人口減少、世帯数減少は年々深刻化する

40年後の人口増減状況「平成26年度土地に関する動向:国土交通省」より引用40年後の人口増減状況「平成26年度土地に関する動向:国土交通省」より引用

国土交通省がまとめた「平成26年度土地に関する動向」(土地白書)について、前回は地価や土地取引の動向などについて紹介した。引き続き今回は、「人口減少社会に対応した土地利用」の項目についてみていくことにしよう。

土地白書では、我が国の人口動態について国立社会保障・人口問題研究所による「日本の将来推計人口(2012年1月推計)」および「日本の世帯数の将来推計(2013年1月推計)をもとに考察がされている。国内の人口は2010年の約1億2,806万人から、40年後の2050年は約24%減の約9,708万人にまで減少するとし、また、世帯数は2020年の約5,305万世帯をピークにその後は減少に転じて、2035年には約4,956万世帯になるとする推計だ。

人口の減少は大都市圏も例外ではなく、2050年の人口が2010年比で半数以下となる地域も全国に広がる。2050年時点で人口増加が見込まれるのは、大都市圏の中でも限られたごく一部の地域でしかない。また、総務省の「国勢調査」および国土交通省の推計値により作成された資料では「政令指定都市等」の人口減少率が約15%、現状の人口規模が30万人以上の都市における人口減少率が約21%なのに対して、現状が「10〜30万人」規模の都市からは全国平均の約24%を超える減少幅の予測が示された。とくに現状の人口が1万人未満の町村部は深刻で、全国平均の2倍ほどのスピードで人口減少が進んでいく。

現時点でも過疎化の進んだ山間地域などでは、近くに医療機関がない、自家用車を持たない高齢者には移動手段がない、日常の買い物に不自由するなどの事態が生じている。今後さらに人口減少が加速すれば、生活の困難さから居住者がゼロになる地域が続出することも想定しなければならないだろう。

地方都市における対策は急務となっている

人口や世帯数の減少を見据えた対策は、全国ほとんどの市区町村で進めなければならないことであるが、地方都市では特有の問題を抱えていることが土地白書で指摘されている。過去の人口増加の受け皿として郊外の開発が進んだ地方都市では、人口増加の割合に比べ市街地面積の拡大が極めて大きかったようだ。

三大都市圏と政令指定都市を除いた全国の県庁所在地における1都市あたりの平均人口は、1970年から2010年の間に2割程度増えたのに対し、DID面積はほぼ倍増したという。DIDとは、一定の人口密度以上となる地区が隣接する状態の「国勢調査による人口集中地区」を指すが、要するに「整備された市街地面積が2倍に拡大した」と考えて差し支えないだろう。

過去40年間で人口が2割増え、市街地面積が倍増した。そして今後40年間で人口は2割以上減るのである。当然のことながら、拡大した市街地のインフラを現状のままで維持することはできない。公共施設や公共交通、福祉施設などの維持が困難なだけでなく、収益が求められる商業施設や医療施設、さらにはチェーン店や個人経営の商店も、撤退や閉店に追い込まれることになる。ひいては住民の生活も不便さが増し、人口減少に拍車をかけることにもなりかねない。

そこで今後の施策として注目されているのが「コンパクトシティ」だが、2014年4月時点において、全国の798都市(政令市・市・区)のうち62%の都市が「コンパクトシティ等を都市計画マスタープランに位置付けている」とし、10%の都市が「今後位置付ける予定」としている。

コンパクトシティ化の前提として欠かせない地域住民の合意

土地白書には、コンパクトシティの先進的な取組として富山県富山市および北海道夕張市の事例が、さらに公共不動産の再配置による都市機能充実化の取組として新潟県長岡市の事例が紹介されている。具体的な内容は土地白書を参照していただきたいが、2014年8月に「改正都市再生特別措置法」が施行され、2014年4月には国土交通省により「まちづくりのための公的不動産有効活用ガイドライン」も作成された。全国各地での取組がこれから具体化していくことだろう。

