地域の優れた取り組みを表彰する「手づくり郷土賞」

会場には参加団体、一般参加者等を含む約180人が訪れ、熱のこもったプレゼンテーションに耳を傾けた会場には参加団体、一般参加者等を含む約180人が訪れ、熱のこもったプレゼンテーションに耳を傾けた

平成29年1月22日、都内で「手づくり郷土(ふるさと)賞グランプリ2016 ~磨いて 光った 郷土(ふるさと)自慢~」が開催された。
「手づくり郷土賞」とは、地域固有の自然や歴史、伝統、文化や地場産業等の資源を活用した地域づくりにおける、優れた取り組みを好事例として紹介し、さらに広く全国各地で魅力ある地域づくりが行われることを目的とする国土交通大臣表彰である。

近年、地方活性化が注目されているが、昭和61年度に創設されたこの賞は今年度(平成28年度)で31回目の開催であり、意外にも歴史が長い。今では知名度の高い、神奈川県横浜市の「歴史を活かした街並みの夜間ライトアップ」や鳥取県境港市の「水木しげるロード」といった観光地も、過去に手づくり郷土賞を得て今日に至っていると知れば、今回のグランプリ選出でどんな案件が受賞するのか、期待も一層膨らむものである。

今年度は応募案件44件(一般部門39件、大賞部門5件)の中から、22件(一般部門20件、大賞部門2件)が優れた取り組みとして「手づくり郷土賞」を受賞。「手づくり郷土賞グランプリ2016」では、受賞した全22団体によるプレゼンテーションが行われ、東京工業大学環境社会理工学院 齋藤潮教授をはじめとする手づくり郷土賞選定委員会の選考により、大賞部門から1件、一般部門から2件のグランプリが決定した。

大賞部門グランプリ・年間300件以上のイベントを企画する門司港レトロ

大賞部門は過去に「手づくり郷土賞」を受賞し、その後なお一層の活動の充実が行われるなど、継続的に魅力ある地域の実現に寄与しているものが選定される。

今年度の大賞部門グランプリを獲得した「福岡県北九州市 歴史と海峡を活かしたまちづくり~門司港レトロ~」は、取り壊しの危機にあった門司港等の歴史的建造物の保存運動を契機に、観光地づくりとまちづくりを推進。平成19年度に「手づくり郷土賞」を受賞し、その後9年という時間を経て、現在では年間300件以上の多様なイベントを企画しまちを盛り上げている。

例えば「門司港めぐる」と題されたまちあるきは、九州鉄道記念館の館長と駅や鉄道を見学するコースや、門司港の生き字引ガイド・ウチヤマさんとお寺や神社に立ち寄り歴史を語るコースなどが企画されている。一般的な観光ガイドとは異なり、門司港を愛する案内人がまちを紹介するというスタンスで、穴場スポットや隠れエピソードなどを教えてくれるというのが面白い。

(左上)まちづくりのきっかけとなったJR門司港駅(右上)レトロエリアには大正、昭和のモダンな建物が今でも残っており、当時の雰囲気が今でも感じられる(左下)まちあるき「門司港めぐる」は通常の観光案内ではあまりないような、場所・風景・体験・物語を、案内人独自目線で案内(右下)ゴールデンウイーク期間に開催される門司海峡フェスタ(左上)まちづくりのきっかけとなったJR門司港駅(右上)レトロエリアには大正、昭和のモダンな建物が今でも残っており、当時の雰囲気が今でも感じられる(左下)まちあるき「門司港めぐる」は通常の観光案内ではあまりないような、場所・風景・体験・物語を、案内人独自目線で案内(右下)ゴールデンウイーク期間に開催される門司海峡フェスタ

一般部門グランプリ・桜に込めた2つの地方の熱い思い

優れた取り組みに甲乙つけがたいという理由から、一般部門からは2件のグランプリが選定された。一つは東日本大震災による被害の悔しい思いが、もう一つは賑わいがなくなっていく故郷に恩返しがしたいという思いがきっかけとなっている。いずれも今ある資源を有効活用するのではなく、自分たちの手でイチから作っていくというプロジェクトで、大変な努力を要したであろうことは容易に想像できる。

