「とよたまちさとミライ塾2016」10月1日から11月30日まで開催
商業観光課の森田さん(左)と事務局の西村さん(右)。とよたまちさとミライ塾の運営にお二人がそろって携わるのは本年度が初めてとのことだが、長年一緒に組んでいるかのようなコンビネーションの良さ。“豊田をもっと面白いまちにしたい”という共通の思いがつながりを強めているのかもしれない
クルマのまちとして知られる愛知県豊田市で、10月1日〜11月30日の2ヶ月間「とよたまちさとミライ塾2016」が開催されている。
本年度で3回目の開催となる「とよたまちさとミライ塾」は、さまざまなプログラムを短期間に集中して行う体験交流型のイベント。用意されているプログラムは“とよたを体験”することのできる内容となっており、その1つ1つのプログラムを「案内人」と呼ばれる人たちが企画から作り上げて参加者をナビゲートする。「案内人」となっているのは、豊田市で活動しているか豊田市に活動拠点のある人たちだ。
「とよたまちさとミライ塾」の目的やこれまで実施してきた手応えなど詳しい話を伺いに、主催している豊田市観光協会を訪ねてみた。豊田市観光協会の森田悠暉さんと、とよたまちさとミライ塾事務局の西村新さんに協力いただいた。
工業都市のイメージが一変する豊田の魅力を発信!
「とよたまちさとミライ塾」は“地域資源の掘り起こしによる観光まちづくり活動の活発化”“地域資源、魅力の再発見による暮らし満足の高まり”“ビジネスチャレンジによる産業の活発化”を目的に、2014年からスタートした。
「豊田市はクルマのまちと言われていて、ほかの地域の方からは工業都市というイメージで見られることが多いんですが、実は豊かな自然に恵まれた名所もたくさんあるんです。そこで、あまり知られていない豊田のまちと里の魅力を多くの人に知ってもらおうということになり、“オンパク手法(※)”という地域活性化の方法を取り入れた『とよたまちさとミライ塾』を開催することになりました」(森田さん)
スタート時は73個だったプログラムが第2回目には100を超え、本年度は105個もの多彩なプログラムが出そろっている。参加者はどこの地域からでも参加できるが、事前にインターネットか電話での申し込みが必要だ。参加者は第1回目が約2千人、第2回目が約3千人強、そして本年度は10月の時点で2,850人の人々が参加して、豊田の魅力を満喫しているという。
(※)オンパク手法…2001年に別府温泉で開催された「温泉博覧会」をモデル化した地域活性化の取り組み方法。「プログラム」と呼ばれる小規模の体験交流型イベントを短期間に集中して実施するのが特徴。
昨年度開催された「とよたまちさとミライ塾2015」のプログラムの一例。(左上)「写真って何だろ?写るものと自分のこころ」(左下)「万能野菜“桑の葉”料理体験と、蚕・繭の使える話」(右上)「こだわりの田んぼで行う伝承農法による稲刈り体験!」(右下)「Japanese style BBQ "IRORI" for foreigners」。案内人は初めての人もいれば毎年出ている人もいるが、プログラムの内容はその年ごとに企画される一期一会のものばかり。毎年参加しても、毎年違った豊田の面白さを発見できるのが「とよたまちさとミライ塾」の魅力。参加者アンケートでは「また参加したい」という回答が90%以上にのぼるという
2016年度は105個の多彩なプログラムを体験できる
「とよたまちさとミライ塾2016」の105個あるプログラムは、内容が一目でわかるように〈里山を感じる〉〈食と農を楽しむ〉〈歴史・文化・アートを巡る〉〈産業・工芸にふれる〉〈環境・交通を知る〉〈美と健康を極める〉〈まちなかを遊ぶ〉と8つのカテゴリーに分類されている。参加したい人は、まず自分の興味のあるカテゴリーをチェックし、そのなかから参加したいものを選ぶことができる。案内人がアイデアを凝らして企画したとあってプログラムは独創的でユニークなものが多く、キッズ向けや通訳ありの外国人向けプログラムも用意されている。参加費や定員は各プログラムによってさまざまだ。
「豊田らしいプログラムというと〈環境交通〉の『“Ha:moハーモ”でミライと歴史を感じるツアー』ですね。豊田には、新しい交通のしくみとして実証実験を行っている“Ha:mo(ハーモ)”という電動のパーソナルモビリティがあるんです。これに乗って豊田の観光地を巡ろうというプログラムで、10月に第1回目が開催されて9名の方が参加者されました。そのうちのおひとりは横浜の方で、たまたま道の駅でミライ塾のパンフレットを見てHa:moが面白そうということで申し込まれたそうです。わざわざ駅前に宿を取って参加されたとおっしゃっていました」(西村さん)
なかには、とよたまちさとミライ塾ならではのプレミアム感あるプログラムもあり、あっという間に定員が埋まってしまうものもあるそうだ。
イベント後も網の目でつながっていけるような交流を!
