壁紙の落書きと修繕費用の関係
賃貸物件の壁紙についた子どもの落書きは、通常の使用を超える汚損と見なされ、退去時に原状回復義務に基づき修繕費用を請求される可能性があります。ただし、壁紙の価値は経年劣化で減少するため、費用の全額負担とならない場合もあります。
詳しくは、「壁紙の落書きは修繕費用負担の原因になる?」をご覧ください。
壁紙の落書きを消す掃除方法
壁紙の落書きは、原因となった筆記用具に合わせて掃除することが大切です。クレヨンならクレンジングオイル、油性マジックなら無水アルコールなど、適切な道具を使うことで壁紙を傷めずに汚れを落としやすくなります。
詳しくは、「壁紙の落書きを掃除する方法」をご覧ください。
落書きが消えない時の対処法
掃除しても落書きが消えない場合は、勝手に修理せず、まず貸主へ相談しましょう。万が一の高額請求トラブルに備え、国民生活センターなどの相談窓口を知っておくと安心です。貼ってはがせる壁紙などで、あらかじめ対策しておくことも有効です。
詳しくは、「落書きが消えなかった場合にすべきこと」をご覧ください。

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小さな子どものいる世帯が賃貸物件から引越す際に、特に気になってしまうのが「壁紙の落書き」です。

 

子どもに悪気はないとはいえ、退去時に落書きをそのままにすれば、修繕費用がとられてしまうのではと、心配になってしまうのではないでしょうか。

 

今回は壁紙の落書きについて、知っておきたい基本ルールや効果的な掃除方法、落ちなかった場合の対処法などを見ていきましょう。

壁紙の落書き

 

賃貸物件の借主には、「原状回復義務」と呼ばれる退去時の義務があります。これは、簡単にいえば「室内や設備を入居時点の状態に戻す義務」と考えることができますが、厳密には必ずしも新しい状態に戻さなければならないというわけではありません。

 

建物や設備は、時間の経過とともに劣化していくものなので、仮に汚れやキズがあっても、「通常の使用」と認められる使い方の範囲内であれば、借主は原状回復義務を負いません。

 

反対に、通常の使用の範囲を超えた状態で、損傷・汚損が発生した場合には、入居者が修繕費用を負担しなければならないケースがあります。

 

そこで重要となるのが「落書きは通常の使用の範囲に含まれるのかどうか」というポイントです。落書きはたとえ子どもが行ったものでも、通常の使用の範囲を超えた使用方法に該当するため、引越し時に修繕費用が請求されてしまう可能性があります。

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修繕費用の目安

 

それでは万が一、壁紙の修繕費を負担することになった場合、費用の目安はどのくらいになるのでしょうか。ここでは、具体的な費用の相場について解説します。

 

壁紙のグレードにもよるものの、クロスの貼り替えは1平米あたり「800~1,000円程度」が相場とされています。6畳の部屋で全体の貼り替えを行うと、4万~5万円程度が一般的です。

 

ただし、壁紙はもともと経年劣化するため、必ずしも新品に入れ替えるための費用を丸ごと負担しなければならないというわけではありません。

壁に落書きする

 

退去時の修繕費負担について、国土交通省住宅局が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」によれば、壁紙の残存価値は6年で1円にまで落ちてしまうとされています。

 

つまり、施工から6年が経過すれば、経済的な価値は、ほとんどなくなってしまうということです。ただ、経年劣化はしていても、借りた時点で通常どおりに使用可能な場合であれば、借主には本来機能していた状態にまで戻す責任があります。

 

クロスに落書きをすれば、それを消すための工事費や人件費は借主負担となるケースもあるため、経済的な価値がなくなってしまうからといって、落書きを残しておいていいというわけではありません。

 

また「特約」といって、契約書に敷金返還に関する特別事項が盛り込まれていることがあります。ガイドラインが示す原状回復の原則とは異なるケースがあるため、よく確認をしておきましょう。

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壁紙の落書きを掃除する方法

 

