審査で見られているのは「年齢」ではなく、大家さんの3つの不安
入居審査に年齢制限があるわけではなく、大家さんが気にしているのは「家賃を払い続けられるか」「緊急時に連絡がつくか」「長く安心して貸せるか」という3点です。この不安の正体を知れば、非正規雇用の40代・50代でも、若い世代にはない材料(貯蓄・住歴・生活の安定感)で切り返せることがわかります。
非正規・フリーターでも通る物件の具体的な選び方
役員を除く雇用者の36.5%が非正規で働く現在、保証会社は雇用形態だけでなく、収入や勤続年数、家賃とのバランスなどを総合的に審査するケースが一般的です。保証会社の審査も「雇用形態」より「家賃と収入のバランス」を重視する方向にあります。月収の25%前後に家賃を抑える設定方法、独立系保証会社や保証人不要物件の探し方を、48歳・契約社員のペルソナによる収支シミュレーションつきで解説します。
審査に落ち続けたときに頼れる公的な支援制度
令和7年10月に改正住宅セーフティネット法が施行され、見守りつきの「居住サポート住宅」や居住支援法人による入居相談など、単身中高年の受け皿は着実に広がっています。UR賃貸・公営住宅も含め、どの順番で検討すべきかの判断軸を示します。

「この年齢で、しかも正社員じゃない自分に、部屋を貸してくれる大家さんなんているんだろうか」離婚や親との死別、実家からの独立、勤め先の都合。40代・50代で一人暮らしの部屋を探す理由は人それぞれですが、共通しているのは、若い頃には感じなかった審査への不安ではないでしょうか。ネットで検索すれば「中高年は審査に通りにくい」という記事ばかりが目につき、問い合わせの一歩が踏み出せない方も少なくありません。

けれども、実際の入居審査に「40歳以上お断り」のような年齢基準があるわけではありません。審査を左右しているのは、年齢の数字ではなく、大家さんや保証会社が抱く具体的な不安をどれだけ解消できるかです。そして、その不安への答えは、長く働き、暮らしてきた中高年だからこそ用意しやすいものが多いのです。

ここからは、審査の裏側で何が見られているのかという「気づき」から始めて、物件選びの実践、収支シミュレーション、そして万一のときの支援制度まで、順番に整理していきます。
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まず、前提となる数字を押さえておきます。総務省統計局の労働力調査によると、2025年平均で非正規の職員・従業員は2,128万人にのぼり、役員を除く雇用者に占める割合は36.5%です(出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」)。

 

働く人のおよそ3人に1人が非正規という社会で、「正社員以外には貸さない」という基準を貫けば、大家さんは入居者の3分の1を最初から失うことになりかねませんます。空室リスクを抱える貸す側にとっても、雇用形態だけで判断するのは合理的ではなくなっており、実際の審査は「その家賃を、その収入で払い続けられるか」という個別の見極めに移っています。

 

また、連帯保証人を用意できない単身者の増加を背景に、家賃保証会社の利用が入居の標準になっていることも追い風です。国土交通省の「令和3年度 家賃債務保証業者の登録制度等に関する実態調査」では、賃貸管理会社が家賃債務保証業者を利用するケースは80%にのぼります(出典:国土交通省「家賃債務保証業者登録制度」)。保証会社が家賃を保証してくれる仕組みが整ったことで、「保証人になってくれる親がもう高齢で頼めない」という中高年特有の壁は、以前より低くなっています。

一方で、国も課題として認めている現実があります。国土交通省は、単身世帯の増加が進むなか、賃貸人(大家さん)の中には孤独死や死亡時の残置物処理、家賃滞納などに懸念を持つ方が多くいることを、住宅セーフティネット法改正の背景として明示しています(出典:国土交通省「住宅セーフティネット制度」)。

 

つまり、40代・50代の単身入居で大家さんが見ているのは年齢そのものではなく、その先にある3つの不安です。

  1. 支払いの不安収入が途切れたとき、家賃を払い続けられるか
  2. 連絡の不安病気やトラブルの際、対応してくれる身内・連絡先があるか
  3. 長期の不安健康面も含め、この先も安心して貸し続けられるか