第2回目の開催から事務局として運営に携わっている西村さんには、「とよたまちさとミライ塾」を単なる期間イベントで終わらせたくないという思いがある。だからこそ、参加する人だけでなく案内人や運営する行政まで巻き込んで持続的につながっていけるような仕掛けを考えながら、このイベントを手がけているという。
たとえば、案内人たちの学び場としてイベント開催前に「パートナーカフェ」を開き、プログラムの宣伝などに役立ててもらえるよう、写真の撮り方講座やコピーライター講座、プレスリリースの仕方講座などをプロの講師にレクチャーしてもらうということを試みた。そうした場を提供することで案内人同士の交流が生まれ、互いのプログラムに参加しあったり、SNSの宣伝をシェアして情報の拡散力を強めたり、プログラムをコラボレーションして1つのプログラムをつくったりするといった相乗効果が生まれたという。
「イベントが終わってからも案内人の皆さんが、いろいろな人と交流して網の目でつながっていけるようなことをしたいんです。そのほうが豊田のまちがもっと面白くなりますからね!」と西村さんは言う。そんな西村さんの思いに触れ、森田さんも「豊田市には世界中の方々が視察に訪れるので、“クルマのまち豊田はこんなに面白いまちなんだ!”と思ってもらえるまちにしたいですね。世界一面白い中核都市を目指してもいいんじゃないでしょうか」と賛同していた。
おすすめプログラムを体験してみよう!
「とよたまちさとミライ塾」は、もちろん観光にも効果をもたらしている。昨今、観光というとただ名所を見て回るのではなく、その土地で何かを体験できるようなツアーに人気が集まっている。そうした背景から、豊田エリアの観光ツアーを手がけている企業から観光協会の森田さんに、体験ができるような名所を教えてほしいと問い合わせがあったそうだ。そこで「とよたまちさとミライ塾」を紹介したところ、プログラムのなかからエコフルタウン・松平郷・味噌蔵の見学、五平餅づくりが体験できるツアーが組まれて実施されたという。
お話を伺っているうちに筆者も何かのプログラムに参加したくなってきたので、森田さんと西村さんに、まだ申し込みが間に合うおすすめプログラムを尋ねてみた。
「お子さんと一緒に自然を満喫するなら“しもやまの里山でどんぐり拾いをしよー『昆虫や鳥が住む森をつくろう!』”などがいいと思います。アートに興味のある方には、和紙にLEDとセンサーを組み合わせて作る“小原和紙とLEDで作るイルミネーション”がおすすめです。作ったイルミネーションはもちろん持ち帰れますよ」(森田さん)
「細かい手作業がお好きな方や女性の方でしたら、ナイフ1本で石鹸を彫刻してクリスマスオーナメントをつくる“タイの伝統工芸・ソープカービング体験!!”などが面白いと思います。ちょっと変わった体験をしてみたいという方には、燃料電池自動車MIRAI(ミライ)電気を使った天体望遠鏡でエコフルタウンの星空を観測する“ミライの星空観測”がおすすめです。地産地消のコース料理も付いていますよ」(西村さん)
どれも面白そうで迷ってしまう。Webをチェックしたところ、参加したいと思ったプログラムがすでに予約満員のものもあった。来年度の開催まで待ってもいいが、できれば本年度に何か1つは体験したいので、筆者はさっそく申し込んでみる!
【取材協力】
豊田市観光協会(豊田市役所産業部商業観光課内)
とよたまちさとミライ塾事務局(株式会社こいけやクリエイト内)
【関連リンク】
ジャパン・オンパク
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