日本の木造住宅の現状

日本人は古来より「木の家」に住んできた。
高温多湿の気候・風土にあった建物として木の家を選び、取り外しができる襖や障子は空気の流れを自在にし、柱の木や壁の土や和紙が湿気をコントロールする、という機能も備えた生活をおくってきた。
家を造る木材には、土地の森や山林で育てられた木の他、取り壊した建物の部材も使われるなど今でいうリサイクルの考え方も取り入れられた循環システムをもっていた。

かたや地震国である日本は度重なる震災に悩まされ、耐震や防火を家の機能として大切なものと捉え、家の構造の進化を追求してきたといえる。

平成20年度の総務省統計局の調査によると、「木造」は2923万戸で住宅全体の58.9%を占め、一戸建住宅になると「木造(防火木造を除く)」と「防火木造」で一戸建全体の9割以上を占めている。一戸建に住むほとんどの人が木造住宅に住んでいる、ということになる。

木造住宅は2923万戸で住宅全体の58.9%を占め、</br>一戸建になると「木造(防火木造を除く)」と「防火木造」で一戸建全体の9割以上を占めている</br>(平成20年 総務庁統計局調査)木造住宅は2923万戸で住宅全体の58.9%を占め、
一戸建になると「木造(防火木造を除く)」と「防火木造」で一戸建全体の9割以上を占めている
(平成20年 総務庁統計局調査)

“阪神淡路大震災”をきっかけに立ち上がったMOKスクール

阪神淡路大震災の死因の77%が家屋倒壊等が原因の圧死であった阪神淡路大震災の死因の77%が家屋倒壊等が原因の圧死であった

設計家の三澤康彦氏が代表を務める木造住宅建築セミナー、MOKスクールは今年で19年目をむかえる。
もともと「木の家」の正しい普及活動として、林業と設計士と大工のそれぞれの知識や技術を住まいに活かしていく教育活動をしていたが、1995年1月17日の阪神淡路大震災が大きな転機となった。多くの木造住宅が倒壊し、たくさんの犠牲者が出たのだ。
阪神淡路大震災での死因は、火災による焼死は9%、実に77%が窒息・圧死によるものであった。死亡原因としてもっとも多い圧死の多くは家屋の倒壊によるものだ。

「木造住宅に関わるつくり手は大きなショックを受け、木造住宅を根本から見直さなければならないと強く感じました。私たちはまず木造住宅に関わるつくり手たちの、とくに木構造のレベルを上げないといけないと考えました。 そこで1995年から木構造や木質材料の先進的な研究者や実務者を呼んで勉強する場をつくることにしたんです。それがMOKスクール(モクスクール)です」(MOKスクール代表 三澤康彦氏)

阪神淡路大震災の際には、同じ木造でも倒壊した建物もあれば倒壊しなかった建物もあった。構造上、技術上、どういった違いが生死を分けたのか…MOKスクールは改めて「木造住宅を根本から学び直す」ことから始めたのだった。

山から家まで…「木造住宅」に関わるすべての知識を学ぶ場として

当初は講座のカリキュラム内容の5割が「構造」を占めていたが、現在では多様な講義が用意されている当初は講座のカリキュラム内容の5割が「構造」を占めていたが、現在では多様な講義が用意されている

MOKスクールの当初は阪神淡路大震災の教訓を基に「命を守る木造住宅」の追求から、講座のカリキュラム内容の5割が「構造」を占めていたという。
現在では、構造計画や設計の基本の普及がある程度成果が出てきたこともあり、より「上質な木の家」をつくる多様な講義内容が用意されている。講師の方々も林業従事者から設計士、建築士、大学教授、住宅評論家、工務店と幅広い。

カリキュラムの一部を紹介すると「地域の森林資源を活かす」、「気候風土を温熱設計にどう取り組むのか」「心地よい家がこうして生まれる」「伝統を活かした木造住宅の構造を説く」…など、材料を担う森林・木材から環境・デザインまでと木造住宅知識の広さと深さ双方を網羅している。
また、年に2回のフィールドゼミも用意されており、実際に講義だけでなく、現場からも学ぶことができる場が用意されている。

「学ぶ場」と「知る場」、「建てる人」と「住む人」双方が
日本の木造住宅の未来を創る

MOKスクール大阪の事務局を務める西久保さん。自らも設計士として、木の家を学び続けているMOKスクール大阪の事務局を務める西久保さん。自らも設計士として、木の家を学び続けている

19期をむかえたMOKスクール。これまでの受講者の多くは設計事務所の方や工務店、木材を扱う事業者だというが、一般の方もいるという。MOKスクールとは別に、もう少し木造住宅の知識をやさしく噛み砕いたMOKゼミも行っている。

今期よりMOKスクールの事務局をあずかる西久保さんは
「私自身も設計士として、大学で学んできましたが、MOKスクールで学ぶことは初めて聞くこと・学ぶことが多かったんです。学問の知識と実践として積みあがってきたノウハウはどちらも必要なのだ、と実感しました。もちろん、木造住宅を造る側からこのような知識や場は必要だと思いますが、実際に家を建てられる方にも知識を広げてもらうことが、結果、“愛され続け、安心して住み継ぐことのできる木の家”を造ることにつながると感じています」と語る。

近年、「健康住宅」「環境住宅」の観点からも、木造住宅が語られることが多い。日本人はやはり「木の家」が好きなようだ。「木の家」に住み続けてきた私たちが、今後予測される震災や厳しい環境にさらされながらも“愛され続け、安心して住み継ぐことのできる木の家”とは何か、を知るのは良い機会ではないかと感じた。

■取材協力/MOKスクール 大阪
http://www.mokosaka.jp/