コロナ禍の中、今年で11回を迎えた「U-35」

今年で11回目をむかえた「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2020」。コロナ禍の中ではあるが、2020年10月16日~26日の間、大阪市北区グランフロント大阪の「うめきたシップホール」にて開催されている。

この展覧会は、ひと世代上の日本を代表し全国で活躍する建築家と建築史家が35歳以下の建築家の出展候補者を全国から募り、毎年選者を替えて評価をする建築作品の展示会である。「これからの活躍が期待される若手建築家に発表の機会を与え、日本の建築の可能性を提示し、建築文化の今と未来を知る」ことを目的とし、出展作品の中から優秀な作品をその年の選考委員長が選出するというもの。選出された作品にはUnder 35 Architects exhibitionの Gold Medal賞が授与される。AAF アートアンドアーキテクトフェスタが主催するこの展覧会を含めての活動は、2018年日本建築学会教育賞を受賞している。

今年は、建築家でありSUPPOSE DESIGN OFFICE代表の谷尻 誠氏による審査を経て選出された7点の建築作品が展示された。選出作品と今年のGold Medal賞の紹介とともに、受賞者のインタビューを紹介したい。

「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2020」。</br>プログラムのひとつとして開催された記念シンポジウムのゲスト建築家の方々「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2020」。
プログラムのひとつとして開催された記念シンポジウムのゲスト建築家の方々

うめきたSHIP HALLに展示された7点の選出作品

選出された7点の建築作品は、10月16日から10月26日の間で「うめきたSHIP HALL」の2階で展示されている。選ばれた選出作品の概要と建築家は以下(※敬称略)。

①『学ぶ、学び舎』秋吉浩気
秋吉氏は、前年度のU-35Gold Medal賞を授賞し、今回はシードでの展示となった。前回同様、デジタル加工技術を使って自由な建築を生み出す手法を、今回は次世代の学びの在り方を実験するための「教育インキュベーション施設」として紹介。施工性と経済性を担保した「自由な表現」を提示した。

②『digging』松井さやか
背面に谷戸を配する特徴的な地形を背景に既成概念にとらわれずにこの敷地に住まうことを考えて設計をした住宅の事例。

③『HC3-Harare Child Care Center』神谷勇机+石川翔一
アフリカ・ジンバブエでの児童養護施設のプロジェクト計画。この地で貨幣の代わりに資産として保存される貯蓄レンガを使い、デザインや施工プロセスに落とし込んだ。

④『下北沢線路街 BONUS TRACK』山道拓人+千葉元生+西川日満里
小田急線線路跡地を敷地とし、住みながら商う暮らしを想定した新築の商店街の計画。雑木林の中に5つの兼用住宅と商業施設を配し、余白を生活動線と広場とした。

⑤『A house』葛島隆之
田畑に囲まれる敷地境界が不整形な場所に建つ住宅。環境を形作る要因から住宅を設計することを試み、田舎に建つ住宅の快適性について考えた。

⑥『vernacular』山田紗子
建築や空間をつくるときにバナキュラー(※その土地に根付いた固有の建築物)になりえるか、を考えている。自身の自宅である「daita2019」を含む、10つの建築模型から建築創造の手掛かりとなるような展示を心掛けた。

⑦『Architects 3.0 - beyond the borders』和田徹
「建築x言語」をコンセプトに、国や分野の境界線を越えた新しい建築の在り方・建築家の働き方を模索する。スイスを拠点に、建築家としての立居地と多言語文化の生活経験を駆使し、境界を超えた建築家の在り方を提示する。

それぞれが、自身で工夫を凝らし、建築模型や動画・設計図などを展示。会期期間には、会場にたくさんの方が訪れた。

今回選出された7点の展示。画像左上から時計回りに『学ぶ、学び舎』秋吉浩気、『digging』松井さやか、『HC3-Harare Child Care Center』神谷勇机+石川翔一、『下北沢線路街 BONUS TRACK』山道拓人+千葉元生+西川日満里、『A house』葛島隆之、『vernacular』山田紗子、『Architects 3.0 - beyond the borders』和田徹今回選出された7点の展示。画像左上から時計回りに『学ぶ、学び舎』秋吉浩気、『digging』松井さやか、『HC3-Harare Child Care Center』神谷勇机+石川翔一、『下北沢線路街 BONUS TRACK』山道拓人+千葉元生+西川日満里、『A house』葛島隆之、『vernacular』山田紗子、『Architects 3.0 - beyond the borders』和田徹

10月17日U-35記念シンポジウムⅠでは、今年のGold Medal賞が決定

10月17日の15:30からは、場所をグランフロント大阪北館4階ナレッジキャピタルナレッジシアターに移し、記念シンポジウムとして今回の展示の建築家のプレゼンと審査員による講評、そして今年のGold Medal賞の選出が行われた。

