家で子どもと過ごす時間を大事にしている

雅楽師として、そして幅広い趣味人として知られる東儀秀樹氏。前回は家づくりのこだわりや、音楽創りの場としての住まいについて語っていただいた。引き続き、東京都内にある東儀氏自宅での取材レポートをお伝えする。今回は家庭人としての東儀氏の住まいへの想いを中心に紹介していきたい。

一男の父親でもある東儀氏。息子さんが赤ちゃんの頃からオムツを替えたり、あやしたりと積極的に子育てに関わり、8歳に成長した今も一緒に遊んだり、出かけたりと、自他ともに認める「スーパーイクメン」である。子育てで心がけていることは、「子どもの話をしっかり聞いてあげること」。自宅のスタジオで仕事をしているときでも、息子さんがやってきたときは作業の手を休め、一緒にギターを弾いたりして遊ぶという。「仕事の時間が減ってしまって惜しい、なんて全然思いません。子どもが何かを親に話したい、何かを一緒にやりたいと訴えてきたときに受け止めてあげることが大事だと考えていますから。何より、僕自身、何かに夢中になっている息子と接していることが楽しいんです」と、東儀氏は笑顔で話す。

毎年クラシックカーラリーに参戦するほど、大の車好きの東儀氏。そんな影響を受けて息子さんも車が大好きでドライブに出かけるのも大好き。自宅のガレージにはクラシックカー5台とバイク2台が置かれ、うち3台はいつでも出動できるよう、シャッターに直面させるようにして配置している毎年クラシックカーラリーに参戦するほど、大の車好きの東儀氏。そんな影響を受けて息子さんも車が大好きでドライブに出かけるのも大好き。自宅のガレージにはクラシックカー5台とバイク2台が置かれ、うち3台はいつでも出動できるよう、シャッターに直面させるようにして配置している

子どもの場所と大人の場所とでメリハリをつけている

もの作りが好きで工作も得意という東儀氏。写真は、息子さんのために作ったペットボトルのミニカーと飛行機

もの作りが好きで工作も得意という東儀氏。写真は、息子さんのために作ったペットボトルのミニカーと飛行機

「息子が幼稚園の頃までは、しょっちゅう、寝室の畳とかに落書きをしていました。でも、僕も妻も「汚してはダメ!」という風には叱りませんでした。それどころか、幼い子どもにしか描けない素晴らしい絵を描いてくれるのでとても感心していましたね。その後、畳の部屋をフローリングに改修したのですが、その畳を捨てられなくて切り取って保管しているんです。息子が小さかった頃にしか描けない絵だと思うと、貴重なアートです」

このような子育て論を披露してくれた東儀氏だが、家の中は子どもの場所と大人の場所とのメリハリをつけるようにしているという。

今回の取材で見せていただいた部屋のほか、ダイニングキッチンや子ども部屋、寝室などがあり、それらは「生活の空間」と東儀氏は位置づけている。「ミーティングルームなどお客様を受け入れる空間はいつも整然としています。大人の場所ですから。それに対して、生活の空間では、息子がおもちゃや本を散らかしていたり、息子の部屋ではカブトムシの幼虫を育てていたりして、雑然とした雰囲気があります。でも、僕は気になりません。子どもはいろいろなことに興味をもって、モノを取り出して見たりして散らかしてしまうわけです。そういう子どものワクワクした気持ちとか熱さというものは大切にしたいし、そういう子どもに接することで僕たち親もワクワクできるんです」

大人が選んだいいモノの美しさを子どもにも感じてもらいたい

リビングルームのソファの後ろには、大きな鏡がある。鏡に映っているのは、庭の木々の緑リビングルームのソファの後ろには、大きな鏡がある。鏡に映っているのは、庭の木々の緑

中2階のリビングルームは家族のくつろぎの場であり、お客様を通す場でもある。この場所は大人と子どもが一緒の過ごすスペースではあるが、東儀氏は大人仕様の空間にまとめているという。家具は「この空間にぴったりなもの」にこだわり、すべて特注でしつらえている。ソファの背後には大きな鏡を配しているのだが、「鏡があることで部屋を広く見せることができたり、異空間を演出できる効果を期待できます」という狙いがあってのもの。ほかの部屋もそうなのだが、このリビングもまた、東儀氏のこだわりとアーティスティックなセンスが現れている空間なのだ。

そして、こんなこだわりと想いもある。
「小さな子どものいる家って、ローテーブルやローボードの角などに子どもがぶつかってケガをしたりすることのないよう、ガードやクッションを取り付けているケースが多いと思います。でもこのリビングルームをはじめ、わが家では一切、使っていません。家具や調度品の美しさを損ねたくないという思いもあるし、大人が選んだいいモノの美しさを息子なりにも感じてほしいと願っているからです」