子どもが壁紙に落書きをしてしまったときには、できるだけきれいに消す必要がありますが、壁紙を傷つけてしまうリスクもあります。そのため、適した方法で掃除をすることが大切です。

 

落書きをした筆記具によって、適した掃除方法は異なるので、種類別に見ていきましょう。

 

クレヨンの主な成分は油分であるため、クレンジングオイルを使えばきれいに落としやすくなります。落書きを発見したら、綿棒や古い歯ブラシなどの柔らかい素材にクレンジングオイルを染みこませて、すぐに対処しましょう。

 

ある程度の時間が経過してしまった汚れについては、クレンジングオイルをコットンなどで塗布して、しばらく置いてから拭きとる方法もあります。

 

色鉛筆はロウや顔料などが含まれているため、消しゴムでは、なかなか落とすことはできません。クレヨンと同じようにクレンジングオイルが効果的ですが、それでも消せない場合は、ドライヤーの温風を当てて温め、布に汚れを移すようにして拭きとりましょう。

 

水性の絵の具の場合、乾く前であれば水を含ませた布で拭きとるだけでもきれいになることがあります。また、落としにくい場合は、中性洗剤を使う方法もあります。乾燥すると落としにくくなってしまうので、早めの対処を心がけましょう。

 

油性マジックの落書きは、落とすのが難しいため注意が必要です。無水アルコールやマニキュア用の除光液を使って、汚れを浮かしてから乾いた布で拭きとるのが適した方法とされています。

 

一度で落とすのは難しい場合もあるので、汚れが見えなくなるまで繰り返すのがコツです。

 

水性ボールペンの場合は、中性洗剤を綿棒や歯ブラシに染みこませ、軽く擦って落とすことができます。油性ボールペンは、油性マジックと同じように無水アルコールやマニキュア用除光液を使い、汚れを浮かしてから拭きとりましょう。

施工会社に相談をする

 

どうしても落書きが消えない場合は、壁紙の貼り替えが必要となりますが、無許可で行うのは避けましょう。費用の負担や施工会社などについて、必ず貸主に原状回復の相談をしておくのがトラブル予防のコツです。

 

また、仮に修繕費用を負担するとしても、基本的には壁紙の貼り替えのみなので、それほど高額になることはありません。先ほども解説したように、6畳程度の広さなら5万円程度が目安なので、退去時なら預けている敷金で対処できる場合もあります。

 

そのうえで、万が一不当に高額な費用を請求されてしまうなどのトラブルが起こったときに備えて、相談窓口を把握しておくことも大切です。原状回復に関する窓口には、以下のようなものがあります。

相談窓口

  • 国民生活センター
  • 消費者ホットライン
  • 一般財団法人 不動産適正取引推進機構
  • 法テラス

消費者ホットラインは、消費者のトラブル全般について相談ができ、原状回復に関するトラブルも受け付けてくれます。また、不動産適正取引推進機構は、不動産に関する問題を何でも相談できるのが特徴です。

 

そのうえで、原状回復は法律に関するトラブルでもありますから、法テラスを通して弁護士に相談するのもひとつの方法です。

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壁紙を貼る

 

きれいに落書きが消えたら、もう一度壁紙が汚れてしまうのを防ぐために、きちんと対策を練っておくことが重要です。ここでは、有効な対策方法として、賃貸物件でも導入可能な、すでにある壁紙の上から重ね貼りできるタイプの壁紙を紹介します。

 

シールタイプの壁紙とは、賃貸物件でも利用可能な貼ってはがせるタイプの壁紙です。既存の壁紙の上から重ね貼りできるのが特徴であり、それほど粘着力は強くないので、はがすときにも安心感があります。

 

好みの壁紙を貼りたいときには、水拭きではがせるのりを使うのもひとつの方法です。はがした後に残ってしまったのりも、水拭きできれいに拭きとれるので、既存の壁紙を落書きから守る有効な対策といえます。

  • 賃貸物件の借主には原状回復義務があり、壁紙の落書きは修繕費負担の対象になる
  • 壁紙の貼り替え費用は、6畳の部屋で4万~5万円程度が一般的
  • まずは落書きの筆記具に適した掃除方法で落とすことを考えよう
  • どうしても落ちない場合は、貸主に相談をして適切な方法を考えることが大切
  • 落書きを消した後は、既存の壁紙に貼れる市販の壁紙を導入するのもひとつの方法
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Q.1:賃貸の壁に子どもが落書きしてしまいました。退去時に修理費用を払わないといけませんか?

