家賃には、物件の「立地」「広さ」「築年数」「その他の設備」といったさまざまな項目が影響を与えます。また、家賃の適正範囲は、世帯年収や生活費によっても異なります。

そこで、今回は3人家族の平均的な生活費のデータを基に、いくつかの世帯年収別に家賃の適正範囲をシミュレーションし、どんな物件を見つけられるのか詳しく見ていきましょう。
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3人家族の平均的な生活費

 

総務省統計局「家計調査報告」(※)では、世帯人別に1ヶ月当たりの平均的な生活費データが公表されています。それによると2021年における、3人家族の平均的な生活費は以下のとおりです。

費用項目

金額

食費

7万7,578円

水道・光熱費

2万2,503円

家具・家事用品費

1万1,974円

被服費

8,800円

保険・医療費

1万4,635円

交通・通信費

4万1,110円

教育費

1万1,403円

教養・娯楽費

2万4,346円

その他の費用

5万3,413円

合計

26万5,762円

このデータはさまざまな世帯の平均値であり、実際に計算するときにはそれぞれの家計の支出項目と金額に照らし合わせて調整することが大切です。

 

※ 総務省統計局「家計調査報告/3-1 世帯人員別 二人以上の世帯・勤労者世帯・勤労者世帯(うち世帯主が60歳未満)・無職世帯

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3人家族

 

家賃に影響を与える大きなポイントとして、住宅における「部屋の広さ」が挙げられます。そのため、まずは「どのくらいの広さなら快適に過ごせるのか」を把握したうえで、家賃設定を行うことが大切です。

 

国土交通省「住生活基本計画」では、3人家族に最低限必要な広さは「40平米」、ゆとりのある広さは都市部で「75平米」、郊外では「100平米」とされています。

 

今回は、この広さをひとつの判断基準にしながら、借りられる物件の特徴を詳しく見ていきましょう。

世帯年収300万円の家賃例と借りられる物件

 

ここでは、世帯年収300万円の場合の家賃例と、どのような物件が借りられるのか特徴を紹介します。

 

世帯年収300万円の場合の平均的な手取り額は、年収の約80%と考え、「240万円」と仮定します。よって、ボーナスなどを考慮しない月当たりの手取り金額は「約20万円」と計算します。

 

前述した「家計調査報告」による3人家族の平均的な生活費「26万5,762円」を当てはめると、世帯年収が300万円の場合は、大幅な赤字となってしまいます。

 

ここでは、節約を前提に家計の生活費を以下のように調整してみました。

費用項目

金額

食費

5万5,000円

水道・光熱費

1万円

家具・家事用品費

5,000円

被服費

1万円

保険・医療費

1万円

交通・通信費

1万5,000円

教育費

1万円

教養・娯楽費

5,000円

その他の費用

1万円

合計

13万円

以上の前提では、家賃の上限は「7万円」となります。

 

以下において、「家賃7万円」でどのような物件を借りられるのか、エリア別に見ていきましょう

 

不動産情報ポータルサイトLIFULL HOME’Sで、東京都心部(千代田区・港区・中央区・文京区・渋谷区・新宿区)の物件を検索してみると、2022年1月時点、家賃7万円の物件として585件ヒットしました。

 

しかし、3人家族に必要な「40平米以上」に絞ると、該当件数は0となってしまいます。そのため、東京都心部で、家賃を7万円で3人家族に必要な広さの物件を探すのは難しいといえるでしょう。

 

東京23区において家賃7万円で検索すると4,988件がヒットしました。なお、広さを「40平米以上」にして絞り込むと、物件数は141件と大幅に少なくなってしまいました。

 

ただし、区域によっては「2Kや2DK」など、3人家族でも十分に生活していける間取りを持った物件も見つかります。

 

「駅からの距離を長めに設定する」「築年数にこだわらない」など、条件の設定にはやや工夫が必要ですが、23区内で家賃7万円のファミリー向け物件を見つけるのは決して不可能ではありません。

 

東京都の市部までエリアを広げると、家賃7万円で1,216件がヒットし、そのうち3分の1以上の429件が「40平米以上」の専有面積を備えています。

 

また、居室が2つ以上ある「2K以上」の物件数も580件と数多く見つかるため、3人家族でも生活しやすい部屋を見つけるのはそう難しくありません。ただ、23区を離れてしまうと、最寄り駅までの距離が遠い物件も多くなるため、条件の設定には注意が必要です。

 

広さや間取りタイプ、設備、築年数といったさまざまな条件のなかから、どの項目を大事にしたいか、優先順位を決めながら部屋探しを行うことが大切となります。

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世帯年収500万円の家賃例と借りられる物件

 

次に、世帯年収500万円の場合の家賃例と、借りられる物件の特徴について見ていきましょう。

 

世帯年収500万円の場合、平均的な手取り額は「約400万円」と考えられます。月額で「約33万円」が家賃を含む生活費に充当できる計算です。

 