さらに東儀氏はこう続ける。
「確かにローテーブルなどにぶつかれば、少々擦りむいたりするかもしれませんが、そのくらいならいいだろうと考えているんです。仮にぶつかったとしても、親がきちんとケアをすることで大きなケガにはいたらないだろうと。また、“ぶつかって痛い思いをした”ということからも、子どもは学んでくれると思うんです。これからはぶつからないように気をつけようとか、親が手当てをしてくれてケガが治ったという経験を通して親の愛情を感じ取ってくれることにもなるでしょう。もちろん、ケガはさせないにこしたことはありません。日ごろから僕らも気をつけてきたので、これまでぶつかったりすることなく、やってこられました」

家はいつも幸せな気分でいられる場所

リビングルームには東儀氏が選んだ家具やインテリアのほか、息子さん作の木彫りの仏像や、奥様が作ったフラワーアレンジメントなどが飾られていた。「家内はフラワーアレンジメントが好きで、この部屋にはいつも季節を感じることができるような花が飾られています。こうした家族が作ったものは、世界に一つしかないオリジナリティです。これを僕は大事にしたいです」。

この室内には50インチ画面の大型テレビが置かれているのだが、テレビをつけっぱなしにしているような状況はなく、見たい番組やDVDだけを見るというのが東儀家ではごく自然なルール。「我が家はコミュニケーション豊かなんです。家族3人でその日の出来事とかいろいろなことを話す。これがとても楽しいんです」

そんな家族との温かなときを過ごせる家を、「僕がいつも幸せな気持ちでいられる場所」と東儀氏は言う。「とにかく僕は家が大好きです。コンサートなどで地方に出張することも多いのですが、仕事を終えると1分1秒でも早く家に帰りたくて、駅の階段をダッシュで駆け上がったりします。1本でも早い列車に乗れれば、早く家に帰れるのですから!」

中2階のリビングルームは庭に面し、明るく開放的な雰囲気。この部屋では家族3人でなごんだり、親しい友人を呼んでミニパーティを開くこともあるという

中2階のリビングルームは庭に面し、明るく開放的な雰囲気。この部屋では家族3人でなごんだり、親しい友人を呼んでミニパーティを開くこともあるという

地元のイベントにも参加し、地域の人とのふれあいを楽しむ

理想の家を建て、音楽家として、一児の父親として充実した時間を過ごしているという東儀氏。もうひとつ、住まいに関してとても満足していることがある。それは世田谷区の、子どもの頃から住み慣れたこの地域に家を構えることが叶ったこと。

東儀氏は父親の仕事の関係で1歳から7歳までをタイで過ごしたのだが、帰国して住んだ地が世田谷区の今の家があるあたりという。「すごくいい街です。古くから住んでいる人が多くて、地域の人同士の結束もかたいんです」。

近隣には子どものころからの顔なじみも多く、買い物に出かけたときなどは、「東儀さん、こんにちは」とか「出演していたテレビ番組、見たよ」などと、話かけられることは日常茶飯事といい、そういう地域の人たちとふれあえるのがうれしいと言う。
「息子にも、ご近所の方が声をかけてくださるんですよ。今、一般的に都会での暮らしは、お隣や近所の人がどんな人なのかわからないという環境になっていることが珍しくないと思うんですが、ここには下町っぽさがあって、そこで暮らす子どもたちの見守りが行き届いているなと感じます。ありがたいことです」

地元を愛してやまない東儀さん。地元商店会が主催する音楽祭に出演したり、地域の神社の秋祭りで神輿をかつぐなど、地元の人たちと一緒に「わくわくする時間を共有すること」を楽しんでいるという。

家が好きで地元も好きという東儀氏。この先、息子さんも成長していくだろう。住まいの将来については、何かビジョンがあるのだろうか?
「今の家にとても満足しているので、不満はありません。でも、この先、チャンスを与えてもらえるならもう1回、建て替えたい。音楽もそうですが、そのときどきでベストを尽くしたからといって、ここまでやればいいというものではありません。”次はもっといいものを “とチャレンジしたくなる。そんな気持ちは、いくつになっても持ち続けたいです」

自分らしい住まい方にこだわり、理想の家を追求し続ける。こんなふうに前を向いて、自分の家、そして人生に向き合えることは素敵なことだと思う。そんなことを感じさせてもらった取材だった。

                                   (撮影/安友康博)


##東儀秀樹氏のこだわりの家や室内のインテリアの詳細は下記から。(HOME'S BOXで掲載!)
http://box.homes.co.jp/collection/00002/

中2階のリビングルームへと続く階段にてポーズをとってくれた東儀秀樹氏。「もしも家を建て替えるチャンスに恵まれたら、グランドピアノを置けるようなリビングルームにしたいです」中2階のリビングルームへと続く階段にてポーズをとってくれた東儀秀樹氏。「もしも家を建て替えるチャンスに恵まれたら、グランドピアノを置けるようなリビングルームにしたいです」

2015年 09月24日 11時08分