JR大崎駅とは

JR大崎駅(おおさきえき)は、品川区に位置し、「埼京線・川越線」、「湘南新宿ライン」、「山手線」、「りんかい線」、および「相鉄線」が乗り入れている。JR東日本が公表している「各駅の乗車人員2023年度」によると、JR東日本管内において乗車人員は上から15位にランクインし、1日平均乗車人員は約13万人を超える。

山手線内の主要駅の一つである大崎駅は、その交通利便性の高さが特徴的といえる。

埼玉県内から新宿駅や渋谷駅、横浜駅などの縦断方向のみならず、りんかい線により、お台場や新木場駅、葛西臨海公園などの臨海部へのアクセス性に優れている。さらに、隣駅は、「品川駅」であり、当該駅からは、東海道新幹線を利用することができる。加えて、品川駅には将来的に「リニア中央新幹線」が開通する予定である。

JR大崎駅北改札口 ※2025年8月撮影JR大崎駅北改札口 ※2025年8月撮影
JR大崎駅北改札口 ※2025年8月撮影大崎駅周辺の開発状況 ※出典:品川区(2023年)「品川区まちづくりマスタープラン」 、p118

また、まちづくりの面においても特徴がある。

JR大崎駅は、明治時代以降、工業地帯として発展してきた歴史がある。しかしながら、現状は工場が多く立地しているというよりも再開発が促進されていると感じるのではないだろうか。その背景には1959年に制定された工業等制限法による東京特別区等の工場の新設・増設制限に伴い工業から住宅・商業への土地利用転換が挙げられる。

さらには、1982年に東京都が策定した「東京都長期計画」において、大崎駅周辺が副都心の一つとして位置付けられたことで「大崎ニューシティ」を出発点として多くの再開発が進められていった。加えて、大崎駅周辺地域は2002年に都市再生特別措置法に基づく「都市再生緊急整備地域」に指定され、国による支援のもと、再開発が積極的に進められる状況下にある。

次に、都市計画についても触れておきたい。品川区の都市計画の指針である「品川区都市計画マスタープラン(2023年3月策定)」において、大崎駅周辺は品川駅周辺同様に「広域活性化拠点」に位置付けられている。また、当該地区のまちづくりの目標として「職・住・遊・学の拠点の魅力で、多様な人々をひきつける質の高い先端都市」とし、ものづくり産業をリードする業務機能の集積やポテンシャルを活かしたさらなる開発事業の促進などを掲げており、今後もより一層、住宅・オフィス・商業等の誘導を図るまちづくりを進めようとしている。

これらに加え、マスタープランでは、防災性の向上や、緑地の確保といった課題にも言及している。具体的には、大崎地区の不燃領域率は品川区内で高い水準にあるものの、区全体としてはさらなる不燃化が必要としている。また、再開発が進む一方で、公園や緑地の整備が十分とはいえない状況が指摘されている。
※不燃領域率:市街地の「燃えにくさ」を表す指標。建築物の不燃化や道路、公園等の空地の状況から算出し、不燃領域率が70%を超えると延焼による市街地の焼失率はほぼ0となる。

大崎駅西口F南地区の市街地再開発の位置・これまでの経緯

JR大崎駅西側エリアで進められている再開発の正式名称は「大崎駅西口F南地区第一種市街地再開発事業」となる。位置的には、居木神社(いるぎじんじゃ)や品川区立大崎図書館分館などに隣接しているエリアであり、JR大崎駅西口から約100mの距離に位置している。

この再開発は、老朽化した小規模な木造住宅や店舗併用建物が混在するエリアで行われている。地区内の道路が狭く防災上の課題を抱えていた状況であり、かつ、広場や緑地等のオープンスペースが不足しているため、副都心にふさわしい都市機能の更新と安全で快適な都市環境の形成が急務となっていた。

大崎駅西口F南地区第一種市街地再開発事業の位置 ※国土地理院地図を一部加工大崎駅西口F南地区第一種市街地再開発事業の位置 ※国土地理院地図を一部加工

また、再開発の経緯としては、2006年10月に再開発協議会が発足し、2007年8月には再開発準備組合が設立された。市街地再開発事業の実施に必要な都市計画決定は2018年3月に行われ、再開発組合は2021年3月に設立認可を受けた 。権利変換計画は2022年3月に認可され、建築工事は2023年1月に着工している 。再開発事業の完了予定は2027年2月末である。

市街地再開発事業の概要

再開発事業が行われるエリアは、品川区大崎二丁目および三丁目に位置しており、施行面積は約0.6ヘクタールとなっている。その中で実施される施設建築物の設計方針は次のとおり。

【施設建築物の設計方針】
・低層部に周辺建物と同程度の高さに基壇を設けることで街並みの連続性に配慮
・多様なニーズに対応する都市型住宅を整備
・制振および免震構造、ならびに災害復旧期間における居住生活が継続可能な計画
・公益施設等(保育所、店舗等)の整備、周辺の大型業務拠点を補完する機能(事務所)の整備
・防災倉庫、災害時の一時避難場所等を設け地域防災性の向上に寄与する計画
・屋上や壁面の一部を緑化

