不動産登記の費用の内訳と計算方法
登記費用は「登録免許税」と「司法書士報酬」の2階建てで決まります。登録免許税は固定資産税評価額×税率で計算でき、住宅には期限付きの軽減税率が用意されています。3,000万円の中古住宅購入を想定した試算例を通じて、実際にどのくらいの金額を資金計画に組み込んでおくべきかが具体的にわかります。
2024年・2026年に始まった「登記の義務化」の中身
これまで任意とされてきた権利の登記のうち、相続登記は2024年4月から、住所・氏名の変更登記は2026年4月から義務化され、放置すると過料の対象になり得ます。すでに不動産を持っている人にも関係する新ルールの期限・罰則・対処法を整理し、慌てずに動けるようになります。
登記費用を無理なく抑える判断軸
登記のなかには自分で手続きしやすいものと、実務上ほぼ司法書士への依頼が必須のものがあります。「どの登記なら自分でできるのか」「依頼するなら見積りのどこを見るべきか」をチェックリストで確認でき、費用と手間・リスクのバランスを自分で判断できるようになります。

住宅の売買契約書には物件価格が大きく書かれていますが、実際に支払う総額はそれだけでは終わりません。契約が近づいた頃、諸費用の明細に「登記費用」という項目を見つけて、「これは何のお金だろう」「思ったより大きい金額だな」と戸惑った。そんな経験をする人は少なくありません。

不動産登記は、住宅を買う人のほとんどが必ず通る手続きです。それなのに内容は専門的で、費用の内訳も分かりにくい。だからこそ「司法書士さんにお任せで」と流されがちですが、仕組みを知っておくだけで、資金計画の精度は大きく変わります。しかも近年は、相続登記や住所変更登記が「任意」から「義務」へと変わる大きな制度改正が続いており、すでに家を持っている人にとっても他人事ではなくなりました。

ここでは、不動産登記の基本から費用の計算方法、具体的な試算例、そして2024年・2026年に始まった義務化のポイントまで、順を追って整理していきます。
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不動産登記とは、土地や建物の物理的な状況(所在・面積・構造など)と、権利関係(所有者は誰か、担保が付いているか)を国の帳簿に記録し、誰でも確認できるように公示する制度です。登記があるからこそ、買主は「この物件は本当に売主のものか」「知らない抵当権が残っていないか」を確認でき、安心して取引ができます(出典:法務省「不動産登記のABC」)。

 

逆にいえば、権利の登記をしないままでは、その不動産が自分のものだと第三者に主張(対抗)できません。売却も、不動産を担保にした借入れもできず、いざというとき身動きが取れなくなります。

登記と一口にいっても、場面ごとに種類が分かれています。住宅の購入・所有で関わる代表的なものは次のとおりです。

登記の種類必要になる場面
建物表題登記新築の建物が完成したとき(1ヶ月以内の申請義務あり)
所有権保存登記新築建物について初めて所有者を登記するとき
所有権移転登記中古物件の購入、土地の購入、相続・贈与のとき
抵当権設定登記住宅ローンを借りるとき
抵当権抹消登記住宅ローンを完済したとき、売却するとき
住所・氏名の変更登記引越しや結婚などで登記名義人の情報が変わったとき

たとえば新築一戸建てを住宅ローンで購入する場合、「建物表題登記+所有権保存登記+土地の所有権移転登記+抵当権設定登記」と、複数の登記がセットで発生します。費用を考えるときも、この「セットで掛かる」という前提を押さえておくことが大切です。

登記の記録は、かつて紙の「登記簿」で管理されていた名残でそう呼ばれますが、現在はデータ化され、証明書としては「登記事項証明書」という名称になっています。中身は大きく3つに分かれます。

  • 表題部:土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら種類・構造・床面積など、不動産の物理的な現況が記録される部分。新築時などの表題登記には1ヶ月以内の申請義務があり、怠ると10万円以下の過料の対象になります
  • 権利部(甲区):所有権に関する事項。誰が、いつ、どんな原因(売買・相続など)で所有権を得たかが分かります
  • 権利部(乙区):抵当権など、所有権以外の権利に関する事項。住宅ローンの担保設定はここに記録されます

