初期費用対策は「払わない・あとで払う・補助を受ける」の3つのアプローチで考える
手持ち資金と状況に応じて、敷金礼金ゼロやフリーレントで「そもそも払わない」、分割払いや社会福祉協議会の貸し付けで「あとで払う」、住居確保給付金などで「補助を受ける」。この3つを組み合わせるのが、貯金なしで引越す場合の基本設計です。それぞれの向き不向きを、判断軸とあわせて解説します。
家賃5.5万円なら、通常約28万円の初期費用を9万円弱まで圧縮できる
敷金礼金ゼロ+フリーレント1ヶ月+仲介手数料半額の物件を選んだ場合、初期費用がどこまで下がるのかを試算します。あわせて、「初期費用ゼロ」をうたう物件で家賃や退去時費用が割高になっていないかを見抜くチェックポイントも解説します。
公的支援は「借りる」と「もらう」で条件がまったく違う
社会福祉協議会の総合支援資金(住宅入居費・上限40万円)は連帯保証人なしでも使える貸し付け、住居確保給付金は要件を満たせば返済不要の給付です。失業中・収入減少中の方が対象になる制度の中身と相談窓口、2025年4月に加わった転居費用の補助までを分かりやすく解説します。

引越しの見積もりを調べ、初期費用の合計額を見て諦めかけたことはありませんか?

賃貸の初期費用は家賃の4.5〜5ヶ月分ほどかかるのが一般的で、家賃6万円の部屋なら30万円前後が相場です。「そんな貯金はないから、今の家で我慢するしかない」と思う方も少なくないでしょう。

しかし、初期費用の内訳を確認してみると、その多くは「工夫次第で払わずに済む費用」か「一度に払わなくてもよい費用」です。

さらに、失業や収入減少で引越しが必要な人には、返済不要の給付金や無利子に近い公的貸し付けという選択肢も用意されています。
本記事では、初期費用の内訳の確認から始めて、「払わない」「あとで払う」「補助を受ける」の3つのアプローチ方法を順番に解説していきます。
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賃貸借契約時の初期費用は、主に次の項目で構成されます。

敷金(家賃1ヶ月前後)、礼金(同)、仲介手数料(家賃0.5〜1ヶ月+消費税)、前家賃(1ヶ月)、保証会社の保証料(家賃の30〜100%程度)、火災保険料、鍵交換費用。

合計すると家賃の4.5〜5ヶ月分前後になるのが一般的です。これに加えて、物件によっては入居月の日割り家賃、室内消毒・抗菌費、24時間サポート費などが上乗せされることもあります。

ここで注目したいのは、項目ごとに性質が違うことです。

敷金・礼金は物件によって最初からゼロのものがあり、前家賃はフリーレント(入居後一定期間の家賃無料)でなくせる場合があります。仲介手数料は不動産会社によって半額・無料の設定があります。

 

保証料・火災保険料・鍵交換費用は削りにくい「固定枠」であるものの、合計しても家賃1ヶ月分前後。つまり、初期費用の大部分は工夫の余地がある変動枠なのです。

判断軸

手段

向いている人

注意点

払わない

敷金礼金ゼロ、フリーレント、仲介手数料半額・無料の物件を選ぶ

すべての人(最優先で検討)

家賃・退去条件・短期解約違約金の確認が必須

あとで払う

初期費用の分割払い(現金またはクレジットカード払い)、社会福祉協議会の貸し付け

収入はあるが手持ちがない人/失業・減収中の人(社協貸し付け)

分割手数料・金利を含めた総額で判断。借り入れは返済計画とセットで

補助を受ける

住居確保給付金(家賃・転居費用)、自治体の家賃補助・引越し助成

離職・収入減少などの要件に当てはまる人

収入・資産・求職活動(家賃補助の場合)などの要件確認が必要。申請は入居前に窓口へ相談

「貯金なし引越し」の失敗の多くは、「2」の分割払いに頼って毎月の返済が重くなるパターンです。

順番として、まず「1」でそもそもの金額を圧縮し、足りない分を「2」で埋め、要件に当てはまる人は「3」を確認するという順番で設計すると、無理のない引越しが実現しやすくなります。

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初期費用をもっとも大きく左右するのは物件選びです。

狙うのは、敷金・礼金がゼロの物件(いわゆるゼロゼロ物件)、フリーレント付きの物件(1〜3ヶ月程度の家賃無料期間が設定されている物件)、そして仲介手数料が半額あるいは無料の物件や不動産会社です。

