名古屋市港区の工場跡地を再利用。「東邦ガス」によるスマートタウン構想とは?
電力を供給・管理し、情報通信によってまち全体の省エネ化を図る「スマートタウン」。これをガス会社が手がけると聞くと、少々意外に思われるのではないだろうか。
東海3県でガス事業を行う東邦ガスでは、2017年完成に向けて、名古屋市港区で「ガス・電気・熱を一括供給」するまちづくりを始めると発表した。
エネルギーを供給するのは東邦ガス、つまり「ガス代も電気代も同社に支払う」という、画期的なまちとなりそうだ。
この『港明用地開発』は、東邦ガスの工場跡地の再開発としてスタート。
約31ヘクタールもの広さを誇り、計画地にはフィギュアスケートの鈴木明子さんを輩出した「邦和スポーツランド」も含まれている。
広大な敷地を有効活用するために【商業ゾーン】【業務ゾーン】【スポーツゾーン】【住宅】という複合的な機能を持った特色ある開発計画となった。ちなみに、まちの再開発は、同社にとって初めての試みだという。
基本コンセプトは、「人と環境と地域のつながりを育むまち」。3本柱は以下の通りだ。
1 環境と省エネの取組みによる先進的なまちづくり
2 地域防災に資する災害に強いまちづくり
3 多様な人々が集い、交流するにぎわいのあるまちづくり
エネルギー会社の強みをしっかり生かした「環境と省エネ」に力を入れるのはもちろん、ライフラインを供給するガス会社として「災害対策」にも力を入れていく。
ちなみに災害対策については、計画段階で東日本大震災が起こったため、優先順位が上がったそうだ。
2015年春から着工予定のまちづくりについて、まずは速報として特徴を紹介しよう。
ショッピングモールやスポーツ施設で、港エリアのにぎわいづくり
新たなまちの開発予定地は、地下鉄名港線「港区役所」駅前に広がっている。
2駅先には「名古屋港水族館」のある名古屋港ガーデンふ頭があり、観光の面からも名古屋市が力を入れているエリアだ。
下の地図を見ると分かりやすいが、『港明用地開発』ではⅠ期として駅に近いエリアから開発を進めていく。
ここには『居住ゾーン』として三井不動産レジデンシャルによる集合住宅、『にぎわい交流ゾーン』として三井不動産が手がけるショッピングモールが誕生する予定。このショッピングモールは名古屋初登場となり、住民の生活を支えるのはもちろん、水族館帰りのファミリーが気軽に立ち寄れるスポットにもなりそうだ。
「駅に近いエリアににぎわいを創出することで、第Ⅱ期の開発を盛り上げていきたいと思っています」と担当者は話す。
また、既存の「邦和スポーツランド」とゴルフ練習場からなる『スポーツ・健康ゾーン』も大きな特徴のひとつ。住民の健康づくりに役立つのは言うまでもないが、暑い夏に家族でスケートリンクや温水プールへ出かければ、“自宅の節電ができ、地域のピーク時の電力を抑えることができる”といった副次的な効果も期待できるかもしれない。
まずはⅠ期の開発が優先だが、Ⅱ期のエリアでは、集合住宅に加え、研究開発・教育・医療福祉施設の誘致が検討されているとか。人づくりモノづくりの拠点としての未来予想図も、ちょっと楽しみだ。
「ガス・電気・熱」を一社で供給するのは中部初。その仕組みとは?
「ガスコージェネレーション」という言葉を聞いたことはあるだろうか? これはガスによって発電し、電気と熱をつくりだすシステムのこと。
東邦ガスの『港明用地開発』では、エリア内に「エネルギーセンター」を設置。ここでガスコージェネレーションや多様なエネルギーを融合させて、エリア内の施設や住宅に「ガス・電気・熱」を一括供給する。これは中部初の取り組みだそう!
まず【電力】について。より効率の良い稼働を考えると、ガスコージェネレーションだけでエリア内の電力を100%まかなうのは難しいため、太陽光発電、外部グリーン電力、電力会社からの受入電力を合わせて、エリア内に供給する。
ガスコージェネレーションによって生み出される【熱】について。こちらは、商業施設やスポーツ施設の冷暖房や給湯に使われる。加えて、隣接する中川運河の水を利用したヒートポンプでも一部の冷暖房をまかなうなど、貴重なエネルギー源をムダなく使うアイデアが盛り込まれている。
このようにエリア内のエネルギーの流れは、なかなかに複雑だ。そこで「エネルギーセンター」では、電気・熱・情報をネットワークでつなぐことで、より省エネ効果を高められるように需給管理を行う。
例えば、電力のピーク時には商業施設の空調や照明を少し抑えてみたり、各住戸に省エネを促してみたり。コンピューターが最適に管理してくれるから、住宅や各施設では無理なヤセ我慢をすることなく、自然に省エネができるのがうれしい。
ちなみに、これほどの先進システムを使った光熱費はいかほど・・・? どうやらガス・電力会社の料金とほぼ同水準になる模様だ。
エリア内で発電。だから非常時の「地域防災」にも貢献!
過去の大震災では、電気・ガスといったライフラインがストップし、復旧までに時間を要した。『港明用地開発』では、どんな対策が講じられるのだろうか?
東邦ガスの本業であるガスの供給は、震度7の揺れにも耐えられるという「中圧導管」を使ってエリア内に引き込む。これで、過去レベルの震災であればガスコージェネレーションを稼働できると想定している。ガスによって発電した電気と熱で、エリア内の最低限の電力をまかなうほか、地域の復旧対策拠点となる「港区役所」にも電力を供給し、地域防災に貢献するという。
また、津波による浸水想定が50センチ~1.5メートルとされるエリア(名古屋市発表)ということもあり、エネルギーセンターは構造を強化して、重要施設を2階以上に設置。商業施設の立体駐車場の3階以上とエネルギーセンターの屋上を、津波から避難する場所として開放するそうだ。
一歩進んだ環境&災害対策とにぎわい創出という、次世代型のまちづくりが楽しみな『港明用地開発』。2015年春着工予定で、商業施設と集合住宅は2017年に完成が予定されている。
詳細が決まったら、また続報をお伝えしたい。