●「岩手県陸前高田市 桜ライン311〜未来へのまちづくり〜」
手づくり郷土賞の取り組みには、環境保全や清掃活動、新たな観光産業発掘、地域おこしなどがあるが、桜ライン311は『防災意識の伝承』という目的がある。きっかけは、平成23年3月11日に発生した東日本大震災だ。破滅的な被害を受けた陸前高田市は、その記憶を風化させないために、津波到達ラインに桜を植樹し、後世の人々に津波が来た時に桜並木よりも上に避難するよう伝承活動を行っている。これまでに212箇所、1,020本を植樹。認定NPO法人桜ライン311の伊勢さんは「最終ゴールの1万7千本の桜の植樹には、まだこれから20〜30年かかるが、全国の皆さんと一緒に頑張りたい」と思いを話した。

●「宮崎県延岡市 ふるさとへの熱い思いが奇跡の堤防を産んだ」
人口減少等で賑わいを失いかけていた故郷に恩返しがしたいという有志が集い、平成21年から活動を開始。これまでに河津桜300本と100万本の菜の花を五ケ瀬川堤防沿いに植えた。堤防という場所がら水はけが悪く、年間250日もの地道な維持管理によって奇跡の堤防ができたそうだ。春には「延岡花物語」という花を楽しむイベントが行われ、2016年には2日間で述べ約35,000人の観光客が訪れた。

(左上)学生による桜の植樹会/陸前高田市(右上)津波到達ラインに咲く桜の木/陸前高田市(左下)約1か月咲き続ける河津桜に目を付けた/延岡市 (右下)桜と菜の花が同時に満開となる時期に開催される「延岡花物語」/延岡市(左上)学生による桜の植樹会/陸前高田市(右上)津波到達ラインに咲く桜の木/陸前高田市(左下)約1か月咲き続ける河津桜に目を付けた/延岡市 (右下)桜と菜の花が同時に満開となる時期に開催される「延岡花物語」/延岡市

地方活性化のカギは、関心を持って誰かと共有することから始まる

多様なまちづくりは参加者同士の刺激にもなっていた。今後、有機的に活動が広がっていくことを期待したい多様なまちづくりは参加者同士の刺激にもなっていた。今後、有機的に活動が広がっていくことを期待したい

一般部門の取り組みの中には、私がかつて実際に訪れた場所もあった。福岡県朝倉市の「山田堰・堀川用水・水車群」である。青々と広がる田んぼの中で優雅に回る三連水車はとても美しく、これまでと同じようにこれからもずっと在り続けるように思えた。しかし、木材で作られている水車は5年ごとにメンテナンスする必要があり維持管理に費用がかかること、また不法投棄による環境の悪化などの問題があったという。現在は1,000名を超える住民参加により不法投棄は大幅に減少し、花の植栽やライトアップ等に取り組みを広げ観光面にも力を入れているということで、ぜひ末永く維持してほしいと思う。

また、今までに縁がなかった地域で、面白そうな取り組みもあった。新潟県新庄市の「新庄市エコロジーガーデン〜先人が築いた歴史を次の世代へ〜」である。昭和初期に建てられた蚕糸試験場を会場に、月に1度手づくり市「キトキトマルシェ」を開催しており、農作物や雑貨などの販売、ワークショップなどを通して人と人との触れ合いを大切にしているそうだ。来場者による地域振興だけでなく、スタッフ側も地元の良さの再発見やコミュニティ形成に繋がるなど、若い世代を上手く取り込んでいる点もパワーが感じられる。

グランプリ発表後、齋藤委員長は次のように講評を述べた。「受賞活動の多くは、誰かが何かを言い出し、賛同されることから始まり、輪が広がっている。 これを十年以上も継続するという信頼関係は素晴らしい財産。 大切にして活動を続けていって欲しい。」

今回プレゼンテーションの舞台に立った全22団体の活動内容は、住宅地の中の小さな一角から、東京ドーム数十個分にも及ぶ広大な敷地まで、規模の大きさはそれぞれであった。しかし、自分たちが住むまちを良くしていこうという熱い想いは全てに共通していた。

手づくり郷土賞グランプリ2016
http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo03_hh_000151.html

2017年 02月22日 11時05分