相続税対策として注目される賃貸併用住宅

お話を伺ったのは、パナホーム株式会社 東京支社 営業部 豊洲営業所 店長 阿部亮介氏お話を伺ったのは、パナホーム株式会社 東京支社 営業部 豊洲営業所 店長 阿部亮介氏

2015年の相続税改正後の相続税対策としても注目を浴びている「賃貸併用住宅」。自宅の建物の中に賃貸スペースをつくり、家賃収入を見込むというもの。家を建てる際に一番ネックになるのがローン返済だが、賃貸併用にすれば建築費用は多くかかるものの、家賃収入により月々の返済額は通常より安く抑えることもできる。相続時、宅地(賃貸併用住宅の土地)の評価が自宅と賃貸の利用区分に応じて評価されるため、「小規模宅地等の特例」によって評価額を減額できるようだ。

賃貸併用住宅は確かにコスト的なメリットは大きいだろう。ただこれは、あくまでもある程度まとまった土地を持っている人の話とこれまでは思ってきた。しかし、最近は20坪程度の敷地でも賃貸併用住宅にするケースが増えているという。そうなるとグンと身近なものになる。

今回は、狭小地の賃貸併用住宅に強いとされるハウスメーカー「パナホーム」の住宅展示場にお邪魔をし、賃貸併用住宅のトレンドとその魅力を伺ってきた。

15坪でも「二世帯+1賃貸」が可能に!

狭小地であっても、敷地を最大限活用できれば、賃貸併用住宅は可能だ狭小地であっても、敷地を最大限活用できれば、賃貸併用住宅は可能だ

東京・豊洲にある住宅展示場、こちらで今回お話を伺ったのがパナホーム 豊洲営業所。店長の阿部亮介氏に賃貸併用住宅についてお話しを聞いてみた。まずは、相続税の改正がどのように影響しているかを伺ったところ、やはり賃貸併用住宅に対するニーズは確実に増えているという。

「昔から賃貸併用のニーズはありましたが、最近は15~20坪のコンパクトな土地をお持ちの方からのご相談が増えています。都心では地価があがっている上に、相続税の改正がありました。これを機にという方も多いです。あとは、自宅で工場や八百屋さんなど事業をされている方々からのご相談も増えています。後継者がいないので、事業をたたんで賃貸経営に移行したいというニーズです」

パナホームでは、ハウスメーカーとしては唯一の7階建てが可能な鉄骨構造技術を持っている。加えて、業界最小となる縦横15cm刻みで設計対応が行え、最大限敷地を活用できることから、特に都心の狭小地を持つオーナーからの相談が多いそうだ。

「先日は、15坪の土地で3階建ての賃貸併用住宅を建てられたオーナー様もいらっしゃいました。1階を賃貸に、2階にお母様が住んで、3階にご夫婦とお子様。15坪でしたが、2世帯+1賃貸を実現されています。都心には建ぺい率80%という場所も多いので、15坪の敷地でも賃貸併用住宅が実現可能になってきます」

もちろん、どんな敷地でも可能なわけではない。土地が狭いのであれば敷地を最大限活用するための条件がそろわなければダメだ。防火指定地域や用途地域に該当するか、斜線制限はどの程度か、建ぺい率・容積率はどの程度かなどなど。

「狙い目は、下町と言われる地域ですね。江東区、墨田区、中央区あたりは商業系や工業系の地域が多く、敷地めいっぱいに建築できる可能性が高い。実際にこうした地域からご相談をいただくことは多いです」

本当に、賃貸併用住宅はコストメリットが出るか

15坪で2世帯、しかも1フロアを賃貸として貸すことができる。これは、とても魅力だ。ただし、話はそう簡単にいくのだろうか? 当然建築費用も多くかかるわけだから、貸す部屋が少なければ、あまりコストメリットは出てこないのではないだろうか?

