鉄筋コンクリート造3階建て18戸を、70室のシェアハウスに改修

2018年3月、JR中央線の東小金井駅から徒歩約8分の閑静な住宅街に、留学生向けのシェアハウス「シェアリエットS東小金井」がオープンした。築37年のJR東日本の旧社宅を、デベロッパーのジェイアール東日本都市開発がコンバージョンしたものだ。旧社宅は鉄筋コンクリート造の3階建て、約59m2・3DKの住戸が18戸。この住戸それぞれに4つの個室を設け、計70室を確保した。1ヶ月の家賃は、ひとつの個室あたり4万4,500円から5万1,000円、管理費は1万2,000円。礼金は不要だ。 

「2017年3月に社宅としての役目を終え、すぐに企画や設計、改修の準備を開始。旧耐震の建物ですが、壁式構造の鉄筋コンクリート造のため十分な強度があり、耐震診断の結果では現行の耐震基準をクリアしています。安全に利用できると判断して、準備を進めました」と、ジェイアール東日本都市開発のオフィス・住宅事業本部、大野勝弥さんは話す。

シェアハウスの外観。日本らしさを意識し、色は白と藍色の組み合わせにシェアハウスの外観。日本らしさを意識し、色は白と藍色の組み合わせに

各住戸に家電、家具を用意。24時間対応の電話相談も

それぞれの住戸は一旦室内をスケルトンに解体し、部屋のレイアウトや給排水管、電気配線なども刷新した。いずれの住戸も中央に共用のリビングとキッチン、シャワールームなどの水まわりを設け、それをはさむように、窓のある北と南に2部屋ずつ個室を配している。それぞれの個室は、十分くつろげるように8.97m2から9.44m2の広さを確保した。洗濯機や冷蔵庫、エアコンなどの家電のほか、ベッドやデスク、洋服ダンスはあらかじめ、ジェイアール東日本都市開発と、サブリース及び管理・運営を担う会社、ジェイ・エス・ビーが協力して用意。スーツケースのほか、布団さえ自分で用意すれば、すぐに入居できるように配慮したのだという。
ジェイ・エス・ビーの東日本企画開発部、植村浩之さんは、「日本語がままならない入居者も想定して、ほとんどのスイッチと緊急時用の避難はしごなどに、英語で説明をつけました」と話す。

何か困りごとがあったとき、入居者は、同社が運営する管理センターに電話相談することも可能だ。24時間受付で、日本語のほか英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タイ語、計8か国語の対応を行っている。

このほか、入居している留学生同士が親睦を深められるように、1階の住戸のひとつに、誰でも利用できる共用スペース「Higako Lounge」も設けた。今後、まずはジェイ・エス・ビーが音頭を取って、定期的に入居者向けのホームパーティなども開催する予定だ。なお、“Higako”とは、東小金井(ひがしこがねい)の愛称である。


左上/住戸中央の共用のリビング 右上/キッチン、洗面台、シャワーブースなどの水まわりは1ヶ所にまとめた 左下/個室の様子。ベッド、デスク、洋服ダンスがあらかじめ用意されている。1面のみ壁の色が部屋ごとに異なる(写真提供/ジェイアール東日本都市開発) 右下/シェアハウスの入居者全員の共用スペース「Higako Lounge」左上/住戸中央の共用のリビング 右上/キッチン、洗面台、シャワーブースなどの水まわりは1ヶ所にまとめた 左下/個室の様子。ベッド、デスク、洋服ダンスがあらかじめ用意されている。1面のみ壁の色が部屋ごとに異なる(写真提供/ジェイアール東日本都市開発) 右下/シェアハウスの入居者全員の共用スペース「Higako Lounge」

収益向上とJR中央線沿線のニーズから、留学生向けのシェアハウスに

上/住戸全体のイメージ。共用のリビング、水まわりを囲むように個室を配置(画像提供/ジェイアール東日本都市開発) 下/2018年4月、入居者参加で行われたバーベキュー・パーティー(写真提供/ジェイ・エス・ビー)上/住戸全体のイメージ。共用のリビング、水まわりを囲むように個室を配置(画像提供/ジェイアール東日本都市開発) 下/2018年4月、入居者参加で行われたバーベキュー・パーティー(写真提供/ジェイ・エス・ビー)

JR東小金井駅付近は東京都心部のベッドタウンであり、約59m2の住戸ならそのまま、若いファミリー向けの共同住宅としてニーズはありそうだ。そんな中、なぜ、留学生向けのシェアハウスを企画したのだろうか?

