シェアハウス入居者がなによりこだわるのは住み心地

男女を問わず20代、30代を中心に、住まいの選択肢としてすっかり定着しているシェアハウス。
現在2棟のシェアハウスを運営する東京ディフェンス株式会社によると、入居者の約98%は社会人で平均年齢は29歳。男女比は半々だそうだ。社会に出て5~6年経ち、気づいたら会社と家の往復だけの毎日。そこで会社以外のコミュニティーへ積極的に入りたい、と考えるのだろう。

昨今起業や英会話など、同じ志や趣味を持つ者同士が集まるコンセプト型シェアハウスに注目が集まっている。しかし、東京ディフェンスの調査では入居者がなによりこだわるのは住み心地だった。そこで同社では住み心地を追求した新築シェアハウス「クランテラス品川」を東京都品川区大井町で開発中だ。住み心地の良いシェアハウスとはどのような物件なのか。同社事業課部長の山田邦博氏に伺った。

クランテラス品川の外観クランテラス品川の外観

新築シェアハウスを開発するのは非常に困難

東京ディフェンス事業課部長、山田邦博氏。自身も建築士資格を保有し「クランテラス品川」の設計に携わっている東京ディフェンス事業課部長、山田邦博氏。自身も建築士資格を保有し「クランテラス品川」の設計に携わっている

「やっと一から計画する新築シェアハウスを開発することができました」。開口一番、山田氏はこう胸を張った。

最近のシェアハウスは、コンセプトをアピールすることで入居者を集めている物件が増えているとはいえ、まだまだその魅力を低い賃料とする人は多い。つまりキッチンや風呂などの水周り設備などが共同なので、一般的な賃貸住宅の賃料よりも安価で当たり前と考えるのだ。そのため建築費がかかる新築物件で採算を取ることは難しく、特に大規模物件のほとんどが社員寮などをリノベーションした中古物件となっている。

シェアハウスと社員寮。同じ共同住宅だが、賃料を支払うためやはり前者の方が建物そのものに求めるレベルは高くなる。

「しかし、中古物件の構造躯体を変更するのは不可能に近いので、根本的な住み心地の向上は非常に困難なのです」(山田氏)

ところが前述のように新築のシェアハウスで採算を取るのは難しい。そこで同社は地元大井町のネットワークを最大限活用し、開発用地を安価に取得。さらに事業内容にマンションデベロッパーも含まれていることから、ゼネコンとの関係も深いため、建物の建築費を抑えることも実現。新築シェアハウス「クランテラス品川」の開発に着手できたというわけだ。

品川駅まで3分の好立地。そして居室は全室防音壁で天井高3m

同物件の主な特長は2つ。交通の便と住み心地の良さだ。
JR京浜東北線、東急大井町線、臨海線「大井町駅」から徒歩9分。京急電鉄「立会川駅」からも徒歩9分。品川駅まで3分、東京駅まで12分、渋谷駅まで9分という好立地だ。41部屋という大規模シェアハウスで、この立地はかなり希少だろう。

さらに新築ならではの住み心地の良さを維持する工夫が随所に見られる。
同社によると賃貸物件入居者の不満に思う点のトップは、隣室の生活音だそうだ。一般的な賃貸物件や社員寮の場合、戸境壁に防音材は入っていない。そのため隣の住人が今なにをしているかが分かりやすく、自身も隣に聞こえないように気を使って生活することになる。ある程度は慣れてしまうだろうが、少なからずストレスになるだろう。

同物件の全居室には、扉と戸境壁に防音対策を施してある。扉は25dB(デシベル)の音をカット。これは一般的な会話の音量を静かな図書館以下にするレベルだ。
壁には防音材を挿入し、136mmの壁厚で厚さ260mmのコンクリート壁に匹敵する遮音性能を実現。これは超高層分譲マンションなどに用いられるのと同じ仕様だ。

また、分譲、賃貸問わず一般的なマンションの天井高は2m40cm前後だが、同物件の居室は3m。床面積は約5.6畳と広いとは言えないが、まったく狭さを感じない広々さを実感できる。

毎日こんな静かで広々とした空間で過ごせるなら、居心地がいいと思えるはずだ。なお、1階の居室には分譲マンションのような専用庭が付いている。家庭菜園や物干しなど、なにに使うかは自分次第だ。

完成した建物内部完成した建物内部

まるで巨大なサンルーム。天井高4m65cmのリビング・キッチン

天井が高いのは居室だけではない。仕事で疲れた心と体をまず迎えてくれるのは、高さ9メートルの吹き抜けエントランスだ。今回は残念ながら工事中のため撮影はできなかったが、足場の下から仰ぎ見る天井は、とにかく高い。こんなに開放感があるエントランスの家に帰ってくれば、仕事場から続く緊張感がふっとなくなると同時に、「いい家に住んでいるな」という満足感も持つことができるだろう。

また、普段入居者の多くが集う約33畳のリビング・キッチンの天井も4m65cmという高さ。しかも2階なので日当たりがいいだけでなく、縦1m80cm、横90cmの天窓も付いているので、昼間は本当に明るい。まるで巨大なサンルームだ。

「居室は約5.6畳でそんなに広くないのですが、実はそれくらいがちょうどいいのです。このくらいの広さだと普段ストレスを感じるほどではないですが、自然に部屋から出てリビングに集まるようになります。そこで入居者同士のコミュニケーションが深まるのです」(山田氏)。

ちなみにリビング・キッチンの下は居室だが、天井には防音対策が施されており、日常生活に支障はない設計となっている。

天井高4m65㎝のリビング・キッチン。2階に設けたことで実現した大きな天窓との相乗効果で想像以上の明るさと開放感を得られる天井高4m65㎝のリビング・キッチン。2階に設けたことで実現した大きな天窓との相乗効果で想像以上の明るさと開放感を得られる

最上階には入居者専用のシェアオフィス

3階には入居者専用のシェアオフィスがある。会社から持ち帰った仕事は、居室で黙々とこなすより、無線LANが使い放題の広々とした最上階オフィスでやる方が効率はいいだろう。
こちらにも大きな天窓があり、星空を見上げて息抜きもできる。また、屋上テラスにもつながっているので、都会の夜景を眺めながら仕事をすれば、斬新なアイデアが浮かぶかもしれない。

これだけの好立地、そして新築だから実現できた建物自体の住み心地の良さが特長の「クランテラス品川」。気になる賃料は月額8万円前後を想定している。周辺の賃貸物件相場と比較すると安めの設定といえるだろう。竣工は7月末、入居は9月からを予定している。ぜひ完成後の様子、そして入居者の感想を知りたいと思わせるシェアハウスだ。

取材協力:東京ディフェンス株式会社
http://www.sumai-support.co.jp/

入居者専用のシェアオフィス入居者専用のシェアオフィス

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