この3つを組み合わせられれば、初期費用は「保証料+火災保険+鍵交換」の固定枠近くまで圧縮できます。

 

こうした条件は、物件検索サイトで「敷金・礼金なし」「フリーレント」の条件を指定すればまとめて絞り込めます。まずは希望エリアでどれだけ該当物件があるか、母数を確かめるところが出発点です。

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初期費用が安い物件には、相応の理由が隠れていることがあります。契約前に必ず確認したいのは次の4点です。

  1. 家賃が相場より割高になっていないか:礼金ゼロの代わりに家賃が高く設定されている場合があります。まずは同エリア・同条件の物件の相場と比べ、家賃が割高になっていないかチェックしましょう。家賃だけでなく「2年間の総支払額」で比較するのがポイントです。
  2. 退去時の費用条件:敷金ゼロの物件は、退去時にハウスクリーニング代等を実費請求する契約が多く見られます。特約の内容と概算金額を重要事項説明書で確認しましょう。
  3. 短期解約違約金の有無:フリーレント付き物件は「1年未満の解約で家賃1〜2ヶ月分の違約金」といった特約が付くのが一般的です。転勤や転職の可能性がある人は注意しましょう。
  4. オプション費用が上乗せされていないか:室内消毒費、24時間サポート費、抗菌施工費などが見積書に並んでいないか確認しましょう。任意加入のものは断れる場合があります。保証会社の年間更新料(1万円程度〜)も、初期費用ではなく毎年の固定費として計算に入れておきましょう。

初期費用の安さの理由を確認し、納得したうえで選ぶのであれば、ゼロゼロ物件もフリーレント付き物件も強力な味方です。確認せずに飛びつくことこそが失敗の基になります。

物件以外では、引越し作業費も圧縮可能な費用です。

単身・近距離なら、「繁忙期(2〜4月。特に3月下旬〜4月上旬)を外す」「平日・時間指定なし便を選ぶ」「荷物を減らして軽貨物便や友人の手を借りる」といった方法で数万円単位の節約が可能です。

家具・家電付き物件を選べば、購入費と運搬費を同時にゼロへ近づけられます。

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不動産会社によっては、初期費用のクレジットカード払いや分割払いに対応しています。

まとまった現金がなくても契約できる便利な方法ですが、分割回数によっては手数料が総額を押し上げてしまうことがあるため注意しましょう。

 

分割・カード払いをしてもよいのは「毎月の返済額が、家賃と合算しても手取りの3分の1に収まる」場合まで。リボ払いへの安易な切り替えは、貯金なしの家計では避けるのが賢明です。

失業などで生活が困窮している場合は、都道府県・市区町村の社会福祉協議会が窓口となる生活福祉資金貸付制度を利用できます。

このうち総合支援資金の「住宅入居費」を利用すれば、敷金・礼金のほか、入居時に払う賃料・共益費・管理費、仲介手数料、火災保険料、入居保証料といった費用に対して、最大40万円までの貸し付けを受けられます。

連帯保証人なしでも利用でき、貸付利子は連帯保証人ありなら無利子、なしでも年1.5%です。

 

あわせて、生活を立て直すまでの生活支援費(単身世帯は月15万円以内、原則3ヶ月間)の貸し付けもあります。(出典:政府広報オンライン「生活にお困りで一時的に資金が必要なかたへ『生活福祉資金貸付制度』があります。」

 

これらはカードローンや消費者金融に頼る前に、まず検討すべき選択肢です。ただし、給付ではなく貸し付け=返済が必要なお金である点は変わりません。

申請には相談・審査のプロセスがあるため、制度の詳細は厚生労働省の案内ページや、お住まいの社会福祉協議会で確認してください。(出典:厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」

あとで返すお金(分割・貸し付け)と、返さなくてよいお金(給付・補助)は、家計への影響がまったく違います。

要件に当てはまる可能性が少しでもあるなら、先に次のアプローチ方法3(給付・補助)を確認し、それでも足りない分だけを貸し付けや分割で埋める。

この順番で進めるだけで、引越し後の家計の苦しさは大きく変わります。

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離職・廃業から2年以内、またはやむを得ない休業等で収入が減少している人は、市区町村の自立相談支援機関を窓口とする「住居確保給付金」の対象になり得ます。

これは市区町村ごとに定める世帯人数等に応じた上限額の範囲で、家賃相当額が原則3ヶ月間(延長により最長9ヶ月間)支給される、返済不要の給付です。

世帯の収入・資産の基準(資産基準は世帯人数に応じて設定され、東京23区の単身世帯なら50万円前後。100万円が上限)や、誠実に求職活動を行うことなどの要件があります。(出典:東京都港区「住居確保給付金(家賃補助)のご案内」

