鉄道系不動産会社が企画する、趣味と暮らす住まい

鉄道高架化と都市計画道路が一体で整備された「河内花園」界隈。クールなイメージを醸し出す鉄骨造2階建てのガレージハウス「K・BLOC  HANAZONO」鉄道高架化と都市計画道路が一体で整備された「河内花園」界隈。クールなイメージを醸し出す鉄骨造2階建てのガレージハウス「K・BLOC HANAZONO」

東大阪の郊外に住む会社役員のAさんは、週末、セカンドハウスのガレージハウスに通う。愛車のビンテージカーの横に置いたテーブルで、仲間とワイングラスを傾け、車談義に花を咲かせるのが何よりの楽しみだ。道路から差し込む黄昏時の陽の光が、磨き上げた愛車のボディーを照らす。間口が4mあまり、奥行き7m、天井高2.7mの空間はかけがえのない居場所だ。時間を忘れて至福の時を過ごした後は、2階にある居室がAさんを迎えてくれる――。

これはあくまで想像だが、そんな暮らしを実現する物件が、大阪府東大阪市に誕生した。
ガレージハウスというだけあって、車やバイクなどの置き場所としてだけでなく、眺めたり、整備したり、時には仲間と過ごすこともできるガレージが1階を占め、2階には、食事や宿泊もできる居宅としてのスペースがある。

このガレージハウス、建築された場所が最大のトピックだ。関西の大手鉄道、近鉄電車が真上を走る、高架下の空間に建てられているのだ。

近鉄グループの不動産会社、近鉄不動産株式会社が企画・建設し、賃貸住宅として運営するこのガレージハウスは、近鉄奈良線「河内花園」駅から徒歩4分の高架下にあり、「K・BLOC HANAZONO」と名付けられている。今回案内していただいたのは、同社 事業開発本部プロジェクト企画部課長の湯谷里恵さんと、チーフの岡田浩一さん。

なぜ、高架下のこの場所なのか。ガレージハウスの市場性や将来性と合わせて聞いてみた。早速見に行ってみよう。

発想の転換によって生まれた「K・BLOC HANAZONO」

「河内花園」駅は、毎年末、ラグビーの甲子園ともいえる全国高校ラグビーで盛り上がる花園ラグビー場の最寄り駅である「東花園」駅からひとつ大阪都心寄りの駅だ。

電車を降りて高架沿いを東に歩いていくと、すぐに目当ての物件が見えてきた。
2車線の前面道路には、広いインターロッキングの歩道があり、真新しい都市の風景が、最近整備されて間もないことをうかがわせる。この辺りは鉄道の高架化と一体となって、2014年に東大阪市の都市計画によって完成した。

湯谷さんと岡田さんに高架下に目を付けた理由を聞いてみた。

「駅から徒歩4分という、駅と駅の間の立地なので、店舗とか駐車場とかの利用は考えにくいです。一方、ここは幹線道路へのアクセスもよく、さらに広い道路からフラットに入れるなど車利用の利便性が良い立地でした」(湯谷さん)

鉄道系不動産会社であれば、鉄道利用を促す企画を考えそうなものだが、あえて車利用を前提に企画した。その発想の転換によって生まれたのが、「K・BLOC HANAZONO」というわけだ。

周囲の目をひくデザインの建物が、6棟並ぶ周囲の目をひくデザインの建物が、6棟並ぶ

高架下の住宅。騒音や振動は大丈夫?