裏を返せば、この3点に具体的な答えを用意できれば、審査の景色は大きく変わります。次の章では、その「答え」が中高年にこそ揃えやすいという、意外と知られていない視点を見ていきます。

家賃補助のある物件(特定優良賃貸住宅)を探す 住宅確保要配慮者向け住宅

大家さんの不安

若い入居者の弱点

40代・50代が出せる材料

家賃を払い続けられるか

勤続が浅い、貯蓄が少ない、転職・退去が多い

勤続年数(非正規でも同じ職場での就業年数は評価対象)、預貯金残高、過去の家賃をきちんと払ってきた住歴

緊急時に連絡がつくか

保証人・緊急連絡先が親頼み

兄弟姉妹・成人した子ども・長年の知人など、複数の緊急連絡先候補

長く安心して貸せるか

数年で退去しがち

「終の住処に近い感覚で長く住みたい」という居住意向そのものが、空室リスクを嫌う大家さんには魅力

審査は減点方式で語られがちですが、実際には「不安を打ち消す加点材料」の勝負でもあります。たとえば貯蓄です。若年層に比べて、40代・50代は一定の預貯金を持っているケースが多く、収入面に不安があっても通帳の残高証明で「家賃1〜2年分の備えがある」ことを示せれば、保証会社や大家さんの見方は変わります。

 

フリーター・契約社員という肩書きの後ろにある「10年同じ現場で働いている」「前の住まいに15年住み、滞納は一度もない」という事実は、書類の書き方と伝え方次第で強力な武器になります。

材料を持っていても、伝わらなければ審査には反映されません。実務上のポイントは3つあります。

 

第一に、申込書の職業欄・勤続年数欄を正確かつ丁寧に書くこと。「アルバイト」ではなく「〇〇株式会社 △△業務(勤続8年)」のように、雇用形態と継続性をセットで示します。

 

第二に、収入を補強する書類を先回りで用意すること。直近の源泉徴収票や課税証明書に加え、預貯金で補強する場合は残高のわかる書類を提出できる旨を不動産会社に伝えておきます。

 

第三に、内見や来店時の印象です。入居審査では来店時の対応や申込時の印象が管理会社や大家さんへ伝わることがあり、人柄やマナーも見られており、時間を守る・希望条件を整理して伝えるといった当たり前の振る舞いが、そのまま「長く安心して貸せそうな人」という評価につながります。

努力ではどうにもならない部分は、土俵選びで回避します。具体的には、①保証会社の利用を前提とした「保証人不要」の物件、②信販系(クレジットカード会社系列)ではなく、現在の支払い能力を独自基準で判断する独立系保証会社を使う物件、③大家さん直接管理で相談の余地がある物件、の3つが狙い目です。

 

築年数や駅距離の条件を少し緩めるだけで、同じ家賃でも選べる物件の幅は大きく広がります。まずは希望エリアで「保証人不要」などの条件を組み合わせ、どのくらいの選択肢があるのか相場感をつかんでみてください。

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叶えたい条件で賃貸物件を探す 今住んでいる賃貸物件を基準に探す

ペルソナ:田中さん(仮名)48歳・単身。製造業の契約社員として同じ勤務先で9年勤続、年収280万円(月収約23.3万円)。離婚を機に、1Kか1DKでの一人暮らしを始めたい。預貯金は250万円。

 

家賃の上限設定 一般的な目安は月収の3分の1(約7.7万円)ですが、審査の懸念材料を減らしたい田中さんは月収の25%強にあたる6万円を上限とします。手取りを約18.5万円と仮定した月次収支は次のとおりです。

項目

金額

家賃

60,000円

食費

40,000円

水道光熱費

12,000円

通信費

8,000円

保険・医療費

10,000円

日用品・被服等

15,000円

交際費・趣味

15,000円

支出合計

160,000円

貯蓄可能額

約25,000円

家賃6万円なら、老後を見据えた積み増しを続けながら無理なく暮らせる水準です。審査する側から見ても「収入の4分の1程度の家賃+貯蓄250万円(家賃の40ヶ月分超)」という組み合わせは、雇用形態の不安を十分に打ち消す材料になります。審査上もプラス材料になる可能性があります。