 

さらに2025年4月の法改正で、家賃の補助に加えて転居費用を補助する仕組みも設けられました。

対象になるのは、転居先の初期費用(礼金、仲介手数料、家賃債務保証料、住宅保険料)、引越し代、ハウスクリーニングなどの原状回復費用です。

敷金と前家賃は対象外で、この分は自分で支払う必要があります。支給額には上限があり、転居先の市町村の生活保護の住宅扶助基準額の3倍が目安です。

この転居費用補助は、家賃補助と違って求職活動が要件になっていません。

その代わり、申請前に家計改善支援事業の相談を受け、「いまの家賃が家計を圧迫していて、より低廉な住宅への転居が必要」と認められることが前提になります。

物件を決めてからでは間に合わないため、家賃の安い部屋へ移りたい人は、物件探しを始める前に窓口へ相談してください。(出典:東京都中央区「住居確保給付金のご案内」

 

要件の判断は個別事情によるため、「自分は対象外だろう」と自己判断せず、まずは自立相談支援機関に問合せてみましょう。対象外でも、同じ窓口で家計改善支援や他制度の案内を受けられることがあります。

収入面で賃貸借契約の審査に不安がある場合は、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を登録・公開する「住宅セーフティネット制度」の利用を検討しましょう。

また、部屋探しの相談・家賃債務保証・見守りを担う都道府県指定の「居住支援法人」への相談も選択肢になります。

なお、住宅セーフティネット制度は2025年10月に改正法が施行され、見守りや福祉サービスへの連携が付いた「居住サポート住宅」の認定制度と、要配慮者が利用しやすい保証会社を国が認定する「認定家賃債務保証業者制度」が新たに始まりました。(出典:国土交通省「住宅セーフティネット制度」

保証会社の審査が不安な人にとっては、後者が実務的な選択肢になります。

自治体によっては、新婚・子育て世帯向けの家賃補助や引越し費用の助成を独自に設けている場合があります。

転居先の市区町村サイトで「家賃補助」「住宅助成」を確認しておくと取りこぼしを防げます。

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ペルソナ:山本さん(仮名)26歳・単身。転職を機に勤務先の近くへ引越したい。手取り月収19万円、貯金は8万円。家賃5.5万円の1Kを希望。

 

通常の物件を選んだ場合の初期費用

項目

目安

金額

敷金

家賃1ヶ月

55,000円

礼金

家賃1ヶ月

55,000円

仲介手数料

家賃1ヶ月+消費税

60,500円

前家賃

家賃1ヶ月

55,000円

保証料(初回)

家賃の50%と仮定

27,500円

火災保険料

2年契約

約15,000円

鍵交換費用

約16,500円

合計

家賃の約5.2ヶ月分

約284,500円

「払わない」を徹底して物件を選んだ場合

項目

条件

金額

敷金・礼金

ゼロゼロ物件

0円

仲介手数料

半額(家賃0.5ヶ月+消費税)

30,250円

前家賃

フリーレント1ヶ月で相殺

0円

保証料(初回)

家賃の50%と仮定

27,500円

火災保険料

2年契約

約15,000円

鍵交換費用

約16,500円

合計

約89,250円

※物件によっては、日割り家賃やオプション費用として別途1〜3万円程度が加わる場合があります。契約前に見積書で内訳を確認しましょう。

差額は約19.5万円。手持ち8万円では約9,000円足りませんが、引越しを平日の単身パックや軽貨物便(荷物が少なければ近距離で2万円前後から。通常期の近距離・単身の相場は3万円程度)に抑え、不足分だけを初期費用の分割払い(1〜2回)にすれば、貸し付けに頼らず引越しが成立する水準です。

入居翌月からは、フリーレントで浮いた家賃分を「緊急予備費」として積み立て直すところまでが設計です。

タイムライン(目安:1〜1.5ヶ月)

  • 4〜6週間前:希望エリアで「敷金・礼金なし」「フリーレント」の物件数と家賃相場を確認/失業・減収中なら自立相談支援機関と社会福祉協議会に制度を利用できるかどうかを相談
  • 3〜4週間前:内見・申し込み。家賃割高・退去時費用・短期解約違約金・オプション費用の4点を確認/現住居の退去通知(通常1ヶ月前)
  • 1〜2週間前:契約・初期費用の支払い(分割条件の最終確認)/繁忙期を外した平日便で引越し手配
  • 入居後:住所変更手続き/浮いた初期費用分を予備費として積み立て開始