高架下というと、騒音や振動が気になるが、その点も聞いてみた。

「高架の構造体とは一切接することなく、独立した建物として建てられています。音が全く聞こえないというわけではないですが、この区間はロングレールといって継ぎ目の少ないレールが使用されるなど、騒音や振動に関しても有利で、住宅としての居住性は十分確保されています」(岡田さん)

実際、見学途中にも電車の往来はあった。筆者が感じたのは、振動も騒音も生活上気になるようなものではなく、これはまさに驚きであった。高架下の飲食店などが有名な、例えば東京の新橋や大阪の天満のそれとは、まったく別物といってもいい。

高架の構造体と接していないのは、鉄道の安全を守るためでもあるという。

「点検などの作業のため、高架下は一定の空間を開けておかなければなりません。また、安全のために都市ガスも引き込まず、オール電化となっています」(岡田さん)

内装は躯体鉄骨がむき出しのクールなイメージで統一されている。キッチンはIHヒーターだ内装は躯体鉄骨がむき出しのクールなイメージで統一されている。キッチンはIHヒーターだ

鉄骨むき出しのプライベート空間。利用法もさまざま

「K・BLOC HANAZONO」は、近鉄不動産株式会社とDAYTONA HOUSEのコラボレーションで誕生し、設計・デザインはDAYTONA HOUSEによるものだ。前面道路と隔てるシャッターを含めて外観はブラックで統一され、クールなイメージ。内部はむきだしの鉄骨に、つやを消した塗装が施され、無機質で硬派な雰囲気を醸し出す。

建物は、車やバイクといった、モーターファンのためのガレージとして企画され、実際の契約者もそのように使用する人が多いというが、使い方はそれだけではない。アトリエ、工房、作業場、撮影スタジオや、水槽などを設えた趣味の部屋としての利用も考えられるといい、幅広いニーズに応える。

天井高2.7mの1階は、ガレージはもとより、アトリエ、工房、作業場、撮影スタジオといったさまざまな使い方が可能天井高2.7mの1階は、ガレージはもとより、アトリエ、工房、作業場、撮影スタジオといったさまざまな使い方が可能
天井高2.7mの1階は、ガレージはもとより、アトリエ、工房、作業場、撮影スタジオといったさまざまな使い方が可能タイプ1の2階部分
タイプ1は、螺旋階段で2階に上がるタイプ1は、螺旋階段で2階に上がる

全部で12戸あり、広さによって2つのタイプがある。55.91m2のタイプ1が8戸、66.07m2のタイプ2が4戸で、全住戸のガレージに電動シャッターが付き、ホームセキュリティも完備されている。

2階にはいずれも黒い鉄骨と全面ガラス張りの開口部が印象的なリビングがある。機能的でスタイリッシュなキッチン、ユニットバス、洗面所と合わせて、ここも使い方は自由だ。例えば、テレワーク用のオフィスや、1階と合わせてスタートアップ企業のオフィスとしての利用も見込むという。

天井高2.7mの1階は、ガレージはもとより、アトリエ、工房、作業場、撮影スタジオといったさまざまな使い方が可能高架下とは思えない性能を確保した住居部。ユニットバス、洗面、トイレと最新の住宅設備が備えられている

未利用の高架下はまだまだある

約500kmにもおよぶ私鉄最大の営業路線を持つ近鉄。

「沿線で未利用の高架下の敷地は、まだまだ多くあります。従来の店舗や駐車場といった考えだけではなく、その場所その場所に合わせた利用法を考えていかなければなりません」(岡田さん)

住宅用地としては考えにくかった高架下に着目する近鉄不動産。「今ある資源をいかに有効利用し、付加価値を生んでいけるのか。私たち不動産会社は今、そこが問われています」と岡田さんが言うように、新しい街づくりに挑戦しようとしている。

「既存の住宅ニーズに合わせていくのではなく、新しいマーケットや価値を作り上げていくには新ライフスタイル・新ワークライフの提案が必要になってきます」(湯谷さん)

これまで十分に活用されてこなかった高架下の活用はもちろん、今後の近鉄不動産の事業展開が楽しみだ。

案内していただいた、近鉄不動産株式会社 事業開発本部プロジェクト企画部 課長 湯谷里恵さん(右)、同部 チーフ 岡田浩一さん(左)案内していただいた、近鉄不動産株式会社 事業開発本部プロジェクト企画部 課長 湯谷里恵さん(右)、同部 チーフ 岡田浩一さん(左)

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