「アジア人と一緒に働かないとお店はできない」

吉祥寺のハモニカ横丁などで16店舗を経営するビデオインフォメーションセンター(代表:手塚一郎氏)が、三鷹の「ハモニカミタカ」を大改装し、2023年3月、「三鷹ASIANS(アジアンズ)」としてオープンした。

「アジアの小さな百貨店」をコンセプトにアジア各国の料理が食べられる。またアジア料理向けの肉、野菜、香辛料も販売。ランチは500円バイキング、お酒は原価で飲める。従業員は日本人1人を除いてすべてがベトナム、ネパール、中国、台湾、韓国の人たちだ。

4月16日はアジアの若者が集まるイベントを開催4月16日はアジアの若者が集まるイベントを開催

こういう店をつくったことには手塚なりの思想がある。手塚は語る。
「僕は六本木ヒルズのことをずっと批判していた。世界中からブランド品を集めたら街ができるなんて、そんなのだめだと思っていた。でも僕が三鷹でやってきたことも、規模は違うけど本質は同じだと気づいた。吉祥寺にあるものを三鷹に集めたわけだから。しかも商売はいまいちだった。ああ、やっぱり何かを集めただけじゃダメだと思った。じゃあ、自分の中に今確固としたものがあるんだろうかと自問したんだ」

「今僕の会社には60人か70人くらい外国の人が働いている。その人たちと10年くらい一緒にやってきた。ほんとに彼らがいなければ何もできない状況だ。この人たちと仲良くやるしかない」

4月16日はアジアの若者が集まるイベントを開催アジアの多彩な料理が揃う
4月16日はアジアの若者が集まるイベントを開催三鷹ASIANS外観 設計は隈研吾建築都市設計事務所

縮小する日本と拡大するアジア

法務省統計によると2022年6月末現在における外国人の中長期在留者数は266万9,267人、特別永住者数は29万2,702人で、これらを合わせた在留外国人数は296万1,969人で、前年末(276万635人)に比べ20万1,334人(7.3%)増加している。
国籍別では以下のとおり。
近年はベトナム人の増加が激しい。

(1) 中国  74万4,551人 (構成比 25.1%) (+3.9%)
(2) ベトナム 47万6,346人 (構成比 16.1%) (+10.0%)
(3) 韓国    41万2,340人 (構成比 13.9%)(+ 0.6%)
(4) フィリピン 29万1,066人 (構成比 9.8%)(+ 5.2%)
(5) ブラジル  20万7,081人 (構成比 7.0%) (+ 1.1%)
(6) ネパール   12万5,798人 (構成比 4.2%) (+ 29.5%)
(7) インドネシア 8万3,169人 (構成比 2.8%) (+ 39.0%)
(8) 米国   5万7,299人 (構成比 1.9%) (+ 5.8%)
(9) タイ   5万4,618人 (構成比 1.8%) (+8.5%)
(10) 台湾  5万4,213人 (構成比 1.8%) (+ 5.9%)

出所・法務省出所・法務省
出所・法務省国別人口予測 1950年から2100年 出所:社会実情データ図録 資料:国連

また在留資格別外国人労働者数は2022年末で182万2,725人と過去最高。10年前の約65万人と比べて約3倍に増えた。全在留外国人の約60%が就労している。

だが外国人技能実習生の不当な扱われ方や、名古屋出入国在留管理局の収容施設に収容されていた被収容者(30歳代女性、スリランカ国籍)が、死亡する事件が起こるなど、課題は多い。
日本は今後毎年70万〜100万人の人口減少が予測されているにもかかわらず外国人の受け入れにはまだまだ消極的である。
そうこうするうちにアジア諸国は経済成長し、日本は経済が停滞し、円安が進んだので、就労先として日本が選ばれないようになりつつある。

アジアの食を集める

「そこで彼らにどういう場所をつくったらいいか聞いたんだ。すると食材を買うにも大変だと言う。八王子から新大久保まで買い出しに行かないと他に買う場所がないって言うんだ。だからここではアジアの食材、香辛料を揃えた。あきる野の農家さんがアジアの葉物野菜を作っているんで、それもこの店で売ることにした」

3月25日のオープニングパーティではベトナムの舞踏団のパフォーマンス3月25日のオープニングパーティではベトナムの舞踏団のパフォーマンス
3月25日のオープニングパーティではベトナムの舞踏団のパフォーマンス肉も売っている

「それから彼らが自分の国の料理を安く食べたい。それでランチをバイキング方式で500円にしたらものすごく人が集まっちゃって(笑)。でも、もっとアジアの人たちに来て欲しいなと思ってるから、いいよ」

「それとアジアのビールがほとんど各種飲めるようになっていて、それも飲食店分を上乗せしない原価で出している。今後は語学教室もやりたいし、料理教室もやりたいし、悩み事があったら弁護士を紹介もしたい。そうやって、とにかくアジアンズに外国の人に集まってもらいたい。この事業だけは僕が死んでも継続できるようにしたい」

3月25日のオープニングパーティではベトナムの舞踏団のパフォーマンス日本人の若者の減少を補うのはアジアの若者だ
3月25日のオープニングパーティではベトナムの舞踏団のパフォーマンスたくさんのアジア食材がある

手塚一郎・最後の挑戦

手塚は今年76歳。1998年にハモニカ横丁に焼き鳥屋の「てっちゃん」を開店して以来、25年間突っ走ってきた。三鷹アジアンズが彼の仕事の総仕上げになるようだ。

「エマニュエル・トッドの本を読んだらフランスがアフリカの移民を受け入れるのに三世代かかるって書いてあった。最初に来た人がいて、その子どもがいて、それで孫の世代になってやっと移民が同化するという。でも僕は、そうかな?って思う。世界はほんとに多様性に満ちている。僕はトッドが言うように彼らに同化して欲しいのではない。日本でいろんな国の人が混在して楽しく暮らすようにしたい。うちのスタッフでも子どもができた女性がいる。その子どもがまた子どもをつくらないと同化しないというのはおかしい。だから僕もそう簡単には死ねないね(笑)」

手塚一郎手塚一郎

公開日:

ホームズ君

LIFULL HOME'Sで
住まいの情報を探す

賃貸物件を探す
マンションを探す
一戸建てを探す