住民のストレス増加が招く騒音トラブル

マンションやアパートといった共同住宅での暮らしの中で、よく耳にするのが住民間のトラブル。特に、多いのが生活騒音を原因としたトラブルだ。NHKが報じたところによると、警視庁が発表した110番通報の統計では、緊急事態宣言下の2020年4月に、騒音に関する通報が38%増加したという。コロナ禍で自宅での生活を余儀なくされている人も多い。在宅の時間が増えるにつれ、ストレスが蓄積されトラブルに発展する事例が増えているらしい。

見ず知らずの他人ながら隣人というだけの人間関係の中で、こじれてしまったトラブルは、なかなか解決方法が見いだせなくなる。入居者がトラブルに遭遇したとき、頼りになるのは家主なのか、管理会社なのか。

そんなとき、入居者トラブルを解決に導いてくれる専門のサービスがある。株式会社レジデンシャルペイメントが提供する「mamorocca」というのが、それだ。

入居者トラブルが激増する社会的背景、同社のサービスの特徴やメリット。トラブルが起こったときに、入居者はどのように対処すればいいのかなど、株式会社レジデンシャルペイメント コンテンツ事業部ゼネラルマネージャーの江本東洋士(えもととよし)さんに聞いた。

一つ屋根の下で暮らす集合住宅だが、隣の人を「知らない」という人も多いのではないだろうか一つ屋根の下で暮らす集合住宅だが、隣の人を「知らない」という人も多いのではないだろうか

解決を導くプロのスキルとは

警察OB・OGは、いわばトラブル解決のプロだ警察OB・OGは、いわばトラブル解決のプロだ

「コロナ前に比べて、特に騒音問題を原因とする住民トラブルは、倍増しています。これは在宅時間が延びた影響でしょうか。原因となる騒音を起こす側も、感じる側もコロナのストレスなのでしょうか」(江本さん:以下同)

今までなら特段気にするまでもなかった音にまで神経が過敏になってしまい、心の余裕を失い、その結果、解決方法まで間違い、深刻なトラブルに発展してしまう事例が増えているという。

そのようなとき「mamorocca」は、契約を結んだ入居者の連絡を受け、同社の相談員がまず話を聞く。

「解決にあたる相談員は、全員が警察OB・OGです。解決するためのスキルの最大の特徴は、その高いヒアリング能力です。トラブルはひとつひとつが原因もプロセスも違います。それを、当事者から丁寧に緻密に聞き出します。相談者である入居者の方も、そこまで話せば落ち着いてきて安心されることも多く、実はその時点で8割が解決します」(同)

当事者間の話し合いではお互いに冷静さを失い、解決に至らない。ヒアリングの能力の優れたプロに話すことによって、冷静さを取り戻すということだ。騒音トラブル以外にどんなトラブルが多いのかも聞いてみた。

「いたずらの類では、インターホンが頻繁に押されるとか、メールボックスが荒らされる、郵便物が抜き取られるといった迷惑行為が多いですね。嫌がらせやいたずらの類では通常警察は動きません。そこで、直接警察が介入できない案件でも私たちは解決を目指します。そこでも警察OB・OGならではのスキルがあります。証拠収集に際して、防犯カメラひとつとっても、どこにどんな方向に向けるのかとか、いつ張り込めばいいのかとか。これはもう、プロの技術といってもいいでしょう」(同)

住民だけではなくオーナーや管理会社にもメリットが

騒音問題がトラブルの多くを占めるが、その他トラブルの種類は多岐にわたる。女性の一人暮らしが増える中、ストーカー被害や、不法侵入など、放置すれば事件に発展するような案件でも、早期に介入することで事件化を防ぐことができるという。

賃貸住宅の入居者は、迷惑行為や住民間トラブルに遭遇した場合、まず、管理会社や家主に連絡して解決してもらおうとする。しかし、現状では共同住宅の家主でも管理会社でも、日常業務の中でトラブルを解決するために費やせる時間は多くなく、場当たり的な対応になってしまうことも多い。

賃貸物件を入居者に紹介する不動産会社では、実は日常業務の中でこの種のトラブル解決に対応する機会が多いのが現状だ。しかし、それは専門とはかけ離れた無償のサービスであり、入居者にとって満足のいく対応ではない場合が多い。
同社の「mamorocca」は賃貸住宅の入居者との直接契約でサービスを提供する。つまり顧客として専門的にトラブル解決にあたってくれる。

「現在、管理会社や不動産会社からの問合せが急増しています」(同)

入居者が、安全に安心して生活できる共同住宅であること。それは、賃貸経営を行う大家にとって、空室リスク回避の大きなメリットとなる。管理会社にしても、トラブルに手を煩わすことなく管理業務の負担が大きく軽減される。

現在全国で約16万人を会員に抱え、コロナ禍で月間1万人のペースで会員が増え続けている同社のサービス。入居者はもとより管理会社や大家にとっても、住民トラブルというリスクを軽減し、安心して賃貸経営が行えるように、「mamorocca」をベースにした多様な商品を模索しているという。

ストーカー被害や不法侵入といったトラブルは、大家や管理会社で解決することは難しいストーカー被害や不法侵入といったトラブルは、大家や管理会社で解決することは難しい

進む住民の多様化。原因はコロナだけではない

トラブルを防ぐには「日頃からコミュニケーションをとること」が大事だというトラブルを防ぐには「日頃からコミュニケーションをとること」が大事だという

共同住宅における住民トラブルが増加していると書いたが、その背景は多様だ。全国の全世帯に対する単身世帯の比率は34.6%と、5年間で約1割増え(2015年国勢調査)、東京や大阪ではほぼ半分を占めている。高齢者の単身世帯も多く、単身世帯といえば若者というかつての認識は通用しない。加えて国際化である。高齢者も若者も外国人も、アパートやマンションで単身生活をおくる。多様な人間が、ひとつの屋根の下で共同生活をおくる時代である。

「トラブルの原因は一言、隣人関係の希薄化です。日頃から隣人とのコミュニケーションがあれば、些細なことで深刻なトラブルには発展しません」(同)

つまり、寮や下宿を持ち出すまでもなく、かつての共同住宅では、同じような人が暮らし、日常生活において隣人とのコミュニケーションが成り立っていた。大家とあるいは住民どうしが日頃からあいさつを交わし、まさにアパート・マンションは共同生活=コミュニティであった。

現代では、そこにコミュニティと呼べるものはなく、隣が誰で大家がどんな人か知らない、ということは普通だ。そこに、コロナ禍である。在宅を余儀なくされたストレスの中、階上の人も、両隣もみんな心の余裕を失い始めた。

最後に、住民トラブルを回避するにはどうしたらいいのか。江本さんに聞いた。

「日頃からコミュニケーションをとることです。そして、関係を築いていれば、小さなことでも言える。火は小さなうちに消せます」

そして、トラブルにまで発展したならば、やはりそこはプロのスキルだ。誰もが安全に安心して暮らすことを望む。そこに多少のコストをかけることは現代ではもはや合理的な選択といえるかもしれない。

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