高齢化が進み「超高齢社会」に突入している日本では、一人暮らしの高齢者が男女ともに増加傾向にあります。高齢者の一人暮らしには若者と異なる課題があり、さまざまな問題を抱えやすいのが実情です。今回は、日本において高齢者が一人暮らしを選ぶ理由を解説します。また、一人暮らしの高齢者が抱えやすい問題や、本人と周囲の人たちができる対策、住まい選びのポイントも紹介しますので参考にしてください。
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日本では高齢者を「65歳以上の人」と定義しています。総務省の調査によると、2021年時点での日本における高齢者人口は約3,640万人、総人口に占める高齢者人口の割合を表す高齢化率は29.1%となっています。2036年には高齢化率が33.3%となり、全人口の3人に1人が高齢者になると予想されています。

高齢化の進行に合わせ、高齢者の一人暮らしは男女ともに増加傾向にあります。2020年時点では男性約231万人、女性約441万人の高齢者が一人暮らしをしています。高齢者人口に占める一人暮らしの割合は男性が15.0%、女性が22.1%となっており、こちらも増加傾向にあります。高齢者数自体の増加に加えて、一人暮らしを選択する高齢者の割合も増加しているのが実情です。

高齢者の一人暮らしが増加するなか、実際に一人で暮らす高齢者はどのような生活を送っているのでしょうか。

 

内閣府「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」の結果からは、一人暮らしの高齢者(同調査では60歳以上)の近所付き合いが希薄であることが見えてきます。60歳以上を対象にした「ふだん近所の人とどのようなつき合いをしているか」という質問に、近所の人と「外でちょっと立ち話をする」と答えた人の割合は全体平均55.4%に対して一人暮らしでは43.2%、「物をあげたりもらったりする」の回答割合は全体平均48.2%に対して一人暮らしが38.3%と、いずれも一人暮らしにおける割合が低くなりました。

 

同調査では、親しい友人や仲間の有無についても質問しています。「ほとんど持っていないと感じる」と答えた人の割合は全体平均14.6%に対して一人暮らしは20.1%、「持っていないと感じる」と回答した割合は全体平均6.4%に対し一人暮らしは10.1%。一人暮らしの高齢者のうち、実に3割もの人が「友人や仲間がいない」と感じていることがわかります。

 

こうしてみると、一人暮らしの高齢者は同居人がいる高齢者に比べ、孤独や孤立を感じている割合が高いといえるでしょう。

 

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孤独や孤立を感じる割合が高いにもかかわらず、一人暮らしを選択する高齢者が増えているのはなぜなのでしょうか。ここでは、高齢者が一人暮らしを選ぶ理由について解説します。

今の生活に満足しているために一人暮らしを続けているという高齢者も多くいます。

 

先ほどの内閣府「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」によれば、一人暮らしの高齢者のうち、日常生活全般に「満足している」と答えた人の割合は11.1%、「まあ満足している」と答えた人は54.1%でした。このことから、積極的に一人暮らしを選び、一人の生活を楽しんでいる高齢者も一定数いると推察できるでしょう。

子どもや親戚はいるものの遠くに住んでいる場合、生まれ育った地域や住み慣れた地域を離れたくないために、あえて一人暮らしを選んでいる高齢者もいます。長年居住している地域であれば一定の近所付き合いも維持できるので、それほど孤独を感じずに生活できるケースも多いでしょう。

 

ただ、地方では高齢化が進み65歳以上が半数を超えた「限界集落」になるエリアも少なくありません。近所の親しい友人や仲間がいなくなったときどうするかが、先々課題になる可能性もあります。

内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」によると、50歳時点での未婚率を表す「生涯未婚率」は1970年の調査では男性1.7%・女性3.3%でしたが、その後男性は一貫して上昇、女性も1990年頃から上昇し始め、2020年には男性28.3%・女性17.8%まで増加しています。

 

女性の就業率の高まりによる男女間での結婚・育児に関する意識の乖離、「結婚や育児は大変」という意識の広まりなどを背景に、結婚しない人生を選択する「ソロ社会化」が起きているとされています。

 

こうしたデータから、一人暮らしを積極的に選んでいるというよりも、経済的・心理的要因から「一人暮らしを選ばざるを得ない」人が増えていると考えられるでしょう。独身でいる人が年齢を重ね、高齢者の単身世帯になっているという側面もあるのです。

高齢者の一人暮らしは、若年層の一人暮らしにはない特有の問題を抱えるリスクがあります。

ここでは、一人暮らしの高齢者が抱えやすい問題について解説します。

一人暮らしの高齢者が抱えやすい問題の1つ目が認知症の進行です。

 