3人家族の平均的な生活費が「26万5,762円」とすると、家賃に使えるお金は6万4,000円程度となってしまいます。

 

ここでは、節約を前提に家計の生活費を以下のように調整してみました。

費用項目

金額

食費

7万5,000円

水道・光熱費

1万5,000円

家具・家事用品費

1万円

被服費

1万円

保険・医療費

1万円

交通・通信費

3万円

教育費

1万円

教養・娯楽費

1万円

その他の費用

4万円

合計

21万円

このモデルでは、家賃を10万円としても、毎月数万円程度を貯金に振り分けることができます。

 

ここでは、「家賃10万円」でどのような物件を借りられるのか、エリアごとに見ていきましょう

 

先ほどと同じように東京都心部の物件を検索してみると、家賃10万円の物件が556件ヒットしました。ただし、広さを「40平米以上」に絞ると、ヒット件数は14件と大幅に少なくなってしまいます。

 

そのため、家賃10万円を基準にすると、東京都心部でファミリー世帯向けの物件を見つけるには「最寄り駅からの距離」や「住宅の築年数」などの条件を緩めるといった工夫が必要だといえるでしょう。

 

東京23区までエリアを広げると、家賃10万円で2,516件がヒットし、そのうち604件は「40平米以上」の広さの物件でした。そのため、3人家族でも住める物件を見つけるのはそう難しくないと思われます。

 

一方、ゆとりのある広さにあたる「70平米以上」で検索をしたところ、いずれも駅から距離がある数件の物件が見つかりました。東京23区では「2LDKのマンション」や「3LDKの一戸建て」など、子育てにも十分な広さを持つ物件を探すのは難しいようです。

 

東京都の市部では、家賃10万円で251件がヒットし、そのうち184件が「40平米以上」の広さを備えています。

 

また、間取りとしては「2LDKのマンション」が多く見つかり、それ以外にも「新築の1LDKのマンション」「3LDK以上の一戸建て」「駅近・設備充実の物件」もありました。

 

このように、東京23区外であれば、家賃10万円で3人家族が快適に生活できる物件を見つけやすいといえます。

世帯年収700万円の家賃例と借りられる物件

 

世帯年収が700万円になると、家賃の設定にはもう少しゆとりが生まれます。

 

世帯年収700万円の場合、平均的な手取り額は「約560万円」と考えられます。月額「約47万円」が家賃を含む生活費に充てられる計算です。

 

「家計調査報告」による3人家族の平均的な生活費は「26万5,762円」でしたので、貯蓄として7万円を追加しても家賃には「13万円」を充てられる計算になります。

 

もう少し貯蓄額を増やしたい場合は、上記の世帯年収500万円のモデルケースを参考にしてみてください。

 

ここでは、家賃を「13万円」と設定して、借りられる物件の特徴を見ていきましょう

 

東京都心部では、家賃13万円の物件が351件ヒットしました。そのうち、3人家族に必要な「40平米以上」に絞ると、ヒット件数は65件となりました。

 

以上のように東京都心部であっても、家賃を13万円に設定すればファミリー向けの物件を見つけられそうです。なお、間取りを「2K以上」に絞ると、物件数は24件となりました。

 

お子さんの年齢から部屋数を2つ以上必要とする場合には、「最寄り駅からの距離」や「住宅の築年数」などの条件を緩めるなどの譲歩が必要だといえるでしょう。

 

東京23区までエリアを広げると1,187件がヒットし、そのうち610件は「40平米以上」の広さを持つ物件でした。また、部屋数が2つ以上ある「2K以上」に絞っても300件という結果が出ました。

 

ただし、「70平米以上」に絞ると、ヒット件数は26件と大幅に少なくなってしまいました。

 

東京都の市部では115件がヒットし、そのうち100件が「40平米以上」、42件が「70平米」以上と、3人家族には十分な広さを持つ物件が数多く見つかります。

 

また、間取りについても、3つ以上の部屋数がある物件や庭付きの一戸建てなどもありました。

 

さらに、東京23区外では「新築・築浅」「駅近」「駐車場付き」など、さまざまな条件にこだわった物件探しが可能です。

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おおまかな家賃の上限が決まったら、住まいに求める条件を明確にして、いくつかの物件を比較してみることが大切です。賃貸物件の場合は、条件にこだわればこだわるほど希望する家賃内での選択肢が狭くなってしまいます。

 

まずは現在の家賃設定でどんな物件を借りられるのか、実際にチェックしてみましょう。

  • 家賃は手取り収入と生活費のバランスを考慮して決めることが大切
  • 3人家族に必要な広さは「40平米」、ゆとりのある広さは「75平米」とされている
  • 毎月の手取り額から生活費を差し引いて適正家賃を割り出すことが大切
  • 居住エリアによって、同じ家賃でも借りられる物件に大きな差が生まれる
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