浴室をバリアフリー化する際は、国や自治体の補助金を使うことで、実費負担額をかなり減らすことができます。浴槽や床、出入り口の段差や扉をバリアフリー化すれば、介護される側もする側も毎日の入浴が楽になりますよ。

今回は、浴室をバリアフリー化するための工事内容や、費用相場などを解説します。
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ユニットバス

 

高齢者の方や障がいを持つ方など、介護を必要とする人にとって、一般的なユニットバスには以下のように危険なポイントが多数あります。

  • 床から浴槽までの距離が高い→浴槽をまたぐ際に転倒する危険あり
  • 浴槽が深い→溺れる危険性あり
  • タイル張りの床→転倒する危険性あり
  • 出入り口に段差がある→出入りする際につまずいてケガをする危険性あり

しかし、浴室をバリアフリー化すれば、利用者の方はもちろん、介護をする方にとっても浴室内を安全性の高い空間にできます。お風呂は毎日利用する場所なので、少しでもお互いの心理的・身体的負担を取り除くためにバリアフリー化が重要なのです。

ユニットバスのバリアフリー化

 

一口に「浴室をバリアフリー化する」といっても、何をどうすれば安全性が高くなるのか分からない方も多いと思います。そこで、浴室をバリアフリー化する場合、どこを改修すればよいのかを「一般的な内容」と「必要性に応じた内容」の2種類に分けて解説します。

浴室をバリアフリー化するのであれば、まずチェックしたい改修項目が以下6つです。

  • 扉を引き戸か折り戸にする
  • 出入り口の段差を少なくする
  • 出入りしやすい浴槽にする
  • 滑りにくい床にする
  • 手すりを設置する
  • ヒートショック対策をする

ひとつずつ確認していきましょう。

扉を引き戸か折り戸にする

古い浴室の場合、扉が押し戸になっているケースがあります。押し戸は開閉する際に力が必要なので、力の弱い高齢者の方にとってはバランスを崩しやすく、転倒しやすいといった危険性があります。

 

また、押し戸だと出入り口のスペースが狭く、車いすや介護者が一緒に入れないというデメリットもあるので、浴室の扉は引き戸か折り戸にすると安全かつ機能的です。

出入り口の段差を少なくする

浴室の出入り口には、浴室内の水が脱衣所に流れ出ないよう、あえて段差をつけているタイプが多くあります。段差は数cmですが、高齢者や障がい者の方にとってはつまずきやすい危険ポイントですし、数cmの段差があることによって車いすの出入りも困難になるため、ここもバリアフリー化したい項目です。

 

したがって、浴室をバリアフリー化するなら、出入り口をフラットにし、段差を少なくするのも大切な改修ポイントといえます。

 

ただし、出入り口の段差が少なくなると脱衣所側への水漏れが起きやすいので、その点は注意しましょう。

出入りしやすい浴槽にする

深い浴槽や、床から浴槽まで高さがあるユニットバスだと出入りする際に転倒する危険性が高くなります。また、介護者の視点から見ても、深い浴槽や床から浴槽まで高さがあるユニットバスだと介助時に腰を痛めやすくなるため、浴槽の高さは40cm以内に抑えるのがベストです。

 

バリアフリーに特化した浴槽としては、浴槽の3割を床に埋め込んだ「半埋め込み式」や、浴槽の縁を広めに取って腰掛けられるタイプなどがあります。浴槽のタイプを替えれば、転倒事故を起こすリスクも大幅に軽減できます。

滑りにくい床にする

昔はお風呂の床といえばタイルが一般的でした。しかし、タイルは水に濡れると滑りやすいので、転倒の危険性が高くなります。

そこで、浴室をバリアフリー化するのであれば、床を滑りにくい床材に張り替えることも重要です。

 

近年は床材の種類も豊富になっているのでデザイン性も高いですし、畳のようにクッション性の高いものや、床からの冷気を遮断するものもあります。床を替えれば、万が一転倒をしてもタイル床のときよりケガの度合いが軽く済みますし、後述のヒートショックを起こす危険性も少なくなります。

