賃貸物件をリサーチする際にやはり気になるのは、「築年数」でしょう。

新築物件や築年数が浅い物件(築浅物件)に良いイメージを持っている方は多く、人気が高い傾向にあります。一方で、築年数が長く経過した物件(築古物件)にも様々なメリットがあり、あえて築古物件を選ぶ方もいます。

そこで今回は、築年数に関する基礎知識や重視するポイントごとの築年数の目安、築浅・築古物件のメリット・デメリットなどについて解説します。併せて、LIFULL HOME'Sで実施した築年数に関するアンケート調査結果も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
新築・築浅物件リノベーション・リフォーム物件引越しまでにやること・スケジュール

初めに、賃貸物件の「築年数」の概要や、「築浅(ちくあさ)」と「築古(ちくふる)」の違いなどを解説します。本記事を読み進めるうえでの前提知識となるため、正しく理解しておきましょう。

築年数とは、建物が完成してから経過した年数のことです。一般的には、建築工事が完了し、完了検査に合格した「竣工日(しゅんこうび)」を基準に、現在までの年数を築年数として計算します。

 

建物が完成してから誰も住んでいない物件(未使用の物件)のうち、築年数1年未満のものは「新築」と呼びます。逆にいうと、築年数が1年未満でも、誰かが一度でも入居したのなら新築物件に該当しません。

 

日本においては、新築物件をはじめ、築年数が浅い物件が好まれがちです。賃貸物件の築年数が長くなればなるほど、賃貸需要が低下し建物自体も劣化するため、家賃相場は安くなる傾向にあります。

不動産広告などでは、築年数のほか、「築浅」や「築古」と表記されることもあります。これらは文字どおり、築年数が浅く新しい物件が「築浅」、築年数が長く古い物件が「築古」です。

 

両者に法律上の明確な定義はありませんが、一般的には以下のような物件を指すケースが多いでしょう。

  • 築浅:築年数が5年以内の物件 
  • 築古:築年数が30年以上の物件

築浅物件は外装・内装・設備がきれいな状態であることが多く、魅力の一つとなっています。しかし近年では、リフォームやリノベーションによって、新築同然の見た目になっている築古物件も少なくありません。

 

そのため、築浅物件への入居を希望している方でも、築古物件のなかから理想的な物件が見つかる可能性があります。

賃貸物件選びにおいて、どれくらいまでの築年数を目安とするかは、重視するポイントによって変わります。ここでは、重視するポイントごとに、基準となる築年数の目安を紹介します。

賃貸物件に最新設備が整備されていることを重視する場合は、築10年未満が目安になります。築年数が浅いと、以下のような設備がある物件が多いためです。

  • モニター付インターホン
  • オートロック
  • 防犯カメラ
  • 宅配ボックス
  • 浴室暖房乾燥機
  • エアコン省エネ型給湯器 など

なお、築10年ほどが経過すると、外壁タイルのはがれやエアコン室外機のサビなど、外気にさらされている部分の劣化が見られるようになります。したがって、室内の設備だけでなく、室外の設備の状態もチェックしておきましょう。

耐震性を重視する場合は、築20年未満の物件を選ぶと安心です。

 

1981(昭和56)年6月1日以降に建てられた物件は、建築基準法の「新耐震基準」をクリアしています。耐震基準とは、地震による揺れに対し、建物が倒壊・崩壊せずに耐えられる性能基準のことです。新耐震基準の建物は、震度6強~震度7程度の揺れに耐えられるような造りになっています。

 

さらに、2000(平成12)年6月には、木造住宅を対象に新耐震基準が見直され、弱点が強化されました。このような経緯から、木造アパートや賃貸一戸建ての場合、2024年現在では、築20年までの物件なら基本的に安心して住めると判断してよいでしょう。

 

ただし、1981(昭和56)年以前に建てられた物件でも、耐震補強工事を実施していて、耐震性の心配がないケースもあります。耐震措置をとっているかどうかは、賃貸借契約前の重要事項説明の際に、不動産会社から説明を受けましょう。

一般的には、築年数が古い物件は建物や設備の経年劣化が起こり、家賃相場が低くなります。築年数を重ねると借り手の需要が減少し、空室リスクを避けるためにオーナーが家賃を下げる傾向にあるからです。

 

また、同一エリア内の競合物件の増加や周辺環境の悪化などによって、家賃が下がる場合もあります。

 

このように、家賃が安い賃貸物件には何らかの理由があるケースがほとんどですが、安さを重視する方は、築30~40年までに築年数の条件を広げて物件探しをするとよいでしょう。

 

賃貸物件を探す 新築・築浅物件

続いて、築年数別の賃貸物件の状態について、目安を解説します。

 

なお、賃貸物件では入居者が退去するたびに部屋の原状回復工事が行われ、さらに内装や設備のリフォーム・リノベーションが実施されることもあります。常にきれいな状態に補修されるため、物件によっては築年数の変化を実感しにくい点に留意しましょう。