登記事項証明書は法務局の窓口のほか、オンラインでも請求できます。記載内容の確認だけなら登記情報提供サービス、証明書そのものが必要なら法務省の登記・供託オンライン申請システムが利用できます。中古物件の購入を検討する段階で乙区を確認し、前所有者の抵当権が残っていないかをチェックする、という使い方も有効です。

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登記費用の中心は、国に納める「登録免許税」です。基本の計算式はシンプルで、課税標準(固定資産税評価額や借入額)×税率で求められます。住宅取得を後押しするため、マイホームには期限付きの軽減税率が設けられています。主なものは次のとおりです(出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)。

登記の内容本則税率軽減税率軽減の適用期限
土地の売買による所有権移転2.0%1.5%2029年3月31日まで
新築住宅の所有権保存0.4%0.15%(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅はさらに軽減)2027年3月31日まで
中古住宅の所有権移転(売買)2.0%0.3%2027年3月31日まで
住宅ローンの抵当権設定0.4%0.1%2027年3月31日まで
相続による所有権移転0.4%—(一定の要件を満たす土地には免税措置あり)

住宅用家屋の軽減税率を受けるには、「床面積(登記面積)50㎡以上」「自分が住むための住宅であること」「新築または取得後1年以内の登記であること」などの要件を満たし、市区町村が発行する住宅用家屋証明書を添付する必要があります。土地の売買にかかる1.5%への軽減は、2026年度(令和8年度)税制改正で適用期限が3年延長されました。ただし、こうした期限は税制改正のたびに見直されるため、契約の直前には必ず最新の情報を確認しましょう。

 

ここで見落としやすいのが「課税標準は購入価格ではない」という点です。売買の所有権移転登記では、基準になるのは市区町村が定める固定資産税評価額で、一般に市場価格より低い水準になります。一方、抵当権設定登記の課税標準は住宅ローンの借入額(債権額)そのものです。この違いを知らないと、自分で概算したときに実際とズレてしまいます。

登録免許税は誰が手続きしても同額ですが、司法書士に依頼する場合の報酬は事務所ごとに自由に設定されています。案件の内容や地域によって幅はあるものの、売買にともなう所有権移転登記や抵当権設定登記をまとめて依頼した場合、報酬の総額はおおむね数万円台〜十数万円程度が一つの目安です。このほか、登記事項証明書の交付手数料や住民票・評価証明書などの取得実費、郵送費・交通費といった細かな実費もかかります。

 

なお、新築時の建物表題登記は司法書士ではなく「土地家屋調査士」の業務で、建物の調査・図面作成を含むため別途10万円前後の費用がかかるのが一般的です。新築一戸建ての資金計画では、この分も忘れずに見込んでおきましょう。

イメージをつかむために、条件を置いて試算してみます。

試算条件:物件価格3,000万円の中古一戸建て(土地の固定資産税評価額1,200万円、建物の固定資産税評価額800万円)、住宅ローン借入額2,500万円、建物は住宅用家屋の軽減税率の要件を満たすものとする。

項目計算式税額
土地の所有権移転登記1,200万円 × 1.5%18万円
建物の所有権移転登記800万円 × 0.3%2万4,000円
抵当権設定登記2,500万円 × 0.1%2万5,000円
登録免許税 合計 22万9,000円

これに司法書士報酬と実費を加えると、登記関連の総額はおおよそ30万円前後というイメージになります。もし建物が軽減要件を満たさず本則税率(2.0%)が適用されると、建物分だけで16万円となり、総額は40万円台に跳ね上がります。「軽減税率が使えるかどうか」は、登記費用を左右する最大のポイントなのです。

 

物件価格が変われば評価額もローン額も変わり、登記費用も連動します。物件探しの段階から「価格×おおむね1%前後が登記まわりの目安」と頭に置いて総予算を組んでおくと、後から慌てずに済みます。まずは希望エリアでどんな価格帯の物件があるのか、相場感を眺めてみるところから始めるのも良いでしょう。