 

初期費用の試算(家賃6万円・保証会社利用の場合)

項目

目安

金額

敷金

家賃1ヶ月

60,000円

礼金

家賃1ヶ月

60,000円

仲介手数料

家賃1ヶ月+消費税

66,000円

前家賃

家賃1ヶ月

60,000円

保証料(初回)

家賃の50%と仮定

30,000円

火災保険料

2年契約

約15,000円

鍵交換費用

約16,500円

合計

家賃の約5.1ヶ月分

約307,500円

※一般的な水準を仮定した試算です。敷金・礼金ゼロの物件なら約12万円圧縮できますが、退去時の原状回復条件は契約前に必ず確認してください。

  • □ 家賃は月収の3分の1以内(不安があれば25%前後)に設定した
  • □ 同じ勤務先での勤続年数を申込書に明記できるよう整理した
  • □ 源泉徴収票・課税証明書など収入証明をすぐ提出できる
  • □ 預貯金で補強する場合、残高のわかる書類を用意した
  • □ 緊急連絡先(可能なら連帯保証人)候補に事前に承諾を得た
  • □ 保証人不要・独立系保証会社利用の物件を候補に含めた
  • □ 不動産会社に雇用形態と収入を正直に伝え、通る見込みのある物件に絞ってもらった
  • □ 在籍確認の電話に出られる時間帯を担当者に共有した
  • □ 審査落ちに備えた第2候補の物件まで決めてある
  • □ 退去通知の期限(通常1ヶ月前)から逆算したスケジュールを組んだ

失敗事例1:見栄を張って家賃8万円台の物件に申し込み、審査で否決 年収280万円に対して家賃8万円は年収の34%超。保証会社の基準を超えやすい水準です。回避策は、審査に通ってから住み替えでグレードを上げる発想に切り替え、まず月収の25〜30%以内で確実に契約することです。

 

失敗事例2:緊急連絡先を「なし」で提出し、審査が長期化 単身中高年の審査で、緊急連絡先の空欄は大家さんの不安を直撃します。親が高齢でも、兄弟姉妹・成人した子・長年の友人でも認められる場合が多いため、申込前に必ず1〜2名へ打診しておくことが回避策です。

 

失敗事例3:「どうせ落ちる」と事情を隠し、条件の合わない物件で審査落ちを繰り返した 審査に通らない根本原因を不動産会社と共有しないまま申込を重ねると、時間だけが失われます。雇用形態・収入・緊急連絡先の状況を最初に正直に伝えれば、担当者は通る見込みの高い物件だけを提案でき、結果的に最短ルートになります。

家賃・賃料6万円以下の快適物件を探す 家賃・賃料8万円以下の物件を探す

高齢者や低額所得者など「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅を登録・公開する住宅セーフティネット制度は、令和7年10月1日に改正法が施行され、機能が強化されました(出典:国土交通省「住宅セーフティネット制度」)。

 

改正の柱のひとつが、居住支援法人などが大家さんと連携し、安否確認や見守り、困りごとの相談対応をセットで提供する「居住サポート住宅」の認定制度です(出典:政府広報オンライン「単身高齢者などの賃貸住宅への入居の不安を解消!改正『住宅セーフティネット法』がスタート」)。大家さん側の孤独死や連絡不通への不安をサポート体制で解消する仕組みのため、単身の中高年こそ恩恵を受けやすい制度といえます。

高齢者やひとり親、障害者などの住宅確保要配慮者のために提供される住宅

住宅確保要配慮者の部屋探しを支援する「居住支援法人」は、家賃債務保証の提供、住宅情報の提供・相談、見守りなどの生活支援を行う法人として都道府県が指定しています(出典:国土交通省「住宅確保要配慮者居住支援法人について」)。

 

「保証人がいない」「審査に落ち続けている」という段階になったら、自治体の住宅相談窓口や地域の居住支援法人に相談すれば、受け入れ実績のある物件や保証の支援策につないでもらえます。

