賃貸マンションオーナーの不動産所得に意外と大きな影響を与えるのが「減価償却費」です。賃貸マンションオーナーにはすでに耳なじみがある言葉だと思いますが、これから不動産投資を始めたいと考えている方にとっても、減価償却費は押さえておきたいキーワードです。
ここでは、減価償却の意味と、特に中古マンションの減価償却費について、分かりやすく解説します。

減価償却費を理解するために、まず不動産所得はどのように計算をするかを確認しましょう。
賃貸経営をしている方は、1年間の不動産所得を計算して確定申告をしなければいけません。不動産所得は「収入」から「必要経費」を差し引いたもののことで、「収入-必要経費=不動産所得」で算出します。

 

「収入」とは、家賃、共益費、礼金、更新料、駐車場代など、賃貸マンションの入居者から受け取ることのできるお金のことです。
一方、主な「必要経費」には、固定資産税などの税金、借入金の利子、管理費、修繕費、光熱費、そして「減価償却費」があります。

マンションなどの不動産

アパートやマンションなどの建物は、毎年少しずつ古くなり価値が減少していきます。「減価償却」とは毎年価値が減少する分を必要経費として計上することをいい、その必要経費のことを「減価償却費」といいます。

つまり、減価償却費は、実際には毎年お金が出ていかなくても所得から差し引くことができる、ありがたい経費なのです。

なお、土地は償却資産ではないので減価償却費はありません。

 

減価償却費は建物の耐用年数によって計算しますが、新築建物の耐用年数は、構造によって次のとおりに定められています。耐用年数とは、建物の実際の寿命ではなく、税金の計算上便宜的に決められた利用年数のことをいいます。

 

〈建物の法定耐用年数と償却率〉

構造 法定耐用年数 償却率
木造 22年 0.046

鉄骨造(鉄骨厚3mm超4mm以下)

27年 0.038
鉄骨造(鉄骨厚4mm超) 34年 0.030
RC造(鉄筋コンクリート造) 47年 0.022

出典:財務省令「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年三月三十一日大蔵省令第十五号)」
国税庁 減価償却資産の償却率表

償却率とは、建物の価格が毎年減少する割合のことで、おおむね1を耐用年数で割った数値になります。

減価償却費の計算は、建物の購入価格に償却率を掛けて、「建物の購入価格×償却率=減価償却費」の計算式で算出します。

 

たとえば1億円で新築マンション(RC造)を建築した場合の1年間の減価償却費は「1億円×償却率0.022=220万円」となり、所得から220万円の減価償却費を差し引くことができます。

前述のとおり、新築マンションの減価償却費の計算はあまり難しいものではありません。
それでは、中古マンションを購入した場合、減価償却費はどのように計算するのでしょうか。

 

中古マンションの場合は、まず耐用年数を以下の計算式で求めます。なお計算の結果、1年未満の端数があるときには切り捨てます。また計算結果が2年未満になった場合は、2年とします。

取得時の耐用年数=(新築時の耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2

◇例1:築20年の中古マンションを購入したときの耐用年数は?

(47-20)(年)+20(年)×0.2=31年

計算の結果、耐用年数は31年になります。

また、すでに耐用年数以上を経過している中古マンションには、「新築時の耐用年数×0.2」の計算式で取得時の耐用年数を求めます。

◇例2:築50年の中古マンションを購入したときの耐用年数は?

47(年)×0.2=9.4(年)→9年(端数切捨て)

中古マンションの場合は、新築マンションに比べて耐用年数が短くなるので、減価償却費の割合も高くなります。そのため、所得税の計算においては有利といえます。

減価償却費の計算。確定申告書類と家

賃貸経営では、大規模修繕を行ったり、老朽化したり故障した設備の交換を行うことがあります。また、競争力を高めるために新しい設備などを導入することもあります。
その場合の必要経費はどのように計上するのでしょうか。

修理や修繕に要した支出は、所得税の計算上「修繕費」と「資本的支出」に区分されます。
「修繕費」は、支出した年の必要経費として全額を経費計上することができます。
それに対して「資本的支出」は、資産として計上され減価償却の対象になります。

 

金額が20万円未満、またはおおむね3年以内ごとに行われる支出は修繕費となります。またどちらの区分にするか分からない場合、金額が60万円未満、または金額が前年の固定資産の取得価額のおおむね10%以下である支出は修繕費となります。

 

修繕費と資本的支出の判断は難しいので、よく分からない場合は、税務署や税理士などの専門家に相談してください。

 

なお、資本的支出とされた場合の耐用年数について、外壁塗装は建物と同じ耐用年数になり、キッチンやユニットバスなど設備の耐用年数は15年です。

設備などを交換したときに、青色申告をしている個人の賃貸マンションオーナーの場合には、30万円未満の少額減価償却資産の特例が受けられます。

 

たとえば、設備を交換したり宅配ボックスや防犯カメラを設置したりした場合などは、1個あたりの金額が30万円未満であれば、耐用年数で減価償却するのではなく、少額減価償却資産として、購入した年に一括して経費計上することができます。

所得の申告において減価償却費は大切な経費の1つですが、中古マンションを売却するときには、減価償却費が税額に影響を与えるので注意が必要です。

中古マンションを売却し、譲渡所得がプラスになった場合には所得税がかかります。
譲渡所得の計算は次のとおりです。

 

譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)

 

取得費は、売却物件を購入・建築したときの価格に、取得後の設備費や改良費を加え、そこから売却するまでの減価償却費を差し引いて計算します。
取得費からは、購入してから売却するまでの減価償却費の累計額を差し引く必要があるので、その分、取得費が少なくなり、譲渡所得が多くなってしまいます。

 

中古マンションの売却を予定している場合、税引き後の手取り額を試算するときには、あらかじめ減価償却費を忘れずに計算しておかないと、後で思ったよりも多額の税金が課せられることになります。

中古マンションの所得税申告では、減価償却の計算は特に大切です。賃貸マンションオーナーやこれから不動産投資を始めたいと考えている方は、減価償却についてきちんとした知識を持って賃貸経営をするようにしましょう。

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