イメージパース(現地撮影) ※2025年8月撮影イメージパース(現地撮影) ※2025年8月撮影
イメージパース(現地撮影) ※2025年8月撮影居木神社参道および市街地再開発事業に施設建築物の建築状況、計画建物の断面図 ※写真:2025年8月撮影、出典:事業計画書(2023年8月17日変更認可)

<計画建物の概要>
・建物用途:住宅(7〜36階)、事務所(2〜5階)、店舗(B1〜2階)、保育所、公益施設等
・敷地面積:約5,055m2
・建築面積:約2,970m2
・延べ面積:約52,124m2
・容積率 :約650%
・建物規模:地下3階・地上37階、高さ約149m
・公益施設:緑道(北側・西側)、歩道状空地、広場状空地(約1,000m2)
      歩行者通路(歩行者デッキ・エレベーター)など
・設計者 :株式会社日建設計
・施行者 :前田建設工業株式会社
・事業費 :約381億円(うち、交付金・補助金:約86億円)

特筆したいのは、JR大崎駅西口に隣接して整備された再開発エリア(大崎駅西口E東地区、シンクパーク)からアクセス可能な歩行者動線として歩行者デッキ(幅員3m)が整備される。これにより高低差のある再開発エリアからJR大崎駅西口までダイレクトに結ばれることとなる。

また、住宅総戸数は約451戸、単身、夫婦およびファミリー世帯が居住する1〜3LDKまでが整備される。それぞれの住戸床面積と戸数は次のとおり計画されている。なお、事業計画書(2023年8月17日変更認可)によると、分譲住宅である旨の記載がない。加えて、竣工予定時期に対し、現時点において分譲住宅情報が公開されていないことから従前居住者用の住戸以外の部分は賃貸住宅であることが想定される。

・25m2以上50m2未満、戸数約175戸、1LDK(単身世帯)
・50m2以上65m2未満、戸数約119戸、2LDK (夫婦世帯)
・65m2以上、戸数約157戸、3LDK(ファミリー世帯)
※出典:大崎駅西口F南地区市街地再開発組合 事業計画書(2023年8月17日変更認可)

イメージパース(現地撮影) ※2025年8月撮影建物配置図、断面図(2021年3月15日プレスリリース時点) ※大崎駅西口F南地区市街地再開発組合・住友不動産株式会社(2021 年)『職住近接の街づくりが進む大崎に事務所併設の複合タワー 「大崎駅西口F南地区第一種市街地再開発事業」組合設立』

建築工事の現状

現地では、建築工事の現況を見ることができる。仮囲いには隣接する「品川区立芳水(ほうすい)小学校」の児童が描いた作品が掲示されている。建物の外形はほぼ完成しており、高さ約149mの建築物を望むことができる。再開発の周辺には、区立大崎図書館分館や居木神社、天台宗金剛山観音寺が立地しており周辺環境と調和するために様々な工夫が施されており、例えば、すでに居木神社の参道(緑道3号)の整備が完了している状況を見ることができる。

再開発建築物の仮囲いに掲示された芳水小学校児童の作品 ※2025年8月撮影再開発建築物の仮囲いに掲示された芳水小学校児童の作品 ※2025年8月撮影
再開発建築物の仮囲いに掲示された芳水小学校児童の作品 ※2025年8月撮影居木神社と再開発建築物 ※2025年8月撮影
再開発建築物の仮囲いに掲示された芳水小学校児童の作品 ※2025年8月撮影品川区立大崎図書館分館と再開発建築物 ※2025年8月撮影

事業スケジュール

事業完了予定:2027年2月末
建築物の工事竣工予定:2026年2月

建築物の竣工予定については、現場に設置された標識(東京都中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例第5条第1項)によると、2026年2月中旬が予定されている。なお、本稿作成時点では住宅部分に関する物件情報は公表されていない。

大崎駅周辺では他にも市街地再開発が展開中

今回取り上げた市街地再開発事業は、大崎駅周辺で進む大規模な都市再生プロジェクトの一部である。駅西口では、すでに「シンクパーク」や「大崎ウエストシティタワーズ」、「大崎ウィズシティ」といった大規模複合施設が整備されている。

さらに、大崎駅と五反田駅の中間に位置する「東五反田二丁目第3地区第一種市街地再開発事業」も進行中である。この再開発では、街区名称を「大崎リバーウォークガーデン」として、約390戸におよぶ住戸や事務所・店舗などの複合建築物が一体となった開発が進められている。竣工予定は、2027年5月を予定しており、今回取り上げた再開発が竣工した後に完成する予定となっている。

▶︎大崎・五反田駅の中間エリアに「大崎リバーウォークガーデン」が誕生。市街地再開発の全体像を解説

また、大崎駅周辺では都市計画決定には至っていないものの、準備組合が設立され再開発が計画されているエリアがいくつかある(下図参照)。当該駅周辺は、都市再生緊急整備地域に指定されており、国支援のもと今後も再編が進むエリアであるため、大きな動きがある場合は別途、記事にして皆さんにお伝えしていきたい。

現在進行中の市街地再開発事業(大崎駅・五反田駅周辺) ※出典:品川区、https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kankyo/kankyo-toshiseibi/20250204142521.html現在進行中の市街地再開発事業(大崎駅・五反田駅周辺) ※出典:品川区、https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kankyo/kankyo-toshiseibi/20250204142521.html

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