▶連帯保証人がいなくても借りられる賃貸物件

独立行政法人都市再生機構のUR賃貸住宅は、保証人・保証会社が原則不要で、礼金・仲介手数料・更新料もかかりません。収入基準を満たせない場合も、貯蓄額や家賃の一時払いで代替できる制度があり、預貯金のある中高年と相性のよい選択肢です。収入が一定基準以下なら、家賃が収入に応じて決まる公営住宅(都営・県営・市営住宅など)への応募も並行して検討できます。

 

検討の順番としては、①独立系保証会社・保証人不要の民間賃貸(選択肢が最多)→ ②UR賃貸(貯蓄・一時払いを活かせる場合)→ ③セーフティネット住宅・居住支援法人への相談 → ④公営住宅(収入基準に合致する場合)という流れが、選択肢を狭めない進め方です。まずは①の土俵にどれだけ物件があるか、家賃6万円前後の相場を確かめるところから始めてみてください。

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40代・50代×非正規という組み合わせは、たしかに何の準備もなければ審査でつまずきやすい属性です。しかし、ここまで見てきたとおり、審査で問われているのは年齢ではなく「大家さんの3つの不安」への答えであり、勤続年数・貯蓄・住歴・緊急連絡先といった答えの材料は、長く働き暮らしてきた世代にこそ揃っています。加えて、改正住宅セーフティネット法や居住支援法人など、単身中高年を支える制度も年々厚くなっています。

 

一方で、「どうせ通らない」と部屋探しを先延ばしにしている間も、今の住まいの不便やストレス、割高な家賃は毎月積み重なります。年齢を重ねるほど選択肢が増えるわけではない以上、動くなら情報が揃った今が最も条件のよいタイミングです。

 

いきなり問い合わせる必要はありません。まずは希望エリアで「保証人不要」「家賃6万円以下」といった条件を組み合わせて、どんな部屋が見つかるのかを眺めてみる。その10分が、審査への漠然とした不安を「具体的な計画」に変える最初の一歩になります。

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Q1. 50代・フリーターですが、それだけで審査に落ちることはありますか? A. 年齢や雇用形態だけを理由に一律で否決されるわけではありません。審査の中心は「家賃と収入のバランス」「支払いを裏づける材料」「緊急連絡先の有無」です。家賃を月収の25〜30%以内に抑え、勤続年数や預貯金を示せれば、通る可能性は十分あります。

 

Q2. 連帯保証人を頼める親族がいません。部屋は借りられますか? A. 借りられます。現在は賃貸管理会社の8割が家賃保証会社を利用しており、保証会社の審査に通れば連帯保証人は不要という物件が主流です。緊急連絡先は別途求められることが多いため、兄弟姉妹や友人など候補を用意しておきましょう。

 

Q3. 無職の期間があり、いまは働き始めたばかりです。審査に影響しますか? A. 勤続が浅い点は不利に働くことがありますが、内定通知書や雇用契約書で今後の収入を示す、預貯金残高で支払い能力を補強する、家賃を低めに設定するといった対策で十分カバーできます。事情は隠さず不動産会社に伝えるのが近道です。

 

Q4. 「居住サポート住宅」や居住支援法人は、どこで探せばいいですか? A. お住まいの都道府県・市区町村の住宅相談窓口に問い合わせるか、国土交通省サイトに掲載されている都道府県指定の居住支援法人一覧から地域の法人を探せます。セーフティネット登録住宅は専用の検索システムで公開されています。

・雇用形態別の審査の基礎を押さえたい方はこちら:フリーターでも賃貸物件は借りられる! 契約を結ぶときのポイント

 

・初期費用をさらに詳しく試算したい方向け:パートやアルバイトでも入居審査に通る? 一人暮らしに必要な初期費用や節約のコツを解説

 

・離職中・求職中の方はこちら:無職でも賃貸保証会社の審査に通る? 審査で見られるポイントを紹介

 

・過去の滞納や信用情報に不安がある方向け:ブラックリストは賃貸借契約に影響する? 入居審査に通りやすい物件選びのポイント

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