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「権利の登記は任意」これは長らく不動産登記の基本でした。ところが所有者不明土地の増加が社会問題となったことを受け、状況は大きく変わっています。すでに家や土地を持っている人こそ、ここは読み飛ばさないでください。

2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。

 

しかも、施行日より前に相続した未登記の不動産も対象で、この場合は施行日から3年以内(2027年3月31日まで)が期限です。「実家の名義が亡くなった親のまま」という状態に心当たりがある方は、期限が迫っていることになります。遺産分割の話し合いがすぐにまとまらない場合には、より簡易な「相続人申告登記」で義務を果たす方法も用意されています。

さらに2026年4月1日からは、登記名義人の住所や氏名に変更があった場合、変更日から2年以内の変更登記が義務化されました。正当な理由なく放置すると5万円以下の過料の対象になり得ます。こちらも過去の変更が対象に含まれ、施行日前に引越しや改姓をして未登記のままの人は、施行日から2年以内(2028年3月31日まで)に手続きすれば過料は科されません。

 

住所変更登記の登録免許税は不動産1件につき1,000円と少額で、手続き自体も比較的シンプルです。「持ち家を買ってから引越した」「結婚して姓が変わった」という方は、登記簿上の情報が現状と一致しているか、一度確認しておくと安心です。

義務化以前から、登記を放置するリスクは存在していました。権利の登記がなければ所有を第三者に対抗できず、売却も担保設定もできません。相続登記を放置すれば、世代を重ねるごとに相続人が増えて権利関係が複雑化し、いざ売りたいときに何十人もの同意が必要になるという事態も現実に起きています。

 

また、固定資産税は未登記でも課税されるため、「登記しなければ税金がかからない」ということもありません。登記は「やらされる手続き」ではなく、自分と家族の資産を守るための手続きだと捉えるのが実態に合っています。

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登録免許税は削れませんが、司法書士報酬は自分で手続きすることで節約できる場合があります。ただし、すべての登記が自力向きではありません。判断の目安は「利害関係者が自分だけか」「ミスしたときのダメージが大きいか」です。

自分で挑戦しやすい登記

  • 抵当権抹消登記(ローン完済後):金融機関から必要書類一式が送られてくるため、申請書を作成して法務局へ提出すれば完了します
  • 住所・氏名の変更登記:住民票や戸籍の書類を揃えれば手続きは比較的シンプルです

実務上、専門家への依頼が基本になる登記

  • 売買にともなう所有権移転登記・抵当権設定登記:買主・売主・金融機関の利害が絡み、決済当日に確実な処理が求められるため、金融機関から司法書士への依頼を求められるのが一般的です
  • 建物表題登記:図面作成など専門性が高く、土地家屋調査士の領域です(自分で行うことも制度上は可能ですが難度は高めです)
  • 相続登記:戸籍の収集や遺産分割協議書の作成が絡む場合は、司法書士に任せたほうが結果的に早く確実なケースが多くなります

法務局は各登記の申請書様式と記載例を公開しています。自分でやるか迷ったら、まず様式を眺めて「これなら書けそうか」を確かめてみるのが現実的な第一歩です。

司法書士に依頼する場合も、費用を適正に抑えるコツがあります。見積書を受け取ったら、次の点をチェックしてみてください。

  • 登録免許税(実費)と報酬が区別して記載されているか
  • 軽減税率が適用された前提の金額になっているか(住宅用家屋証明書の取得が段取りに含まれているか)
  • 登記の種類ごとの報酬が分かるか(保存・移転・抵当権設定など)
  • 書類取得の実費・日当などの追加費用の条件が明記されているか