「狭小地での賃貸併用住宅の場合はローン返済を上回る家賃収入は期待しにくいのも事実です。ただ、通常の2階建ての家を建てたとしても、それなりの住宅ローンの負担にはなります。建築費用を余分にかけたとしても、月々の家賃収入が見込めれば、ローン返済の負担も軽減可能となります。先ほどの15坪で賃貸併用住宅を建てられたオーナー様も、初めは賃貸併用はまったくお考えではありませんでした。ですがコストシミュレーションをしていく中で、普通に二世帯が住む2階建てを建てるよりも、そこに一世帯賃貸スペースをつくる方がメリットが出ると判断されたのです」

また、賃貸併用住宅の場合、賃貸部分の割合が大きければ事業性のアパートローンを利用することも可能になり、高齢者の方でも年齢に関係なく借入ができる(法定相続人の連帯保証が必要など条件はある)というメリットもあるとのこと。

ここで一般的な、自宅のみの住宅と賃貸併用住宅でのコストシミュレーションを紹介しておこう。自宅のみを建てた場合と6戸の賃貸を持つ4階建ての賃貸併用住宅を建てた場合の比較だ。

◆自宅のみ
総建築費:3,000万円
借入金額:3,000万円(30年間、金利2.5%)
ローン返済額:118,536円/毎月

◆賃貸併用住宅(賃貸6戸)
総建築費:9,000万円
借入金額:9,000万円(30年間、金利2.5%)
賃貸収入:8万円×6戸=48万円/毎月
ローン返済額:355,608円/毎月(ただし、賃貸収入と相殺して124,392円の手取り収支)

上記の通り「自宅のみ」の総建築費は3,000万円。「賃貸併用住宅の総建築費」は9,000万円。建築費用にかなりの開きがあるが、賃貸併用住宅ではローンを支払ってもなお手取り収支が得られる。ただし、現在では管理は外部委託がメジャーなため、管理費や修繕費なども計上しておかなければいけない。併せて建物の規模が大きくなるため、固定資産税なども高額となる。図のようにそれらを加味しても年間の収入は9万円とローン返済の負担をゼロにすることが可能だ。

また、相続税対策としても、土地の評価額を最大80%も減額できる「小規模宅地等の特例」が2015年1月から拡大されるのも見逃せない。自宅として利用する「特定居住用」の上限が240m2から330m2に拡大される。ちなみに、賃貸に該当する「貸付事業用」の宅地については改正前と変わらず200m2まで50%の評価減が可能だ。うまく「特定居住用」と「貸付事業用」を組み合わせれば相続税対策としても有利になる。

賃貸併用住宅の収支シュミレーション賃貸併用住宅の収支シュミレーション

一括借り上げシステムが、空き室リスクを回避する

しかし、ここで心配になってくるのが、空き室のリスクや運営の問題だ。いくら家賃収入が期待できるとはいえ、空き室期間が発生すればリスクとなる。それに、退去時のクリーニング費用や設備のメンテナンス費用なども気にかかる。

「そういった不安は、みなさんお持ちです。私たちはグループ会社のパナホーム不動産で“一括借り上げシステム”を採用しています。あくまでもオーナー様はパナホーム不動産に住戸を貸すため、万一、空き室になったとしても家賃はパナホーム不動産から確実に支払われます。退去時のメンテナンスに対しても積立を行いますので、最初にみなさんがお持ちになっているコスト的な不安は払拭されます」

もちろん、空き室を出さないための工夫もある。例えばパナホームでは、研究所で女性の視点を盛り込んだ住まいの研究を行っている。2011年には女性専用の短期体験型賃貸住宅を用意し、そこを利用した女性の意見を収集・集約していた。その後もあらゆる世代の女性へのインタビューや調査を行い、ニーズを研究しながら「ラシーネ」というコンセプトで女性目線の快適な室内空間を提供している。この「ラシーネ」を見ると一瞬デザイナーズマンションかと思うほどの斬新な間取り、細部のこだわりがある部屋だった。詳細は次回ご紹介するが、こうした特徴のある部屋づくりを賃貸併用住宅にも活かせるという。例えば立地が少し悪くても特徴ある部屋であれば、空室率は必然的に下がるだろう。

「また、一括借り上げのメリットは、運営の手間を一切オーナー様にかけないというメリットもあります。例えば、入居者がカギを忘れてしまったといったような場合でも、連絡はオーナー様ではなく、パナホーム不動産に入ります」

気がつかなかった賃貸併用住宅という選択肢

「賃貸併用住宅というのは、実はライフスタイルの変化に強い住居です。現在貸している部屋に、子供夫婦を迎え二世帯住宅に。逆に両親が住んでいた場所を後々賃貸として活用することも比較的自由に行えます」

よほど広い土地を持っていないかぎり、通常、家を建てるときに賃貸併用住宅というのは思いつかないものだ。また空室などリスクが先に頭をよぎる。だが、狭小地でも可能性があり、サポートもこれだけ厚ければ、家づくりの際の選択肢の一つになるのではないだろうか。

次回は、モデルルームの様子を中心に、賃貸併用住宅の魅力を紹介する。

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