築年数が0~5年の新築物件や築浅物件では、新耐震基準をクリアしているのはもちろん、建物や設備の面でも、良好な状態が維持されている可能性が高いです。

 

また、現代に合った間取りや人気の設備が設置されている物件が多いでしょう。

築年数が5~10年程度の物件なら、建物の劣化はそれほど進んでいないと考えられます。不動産会社や不動産情報サイトなどによっては、築年数10年までを築浅物件に分類する場合もあります。

 

新築物件ではないとはいえ、設備も比較的新しいものが設置されていると考えられます。

現在ではよく見られる「LDK」の間取りは、新しいライフスタイルに合わせ、2000年頃から流行したものです。LDKは、リビング(L)・ダイニング(D)・キッチン(K)が一つの空間になっている間取りを指します。

 

2024年現在、築年数が10~20年程度の物件ではLDKの間取りを見つけやすいものの、それ以上古くなると、対象物件数が少なくなる傾向にあります。

 

また、築年数が10年を超えると、水回りの設備などに故障や劣化が見られることもあります。したがって、メンテナンスが行き届いており、管理体制がよい物件を選ぶのがポイントです。

新築物件や築浅物件と比べて、築年数が25年以上の築古物件は家賃が安くなります。

 

2K・3Kは戦後~1960年代、2DK・3DKは1960~1970年代に主流となった間取りであるため、築年数が経過した物件に多く見られるでしょう。一方、新築物件で同様の間取りを探そうと思っても、あまり見つからないかもしれません。

ここでは、築浅物件と築古物件のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

 

ただし、築年数だけで物件の良しあしを判断することは困難です。物件を選ぶ際は、実際に自分の目で細部まで確かめるようにしましょう。

賃貸で築浅物件を選ぶメリット・デメリットは、以下のとおりです。

築浅物件のメリット

築浅物件は、内装や外観がきれいである可能性が高く、気持ち良く生活できるのがメリットです。通常、これまでの入居者が付けたキズや汚れも少ないため、見た目が良く清潔感があります。

 

また、最新の設備を備えていることが多く、設備の状態も良好です。モニター付インターホンやオートロックなどのセキュリティ関連の設備が充実していると、一人暮らしの方でも安心して過ごせるでしょう。

築浅物件のデメリット

新築・築浅物件では、過去に住んだ人がいない・少ないため、入居して初めて気付く設備の不具合や、新しい建材特有の匂いに関する問題が発生することがあります。

 

24時間換気システムが導入されていても、体質によっては匂いをつらく感じたり、匂いの原因となる物質がアレルギー症状を引き起こしたりするリスクもゼロではありません。

 

また、新築・築浅物件は人気が集中しやすく、築古物件に比べて総数も少ないため、希望に沿った部屋を見つけにくい点もデメリットです。築古物件に比べて家賃も高い傾向にあるため、新築・築浅物件に入居したいとなると予算をオーバーしてしまうケースもあるでしょう。

 

新築・築浅物件 セキュリティ・防犯対策が充実した物件

賃貸で築古物件を選ぶメリット・デメリットは、以下のとおりです。

築古物件のメリット

同一エリア内の新築・築浅物件と比べると、築古物件は家賃が安い傾向にあります。リフォーム・リノベーション済みの物件は、新築同然のきれいな部屋でありながら、家賃は比較的安価に設定されているため、お得感があるでしょう

 

また、新築・築浅物件よりも築古物件の方が数が多いため、築古物件を選択肢に入れることで、より多くの候補のなかから住まい探しができます。

築古物件のデメリット

前述のとおり、新耐震基準に基づく建築確認がスタートしたのは1981(昭和56)年6月1日です。したがって、1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物は、耐震性に不安がある可能性もあります。

 

旧耐震基準の物件を検討する際は、耐震診断や耐震補強工事の実施の有無をチェックし、物件選びの判断材料にするとよいでしょう。

 

リノベーション・リフォーム物件

不動産ポータルサイトのLIFULL HOME’Sでは、全国の男女300人を対象に、「賃貸物件選びと築年数」に関してアンケート調査を実施しました。

「賃貸物件を選ぶ際に築年数を気にする」と回答した方は216人で、全体の72%に上りました。

 

また、築年数を気にする方の許容範囲(年数)は、回答数の多い順に以下のとおりです

  • 20年未満(59人)
  • 10年未満(48人)
  • 25年以上(30人)
  • 15年未満(22人)
  • 5年未満(19人)
  • 25年未満(13人)

「築年数を気にする」と回答した人が多いとはいえ、築浅物件を希望する方の割合は少なく、各自が許容できる築年数のラインがあることがわかります。なお、「1年未満」と回答した方は、わずか2人にとどまりました。

 

一方で、築年数を気にしない方は、おもに以下のような点を重視して賃貸物件を選んでいるようです(複数回答可)。

  • 家賃(71人)
  • 間取り(53人)
  • 立地(40人)
  • 周辺環境(32人)
  • 通勤・通学時間(28人)
  • 設備(23人)