しかし、コンパクトシティ化などを推し進めるにあたって重要となるのが地域住民の合意だ。場合によっては、それがいちばんの障害にもなると考えられる。土地白書では、国土交通省が実施した「土地問題に関する国民の意識調査」の結果がまとめられているが、土地利用の集約化に対して「集約すべき」が14.0%、「地域住民の合意があれば集約すべき」が52.7%、「集約すべきではない」が18.3%だった。およそ7割弱の人はコンパクトシティの形成を肯定的に捉えているが、その前提として「地域住民の合意」を挙げる人が過半数を超えている。

また、コンパクトシティ化の必要性は理解しても、居住や都市機能を誘導すべき区域から外れた場所に現に居住する人からみれば「見捨てられる」という印象は拭えないだろう。区域外では地価の下落幅も大きくなり、誘導区域へ移転しようとしてもその負担が過大になりかねない。区域外では空き家の増加ペースが早まるなどの事態も想定される。

さまざまな課題が凝縮した農山村地域

これからますます深刻化する人口減少、それに伴う空き家の増加、生活利便性の低下など、多くの課題は全国共通のものであるが、それらの課題を凝縮したのが農山村地域、過疎地域だろう。土地白書には「農山村地域等の現状と取組」というテーマも設けられている。「山間農業地域における将来人口推計」では、2010年から2050年までの40年間に人口が約7割減少し、それと同時に高齢者比率が著しく上昇するとの予測が示された。

人口が著しく減少すれば、日常生活に欠かすことのできない施設やサービスも次第に失われていく。さらに、それらの点在化が進むことで、高齢者にとっては「施設があっても、そこまで行くことができない」といった事態も起きるだろう。総務省が2014年度に実施した「集落対策の取り組みに関する調査」では、全国797の過疎関係市町村のうち91%が「空き家増加、商店の閉鎖、公共交通利便性低下などの住民生活」、87%が「働き口減少、耕作放棄地増大などの産業基盤」を課題として挙げている。

コンパクトシティは「地方都市」の問題として語られることも多いが、過疎に悩む農山村地域ほど「コンパクトタウン」「コンパクトビレッジ」の必要性に迫られているのかもしれない。農業に従事する世帯は分散せざるを得ない側面もあるだろうが、一般世帯や公共施設などを「高齢者が歩いて暮らせる範囲」に集約していくことも推し進めていくべきだろう。

農山村地域では、過疎化、高齢化などさまざまな問題が山積している農山村地域では、過疎化、高齢化などさまざまな問題が山積している

官民が一体となった対策が望まれる

明治維新の頃に約3,300万人あまりだった日本の人口は、第二次世界大戦の時期を除き、ほぼ一貫して増え続けてきた。そのため、新たに宅地開発をして住宅を増やすことは必然の行為だっただろう。しかし、弥生時代まで遡っても前例がないほど急速なペースで日本の人口は減っていくことが見込まれている。住宅や宅地に関しては、これまでの考え方が通用しない時代へと進む、まさに大転換の最中だといえるだろう。ところが、旧態依然とした発想からなかなか抜け出せない自治体もあるようだ。

土地白書の内容からは少し離れるが、例えばすでに平均を上回る人口減少が進み、空き家問題も深刻化している某自治体では、大規模な宅地開発が現在も行われている。自治体側は定住促進の効果があるとし、開発会社は他の自治体から住民を呼び寄せる効果もあるとしているようだが、「宅地開発をすれば人が集まる」という考え方はもう通用しないだろう。また、首都圏のある自治体では、森に隣接する市街化調整区域内での広大な開発計画を容認した。開発工事はこれからだが、市の評価において人口減の想定が反映されていないとする地域住民の反対意見も強いようである。

それぞれの自治体で明確な将来像を描き、それに沿ってしっかりと「誘導」していかなければ、同じような問題はこれからも各地で起きるだろう。「法律に抵触しなければ認めざるを得ない」という自治体の立場もあるようだが、民間企業の宅地開発計画をそのまま認め続けていれば、将来は大きな負の遺産となりかねないのだ。官民が一体となって、長期的な視野に立った同じ目標に向かうことも欠かせない。

2015年8月14日に「国土形成計画(全国計画)」と「第5次国土利用計画(全国計画)」が閣議決定された。国土利用計画には利用区分ごとの面積目標が定められているが、これまで常に増加目標が掲げられていた住宅地面積は今回、初めて据え置かれた。だが、これからは住宅地の縮減を真剣に考えなければならない時代を迎えることだろう。

2015年 10月02日 11時18分