不動産会社や金融機関から司法書士を紹介されるケースが多いものの、依頼先を自分で選べる場面なら、複数の見積りを比較する価値は十分にあります。

  • 資金計画に「登記費用(目安:物件価格の1%前後)」を計上したか
  • 建物が軽減税率の要件(床面積50㎡以上・自己居住・取得後1年以内の登記など)を満たすか確認したか
  • 中古物件の場合、登記事項証明書の乙区で前所有者の抵当権の有無を確認したか
  • 新築の場合、表題登記(土地家屋調査士費用)を別枠で見込んだか
  • 司法書士の見積りで「税」と「報酬」の内訳を確認したか
  • 過去の相続・引越し・改姓で未登記のものがないか確認したか(義務化の期限に注意)
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中古物件の購入では、残代金の支払い・鍵の引渡しを行う「決済」の場に、買主・売主・不動産会社・司法書士・金融機関の担当者が集まるのが一般的です。司法書士がその場で書類を確認し、同日中に「(売主の)抵当権抹消 → 所有権移転 → (買主の)抵当権設定」という順序で登記を申請します。

 

前所有者の抵当権を消してから所有権を移すこの順序があるからこそ、買主は安全に物件を取得できます。住宅ローンの実行と登記は同時に進める必要があるため、この場面で個人が自ら登記することは金融機関との関係でほぼ認められません。

  • 所有権移転登記(売買):売買契約書、権利証(登記識別情報)、売主の印鑑証明書、買主の住民票、固定資産評価証明書、(依頼する場合)委任状
  • 所有権保存登記(新築):所有者全員の住民票、住宅用家屋証明書(軽減を受ける場合)
  • 相続登記:被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍・住民票、固定資産評価証明書、遺産分割協議書など(ケースにより異なる)

書類は市区町村や法務局など複数の窓口にまたがり、平日しか開いていない窓口も多いため、収集の手間そのものが「司法書士に頼む価値」の一部になっています。共働き世帯などで平日に動きにくい場合は、その時間コストも含めて判断すると納得感のある選択ができます。

不動産登記は、物件価格の陰に隠れて見過ごされがちですが、購入時には数十万円規模の支出になり得る項目です。そして2024年・2026年の義務化により、「知らなかった」では済まない手続きへと性格が変わりました。仕組みと相場を知らないまま進めると、直前の資金不足や、気づかぬうちの過料リスクという形で跳ね返ってくるかもしれません。逆に、今日ここまで読んだ知識があれば、見積書の内訳を自分の目で確かめ、納得して手続きを進められるはずです。

 

これから住宅購入を考えている方は、物件価格だけでなく「登記を含めた総額」で無理のない予算を描くことが第一歩です。毎月いくらの返済なら暮らしが回るのか、シミュレーションで確かめておくと、物件選びの軸がぐっと明確になります。

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「登記費用も含めて、結局うちの場合はいくら掛かるのか」を誰かに整理してほしいと感じたら、中立的な立場のアドバイザーに無料で相談できる窓口を使うのも一つの方法です。

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Q1. 不動産登記の費用は誰が払うのですか?

A. 慣習として、買主に権利を移すための費用(所有権移転・保存登記、抵当権設定登記)は買主が、売主側の抵当権抹消登記や住所変更登記の費用は売主が負担するのが一般的です。負担区分は売買契約書に記載されるため、契約前に確認しておきましょう。

 

Q2. 登記費用は住宅ローンに含められますか?

A. 多くの金融機関では、登記費用を含む諸費用を上乗せして借りられる商品(諸費用ローンなど)を扱っています。ただし諸費用分は金利条件が変わる場合もあるため、自己資金で払う場合との総返済額を比較して判断するのがおすすめです。

 

Q3. 相続登記の義務化は、ずっと前に相続した実家も対象ですか?

A. 対象です。2024年4月1日の施行日より前に相続した未登記の不動産も義務の対象となり、施行日から3年以内(2027年3月31日まで)に申請する必要があります。遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記という簡易な方法で義務を履行することもできます。

 

Q4. 登記事項証明書は誰でも取れるのですか?

A. はい。登記の内容は公示が目的のため、手数料を払えば所有者以外でも誰でも取得できます。法務局の窓口のほか、オンラインの「登記・供託オンライン申請システム」からも請求でき、購入検討中の物件の権利関係を事前に確認する目的でも利用されています。

 

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更新日: / 公開日:2020.08.24