手すりを設置する

浴槽の近くや出入り口付近など、立ったりしゃがんだりする場所に手すりを設置すると、転倒防止に役立ちます。浴槽や壁などに手を添えて力を入れてしまうと、手を滑らせて事故を起こす危険性があるので、バリアフリー化をするなら手すりの設置はマストです。

 

ただし、手すりは目的に合わせて設置すべき場所が異なります。以下に目的別の設置場所をまとめているので、手すりの設置を検討している場合は参考にしてください。

設置場所

目的

出入り口付近の壁

浴室に出入りする際の転倒防止

浴槽付近

浴槽へ出入りする際の補助

浴槽の中

浴槽内で姿勢を維持し、溺れないようにするため

ヒートショック対策をする

ヒートショックとは、気温差の高い場所を行き来した際、血圧が乱高下したり脈拍が変動してしまったりする現象です。最悪の場合、死に至る危険性があるので、浴室をバリアフリー化するならヒートショック対策は万全にしておきましょう。

 

浴室暖房を付けたり、保温効果のある床材を使用したりすると、ヒートショックのリスクを軽減できますよ。

先ほどは「一般的なバリアフリー化」として、まずチェックしておきたい改修ポイントを紹介してきましたが、ここでは利用する方の状態に応じて、あると便利なバリアフリー化を紹介します。

シャワーキャリーを設置する

シャワーキャリーとは、お風呂専用の車いすです。シャワーキャリーを使えば、「服を脱ぐ→シャワーで洗う→浴室から出て着替える」といった一連の行動をすべて座ったまま行えるので、介護者の負担を大幅に軽減できます。

 

また、シャワーキャリーは利用者のタイプによって、肘掛けやリクライニング機能などのオプションを追加することも可能です。足腰が不自由な方や、普段から車いすに乗っている方の入浴介助を行う場合は、浴室内のバリアフリー化とともに、シャワーキャリーの設置をおすすめします。

バスリフトを設置する

バスリフトとは、浴槽内に設置できる電動式の昇降シートです。バスリフトがあれば、ひとりで立ち座りができない方や、浴槽をまたぐのが難しい方、膝や腰を曲げるのが難しい方の身体的負担を軽減できます。

 

バスリフトの設置には大がかりな工事を必要としません。ご自身で機械を購入し、浴槽に設置すればすぐ使えるようになるので、手軽に浴室をバリアフリー化できます。

非常用ブザーを設置する

浴室内に非常用ブザーを設置しておけば、ひとりでお風呂に入っているときに気分が悪くなっても、ブザーを鳴らすだけで家族の誰かがすぐ駆けつけられます。

 

ブザーは押しボタン式またはひもを引くタイプから選べるので、設置する場合は力を入れなくても音が出やすいものを選んでください。

 

非常用ブザーは、浴槽付近の壁や洗い場の壁など、事故が起きやすい場所に設置すると、より安心です。

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ユニットバスのバリアフリー化の相場

 

先に紹介した浴室のバリアフリー化にかかる費用の相場をまとめました。

内容

相場

扉を引き戸か折り戸に変更

12万~19万円

出入り口の段差をフラットにする

5万~10万円

出入りしやすい浴槽に変更

30万~35万円

滑りにくい床に変更

10万~20万円

手すりの設置

2万~3万円

ヒートショック対策

2万~20万円

シャワーキャリーの設置

6万円

バスリフトの設置

20万円

非常用ブザーの設置

2,000~5,000円

※価格はすべて税抜き

 

相場価格に幅があるのは、商品のグレードによって価格が変わるためです。デザインや機能性にこだわらず、最低限の機能だけを追求する場合は、相場の最低ラインでバリアフリー化が実現できます。しかし、浴室をバリアフリー化するにあたって、内装や浴槽に少しこだわりたい場合は、相場価格でも高めのラインで費用が発生します。

ただし、ユニットバスをリフォームする場合、丸ごとバリアフリー対応のものに入れ替えることが多いため、部分ごとではなく全体の費用になることがあります。

 