認知症は脳への刺激が減ることで症状が進行するため、外出の機会が減ったり他人とのコミュニケーションが乏しくなったりすると、症状が悪化するリスクが上がるといわれています。一人暮らしで他者との関わりが減ると認知症が進行し、地域のルールを守れない、近隣住民とトラブルを起こすといった事態が懸念されるでしょう。

 

さらに、一人暮らしの場合、症状が進行していても発見が遅れるというリスクがあります。周りが気づかないまま症状が悪化してしまい、ますます周囲と関わりを持つのが難しくなる危険性があります。

一人暮らしの高齢者が抱えやすい2つ目の問題が孤独死です。

 

高齢者が一人暮らしをしている場合、周囲の人が高齢者の体調の変化や病気の進行に気づきにくくなります。放置すれば死に至るような危険な状態に陥ったとしても、緊急時の連絡手段がなく、必要な処置を施せないまま亡くなってしまうケースも少なくありません。一人暮らしの場合、亡くなったことに気づく人もいないため、遺体の発見が遅れてしまうことも考えられます。

 

東京都監察医務院の統計によると、2020(令和2)年の東京23区内において一人暮らしで亡くなった人の数を年齢別に見た場合、男女とも65歳以上の高齢者が圧倒的に多くなっています。特に70代前半の男性、85歳以上の女性における死亡者が多い状況です。

 

また、同院の統計によると、死亡した単身者の多くは死後1~2週間以内に発見されているものの、なかには3ヶ月あるいは半年以上発見されなかったケースも見られます。

 

孤独死により数ヶ月遺体が放置された場合、体液や臭いが物件に付着してしまうため、特殊清掃を行わなければなりません。国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」において、自然死であっても特殊清掃を行う必要があった場合には、借りる人への告知が義務付けられています。

 

孤独死によるリスクを踏まえ、一人暮らしの高齢者への貸出しに抵抗感を持つ不動産会社や物件オーナーも少なくないのが実情です。このことから、一人暮らしの高齢者は賃貸住宅を探しづらい可能性があります。

 

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認知症の進行や孤独死といった問題を抱えやすい高齢者の一人暮らしですが、本人だけでこうした問題を防ぐのは難しく、家族や周囲の協力が欠かせません。

 

まず、一人暮らしの高齢者の状況を定期的に把握することが重要です。家族や周囲の人が定期的に声を聞く、顔を見に行くなど、体調や生活の変化を見逃さないようにしましょう。家族が遠くに住んでいる場合、ビデオ通話で様子を確認するのもよいでしょう。

 

本人の要介護度がそれほど高くないのであれば、セキュリティ会社が提供する見守りサービスを利用するのも有効です。遠方で現地に駆けつけるのが難しい場合、訪問型やカメラ型の見守りサービスを検討しましょう。

 

また、高齢者の近所に住んでいる方は、普段から声をかけ合うようにして、「今日は顔を見ていない」、「顔色が悪い」など、ちょっとした変化にお互い気づけるようにしておきましょう。地域活動への参加を促し、地域での役割を持ってもらうことも認知症予防に効果的です。

高齢者が一人暮らしをする理由は様々ですが、元々暮らしていた家が広くて1人では管理できない、親戚のいる地域に引越したい、病院などの近くに住みたいなどの事情がある場合、高齢になってからの引越しも考えられます。

 

ただし、先述のように高齢者には特有のリスクがあるため、住まい探しが難しい部分もあります。そのため、高齢者歓迎の不動産会社や物件を中心に比較・検討していくとよいでしょう。詳しくはこちらの記事もご覧ください。

 

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LIFULL HOME’Sには高齢者が暮らしやすい物件や、高齢者が相談しやすい不動産会社を探せるページがありますので、活用してみてください。

 

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今の生活に満足していたり、周りに頼れる人がいなかったりするなどの理由から、一人暮らしの高齢者が年々増加しています。高齢者が一人暮らしをしている場合、孤独や孤立を感じやすく、本人だけでは問題に立ち向かえない可能性もあります。また、病気の進行に気づくのが遅れたり、ケガをした際の発見が遅れたりするリスクを伴います。

 

認知症の進行や孤独死といった悲しい事態を防ぐためにも、家族や周囲の人が常に気にかけ、小さな変化も見逃さないようにすることが大切です。

 

これから一人暮らしを検討している高齢者やその家族は、希望するエリアにどんなコミュニティがあるか、周辺環境はどうか、などを考慮した住まい探しをするとよいでしょう。具体的な条件を設定して、高齢者が一人でも安心して生活ができるような環境を整えていくことをおすすめします。

 

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