実は、この社宅は変電所に隣接している。一般的に、変電所付近では周辺の相場よりも、家賃が安く設定されるケースが多く、査定を行ったところ、この社宅も例外ではなかった。そこで、ジェイアール東日本都市開発はまず、変電所などを比較的気に留めないユーザーを想定して、学生向けのシェアハウスを検討。並行して他のプロジェクトなどで面識のあったジェイ・エス・ビーに、当該地でのニーズや運営の相談をしたのだという。植村さんは次のように話す。
「弊社には学生寮の企画、管理・運営に実績があります。ひとつの住戸に複数の個室を設けることができれば、収益は上げやすくなります。また、JR中央線沿線は留学生を受け入れている大学や日本語学校が多いことや、2020年をめどに留学生の受け入れ30万人を目指す『留学生30万人計画』が文部科学省などを中心に進行中であることも耳にして、最終的に留学生向けのシェアハウスに固まりました」。

集客は、主に各大学に依頼し、学生課などの窓口を通じて行っている。現在はほぼ満室になり、入居者の半数以上がベトナムなど東南アジアからの留学生だ。
「賃貸住宅は日本国内に居住する連帯保証人が必要なケースが多いことから、留学生が住まいを確保することは簡単ではありません。当シェアハウスでは、家賃保証会社を利用すれば入居できるようにしました」と植村さん。

子育て支援、多世代交流などバリエーション豊富な提案型賃貸住宅

現在、JR東日本グループでは、今後10年のビジネスを見据えた「生活サービス事業成長ビジョン(NEXT10)」を掲げている。その中で、駅周辺に領域を広げた「くらしづくり(まちづくり)」への挑戦をうたい、住んでよかった沿線づくりを進めていく予定だ。今回紹介したようなJR東日本の旧社宅や敷地を活用した提案型賃貸住宅の展開も、その一環である。
これまですでに、店舗併用で近隣との交流も意図した「アールリエット高円寺」、東京都認証保育園などを含む子育て支援賃貸住宅「びゅうリエット三鷹」、多世代交流のまちづくりとして、高齢者福祉施設や保育園とともに整備した賃貸住宅「びゅうリエット新川崎」など、幅広い提案内容の賃貸住宅を実現している。
「今後もさまざまなニーズに合わせた賃貸住宅を、JR沿線中心で企画していきます。2026年までに、管理戸数3,000戸を目指したい」と大野さんは話す。
 
留学のみならず、子育てや多世代交流など、日々の生活で何らかのサポートを望むとき、こうした提案型賃貸住宅を選ぶのも手だ。こういった住宅まで選択肢を広げることで、これまでにない、意外な施設やサポートを用意した賃貸住宅に出会える可能性もありそうだ。

左上/近隣や入居者の交流を図った提案型賃貸住宅「アールリエット高円寺」 左下/高齢者福祉施設を併設した賃貸住宅「びゅうリエット新川崎」 右/子育て支援賃貸住宅「びゅうリエット三鷹」(写真提供3点とも/ジェイアール東日本都市開発)左上/近隣や入居者の交流を図った提案型賃貸住宅「アールリエット高円寺」 左下/高齢者福祉施設を併設した賃貸住宅「びゅうリエット新川崎」 右/子育て支援賃貸住宅「びゅうリエット三鷹」(写真提供3点とも/ジェイアール東日本都市開発)

2018年 05月18日 11時05分