浴室をバリアフリー化する場合は、補助金制度を利用し、実費負担を抑えられるケースもあります。補助金制度については次の項目で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

補助金

 

浴室をバリアフリー化する場合、以下の補助金制度が適用されるとリフォーム費用の何割かを補助してもらえます。

  • 介護保険の補助金
  • ライフサポート推進事業の補助金
  • 自治体の補助金

ただし、補助金を使うためには一定の条件を満たす必要があるので、以下の解説を参考に、対象になるかどうかをチェックしてみてください。

要支援、または要介護認定を受けている人は、最大20万円までの工事費用に対して、9~7割、最大18万円の補助金が支給されます。ただし、介護保険の補助金を受け取れるのは原則として1回のみであること、要支援、要介護の区分に関係なく金額が一律であることを覚えておきましょう。

 

介護保険の補助金は、浴室のバリアフリー化を行う場合、以下のような工事で利用できます。

  • 手すりの設置
  • 段差の解消
  • 床の滑り防止
  • 扉の取り替え

こちらの補助金を利用して浴室をバリアフリー化したい場合、まずケアマネジャーへの相談が必要なので、担当者の方に話をしてみてください。

住宅の基本性能を高め、より長く使えるように改修する場合、対象となるリフォーム工事費用の3分の1、最大100万円/戸までの補助金が支給されます。ただし、支給対象となる住宅は以下のように定められているので、まずはご自宅が対象かどうかを確認しておきましょう。

  • 一戸建て:リフォーム後の住宅規模が55m2以上であること
  • 共同住宅:リフォーム後の住宅規模が40m2以上であること

また、ライフサポート推進事業の補助金は、浴室のバリアフリー化を行うにあたり、以下のような工事で利用できます。

  • 床面積の増加
  • 低い浴槽への取り替え
  • 移動台や踏み台など、浴槽への出入りを補助する器具の設置
  • 身体を簡単に洗うための水洗器具設置、または取り替え
  • 手すりの設置
  • 段差の解消
  • 戸の取り替え
  • 床の滑り防止
  • ヒートショック対策

各自治体にも補助金制度があります。多くの場合、「住民税の滞納がないこと」が条件として掲げられていますが、その他の細かい条件や補助の対象、上限支給額は自治体によって異なるので、詳しくはお住まいの地域にある自治体のホームページを確認してみましょう。

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ユニットバスのバリアフリー化

 

ユニットバスをバリアフリー化する際に気をつけたいポイントを3つにまとめたので、施工前に確認をしておいてください。

ユニットバスは工場でつくられた既製品を組み立ててつくっていくので、浴槽の大きさや形を自由に設計することはできません。また、穴開けの位置なども各メーカーがあらかじめ指定した場所しか開けられないので、工事内容も制限されます。

 

ユニットバス全体を入れ替えずに手すりや非常ブザーを取り付ける際は、指定外の場所へ穴を開けることもありますが、その際に何か不具合が生じてもメーカーによる保証は受けられないのでご注意ください。

手すりや浴室暖房を付けるだけといった簡単な工事であれば、工事当日からお風呂に入れます。

 

ただし、床の張り替えや浴槽の取り替えといった大がかりな工事だと、施工が1日で終わらない可能性が高くなります。また、工事が1日で終わったとしても接着剤が完全に乾くまで時間がかかるため、場合によっては2~3日お風呂に入れない可能性があることも覚えておきましょう。

マンションは管理組合ごとに取り決めがあるので、勝手に浴室をバリアフリー化することはできません。したがって、マンションにお住まいの方は、工事を依頼する前に管理組合へ工事届けを出し、承認をもらうようにしてください。

ユニットバスのバリアフリー化

 

浴室をバリアフリー化すると、介護者、介助者ともに身体的・精神的負担を取り除くことができます。風呂場をまるごとリフォームしなくても、可能な範囲で浴室内に手すりやシャワーキャリーなどを設置するだけでも、かなり楽になることでしょう。

 

また、バリアフリー化には多くの費用がかかりますが、自治体や国の補助金制度を利用すれば、5~9割の費用を負担してもらえるので、ぜひ活用してみてください。

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