、年金払い退職給付を含む。
iDeCoの拠出限度額=月額5.5万円-(企業型DC+DBの事業主掛金額)≦ 2万円
主な改正点は以上。iDeCoは個人ベースのため、比較的わかりやすいが、企業年金は、運営主体によって内容がさまざま。転職や中途退職などによっても扱いが異なる。企業年金については、会社や基金の年金担当窓口へ確認すると安心だ。なお、iDeCoについては、本文内でもご紹介した、iDeCo公式サイトがお勧め。
https://www.ideco-koushiki.jp/
さて、今回のiDeCoの基礎を紹介する記事は、いかがだっただろうか。iDeCoを始めるにあたり、知っておきたいポイントに絞ってお伝えしたが、それでもなかなかのボリュームとなった。参考になれば大変嬉しい。事前準備を整えてiDeCoデビューを。
Vol.2は「iDeCoのはじめ方」、Vol.3は「iDeCoとの付き合い方・終わり方」を予定。