まずは今年コロナ禍の中で行われた「建築学生ワークショップ東大寺2020」の開催地より、東大寺の橋村執事長をはじめ、大阪中之島美術館 菅谷様、SANEI株式会社代表取締役社長 西岡様、株式会社オカムラ顧問 中村様、大阪市副市長 高橋様と来賓の方々から、新型コロナの中この会の開催の意義と若い世代の建築への期待がよせられた。

次に選出された7点の展示について、各出展者が5分間のプレゼンテーションを行った後、10分間ゲスト建築家・史家からの講評を受けるという流れで、熱い議論が交わされた。今回もゲスト建築家・史家10名の方々は、五十嵐太郎氏・倉方俊輔氏・芦澤竜一氏・五十嵐淳氏・石上純也氏・谷尻誠氏・平田晃久氏・平沼孝啓氏・藤本壮介氏・吉村靖孝氏である。

今回の審査委員長はゲスト建築家の谷尻誠氏。谷尻氏により、Gold Medal賞は『vernacular』山田紗子氏に贈られた。

シンポジウムは、若手建築家のプレゼンテーション、ゲスト建築家による出展作品の批評や白熱した議論が交わされたシンポジウムは、若手建築家のプレゼンテーション、ゲスト建築家による出展作品の批評や白熱した議論が交わされた

2020年のGold Medal賞は、山田紗子氏『vernacular』

翌日、展示会場でGold Medal賞を授賞した山田紗子氏にインタビューをさせていただいた。

-今回のU-35への参加はどうして決めたのでしょうか?
「実は、2019年にも推薦を受けて、企画書を提出したのですが落ちたんです(笑)。今年もまた推薦をいただき、去年は建物単体の模型とドローイングだったのですが、倉方先生から“新しい思想みたいなものを知りたい”という言葉があって、それをきっかけに今回の企画を考えました。この展示会は、また多くの学生の方々も見に来ますから、彼らへのアプローチのつもりで、建築が生まれる時のストーリーを軸としてvernacularという言葉でいくつかの自身の考えている建築を展示しました」

-コロナ禍でのご準備も大変だったと思うのですが
「自分たちの取組む時間が充実するようにという姿勢が大切なのだと思っています。建築の評価は結果、創り出した実物につきるのですが、それでもそれにいたるストーリーやアプローチにも目を向けていたい。建築設計をする場合、エスキス(=計画の初期にコンセプトや概念図等を簡易にまとめる下絵のようなもの)をするのですが、今回の展覧会にはその気持ちで挑みました」

-今回、他の展示物もそうでしたが、提示している言葉と生み出された建築物とのズレについて、ゲスト建築家の方々から指摘が多かったと思うのですが
「言葉は示した瞬間にそれぞれのとらえ方が変わるものです。今回、私は10個のキーワードを提示しましたが、いずれにせよ、ひとつひとつの言葉が建築を語るきっかけになればいいな、と思っていたので提示としては良かったと思っています。私としては、建築らしい言葉を使うよりも、もっと衣食の文化の中で使われている言葉にきっかけがあるんじゃないかな、と感じています。建築の目線からずらして、みんなが考えたくなる言葉を今回は提示しました」

-Gold Medal賞授賞のポイントはご自身では、どんなところだったと思いますか?
「10の展示の中で唯一できているdaita2019に象徴されるのかな、と思います。この家は両親が世代交代がおこることを考えて減築も含めた改築ができる自身の自邸ですが、完成したものの先の可能性を評価いただいたのかと思っています。コロナは、各国の慣習があぶりだされていて、国のテストのようなものだと思うんです。今までの価値観でなく、もっと広くなるべく遠いところを見たほうが気づきを与えるのではないかと思っています。クラシカルな建築家の考え方であった“目の前のものに対して新しい課題を提示する”という姿勢が今また問われているような気がします」

-これからどんなことに挑戦していきたいでしょうか?
「まずは、今やっている展示している模型が実現していくのが理想です。また、建築とランドスケープは今別々の専門として分かれていると思うのですが、そういった役割分担のヒエラルキーを変えたいなとも思います。風景は提案できる、その風景は人を育てる、感性を直接育てていける可能性が大いにあると思います。そういった意味で身近である家具もつくってみたいです」

「U-35 若手建築家による建築の展覧会 2020」の会期は2020年10月26日まで。
あとわずかの日程であるが、ぜひ会場を訪れて若手建築家のチャレンジを見てほしい。

■取材協力
AAF 特定非営利活動法人(NPO法人)アートアンドアーキテクトフェスタ
https://www.aaf.ac/

■「U-35 若手建築家による建築の展覧会 2020」 https://u35.aaf.ac/
2020年10月16日(金)~26日(月) 12:00~20:00
大阪駅・中央北口前 うめきたシップホール
〒530-0011 大阪市北区大深町4-1うめきた広場

ゲスト建築家で今回の審査委員長の谷尻誠氏(左)とGold Medal授賞の山田紗子氏(右)ゲスト建築家で今回の審査委員長の谷尻誠氏(左)とGold Medal授賞の山田紗子氏(右)

2020年 10月24日 11時00分