A.1:はい、修理費用を支払う可能性が高いです。賃貸物件では、退去時に部屋を借りたときの状態に戻す「原状回復」が基本ルールです。普通に暮らしていてできる汚れや傷の修理費用は大家さんの負担ですが、子どもの落書きは借主の不注意と見なされるため、修理費用を請求されることが一般的です。

Q.2:壁紙の落書きが消せない場合、修理費用はいくらくらいかかりますか?

A.2:壁紙の張り替え費用は、1平方メートルあたり800〜1,200円が相場です。たとえば、一般的な6畳の部屋の壁をすべて張り替える場合、4万〜6万円程度が目安になります。

Q.3:長年住んでいて壁紙が古くなっている場合でも、修理費用は全額負担ですか?

A.3:いいえ、全額負担になるとは限りません。国土交通省のガイドラインでは、壁紙の価値は住んだ年数に応じて下がり、6年でほぼなくなると考えられています。そのため、入居からの年数に応じて負担額は減額されます。ただし、契約書に「特約」という特別なルールが記載されている場合もあるため、一度確認してみましょう。

Q.4:壁紙の落書きを自分で消すには、どうすればいいですか?

A.4:落書きに使ったものによって落とし方が異なります。まずは目立たない場所で試してから掃除を始めましょう。

クレヨン: クレンジングオイルを綿棒や布につけて、優しくこすり落とします。
色鉛筆: クレヨンと同様にクレンジングオイルを使うか、ドライヤーで温めてインクを溶かし、布で拭き取ります。
水性絵の具: 乾く前であれば水拭きで落とせます。落ちなければ、中性洗剤を使ってみましょう。
油性マジック・油性ボールペン: 無水エタノールや除光液を布に含ませ、汚れを浮かせてから拭き取ります。
水性ボールペン: 中性洗剤をつけた綿棒などで、軽く叩くようにして汚れを移し取ります。

Q.5:自分で掃除しても落書きが消えませんでした。どうすればいいですか?

A.5:ご自身で対処できない場合は、まず大家さんや管理会社に連絡しましょう。自分で業者を手配したり、勝手に壁紙を張り替えたりすると、契約違反などのトラブルになる可能性があります。修理費用の負担や修理の方法について、必ず事前に相談することが大切です。

Q.6:大家さんから高額な修理費用を請求されたらどうしよう? 相談できる場所はありますか?

A.6:提示された修理費用に納得できない場合や、高額な請求をされて困ったときは、専門の窓口に相談できます。一人で悩まず、下記のような第三者機関を頼りましょう。

消費者ホットライン: 電話番号「188」(局番なし)
法テラス(日本司法支援センター): 法的なトラブルの相談窓口
(一財)不動産適正取引推進機構: 不動産に関する相談窓口

Q.7:これから子どもが壁に落書きしないための対策はありますか?

A.7:はい、賃貸でも使える便利なアイテムで対策できます。元の壁紙を傷つけずに、落書きを予防できます。

貼って剥がせる壁紙シート: 今の壁紙の上からシールのように簡単に貼ったり剥がしたりできます。
貼って剥がせるのりを使う: 水で剥がせる特殊なのりを使えば、好きなデザインの壁紙をDIYで貼ることができます。

Q.8:賃貸契約書にある「特約」とは何ですか?

A.8:「特約」とは、一般的なルールとは別に、貸主と借主の間で交わされる特別な約束事です。たとえば、「退去時のハウスクリーニング代は、理由にかかわらず借主が負担する」といった内容が契約書に記載されている場合があります。国のガイドラインよりもこの「特約」が優先されることがあるため、賃貸借契約書は隅々までしっかり確認することが大切です。

更新日: / 公開日:2022.03.24