 

申し込み前チェックリスト

  • □ 2年間の総支払額(家賃×24+初期費用+更新料−フリーレント分)で複数物件を比較した
  • □ 退去時のクリーニング特約と概算費用を確認した
  • □ 短期解約違約金の有無と金額を確認した
  • □ 分割払いの手数料込み総額と毎月の返済額を計算した(家賃と合算して手取りの3分の1以内)
  • □ 失業・減収中の場合、住居確保給付金と転居費用補助の該当可否を窓口に確認した
  • □ 引越し代は繁忙期・土日・時間指定を避けて見積もった
  • □ 契約金の入金期日と給料日の関係を確認した
  • □ 室内消毒費・24時間サポート費などのオプション費用の有無と、任意加入かどうかを確認した

失敗事例1:初期費用の安さだけで選び、2年総額では割高な部屋を契約した

礼金ゼロの代わりに家賃が3,000円高いだけで、2年間で7.2万円の差になります。回避策は、必ず「2年総額」で比較することです。

 

失敗事例2:初期費用を全額カードの分割払いにして、家賃+返済で家計が破綻しかけた

毎月の固定支出が膨らむと、次の緊急事態に対応できません。回避策は、まず物件選びで金額自体を圧縮し、分割は不足分の補填にとどめることです。

 

失敗事例3:フリーレント物件を10ヶ月で解約し、違約金で節約分が消えた

短期解約違約金の特約を読まずに契約したケースです。回避策は、契約前に「最低何ヶ月住めば違約金が発生しないか」を書面で確認し、自分の転勤・転職の可能性と照らし合わせることです。

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1 貯金がほぼなくても、敷金礼金ゼロ・フリーレント・仲介手数料で「払わない」
2 分割払いや社会福祉協議会の貸し付けで「あとで払う」
3 住居確保給付金や転居費用補助で「補助を受ける」

この3つのアプローチ方法を組み合わせれば、引越しは設計可能です。

家賃5.5万円のケースで、初期費用は約28万円から9万円弱まで圧縮できることも確認しました。「お金が貯まってから」と先送りしている間にも、今の住まいの不満や長い通勤時間、割高な家賃といったコストは毎月積み上がっていきます。

しかも初期費用を抑えられる物件は人気が集まりやすく、待てば有利になるわけでもありません。まずは物件検索サイトで、希望エリアにある「敷金・礼金なし」「フリーレント」の物件を検索し、いくらの手持ちがあれば引越し可能なのかを確かめてみてください。

必要な金額が「30万円」から「10万円弱」に変わった瞬間、引越しは遠い目標ではなく、来月の予定に変わります。

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Q1. 手持ち0円でも引越しできますか?

完全な0円は現実的ではありません。ゼロゼロ物件+フリーレントでも保証料・火災保険料・鍵交換費用(合計で家賃1ヶ月分前後)は残り、引越し作業費もかかります。ただし、初期費用の分割払いや、失業・減収中なら社会福祉協議会の住宅入居費貸し付け(上限40万円)、市区町村の住居確保給付金の転居費用補助(いまの家賃が家計を圧迫している場合に限られ、敷金・前家賃は対象外です)を組み合わせることで、手持ちが数万円でも成立するケースはあります。

 

Q2. 「初期費用ゼロ」をうたう物件は危険ですか?

一概に危険ではありませんが、家賃への上乗せ、退去時費用の実費請求、短期解約違約金、オプション費用の上乗せという4つの確認ポイントがあります。2年間の総支払額で相場と比較し、特約を重要事項説明書で確認したうえで選べば、有力な選択肢になります。

 

Q3. 住居確保給付金は働いていても使えますか?

対象は「離職・廃業から2年以内」または「やむを得ない休業等で収入が減少し離職等と同程度の状況にある」方で、世帯の収入・資産基準と求職活動要件があります。在職中でも減収要件に当てはまる場合があるため、市区町村の自立相談支援機関に確認してください。

 

Q4. 引越し費用を安くするなら、時期はいつが狙い目ですか?

引越し会社の繁忙期である2〜4月(特に3月下旬〜4月上旬)と土日・月末を避けるのが基本です。平日・時間指定なし便や、荷物が少なければ軽貨物便を選ぶと、単身で近距離の移動であれば数万円単位の節約になります。物件側も、繁忙期明けはフリーレント等の条件交渉が通りやすくなる傾向があります。

 

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