現在入居している賃貸物件の築年数に関しては、回答数の多い順に以下のようになりました(「わからない」と回答した方を除く)。

  • 25年以上(35%)
  • 20年未満(8%)
  • 15年未満(7%)
  • 20年以上(6%)
  • 10年未満(5%)
  • 15年以上(4%)

築年数が25年以上と回答した方は、全体の35%に上ります。この結果から、築年数が30年以上の築古物件で暮らしている方も少なくないと考えられます。

 

具体的な意見としては、以下のような声が挙がりました。

  • 築年数が多少古くてもリフォーム・リノベーションがなされていれば快適に感じる
  • リフォーム・リノベーションにより、外観と室内のギャップに驚くことがある
  • 築古物件でも設備が良ければ問題ない
  • 耐震性とセキュリティの観点から、築浅物件を選んでいる
  • 賃貸借契約当初は築年数を気にしていたが、実際にはどれくらいメンテナンス体制が整っているかが重要だと感じた

「次に賃貸物件を選ぶ際に最も重視したいポイント」に関しては、回答数の多い順に以下のとおりとなりました。

  • 家賃(49%)
  • 間取り(18%)
  • 立地(14%)
  • 周辺環境(6%)
  • 通勤・通学時間(6%)
  • 設備(3%)
  • 築年数(2%)

その他、「建物の構造(木造や鉄骨造など)」という回答もありました。

 

先述のとおり、「賃貸物件を選ぶ際に築年数を気にする」と回答した方は全体の7割を超えましたが、他の条件と比較すると、築年数の優先順位はそれほど高くないことがわかります。

 

「家賃や立地の希望を満たす築浅物件はなかなか見つからない」という意見があることからも、現実的には、予算の範囲内で妥協できる築年数の物件を選ぶ方が多いようです。

 

また、「何年そこに住む予定かをよく考えて、築年数を判断する」といった声も聞かれました。長期間入居する予定の場合は、退去時までに築年数がどれくらい経過するかを考えることも大切でしょう。

最後に、賃貸物件の築年数に関するよくある質問と回答を紹介します。

1981(昭和56)年5月31日以前に建築確認を受けた建物は、「旧耐震基準」が適用されているため、耐震性を確認する必要があります。

 

ただし、旧耐震基準の建物でも耐震補強をしているケースもあり、すべての物件を耐震性が低いと一概に判断することはできません。耐震性については、正確な情報を得るために不動産会社に問合せましょう。

一般的に、同一エリア内の新築・築浅物件と比べて、築古物件は家賃が割安になります。

 

目安としては、築年数が10年程度の物件でおよそ1割、20年程度の物件でおよそ2割安くなるというのが一般的です。家賃が安くなる一方で、築10年程度であれば、まだまだ設備が新しいことも多いでしょう。

築古物件でも、しっかりとメンテナンスされていれば、新築・築浅物件と比較しても遜色ない物件も少なくありません。

 

築古物件を選ぶ際は、メンテナンス体制を確認するとともに、キズや汚れが放置されていないかを内見時にチェックしましょう。

火災保険は、火災や落雷のほか、風災・雪災・水濡れなどによる建物や家財の損害を補償するものです。

 

火災保険料は、建物の構造・所在地・専有面積・補償内容といった複数の要素によって決まります。加えて、築年数が古くなるほど、火災保険料の額は高くなる傾向にあります。

 

火災保険料の額が高くなるのは、築年数が古い物件ほど老朽化による影響を受けやすいためです。具体的には、建物自体や電気・給排水設備の老朽化により、火災リスクや水濡れリスク、台風・大雪による損壊リスクなどが高まります。築古物件では、こうしたリスクに備える必要があるため、火災保険料が高く設定される傾向にあるのです。

 

新築・築浅物件 セキュリティ・防犯対策が充実した物件 リノベーション・リフォーム物件

賃貸物件は、築年数によって建物の状態や特徴が異なります。本記事で解説した内容をもとに、重視したい項目とおすすめの物件(築年数)をまとめると、以下のとおりです。

内装や外観の清潔感を求める方

最新設備が整備されていることを重視する方 など

  • ・新築物件
  • ・築浅物件
  • ・築10年未満の物件

耐震性を重視する方

LDKの間取りを希望する方 など

  • ・築20年未満の物件

家賃の安さを重視する方

リフォーム・リノベーション済みなら建物の古さが気にならない方 など

  • ・築30~40年未満の物件
  • ・築古物件

ただし、築年数などの条件面のほか、実際の物件の状態もチェックして、総合的に良しあしを判断することが重要です。

 

LIFULL HOME’Sでは、築年数のほか、家賃や間取り、通勤・通学時間などの条件から簡単に物件を絞り込め、オンラインで内見・相談・契約もできます。優先したい条件を明確にしたうえで、効率良く物件探しをしましょう。

 

新築・築浅物件 リノベーション・リフォーム物件 引越しまでにやること・スケジュール

更新日: / 公開日:2024.08.29